剣姫転生 〜エルフの娘は世界最強の剣士を目指す〜 作:カゲムチャ(虎馬チキン)
まさかアトーフェ様編が1話に纏められるとは思わなかった……。
アニメって想像以上にテンポが良いですね。
次回はもう例のあの回だし……。
魔界大帝は出番少ないのに相変わらず強烈でした。
ザノバの戦い方は、なんか変な笑いが込み上げてきて好きになってしまった……!
熟練魔術師ムーアさんも、想像以上にカッコ良かったぜ!
やっぱり、ああいう渋いお爺様はイイ……!
ということで、今回の番外編は当然アトーフェ様。
時系列は仲間になってくれた直後です。
「*****。****、********、********」
「『負けを認めよう。約束通り、お前達が生きている限り、オレはお前達の配下となる』」
甲龍歴429年。
私達は伝説の『不死魔王』アトーフェラトーフェ・ライバックを決闘によって倒し、彼女を仲間にすることに成功した。
初手から不治瑕の破断、剥奪剣、光の太刀、更には未完成の剥奪剣界まで使って、最後にはルーデウスの魔導鎧一式まで引っ張り出す大盤振る舞いの結果、親衛隊を引き連れたアトーフェさん相手に無傷の圧勝。
……といっても、それは表面だけ見ればの話。
実際のところ、戦闘が長引いてたら、どうなってたかわからない。
不死魔族の一番強い戦い方は、圧倒的な再生能力に任せた持久戦だ。
ルーデウスのガトリングに撃ち抜かれた後、アトーフェさんが北神流フル稼働の完全マジモードになって特攻。
命を捨てる覚悟の親衛隊がそれをサポートってなったら、少なくとも私一人じゃ相当厳しいと思う。
ルーデウスの支援込みでも、一式の燃費の悪さを考えると、最終的に削り切られて負けって可能性も充分にありえたはず。
そうならなかったのは、その前にアトーフェさんが負けを宣言したから。
シャンドル曰くの俺様ルールに、何かしら触れたってことなのか。
なんにしても、私達はアトーフェさんを仲間にすることに成功し。
それから魔大陸を回って、各地の魔王にオルステッドコーポレーション社員として話をつけに行く仕事が始まった。
メンバーは私とルーデウスが続投。
アトーフェさん説得係のシャンドルがアリエル様のところに帰還し、代わりに魔神語を話せるロキシーさんとエリスさんが合流。
そして、何故かアトーフェさんが付いてきた。
「***! ******!」
「わー!」
何故か、伝説の不死魔王は私を肩車して走り回りながら、上機嫌に笑っていた。
「何やってんのよ……」
「**! ******! *****!」
「ッ!?」
呆れた目で見てきたエリスさんに、アトーフェさんが何かを告げる。
すると、意外にも2ヶ国語を話せるバイリンガルなエリスさんの表情が、一瞬にして『怒り』に染まった。
「*******! *****!」
「上等じゃない!!」
「ちょ!? エリス、ダメだって!? 剣は抜いちゃダメだって!? この魔王様、冗談通じないから、本気で殺しに来るぞ!?」
ルーデウスが暴れようとするエリスさんを必死に取り押さえようとする。
そんな夫を、暴れ牛のごとく全力で振り払おうとするエリスさん。
……狂犬全盛期ならともかく、最近のエリスさんが、こんな瞬間湯沸かし器みたいになるなんて。
「アトーフェさん、なんて、言ったの?」
「…………エリスに向かって『ふむ! エミリーの配下か! 良い剣士を侍らせているな!』って……言ってしまいました……」
「わーお」
余裕のない通訳デウスに代わって、ロキシーさんが教えてくれた。
思いっきり地雷踏み抜いてますね(白目)
最近のエリスさんは子供も産まれて、気性も随分落ち着いてきたんだけど、それでも私とは日々の鍛錬でぶつかり合うライバル社員だ。
この前も一本取られたし、喰らいつく気満々の好敵手なのである。
そんなエリスさんが、よりによって私の部下扱いされて、怒らないわけがない。
「しかも、その後『配下としての序列はオレが上だ! 弁えろよ!』とまで……」
