剣姫転生 〜エルフの娘は世界最強の剣士を目指す〜 作:カゲムチャ(虎馬チキン)
ルーデウスサイドの初手でロキシー師匠の朝チュンとか、相変わらず攻めてんなぁ……! と感服するばかりです。
いや、原作でもそうだったけど、それにしたって肌色面積が凄いというか……!
全体的には本当に平穏な日々すぎて、この後の大爆発が今から楽しみ……ゴホンッ! 恐ろしくなりますね。
今回の番外編の時系列も、アニメとほぼ同じ。
エミリーにとっても束の間の平穏の時間です。
「可愛いなぁ♡」
「本当に可愛いなぁ♡」
迷宮都市ラパンから帰還して、しばらくした頃。
魔法都市シャリーアのグレイラット邸では、今日も今日とてな光景が広がっていた。
「あの……父さん、お義父さん。そろそろ、ルーシーを返してもらえると……」
「そんなこと言うなよ、ルディ♡」
「もうちょっとだけ……♡ もうちょっとだけ……♡」
いい歳をしたおじさん二人が、
しかもこれ、数時間とか数日とかじゃなくて、数ヶ月単位でこの状態だ。
「う、うぇぇぇん!」
「あっ……!? ルーシーたん……!?」
「お腹空いたのかな……!? それともウンチ……!?」
「お、おお、落ち着いてください、二人とも!」
そして、パパデウスも交えて、彼女の一挙一動に盛大に取り乱す。
おじさん二人は子育ての経験もあるはずなのに、不思議と一向に慣れない。
子供っていうのは、一人一人が全く違うワンダーランドなのかもしれない。
「ほら、ルーシー! べろべろばー!」
「ふぇぇぇぇぇん!! ふぇぇぇぇぇぇん!!」
「おい、ルディ!? ダメじゃねぇか!?」
「むしろ勢い増してるよ!?」
「あ、あれぇ!?」
しかも、そのワンダーランドは日替わりで内容が変動するときた。
……今日のは結構珍しいな。
ウチの天使はあんまり泣かない子なんだけど、何か気に食わないことでもあるのか、本日は思いっきり何かを主張してる。
男三人組が、こっちに助けを求めるような目を向けてきた。
「任せて……!」
力強く宣言して、私は戦場に向かう時より気を引き締めて、ワンダーランドに飛び込む。
「鎮まり、たまえ、我が天使……!」
「ふぇ?」
荒ぶる神を鎮める巫女のごとく、私はグレイラット家の小さな女神に舞いを捧げた。
手に持つのは、いつもの愛剣ではなく、赤ちゃんをあやすためのガラガラもどき。
振ると良い感じの音が鳴るそれを、ダンスに乗せて最適のリズムで鳴り響かせる。
応用するのは今まで学んできた全て。
躍動感にあふれる剣神流の型。
静かに流れる水神流の型。
視覚的インパクトの一番大きい北神流の型。
更に、火魔術で美しい小さな火花を演出。
風魔術と合わせて、長い金髪や制服のスカートを自由自在に翻す。
それら全てを複合し、舞う、踊る、ダンシング!
ああ、私はこのために剣術と魔術を学んできたのかもしれない……!
そんな悟りにも似た充実感を覚えながら、私のダンスは激しさを増していき──
「ふぇぇぇぇぇぇぇぇぇん!!!」
「「「エミリー!?」」」
「あれぇ!?」
あんまり効果が無かった。
一時的には泣き止んでくれたんだけど、途中で再びの大号泣だ。
「バ、バカな……!?」
今の私の集大成が、現時点では最高最強の必殺奥義が、通用しないだと……!?
昨日までは楽しそうに笑ってくれたのに!?
まさに理解不能のワンダーランド……!
「よしよし、ルーシー。良い子、良い子」
「どうしました? ご機嫌斜めですか?」
「あぅぅ……」
その後、駆けつけた
凄い。全く理由がわからない。
あらゆる技をコピーしてきたこの
ふ、ふふふ……。完敗だよ……。
やっぱり、この二人には敵わないよ……。
「シルフィエット様、ルーシー様をお預かりします」
「うん。お願いします、リーリャさん、アイシャちゃん」
「お任せあれ!」
更に、状態異常が治って荒ぶる神から女神に戻った天使は、グレイラット家の頼れるメイド母娘にバトンタッチ。
再び荒ぶる様子は一切ない。
それどころか、天使は安心したようにうとうとして、目がとろんとしてきて、おねむな感じになってきた。
抱っこが上手いとか、ビックリさせない声の出し方とか、色々あるのかもしれない。
最弱……。
我らの子守り能力はグレイラット家にて最弱……。
私を含む本日の負け犬四人衆は、ちょっと全員泣きそうだった。
「皆様、そろそろ学校のお時間では?」
「ま、待ってくれ、リーリャ……!」
「もうちょっとだけ……! もうちょっとだけ……!」
「ダメだよ。特にパウロさんとお父さんは仕事でしょ?」
「「あああああ……!」」
父が姉に引きずられ、師匠はゼニスさんに引きずられて退場していく。
二人は今、魔法大学の警備員をやってるから、無断欠勤は当然許されない。
「でも、私は、融通、利くし……」
「お、俺も今日は、ルーシーの好感度を取り戻しておきたいなぁ……」
「二人とも。いくら特別生とはいえ、特別な用事もなしに欠席というのは、教師としてあんまり推奨できませんよ?」
「「はい……」」
女教師ロキシーさんに窘められて、ルーデウスと私も連行された。
「いってらっしゃーい!」とアイシャちゃんに手を振られ、大人しく登校して、寮の方にいるノルンちゃんや静香と合流。
上級治癒魔術の授業で頭から煙を出したり、弱ったところをアリエル様に付け狙われたり、ゼニスさんの呪い研究でいまいち役に立ててるかわからない協力をしたり。
お婆ちゃんに会いに行って気まずい思い(性的な意味で)をしたり、姉を訪ねて気まずい思い(ハーレム的な意味で)をしたり。
ちょくちょく時間を作っては師匠や父との修行をしたり。
ちょくちょく六魔連のメンバーをそこに巻き込んで悲鳴を上げさせたり。
トレーニングを始めたノルンちゃんも巻き込んで布教の楽しさを味わったり。
そんなノルンちゃんに生温かい目を向ける集団に師匠とルーデウスが牙を剥いたり。
あまり長居すると牙が抜けてしまいそうな、穏やかな日々。
それもまた人生に必要なメリハリなんだろうなとか適当なことを思いながら。
違う意味での天国に旅立つまでの間、私は存分に英気を養った。
・お爺ちゃんズ
暴走気味。
転移事件の長い苦労の日々が終わった直後だから、色々あふれ出してる。
普段は子守りもしっかりこなせるのだが、今日はちょっと天使の虫の居所が悪かったらしい。
・エミリーの舞い
魅せるために動きのキレを追求しているので、型稽古として地味に有用。
ルーシーは凄く喜んでくれたものの、最近は飽きがきてるのもあって、今回は不発。
飽きられないために、必死になって新しい振り付けを考える度に、戦闘時の動きに磨きがかかっていくらしい。
・六魔連
わりとよく遊び相手にされてる。
ザノバが闘神戦の連携に絡めたのは、ここでの経験が大きい。