剣姫転生 〜エルフの娘は世界最強の剣士を目指す〜   作:カゲムチャ(虎馬チキン)

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アニメ十六話、放送!
このあたりを原作で読んでた頃、私はノルンちゃんの魅力がわかってませんでした。
ガキだったなぁ。

時系列は、幼少期 → ベガリットからの帰還直後です。


番外 エミリーとグレイラット姉妹

「あ、あわわ……!?」

「?」

 

 腕の中に小さな命の鼓動を感じて、私はカチンコチンに固まっていた。

 私は力加減が苦手だ。

 前世と今世の身体能力が違いすぎて、戦闘中はともかく、日常生活では違和感を修正し切れずにポンコツを連発する。

 そんな私に、こんな脆い命を預けるなんて正気じゃない!

 

「ゼニスさん、無理……! もう、無理ぃ……!」

「あらあら。こんな顔のエミリーちゃんは初めてねぇ」

 

 ちょっと苦笑しながら、ゼニスさんが私の腕の中にいた命──ノルンちゃんを自分の腕の中に戻してくれた。

 こ、怖かった……。

 

「あうー!」

「わっ!? ア、アイシャちゃん……!? あっ、ちょ、待っ……!?」

 

 ノルンちゃんの命をなんとか繋いだと思ったら、今度はハイハイしてきたアイシャちゃんが私の体をよじ登り始めた!?

 支える時にミスったら終わり! 支えなくて落ちても終わり!

 

「し、ししししし、師匠ぉ……!」

「アッハッハ! 天才エミリーも、そんな涙目になるんだな!」

 

 笑ってないで助けてぇ!

 

 

 

 

◆◆◆

 

 

 

 ──11年後

 

「…………………やべぇ」

 

 ベガリット大陸から帰還し、離れてる間に静香によって導入されたという可愛い制服を着て魔法大学に復学した私は今、やべぇ事実に気づいて震え上がっていた。

 

「文字、忘れてる……!?」

 

 幼少期、姉と一緒にリーリャさんに教わって、必死の思いで覚えた人間語の読み書きを、私の脳は忘却しかけていた。

 言語の違うベガリット大陸に数年間もいた弊害……!

 

「エミリー姉さん?」

 

 呆然としたまま一切身にならない授業が終わり、一緒の授業を受けてたノルンちゃんが不思議そうに小首を傾げる。

 気づけば、私は彼女にすがりついていた。

 

「ノルンちゃん。いや、ノルン様」

「え? え?」

「勉強、教えて、ください」

 

◆◆◆

 

「これは?」

「り、る、ルーデウス?」

「ロキシーです」

「うっそぉ……」

「……思ったより深刻ですね」

 

 己の脳は人の名前すら忘却していたことを知り、私は膝から崩れ落ちた。

 

「だ、大丈夫です! 私が教えてあげますから!」

「うぅ、ありがとう……!」

 

 けど、ここには頼りになる人がいた。

 ノルンちゃんはダメダメな私を決して見捨てず、物覚えの悪さに根気良く付き合ってくれた。

 何日も、何日も。

 

「これは?」

「す、し、シャリーア……?」

「スペルディアです」

「コフッ……」

 

 また間違えた。

 11歳の子の手を煩わせ続けるとか、あまりの不甲斐なさに恥ずか死にそうだ。

 

「ごめんね、ノルンちゃん……」

「いえ、大丈夫です。できない人の気持ちはわかるつもりなので」

「女神ぃ……」

 

 ああ、ノルンちゃんの背中に後光が見える。

 できない奴を見捨てないっていうのは、誰にでもできることじゃない。

 前世の教師ですら、最終的には私の学力向上じゃなくて、剣道の実績で必要分の成績を確保する形にしてきた。

 やりたくもないことならそれで良かったけど、いざ必要不可欠な何かを学ぼうとした時、それじゃ困るんだろうなと今強く思う。

 同時に、ノルンちゃんのありがたみも痛いほど感じる。

 

「ノルンちゃんは、良い、お姉ちゃんに、なるよ」

「……そう、でしょうか」

「うん。絶対。私、なんかより、ずっとね」

 

 もうすぐ生まれてくる姉の赤ちゃんにとって、この子は私なんかより遥かに頼りになるお姉ちゃんになる。

 それこそ、似たような立場の私の面目が立たないくらいの。

 ……私も、もうちょっと頑張ろう。

 気合いを入れ直してペンを強く握り直し──

 

「あっ……」

 

 十年経っても修正し切れない力加減のミスにより、脆い羽ペンはへし折れた。

 ぜ、前途多難……。

 

◆◆◆

 

「きょ、今日も、ホントに、ぁ、あり、が、とう、ノルン、ちゃん……」

「き、気をつけて帰ってくださいね……」

「うん……」

 

 オーバーヒートして煙を吹く頭をフラフラさせながら帰路につく。

 頭が痛い……。もう何も考えたくない……。

 