「うわーお」
それはもう、エリスさん止まらないよ。
あ、ルーデウスが振り払われた。
エリスさんが剣を抜く。
アトーフェさんも対抗して、腰の大剣を引き抜く。
魔大陸の片隅で、達人二人による野良バトルが勃発した。
「あああ……!? 始まっちゃった……! エミリー、止めてくれ!」
「おおう……。至近距離で、他人の、剣の、ぶつかる音……。こういうのも、イイ……」
「ダメだ!? トリップしてやがる!?」
エリスさんの愛剣、鳳雅龍剣。
初代剣神が稀代の名工『龍皇』から授かったという傑作。
剣神流を最大限に活かすための剣。
アトーフェさんの愛剣、顎砕。
王竜王カジャクトの肉体から作られた48魔剣の一つ。
魔界の名工ユリアン・ハリスコが、アトーフェさんのために造った剣。
性質の違う二つの剣と、二つの剣技のぶつかり合い。
自分で戦うのとも、また違う。
アトーフェさんの肩車という超至近距離で聴くそれは、まるで最前列の一番良い席で聴くオーケストラのように、私の心を躍らせた。
「ああもう!? タイプの違うアホの三重奏とか、こんなのどうやって制御すればいいんだ!?」
「ルディ……気持ちはわかりますが、凄いこと言ってますよ」
◆◆◆
そんなこんなで旅は順調に進み。
魔大陸のとある地方、とある魔王の居城。
私達はここの魔王との謁見のために、立派なお城の玉座の間に来ていた。
ただし──
「*****! ********!」
「*、***!?」
玉座に座ってるのは魔王ではなく、何故か私である。
アトーフェさんの指示で、玉座に座って王様っぽいカッコイイ感じのポーズを決めている私である。
「えぇ……。何この状況……」
「……魔王アトーフェラトーフェに理屈が通じないという話は有名です。そういうものとして受け入れましょう」
「ふんッ!」
玉座の両隣には、困惑した様子のルーデウスとロキシーさん、不機嫌そうな顔のエリスさんが並ぶ。
仁王像みたいな表情で腕を組んでるエリスさんは凄い迫力だった。
魔王軍幹部って言われても、何も違和感がない。
違和感しかないポジショニングのルーデウスとロキシーさんの分を完璧にカバーしている。
「********!」
そして、玉座の後ろには、満面の笑顔でふんぞり返るアトーフェさん。
本来、こっち側でふんぞり返ってなきゃいけない現地の魔王様は、アトーフェさんに怯えて、ガタガタと震えながら頭を下げていた。
『不死魔王』アトーフェラトーフェ・ライバックは、同じ魔王にすら恐れられる存在なのだ。
まあ、武闘派の魔王がラプラス戦役でほぼ全滅してて、現代の魔王は、あの図書迷宮の本好きの魔王様みたいな穏健派ばっかりだからこそ、こうなってるらしいけど。
「****! ***! *******!」
その数少ない武闘派魔王の生き残りは、まるで後続に魔王の座を譲った大魔王ごっこをしてるみたいに楽しそうだった。
あとでルーデウス達に聞いたところ、大したことは何も言ってなかったそうだから、本当に雰囲気を楽しみたかっただけなのかもしれない。
このノリと勢いで生きてる感じ。
シャンドルやアレクを更に煮詰めて、純度を高めたような親近感を感じる。
そんな頼れる御仁は、何人かの魔王に同じことをした後、飽きたと言ってネクロス要塞に帰っていった。
清々しいほど自由な魔王様だった。
・アトーフェ様
シャンドルからエミリーの素性(自分の弟子でアレクの戦友)を聞いて、完全に身内認定してお婆ちゃんモードに入った。
なお、親衛隊は気分で置いてきている。
頻繁に千切れる手綱とか恐怖でしかないね。
・エミリー
アトーフェとは結構波長が合うので、一緒にいるのが苦ではない。
シャンドルやアレクを思い出すらしい。
ただし、あまり長く一緒にいると、アホの共鳴によって剣の聖地時代より頭が悪くなる可能性があるので注意。
・ルーデウス達
疲れた……。ただただ疲れた……。
お疲れ様です。