剣姫転生 〜エルフの娘は世界最強の剣士を目指す〜 作:カゲムチャ(虎馬チキン)
「おー」
「まあ! とってもよく似合っていますよ、エミリー!」
中央大陸北部の入り口、赤竜の上顎に一番近い町。
そこで私は、完全オーダーメイドの戦闘服を手に入れていた。
……アリエル様のお金で。
いや、別にたかったわけじゃないよ?
ただ、仮にも王女様の護衛をやるんだから、相応に身嗜みを整えてほしいって言われて。
「こっちから言い出したことだから」ってことで、アリエル様が支払いを持ってくれただけだ。
その分、デザインにはスポンサーの意向が結構反映されちゃったけど。
「ハァ……ハァ……! 本当に、可愛さと凛々しさが見事に調和していて……食べてしまいたい♡」
「…………」
無視だ。
心頭滅却。あれは無視しろ。
デザインを凄く気に入ってしまった以上、変えるつもりは無いんだから。
気にするだけ無駄というか、気にしたら負けだ。
「シル、どう?」
「うん。とっても可愛いよ」
「ありがと」
姉の
黒を基調にした、丈の短いワンピースみたいな、ノースリーブのバトルドレス。
絶対領域を強調するような、ニーソックス風のブーツ。
ここらへんにスポンサーの下心を感じるけど、絶対領域の上はホットパンツみたいなのを履いてるから、ポロリの心配は無い。
全体的に、お婆ちゃんの色違いみたいな感じだ。
お婆ちゃんと違ってヘソ出しはしてないし、あの妖艶な美女じゃなくて11歳の私が着ると、エロさより可愛さの方が勝る。
そこに胸鎧とか剣とかが装備されると、いかにもファンタジーの女剣士って感じで、カッコ可愛い。
自然と口角が吊り上がっていく。
「むふふ」
いやー、せっかくの剣と魔法のファンタジー世界なのに、これまでの人生では、こんなお洒落する機会が無かったから、想像以上に嬉しい。
幼少期は常に家計が火の車で、お洒落もクソも無い、安上がり重視のシンプルな服しか持ってなかった。
次は転移で紛争地帯に飛ばされて、しょっちゅう服はボロボロになるわ、返り血と自分の血で汚れるわで、お洒落に気を使う余裕なんて皆無。
シャンドルに拾われて余裕ができた後も、ハードな修行に耐え得ること重視の服装をしてた。
頑丈さとカッコ可愛さを両立した服がずっと欲しいとは思ってたけど、そんなお金は無かった。
そこへ来て、今回のこれだ。
スポンサーの下心を差し引いても、普通に嬉しい。
これはアレだ。
ちゃんとお礼を言わなきゃいけないやつだ。
「アリエル様。ありがとう、ござい、ました」
「いいえ。いいんですよ、エミリー。むしろ、マジックアイテムの一つも用意できなくて申し訳ないくらいです」
「そういうのは、大丈夫、です」
目にハートマークを浮かび上がらせたアリエル様の言葉を否定しておく。
弱いうちから強い武器に頼るとロクなことにならない。
武器に頼って、いざそれが無くなった時に慌てるような奴になるより、素の自分の力を徹底的に鍛え上げるべし。
シャンドルの教えだ。
「よし! じゃあ早速、その格好での修行を始めようか!」
「はい!」
そのシャンドルの言葉に従って、私は初めての
プロのデザイナーが手掛けてくれただけあって、今までの服より遥かに動きやすかった。
頑丈さもバッチリで、刃を潰した石剣で叩かれた程度じゃ壊れない。
ますますこの服が気に入って、ニマニマしてしまうのを抑えられなかった。
その後。
何度か装備を交換する機会はあったけど、基本のデザインを変えることは無かった。
初めての戦闘服の感動っていうのは、それくらい私の心に深く刻まれたのだ。
なお、そのせいでアリエル様が「エミリーの初めて……♡」みたいなことを度々言ってきて大変だったけど、まあ些細な問題である。
・妖精剣姫の戦装束
ノースリーブは極寒の北方大地だと寒そうなことこの上ないが、闘気とラプラス因子由来の頑丈過ぎる肉体のおかげでヘッチャラ。
でも、悪目立ちするので、この上から魔術師風のローブを羽織るスタイルが定着しました。
・エミリーの初めて
とある稀代の女王が熱心にコレクションしていたもの。
とある三世は、ことあるごとに「おのれ、アリエルーーー!!」と叫んでいたそうな。