剣姫転生 〜エルフの娘は世界最強の剣士を目指す〜   作:カゲムチャ(虎馬チキン)

124 / 146
無職転生二期放送記念!
もっと、無職転生オリ主もの二次創作増えろ!

今回はアニメ0話に合わせて、アリエル様のお話です。
アニメでも発情しておられましたなぁ。


番外 女王と妖精

「いい加減に、しませんか? アリエル様」

「あぁん♡ ご、ご褒美、です……♡」

「シル……」

「もう諦めた方が良いんじゃないかな」

「そんなぁ……」

 

 世界最大の国、アスラ王国の王城シルバーパレス。

 その大浴場にて、国の最高権力者である『女王』アリエル・アネモイ・アスラが、全裸で恍惚の声を上げていた。

 

 現在、アリエルは二人の妖精(エルフ)と共に入浴中、というか入浴中の二人のところにアリエルが突撃した。

 そして、日頃の政務で溜まったストレスをぶち撒けるように妖精の一人に襲いかかり、関節技を極められたところだ。

 

 入浴中ということは必然的に相手の方も裸なので、裸同士で密着する関節技は、彼女の言う通り、ただのご褒美である。

 変態だらけのアスラ王侯貴族の一員としてマゾヒズムを習得済みの女王陛下に隙は無い。

 

 なお、このやり取りは妖精がアスラ王国に遊びに来る度に行われているので、もはや恒例行事だった。

 無垢な少女のような美貌と、歴戦の女軍人のような雰囲気を醸し出す傷痕を合わせ持つ妖精。

 そんな彼女に裸でイジメられるというのは、なんかこう、想像以上に性癖に突き刺さったのだ。

 

 ロリ美少女鬼軍曹様に責められるとか最高です!

 最初に大浴場に突撃して締め上げられた時、この新たな扉を開けたことを、アリエルは生涯における財産の一つと思っていた。

 大丈夫か、アスラ王国。

 

「はぁ……。最近、ちょっと、過激すぎ、じゃない、ですか?」

「だって、積極的にアタックしないとアレクサンダー様に取られてしまいますもの。

 私は本気であなたが欲しいと思っているんですよ?」

「なら、これは、逆効果」

「あん♡」

 

 妖精の片割れ、エミリーは土魔術を使ってアリエルの両腕に手枷を嵌め、後ろ手で拘束。

 格差社会の象徴を隠す術を奪われた屈辱的なポーズにアリエルは鼻息を荒くし、エミリーは壮絶な疲労を感じながら、一緒の湯船に浸かっている(シルフィ)の後ろに隠れた。

 

「アリエル様。エミリーは結構誠実な方だから、ちゃんと真っ当な方法でアタックすれば、真っ当に取り合ってくれると思うよ?」

「残念ながらそれで振られてしまったので、肉体関係で落とそうと頑張っているところです」

「あ、エミリー、ちゃんと振ってたんだね」

「うん。王城に、住むのは、ちょっと……」

 

 エミリーにとって、最強の教師と好敵手だらけのシャリーアこそが理想的な環境だ。

 そこを離れて王城に住むというのは、残念ながら考えられなかった。

 こっちにもシャンドルやギレーヌやイゾルテやドーガがいるので、決して悪い環境ではないのだが、さすがに最近『魔法都市』ではなく『人外魔境』と呼ばれ始めたシャリーアに比べれば、数ランク落ちてしまう。

 政治的なゴタゴタもめんどくさいし。

 

「あれ? その言い方だと、アリエル様自体が嫌なわけじゃないの?」

「まあ……嫌いでは、ない」

「!!」

 

 なんだかんだ、エミリーはアリエルを嫌っているわけではない。

 セクハラはドギツイが、こっちが本気で怒るようなレベルのことはしてこないし。

 赤竜の髭で出会ってから十年以上。

 その間、ずっと好意的に接してきてくれた友達のような相手。

 それを嫌いになるエミリーではない。

 ……ちょっとオイタが過ぎるとは思っているが。

 

