剣姫転生 〜エルフの娘は世界最強の剣士を目指す〜 作:カゲムチャ(虎馬チキン)
今回も内容がミッチリ詰まってましたねぇ。
黒狼の牙から始まり、アイシャとゼニス、ルーシーとリーリャ、エッチな触手加入にご神体脅迫事件、クリフ・ザノバ・ジュリときて、Bパートの王級魔術。
その全てに過去を思わせる描写と、未来への伏線が詰まりに詰まってるとか、ちょっと30分の密度じゃないですよ……。
とても全部を網羅した番外編とか無理ぃ……。
ということで、番外編のテーマは断腸の思いで一つに絞りました。
時系列はオルステッド戦の直後、初仕事に行く前です。
「………本当にやるのか?」
「どんと、来い……!」
オルステッド戦後の昏倒から目覚めて少しして。
そろそろ初仕事が始まるかなって頃。
私は死闘に付き合わせた借りを返せってことで、ルーデウスをシャリーア郊外に連れ出した。
他の皆には内緒で、こっそりと。
最初こそ「もしかして、これお忍びデートか……!? ダ、ダメだぞ! そりゃ確かにエミリーにもキュンときたとは言ったし、そっちも好きになってくれたなら嬉しいけど……! 冷静に考えて、これ以上の修羅場はさすがにマズいというか……!」などという妄言を吐き散らしていたルーデウスだけど。
ここに至ると、心の底から理解不能なナニカを見る目を私に向けていた。
まあ、気持ちはわからなくもない。
「いいから、私に、
習得したとは聞いてたけど、実際に見たことはなかったルーデウスの王級魔術。
オルステッド戦にて解禁されたそれが、今は気になって仕方ない。
あの時は世界最強を前にして、それどころじゃなかったからスルーしたけど。
色々な問題が一段落して、次の戦いまで少しだけ間が空いてる今、私の心は彼に囚われている。
「お願い、ルーデウス……♡」
興奮で心臓をドキドキさせながら。
はぁはぁと息を乱して頬を染めながら。
私はルーデウスにそんなお願いをする。
中々にヤバい要求をしてる自覚が、さすがにちょっとはあった。
「は、発情期みたいな顔をしている……! なんてこった……! 大好物のはずなのに恐怖しか感じねぇ……!」
ルーデウスの顔色は真っ青だった。
さすがにちょっと大袈裟じゃない?
「お、落ち着こう、エミリー。やっぱり、こんなのは良くないって。病み上がりだし、皆も心配するぞ?」
「だから、こっそり、来た」
「ちくしょう……! こんな時だけ頭を使ってやがる……!」
ふっふっふ。
甘いんだよ、ルーデウス。
私はポンコツだけどバカじゃない。
好きなことに関しては、ちゃんと頭が回るのだ。
「一回、雷、斬ってみたい。剣士の、本能」
「落ち着こう……! マジで落ち着いてくれ……! 電撃は闘気を貫通して肉体を痺れさせるんだぞ? 下手したら死んじゃうんだぞ?」
「水神流は、魔力、そのものを、受け流す。だから、大丈夫。…………多分」
「最後の一言が怖いって!? 嫌だぁ!! 万が一にでも義妹殺しとか嫌だぁ!!」
マズい。
ルーデウスが思った以上に日和ってしまった。
説得をしなければ。
「ルーデウス。私達は、これから、オルステッドの、駒になる。敵は、強い」
「へ? あ、ああ、そうだな……」
「ヒトガミが、魔術師、使ってくる、かもしれない。色んな、相手を、想定して、修行、しておくべき」
「この流れで、まともなこと言い出した……!?」
雷に打たれたような驚愕の表情を浮かべる義兄。
これが好きなこと極振りの力!
今の私は冴えているぞ!
「死ぬ、可能性が、あるなら、今、対策を、覚えたい。慣れて、おきたい。──お願い、お義兄ちゃん」
「ッ!?」
理詰め+アイシャちゃんをお手本にした上目遣いのおねだり。
こういうのが好きなんでしょ?
落ちてしまえ、ルーデウス!
「……………………ああもう! わかった! わかったから! 死なないでくれよ、エミリー!」
頭を抱えて、壮絶に葛藤した末に、ルーデウスはその杖を空に向けた。
『
私は最高にワクワクした気持ちで、術者を巻き込まないように距離を取った。
「『雄大なる水の精霊にして、天に上がりし雷帝の王子よ!
我が願いを叶え、凶暴なる恵みをもたらし、矮小なる存在に力を見せつけよ!』」
カッコつけるためか、それとも発射のタイミングをわかりやすくしてくれてるのか。
ルーデウスは、ここまで届く結構な大声で詠唱を口ずさみながら、魔術を完成させていく。
「『神なる金槌を金床に打ち付けて畏怖を示し、大地を水で埋め尽くせ!
ああ、雨よ! 全てを押し流し、あらゆるものを駆逐せよ!』」
空に雷雲が生まれた。
魔力が暴れ狂う。
転移事件には及ばないまでも、あの龍神に手傷を負わせるほどの暴力的な魔力の奔流。
それが吹きつける風と、振り注ぐ雨と、バチッバチッと音を立てる雷に変換されて、私に狙いをつけている……!
「『雄大なる光の精霊にして、天を支配せし雷帝よ!
そびえ立つ者が見えるか! 傲慢なりし帝の御敵が!
我は神なる剣にて、かの者を一撃に打倒せんとする者なり!
光り輝く力を以って、帝の威を知らしめん!』」
圧縮されていく。
広がっていた雷雲が一点に凝縮されて、魔力が、威力が、極限にまで高められる。
そして──光の剣が落ちた。
「『
振り注ぐ落雷。
まさしく雷速の一撃。
でも、ちゃんと見えた。
ちゃんとわかった。
雷そのものではなく、私に振り注ごうとする魔力の流れ。
それを魔眼が捉えて、剣士としての経験値が、感覚としても教えてくれる。
大丈夫。
私はこれを──斬れる。
「水神流奥義」
剣を振るう。
雷をかき分けるように。
光の剣を縦に裂くように。
天からの攻撃に対して、下から上へと剣を振るう。
「──『
闘気を纏った私の愛剣が──雷撃の剣を真っ二つに引き裂いた。
まさにファンタジー。
まさに剣士の夢。
「ああ……! 今の、私、最高に、カッコイイ……!」
脳汁がドバドバ出る。
天に掲げた剣が、最高に誇らしい。
若干焼け焦げて痛みを訴える腕すら愛おしい。
「この、瞬間の、ために、生きてる……!!」
「……そうか。良かったね」
心底ホッとしたような、あるいは全てを諦めたような目で、ルーデウスが呟いた。
私の勇姿を見て「あとでフィギュアにでもしておくよ」と彼は言う。
ありがとう、お義兄ちゃん!
・エミリー
雷切に憧れて暴走。
この後は、大規模フロストノヴァと、隕石落としと、核爆発もどきの、オルステッドぶち込みコンボ全てを制覇したくなった。
ルーデウスは勘弁してほしくなった。
・ルーデウス
エミリーとこっそり二人で出掛けて、帰ってきた時はエミリーが最高にご機嫌になってたので修羅場になりかけた。
妹には興奮できないが義妹には興奮できる男なので、一歩間違っていたら色々危なかったかもしれないが、剣狂いの思考回路を理解できないのが救い。
あれが元日本人とか嘘だろ……。いくらなんでも、この世界に染まり過ぎだろ……。
とか思ってるかもしれない。