剣姫転生 〜エルフの娘は世界最強の剣士を目指す〜   作:カゲムチャ(虎馬チキン)

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49 異世界人集結

 この世界に生まれ出でし我が姪であるルーシーもすくすくと育ち、初孫に浮かれる師匠や父と一緒にデレデレになって、生後数ヶ月の時点で訓練用の木剣に触れさせようとして姉に笑顔でチョップされたりしつつ、シャリーアに帰還してから半年が過ぎた。

 

 お婆ちゃんがクリフさんと正式に結婚式をあげ、それを盛大にお祝いしたりもした。

 皆、生活がかなり安定してきたし、そろそろ旅に出てもいいかなと思う今日この頃。

 そんな時に、遂に静香から例の件の打診があった。

 

『覚悟が固まったって。今日の放課後に私の研究室で集合ってことになったけど、それで大丈夫?』

『わかった。問題ないよ』

 

 ということで、授業を完全にそれ一本に絞ったおかげで、本日ようやく習得して、教師どころか生徒達にまで思いっきり頭を撫でられて祝福されまくった上級治癒魔術の授業を終え、静香の研究室で同郷を待った。

 というか、一応私は番長を倒した学園最強のはずなのに、同じ授業受けてた他の人達の私への接し方が、完全に子供に対するそれだ。

 ルーデウスは恐れられてたっていうのに何故……!?

 

 そんなことを考えてる間に、そのルーデウスが扉をノックしてから研究室に入ってきた。

 ルーデウスも静香の研究手伝ってるって話だし、そっち関連の用事かな?

 と思ったら、ルーデウスは静香になんか目配せして、静香はそんなルーデウスに対して頷いた。

 むむ?

 

『まさかとは思ったけど、やっぱりもう一人の転生者ってエミリーだったのか』

『日本語……ああ、なるほど。そういうことか』

 

 唐突に日本語で話し始めたルーデウスを見て、私は全てを察する。

 静香が私に会わせようとしてた日本関係の人物とは、ルーデウスのことだったのだ。

 普段から会ってんじゃんとも思うけど、やっぱりお互いに正体を明かした状態で向き合うっていうのは全然違う。

 

『なるほどねぇ。昔からの年齢不相応のエロい視線といい、魔術教えてもらった時に話してた科学知識の数々といい、師匠が自信無くすくらい大人びてたって証言といい、合点がいったよ。ルーデウスも転生者だったんだね』

『エロって……。ルーデウス、あなた昔から……』

『待って! 色々覚悟してきたけど、予想外の方向から殴らないで!?』

 

 まずは軽い世間話のように、ルーデウスの過去のあれこれを日本語で話して盛り上がる私達。

 ルーデウスは悲鳴を上げた。

 

『というか、そこまで変なら普通気づかない? 科学知識とか確実に転生者特有のものでしょ』

『当時この世界の教育レベルなんてわかんなかったからねぇ。ロキシーさんの教育がいいのかと思ってた』

『それでも成長したら気づきなさいよ……』

『完全に頭からすっぽ抜けてました』

『……まあ、エミリーだしね』

 

 静香が諦めたようにため息を吐いた。

 誠に遺憾だけど、私がポンコツであることは認めよう。

 

『な、仲良いな』

『まあ、元クラスメートだしね』

『そうなのか。っていうか、エミリー、いつもとキャラ違くなくないか? いつもの片言ロリエルフはどこいった?』

『あれは異世界語の発音が上手くできないからああなってるんだよ。こっちが素の私』

『衝撃の事実すぎる……』

 

 『ギャップ萌え……』とか聞こえてきた。

 無視した。

 

『あ、そういえば、まさかとは思ったとか言ってたけど、なんで私が転生者だって気づいたの?』

『クリフとザノバから、エミリーとナナホシが全然知らない言葉で会話してたって聞いたんだよ。

 エミリーは人間語以外話せないはずだし、話せたとしてもわざわざナナホシと他の言語で会話する理由なんて日本語くらいしか思いつかなかったからな』

『あー、あれは迂闊だったかぁ』

『うっ、ごめんね。私が日本語で話しかけたから……』

『いやいや、あれは連絡入れずに不安にさせた私も悪いって』

 