「ああ……! 今の一言でやる気が燃え上がりました……!」

「!? し、しまった……!?」

「アハハ。やっちゃったね」

 

 不用意な一言に取り乱すポンコツ。

 いつも通りな妹に苦笑する姉。

 そして、全裸で拘束された麗しの女王陛下の脳裏には、この想いの源泉となる記憶があふれ出していた。

 

 

 

 アリエル・アネモイ・アスラの、愛しい二人の妖精姉妹。

 姉のシルフィとの出会いは転移事件。

 王城に飛ばされてきた魔物に襲われ、当時の守護術師デリック・レッドバットがアリエルを守って犠牲となり、絶対絶命の状況。

 

 そこに同じく転移で王城の上空に飛ばされてきたシルフィが、落下速度を軽減させるためにガムシャラに連打した魔術が、アリエルを襲っていた魔物に命中。

 アリエルは九死に一生を得た。

 その命の恩に報いるべく、転移事件で全てを失ったシルフィを新たな守護術師フィッツとして抱き込むことで庇護し、そこから彼女との関係が始まった。

 

 妹のエミリーとの出会いは、国外留学という名の逃亡の最中。

 絶好の暗殺スポットである赤竜の髭にて、暗殺者の集団から守ってくれた。

 敵の大多数は大したことがなかったが、一人だけ聖級剣士クラスの猛者が交ざっており、アリエル陣営最強のシルフィが大苦戦。

 鬱陶しいとばかりに護衛の魔術師達が先に倒され、このままでは他のメンバーが犠牲になるのも時間の問題。

 

『ウチの! 姉に! 何、してんだーーー!!!』

 

 そこにエミリーは颯爽と現れた。

 『北王』という頼もしい称号を名乗り、大苦戦させられた暗殺者達を、聖級相当の猛者も含めてあっという間に倒してしまった。

 

 まるで、何かの物語に出てくるヒーロー。

 カッコ良かった。

 あまりにもカッコ良すぎた。

 好みドストライクの容姿と合わせて、胸がキュンキュンした。

 その後のエミリーとの対話で、浮かれた感情を王女の責務が押さえつけてくれたのは奇跡だ。

 

 その後の道中でも、彼女がいてくれる、守ってくれるというだけで、安心感が凄まじかった。

 実情で言えば、当時のエミリーより単純な戦闘力でも実戦経験でも大きく勝るシャンドルの方が頼りになったのだろうが、あの大立ち回りを魅せつけられた身としては、エミリーに心を奪われていた。

 割と本気で性的に仲良くなろうとした時の初心な反応もキュンときた。

 

 そして、何よりアリエルの眼に焼きついているのは、王位継承戦の最終段階。

 絶対的な脅威、『水神』レイダ・リィアを相手に、一歩も引かずに戦い抜いた姿。

 神級の一角を打倒し、アリエルに王位をもたらしてくれた、あの時の姿。

 

 同性愛者の傾向が強いアリエルに、あれを見て惚れるなと言う方が無理な話だ。

 彼女にとって、シルフィは大事な大事なお友達で、掛け替えのない戦友。

 そして、エミリーは憧れのヒーロー。

 

 シルフィには想い人がいたし、彼女とは友達でいたかったこともあって自重した。

 だが、エミリー相手に自重する必要は無い。

 

 かつては王位を取ることが最優先で、色恋にかまけている余裕までは無かった。

 しかし、今は念願の王位を手に入れ、その基盤も盤石のものとなりつつある。

 それなりに危険なライバル(アレクサンダー)も現れた以上、もはや躊躇は無い。

 

 一度振られたことなど些事だ。

 圧倒的劣勢から王位を勝ち取った稀代の女王、アリエル・アネモイ・アスラの諦めの悪さは筋金入りなのだから。

 

「そろそろ、上がろう」

「エミリー」

「? ッ!?」

 

