剣姫転生 〜エルフの娘は世界最強の剣士を目指す〜 作:カゲムチャ(虎馬チキン)
時系列はもちろん、第十三話『夢のマイホーム』のところです。
──シャリーアside
「なんでこんなにおっきなベッドを?」
「そりゃ、もちろんシルフィを美味しく食べるためさー」
「……あ、そっか。そうだよね、えへへ」
魔法都市シャリーア、購入したての夢のマイホームにて。
ルーデウスとシルフィエットは、はにかんだ笑顔を咲かせながらイチャついていた。
恋をして、結婚して、二人だけの家でイチャイチャして。
二人は今、間違いなく幸せの中にいた。
◆◆◆
──ベガリットside
「エミリー! エミリーィィィィ!!」
「うにゃあああああああ!?」
同時刻、ベガリット大陸。
家どころか屋根も無い広大な砂漠の真ん中で、アレクとエミリーは格闘していた。
アレクの顔は剥き出しの欲望で醜く歪み、エミリーを押し倒して上半身の服を剥ぎ取る。
彼の目は血走り、下半身の四世はギンギンに昂り、もう頭の中は目の前の雌を貪りたいという煩悩でいっぱい。
かつて『魔神』ラプラスがベガリット大陸の強者達を滅ぼすべく送り込んだ男殺しの魔物、サキュバスのフェロモンにやられた結果だ。
「フーッ……! フーッ……!」
「あっ!? この……!」
エミリーの大平原に顔を突っ込んで深呼吸を決めるアレク。
決して彼が悪いわけではない。
サキュバスの毒牙にかかった男は、女に一切興味が無い純度100%の男色家でもない限り全員こうなる。
「えい!」
「もがっ!?」
エミリーはそんなアレクの頭を逆に全力で抱きしめ、窒息で落としにかかった。
まことに残念ながらクッションが無いので、アレクの鼻がぺしゃんこになって大平原が血に染まる。
理性が飛んで技巧を無くしたアレクに、この拘束を解く術は無い。
技術無しのパワー対決なら、現時点でもエミリーに軍配が上がるのだ。
「大人しく、しろ……!」
「お、ぉ……!?」
「……ふぅ」
無事アレクを失神させ、貞操の危機を脱したエミリー。
その顔には、ただただ疲労だけが浮かんでいた。
◆◆◆
──シャリーアside
「シルフィは、俺のものだ」
「ふぇ!? あ、はい。ルディのです」
「なので結婚してください」
「……はい」
改めて伝えられたプロポーズに、真っ赤になるシルフィエット。
「突然、いなくなったりしないでね?」
「……ああ。約束だ」
「うん。約束」
ルーデウスとシルフィエットは愛を確かめ合うようなキスをして、ベッドに倒れ込む。
二人の顔には、本当に幸せそうな笑顔が浮かんでいた。
◆◆◆
──ベガリットside
「エミリー! 結婚しよう! 責任は取る!」
「いらん。未遂、だったし」
「いいや、それじゃ僕の気が収まらないんだ!」
「じゃあ、一発、殴らせろ」
「へぶっ!?」
エミリーのアッパーカットがアレクを吹っ飛ばした。
現在地はとある町の娼館に併設された酒場。
アレクを正気に戻すために、とても体が丈夫な娼婦さんの力を借りた直後だ。
治療行為とはいえ他の女を抱いた直後にプロポーズするとは、さすが北神カールマン三世。
あっぱれな胆力。
「飲め。飲んで、忘れろ。それで、終わり」
「カ、カッコイイ……!」
酒をドンッとアレクの前に置きながら放たれた男前な台詞に、英雄願望をこじらせた少年はキラキラした目を向けた。
その後、店の酒を飲み尽くす勢いで流し込んだが、結局アレクの記憶は消えずじまい。
普通に酔ってぐてんぐてんになっただけだった。
「エミリー……嫌いに、ならないでぇ……」
「……はぁ。まったく」
随分と可愛いうわ言を聞いて、エミリーの顔には優しげな微笑みが浮かんだ。
弟の世話をするお姉ちゃんみたいな生暖かい笑みだ。
だからなのか、ふと彼女の脳裏に姉の顔が浮かんだ。
「シル、元気かな」
会いたいなと思いながら、酒の入ったコップを傾けるエミリー。
アレクに付き合って大量に飲んだからか、ほろ酔い気分で姉恋しくなってきた。
◆◆◆
──シャリーアside
「シルフィ……!」
「ルディ……! ルディ……!」
一方その頃。
ルーデウスとシルフィエットは、ベッドの上で激しく愛を確かめ合っていた。
この日の姉と妹は、どこまでもすれ違う……。