 落ち込み始めた静香を宥める。

 『百合……』とか聞こえてきた。

 無視した。

 

『というか、こうしてみても、やっぱりエミリーが転生者ってのは信じられないな。だって……』

『転生者にしては、あまりにポンコツだとでも?』

『それもあるけど、元日本人にしては剣術が上手すぎるだろ。命のやり取りとかも普通に慣れてるし』

『私は元々剣道の選手だったからね。これでも学生最強剣士とか呼ばれてたから。命のやり取りに関しては、転移事件で紛争地帯に飛ばされれば誰だって覚悟決めるよ。あそこは地獄だった』

『……今、サラッとポンコツをスルーしたわね』

 

 静香、そこは聞かなかったふりしてくれると嬉しい。

 

『学生最強剣士……。じゃあ、昔感じてた劣等感は完全に的外れか』

『悔しいって気持ちは大事だと思うけどね』

『まさかエミリーから、そんなそれっぽい言葉が飛び出してくるとは思わなかったな』

『何おう!?』

 

 そんな軽快なトークで場が温まってきたところで……いよいよ、ルーデウスが結構踏み込んだ話をしてきた。

 

『それで……俺が転生者だって知って、どう思った?』

『納得したって感じかな』

『ほ、他には? 中身おっさんみたいな奴がシルフィと結婚してるんだし、ふ、二股までしたんだぞ?』

『うーん、まあ、思うところが無いって言えば嘘になるけど、私だって転生者であることを明かす気はないし、特に両親には絶対バレたくないし、お互い隠してることを無いこととして考えたら、特に言うことはないかな』

 

 ルーデウスは驚いた顔をした。 

 正体明かす覚悟決めるのに半年もかかったことといい、もっと色々言われると思ってたっぽい。

 

『私は転生者だけど、まがい物でもあの二人の娘のつもりだし、シルの妹のつもりだし、あの人達の家族として人生を全うするつもりだよ。それくらい愛情を注いでくれたからね。

 ルーデウスだって多分同じでしょ?

 だったら前世日本人の誰かとしてじゃなくて、ルーデウス・グレイラットとして好きに生きればいいと思うよ』

 

 前世の価値観に照らし合わせず、ルーデウス・グレイラットというこの世界の人間の常識で考えれば、ルーデウスのやったことは別に何も咎められるようなことじゃない。

 姉とは同い年だし、甲斐性のある男が複数の妻を持つのは割とよくある話らしいし。

 それでも浮気くらいは咎めてもいいかもしれないけど、前から言ってるように元凶が私だから何も言えない。

 

『ルーデウスとして生きるか……。そうだな。そうするよ』

 

 ルーデウスも私の言葉で納得したのか、それ以上この話を蒸し返すことはなかった。

 

 その後は、これまでどうにも機会が無くて聞けなかった、転移事件の後のルーデウスの話を聞いた。

 魔大陸に飛ばされて、そこを捜索してたロキシーさん達とすれ違ってミリシオンで師匠達と再会したとは聞いてたけど、なんと魔大陸にはお嬢様と一緒に飛ばされてたらしい。

 

 転移初日に助けてくれた子供好きで正義感の強いスペルド族とかいう魔族の人が、フィットア領に帰ろうとする二人を護衛してくれたみたいで、それからは三人で魔大陸を走破。

 魔大陸からミリスに渡って師匠達と合流し、中央大陸でリーリャさんとアイシャちゃんを見つけて、フィットア領に帰還。

 

 だけど、そこには何もなくて、ルーデウスは詳細を語りたがらなかったけどお嬢様とも別れて、スペルド族の人とも私がシャンドルと別れたみたいにもう一人前だと言われて別れて。