 その時、エミリーがアリエルの手枷を解いた瞬間。

 自由になった手にエミリーの注意を引きつけ、絶妙なタイミングの声かけで視線と顔の向きを誘導し、体だけでヌルリと動いて━━アリエルはエミリーの唇を奪った。

 

 この時のためだけにシャンドルに習っておいた北神流の不意打ち術。

 演説の際に視線を惹きつける王族のスキル。

 更には女の子を食いまくって手に入れたキスの技術。

 何度も何度もあっさりと撃退されて油断を誘った上で、当然ながら一切の敵意も殺意も攻撃意思も乗っていない行動を繰り出す。

 

 戦いにおいて最も重要な感覚、危機感知が全く機能しない攻撃が、あの妖精剣姫の守りをすり抜けた。

 奇襲の申し子、『奇神』オーベール・コルベットですら容易には貫けない守りを。

 

「ッ!? ッ〜〜〜!?」

「わ、わぁ……!」

 

 結構濃厚なそれに、傍らで見ていたシルフィが顔を赤くする。

 エミリーは反射的に引き剥がそうとしたが、混乱で力加減をミスる可能性が頭を過ぎり、華奢なアリエルを冗談では済まないレベルで傷つけるわけにはいかないため、抵抗することを躊躇ってしまった。

 

「ぷはっ! ごちそうさまです♡」

「ッーーー!?」

 

 アリエルは満足そうに艶っぽい息を吐き、エミリーの顔は凄まじく複雑なことになった。

 

「うふふ。油断大敵。いただいちゃいましたよ、エミリーのファーストキス♡」

「……………お見事、です」

 

 剣士の心得は常在戦場。

 今のは対処できなかった自分が悪い。

 

(情けない……!)

 

 何が七大列強第五位。

 何が稀代の天才剣士。

 なんか今の動きだけに限れば、アリエルは神級の域に届いていたような気がするが、それでも非戦闘員にやられるなんて、不甲斐ないにもほどがある。

 まだまだ鍛錬が足りない。

 

「やった! やりました!

 エミリーのファーストキスの相手は私です!

 この先、例えあなたが私を選んでくれなくても、他の誰かと結ばれたとしても、あなたの初めての相手は私です!」

 

 アリエルは天真爛漫な少女のように喜んだ。

 そして、酷く魅惑的な笑みを浮かべ、

 

「私は人族。あなたよりずっと早く死んでしまう。

 だから、長い長いあなたの人生に、今の感覚を刻み込ませてください。

 ━━最高に美味しかったですよ、エミリー♡」

「!」

 

 その顔を見て、健在の脳に染み渡ってくるような声を聞いて。

 エミリーは、ちょっとだけお腹の奥がウズっとなる感覚に襲われた。

 

 彼女は剣を振っている間にあらゆる煩悩が消えていく、天然の修行僧みたいな存在だ。

 そうやって剣術で蓋をされている感覚が、ほんの少しだけ、目の前の人に引きずり出された。

 別にそっち系の趣味は無いのに。

 

(いやいや。いやいやいやいや)

 

 エミリーは頭を振って、気の迷いを振り払った。

 アリエル・アネモイ・アスラ。

 七大列強になって以降の妖精剣姫に、単独で完全敗北を味わわせたことのある、数少ない偉人の名である。




・アリエル様
北神直伝の不意打ち術+王族の中でも屈指の視線誘導術+女の子を食いまくった経験+数年がかりで油断を誘う作戦+エミリーの力加減の不安に付け込んで、祖母(エリナリーゼ)の血を覚醒させかけた。
大真面目に凄まじい偉業。
後世に変な感じで伝わり、あの姫神を倒した伝説の王として語り継がれるかもしれない。


・シャンドル
この分野だけなら、エミリーをも遥かに超える凄まじい才覚を感じた!(大興奮)


・アレク
おのれ、アリエルぅぅぅぅ!!!
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。