「あ、エミリー姉〜!」

「アイシャちゃん……?」

 

 そうして帰る途中で、アイシャちゃんとエンカウントした。

 

「わ、顔色凄い悪いよ? 大丈夫?」

「だ、大丈夫……。頭、使い過ぎた、だけ、だから……」

「ふーむ。なるほど」

 

 アイシャちゃんは何事かをちょっと考えた後、ニパッと笑って。

 

「じゃあ、ストレス発散に美味しいもの食べよう! ご馳走しちゃうよ!」

 

 そう言って、私をグレイラット家に連れていった。

 

◆◆◆

 

「はい、召し上がれ!」

「おぉ……!」

 

 家に連れて来られ、出てきたのはカレーモドキことケリースープ。

 このあたりではお米の栽培をやってない(アイシャちゃんが試験栽培中)なので、付け合せは色んなパンだ。

 見た目と匂いは中々本家に近い。

 

「いただきます」

 

 パンを千切り、ケリースープに浸して一口。

 おお、これは……。

 

「どう?」

「うん。凄く、美味しい」

 

 本家にはさすがに及んでないけど、結構イイ線いってる。

 活力が漲るとまでは言わないけど、幸せな気持ちになるくらい美味しい。

 

「どのパンが一番美味しい?」

「うーん……これ」

「ふむふむ。やっぱり、固めより柔らかめの方が良いんだね。スープでパンを柔らかくするのとは違う感じかも。ね、エミリー姉、他には……」

 

 その後、しばらくアイシャちゃんによる聞き取りが続き、脳が死んでた私は、難しいこと一切考えずに、ただただ素直な感想だけを垂れ流した。

 それをアイシャちゃんは興味深そうにメモして。

 

「ごちそうさま」

「お粗末様でした! ありがと、エミリー姉! 大分参考になったよ!」

「参考?」 

「うん! エミリー姉とナナホシさんは、お兄ちゃんと味の好みが似てるから!」

「へ?」

 

 え? 何? 妹メイドってそんなことまで見抜けるの?

 僅か11歳でこれとは、アイシャちゃん、恐ろしい子……!

 

「あ」

 

 というか、私は体よく味見役をさせられたのか。

 別に良いけど、ちゃっかりしてるなぁ。

 

 

 

◆◆◆

 

 

 

 前に一緒にいられたのは3〜4歳くらいまでで、最近になって再会できたグレイラット姉妹。

 うっかり壊しちゃわないかビクビクしてた小さな命が、今では二人とも私より遥かに立派に成長してる。

 時が経つのは早いなぁと、私は年寄りみたいなことを思った。




・ノルンちゃん
物語にストレスフリーだけを求めてると魅力に気づかない子。
当時ガキだった私は、なんだこのガキ、無能のくせにめんどくせぇなとまで思ってたような気がする。
でも、ちょっとノルンちゃんの目線で考えてみると、自分が同じ立場だったら、頭おかしくなる自信しかない。
順風満帆とは口が裂けても言えない人生で、周りは天才だらけ、自分は凡人、エミリーのように絶対的な己の芯になる一芸も無い。
これであんな良い女に育つとか、もう立派としか言えないんだわ(泣)


・アイシャ
キャラクターをスペックだけで評価してると最も評価が高くなる子。
でも、よくよく考えてみると、なまじスペックが高くて何でもできるせいで、壁にぶつかって挫折して悩む機会が中々なくて、成長が遅れた幼い子ってイメージになる。
才能に恵まれず挫折しまくって立派になったノルンちゃんの完全な対比になってて、孫の手先生マジすげぇとなります。


・エミリー
基礎スペックはノルンちゃんに遠く及ばないが、一芸特化で存在を許され、その一芸で挫折した経験が殆ど無いので、アイシャ同様に結構幼い。
紛争地帯から始まった旅の中で、自分と似たような剣士や戦士が簡単にコロコロされていく姿をよく目撃し、明日は我が身の精神が培われて多少はマシって程度。
彼女が本当の意味で成長できるかどうかは、第二次ラプラス戦役の地獄で奮起できるかにかかってそう。
なお、文字の再習得は、ノルンちゃんの献身的な介護のおかげで、割とすぐに記憶を取り戻すことに成功しました。


・この作品のコンセプト
無職転生は人間ドラマの作品なので、それがあんまり無いこの作品は違う! って意見をたまに見ます。
けど、私は人間ドラマを書いて原作に追いすがれる自信は全くありません。
無職転生の人間ドラマを見たいなら、原作が強すぎて、私ごときじゃ劣化版どころかお目汚しの駄作、劣悪な二番煎じしか作れないと判断しました。
だったら、原作のメインテーマとは別の場所に焦点を当てて、無職転生はバトル&コメディだってこんなに面白いんだぞぉ! って感じの二次創作にしようと思った次第です。
それでも良いって方だけついて来い!
うん! 深夜テンションで変なこと書いてるな! 忘れて!
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