 一人になったルーデウスは、まだ見つかってなかったゼニスさんを探すために北方大地へ移動。

 そこでゼニスさんの方から見つけてもらうために、Aランク冒険者『泥沼』のルーデウス・グレイラットという名前を売り込んで有名になろうとしたらしい。

 

 そうしたら、有名になった影響が思わぬところで出て、魔法大学から推薦状が来た。

 あとで判明したことだけど、その推薦状は姉の耳にルーデウスの情報が入ったことで、アリエル様が姉のためと有望な人材のスカウトの両方の目的で学園に打診して出させたものだったんだってさ。

 

 その頃にはゼニスさん発見の報告を伝えにきたお婆ちゃんと合流してたので、ゼニスさんを探す必要もなくなり、お婆ちゃんの勧めもあって魔法大学に入学。

 特別生として迎え入れられ、旅の途中に縁があったザノバさんと再会し、お婆ちゃんに惚れたクリフさんの仲人をして友達になり、懲りずになんかやってた犬猫にわからせてやったら懐かれ、何故か襲来してきた不死身の魔王ともよくわからないうちに交流が始まり、静香とも知り合って研究に力を貸すようになった。

 

 そして、髪の色が変わってたのと、サングラスで顔を隠してたせいで、再会の時「はじめまして」と言われ、もしかしたら自分のことなんて忘れられてるんじゃないかと怖くなって、なかなか正体を明かせなかった姉とのジレジレな展開に1年弱。

 ようやくくっついて結婚して、家を買って、そこに師匠達がベガリットに向かうためにルーデウスのところに送ったノルンちゃんとアイシャちゃんが到着して。

 色々あって妹達とも仲良くやれるようになったところで、ギースさんからの緊急事態発生の手紙が届く。

 それで師匠達を助けるためにベガリットに飛んで、そこからは私も知ってる通りだ。

 

『はぁ〜。ルーデウスも色々あったんだね』

『そりゃ、そっちと同じだけの時間が流れてるからな』

 

 そうして話をしてるうちに結構いい時間になってたので、その日はもう解散した。

 後日、ルーデウスは師匠と話す時間が増えたように見えた。

 私の言ったことに影響受けたのかは知らないけど、転生者とはいえ師匠の息子として、改めて父親と向き合うことにしたんなら良いことなんじゃないかな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 この時、私達は全員が致命的なミスをおかしてることに気づかなかった。

 私のミスは、静香とルーデウスがどうやって知り合ったのかを深く聞かなかったこと。

 他に気になる話題が山ほどあったからスルーしてしまった。

 いや、もしも思い至ってたとしても、ナナホシ焼きとかあるし、そういうのを目印にルーデウスから接触したんだろうなくらいにしか思わなかっただろうけど。

 

 静香のミスは、私にその話をしなかったことだ。

 今回の静香は私とルーデウスを引き合わせて、お互いが転生者であることを知っててもらおうと思っただけだから、私とルーデウスの会話にはあんまり口を挟まなかった。

 

 そして、ルーデウスのミスは、フィットア領に帰るまでの道中で、静香と共にいたオルステッドに殺されかけたことを言わなかったこと。

 掘り返したくない記憶だったのはわかる。

 私もオルステッドの恐ろしさは知ってるし、人殺しを忌避してたりと元日本人としては真っ当で、本質的に戦いに向いてないルーデウスがあの化け物に殺されかければ、そりゃトラウマにもなるだろう。

 少なくとも、積極的に話題に出したい存在ではなかったはずだ。

 でも、言ってくれてたら、あんなことには……。

 

 

 結局、私はこの数日後に意気揚々と新天地に向けて旅立ったので、私達が自分達のミスに気づく機会は失われてしまった。




ヒトガミ「勝った! これは勝った! 一生分の運を使い果たしたかもしれないけど構わない! 僕の勝ちだ! ざまぁみろぉぉおおお!」
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