剣姫転生 〜エルフの娘は世界最強の剣士を目指す〜   作:カゲムチャ(虎馬チキン)

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アニメ二十三話放送!
カットが……! カットが多い……!
酒場で皆がパウロを悼んでロキシーが覚悟を決めるシーンも、ロキシーが兄のように思ってた冒険者を失った話も、前世の後悔を語るシーンも見たかった……!
アニメ勢の皆さんは原作を読もう!
六面世界のバックボーンがちょこちょこ入ってて、原作を見ないとこの壮大な世界観は理解できないまであるから!

あと、かつて原作を読了した頃、このあたりの重婚云々で荒れたとか聞いて悲しい気持ちになったので、今回の番外編はエミリーなりのハーレムの飲み込み方です。


番外 価値観と常識

「重婚……ハーレム……」

 

 ヒュドラを倒し、全てが終わった後。

 帰還の旅の中で、私は意識して先送りにしてた問題とようやく向き合った。

 すなわち、ロキシーさんが妊娠してる可能性が高くて、どう落とし前をつけたものかなって話。

 

 とりあえず、どんな結果になったとしても、私が責任取ってロキシーさんの生活を保障するのは確定。

 適当に魔物でも狩って換金すれば、とりあえず生活費には困らないはず。

 

 だから、問題はルーデウスの処刑、じゃなくて奴の重婚によるハーレムを許すかどうか。

 最終的な決定権は姉にある。

 でも、どんな釈明をして、どんな落としどころを目指すのかは考えておかないと。

 

「お婆ちゃん、どうしよう……」

「エ、エミリー!? あなた、頭から煙が!?」

 

 ひとまず人生経験豊富そうなお婆ちゃんに相談してみた。

 本当は父と母も交えて話したいけど、現在父はちょっとショートしてるし、母はその介護をしてるから、話し合うならもう少し父の脳が冷却してからにしたい。

 その頃には私の脳がオーバーヒートしてるかもしれないけど、今は無茶をしてでも思考回路をフル稼働すべき時だと思う。

 何せ、これから先の家族の人生が賭かってるんだから。

 

「天より舞い降りし蒼き女神よ、その錫杖を振るいて世界を凍りつかせん──『氷結領域(アイシクルフィールド)』!」

「ありがとう」

 

 お婆ちゃんが氷の魔術で私の頭を冷やしてくれた。

 これで少しはまともに考えられる。

 

「お婆ちゃんは、ハーレム、どう思う?」

「…………」

 

 お婆ちゃんは黙った。

 考えを纏めてる感じの表情で。

 

「……エミリーは、どう思ってますの?」

「…………わかんない。ロキシーさんは、良い人。でも、シルの、気持ち、考えると」

 

 私は生まれてこのかた恋愛感情を持ったことが(二次元以外では)無い。

 だから、本当の意味で姉の気持ちに寄り添えてるとは思えない。

 それでも師匠にゴミを見る目を向けてたゼニスさんを知ってるから想像くらいはできる。

 

「エミリーは、ミリス教徒ですの?」

「違う」

 

 ミリス教。

 ゼニスさんの入ってた宗教。

 旅の途中、結構な数の信者の人達を見たから、なんとなく前世のキリスト教くらい有名で力のある宗教なんだろうなって思ってる。

 総本山のミリシオンも凄かったし。

 

「では、ミリス教の教えは?」

「一応、知ってる」

 

 師匠がフィットア領捜索団の拠点をミリシオンに構えたってことで、姉とかアリエル様とかシャンドルとかからミリス教についての説明は受けた。

 細かいところは忘れたけど、重要な教えは覚えてる。

 

 一つは他種族の排斥思想。

 特に魔族は邪悪な存在みたいに言われてて、一部の過激派は人族以外を等しく差別してるらしい。

 エルフの血が強い上に、母も獣族とのハーフで、おまけにエルフとも獣族とも人族とも違う、出所不明の謎に強すぎる肉体を持ってる雑種の私は、過激派ミリス教徒の目に留まりかねないから気をつけろって言われたから覚えてる。

 で、もう一つ覚えてるのが。

 

「一人の相手を愛すべし。その一人を生涯かけて愛しなさい。少々堅苦しいけれど、実際に愛される側に回ってみると心地良い教えですわね」

 

 一夫一妻の教え。

 前世では当たり前だった価値観。

 当たり前すぎて疑問にも思わなかった常識。

 

「けれど」

「……うん。二人、いても、悪くは、ない」

「……ええ。わたくしはそう思っていますわ」

 

 なんだかんだ、私もこの世界で前世と同じくらいの時間を生きた。

 師匠は二人の妻を娶った。

 最初はアレだったけど、最終的には幸せそうだった。

 

 シャンドルも奥さんが何人かいたらしい。

 アリエル様もお兄さん達とは半分しか血が繋がってないみたいだし、ベガリット大陸では結婚という文化自体が無い人達にまで出会った。

 価値観や常識なんて色々あって、場所によってガラッと変わる。

 だから、私が感じてるハーレムへの抵抗感は、きっともう意味の無い前世の名残りでしかない。

 

『郷に行っては郷に従えってことか』

「? 今のは……」

「なんでも、ない」

 

 言語が違う。常識が違う。

 でも、珍しく覚えてた前世の教えの中に、そういうのに適応するための考え方もあった。

 なら、それで良いや。

 

「うん。わかった。飲み込めた。ハーレムは、いい」

 

 姉とロキシーさんで両手に花なルーデウス。

 なんとなくイラッとするけど、それ自体は悪いことじゃないって納得できた。

 

「でも、シルが、知らない。これは、別問題」

「そうですわね……」

 

 重婚と浮気はまた話が違う。

 まだ私の胸の中のモヤモヤを解消できただけで、本題には入れてない。

 頭が茹だりそうだった。

 

◆◆◆

 

「うーん……うーん……」

「シル、フィ……!」

「お主の息子と孫はどうしたんじゃ? 腹でも下したか?」

「……いいえ。知恵熱ですわ」

「知恵熱?」

 

 翌日、頭を使い過ぎてぶっ倒れた私は、似たような状態の父と一緒にゼニスさんを運んでるアルマジロのお世話になった。

 私達の頭の冷却にも結構時間がかかった上に、結局親族内でも微妙に意見が食い違って、私達は半ばぶっつけ本番で修羅場を迎えることになる──




・エミリー
氷魔術を貰ってなお知恵熱を出した。
それくらい頑張って考えた。
姉には幸せになってほしいけど、ロキシーにも大きな責任を感じてる派。
ちなみに三人目の時は、自分に向けられた世迷い言も含めて、さすがに節操がねぇなと思ってたらしい。


・パパ
遭難生活の過酷さはわかるし、渦中のルーデウスにも説得に来るパウロにも、ゼニスがあんなことになってる以上は強いこと言えないし、でも、やっぱり娘を第一に考えたいし。
色々考え過ぎて娘と同じくショートした。
シルフィの気持ちが一番大事派。


・ママ
倒れた夫と娘の介護に精を出した。
思うところは色々あるが、まずは数年ぶりにシルフィの顔を見たい気持ちが一番強い。
家族全員の言い分がわかるので中立派。


・お婆ちゃん
孫は当然大事だけど、ロキシーも大好きな板挟みの立場。
息子家族の手前、原作のようなルーデウスへの助言はできなかった。
代わりにルーデウスにはパウロが色々と吹き込んだもよう。
シルフィにもロキシーにも幸せになってほしい重婚賛成派。
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