剣姫転生 〜エルフの娘は世界最強の剣士を目指す〜 作:カゲムチャ(虎馬チキン)
アリエル様がアスラ王国から出た時点で諦めてたのか、懸念してた追手による襲撃もないまま冬が明け、私達は雪解けの季節の北方大地を前進した。
ちなみに、赤竜の上顎から東に進むとアリエル様の留学先であるラノア王国があり、西に進んで大陸の最西端に行くと、私が昔から心惹かれてる剣の聖地という場所がある。
剣の聖地はその時代最強の剣術流派が居を構えてるところで、今は世界で最もメジャーな剣術である剣神流の総本山になってるらしい。
ギレーヌはそこで修行したって言ってた。
しかも、そこには世界最強の七大列強の一人、序列六位の『剣神』までいるんだとか。
いつか抱えてる問題が全部片づいて余裕ができたら、是非とも行ってみたい。
きっと天国のような光景が広がってることだろう。
というか、叶うことなら今すぐ寄りたい。
覗くだけでもいいから。
ちょっとくらい寄り道してもいいんじゃないかな?
そう思って、ダメ元で剣の聖地寄ってかないって提案したら、姉に笑顔でバッサリ切られた。
そんなこともありつつ、私達は東に進んであっさりとラノア王国に入国。
北方大地は結構強い魔物が出る土地らしいんだけど、紛争地帯で青竜との死闘を経験してるからか、そこまで強いとも感じなかったし、特に苦戦もせずに目的地へ到着できた。
そこからはラノア王国の王都に行って、アリエル様がラノアの王族に挨拶した。
他国の王族と向き合うアリエル様は、中身がビッチなお方とは思えない、最初に会った時にも感じた王者の風格を漂わせてたよ。
今となっては詐欺にしか見えないけど。
ちなみに、その時の私は姉以上に『無言』の二つ名が似合うほどに沈黙してボロを出さないようにしながら、アリエル様の護衛の一人としてどうにか無事その場を乗り切った。
……いや、やっぱりちょっと訂正。
久しぶりにポンコツ晒して、うっかり城の美術品を壊したから無事にではないわ。
あの時は本気で血の気が引いたよ。
アリエル様が弁償してくれたおかげでなんとか助かったけど、「この程度の出費でエミリーに恩が売れるなら安いものですよ、うふふ」って言われたし、特大のやらかしをした気がしてならない。
今回はアリエル様の護衛料という名目で相殺になったけど、今後またポカをやらかしたら、その時こそ貞操を失うかも。
そんな未来予想に本気で震えながら、留学先のラノア魔法大学がある街。
ラノア王国、ネリス公国、バシェラント公国の『魔法三大国』と呼ばれる三ヵ国同盟のちょうど真ん中にある『魔法都市シャリーア』へと到着。
早速魔法大学に向かい、大学の名に相応しい広大な敷地に入ったところで、
「おや?」
シャンドルが校門近くにある広場で足を止めた。
そこにあったのは、ローブを纏った一人の女の人の銅像だ。
像に付けられたプレートには『初代学園長、第56代魔術ギルド総帥フラウ・クローディア』と書かれてる。
「どうしたの?」
「いや、懐かしくてね。彼女、古い知人なんだよ」
へー。
こんなところにも奇妙な縁があるもんだね。
私のお婆ちゃんが師匠の元仲間だったことといい、世界は広いけど、世間は意外と狭いのかもしれない。
まあ、それはさておき。
実態は逃走とか島流しみたいな感じとはいえ、名目上は留学だからアスラ王国からちゃんと話が通ってて、アリエル様達の入学はあっさりと許可された。
特別生っていう、前世で言うところの特待生みたいな感じで入ることもできたみたいなんだけど、なんか思惑があるみたいで、アリエル様達は全員その話を断ってた。
で、私はどうするかって聞かれたから、せっかくだから私も入学してみることにした。
アリエル様達は断ったけど、今ならアリエル様の紹介で特別生になれるみたいだし、特別生は学費タダって話だからね。
あと、私はしょぼい初級魔術をいくつかだけだけど、一応無詠唱魔術が使えるので、アリエル様に頼らなくてもギリギリ特別生になれる条件は満たされてたっぽい。
これを機に、便利だけど初級だけじゃ心許なかった治癒魔術と解毒魔術あたりを本格的に学び直してもいいかもしれない。
どうせアリエル様達というか、姉の生活が安定するまではここにいるつもりだしね。
ついでに、何故かシャンドルも特別生として入ってきた。
一分の隙もないアリエル様のコネで。
なんで? って思ったら、目的は見込みのある生徒を北神流に勧誘することだってさ。
要するに、いつものである。
でも、ついでに面白そうな魔術とか魔道具とか漁って、北神流の新たな技を模索するつもりでもあるらしい。
向上心の塊か!
とまあ、そんな感じで、私達の新たな生活が始まった。
従者生存&最強護衛加入により、アリエル様御一緒が北方大地を進む速度が上昇。
学年が原作より一つ上に。
ただし、途中編入なのでリニア、プルセナは既にブイブイ言わせてる。