剣姫転生 〜エルフの娘は世界最強の剣士を目指す〜   作:カゲムチャ(虎馬チキン)

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54 お見舞い

 私は昼夜を問わず不眠不休で走り続け、事前の見立てより更に早く、手紙を貰ってから5日でシャリーアへと帰りついた。

 街中では人にぶつからないように、衝撃波の魔術を足場にして空中を全力疾走し、速攻でルーデウス邸に到着。

 ドアノッカーを凄い勢いで鳴らす。

 

「はーい! あ、エミリー姉……」

「アイシャちゃん! シズカは!?」

 

 出てきてくれたアイシャちゃんに静香がどうなってるのか問えば、何故かアイシャちゃんはポカンとした顔になった後、ハッとしたようにポンと手を打った。

 アイシャちゃんの頭の上に電球が見えた気がする。

 

「ナナホシさんなら空中城塞にいるよ」

「空中城塞……?」

 

 空中城塞……あのラ○ュタか!?

 確か、シャンドルのお父さんと同じ魔神殺しの三英雄の一人、『甲龍王』ペルギウスの居城だったはず。

 なんでそんなところに!?

 

「でも、ナナホシさんの病気の件ならもう解け……」

「ありがと!」

 

 居場所を聞いた私は、再びの全力ダッシュで静香のもとへと走る。

 ラピュ○……空中城塞なら剣の聖地からの道中で見た。

 世界中を飛び回ってるらしいけど、あれから数日しか経ってないんだし、まだその近辺にいるはず!

 

 私は来た道を逆走して空中城塞を探した。

 そして、一日もしないうちに見つけた。

 空飛ぶ城なんて目立つから、目を凝らせば結構遠くからでも見える。

 

「北神流『花火』!」

 

 私は足に力を込めて全力ジャンプ!

 更に衝撃波の魔術を足場にした空中ジャンプで、ベガリットの時や、ついさっき剣の聖地から帰ってきた時みたいに宙を駆ける。

 今回は遠くへではなく、上へ上へ。

 空飛ぶ魔物達を追い越し、どこにでもいる青竜を今回は無視し、前世の世界なら飛行機が飛んでるような高度へ到達。

 随分と成長した龍聖闘気もどきに守られた今の私は、この高高度の強風にも極寒地獄にも耐えられる。

 そのまま空中城塞すら飛び越して、私は上から空飛ぶ城に乗り込もうとした。

 

「ぶべっ!?」

 

 でも、空中城塞を薄っすらと覆うように存在する、結界的な何かに激突して阻まれた。

 いや、結界的な何かじゃなくて結界だ。

 結界魔術っていうのが、ちゃんとこの世界にはある。

 魔法大学の授業でも教えてた。

 私はその授業取ってないけど。

 

「ッ〜〜〜〜〜!?」

 

 徹夜ダッシュで疲弊した頭の中がグルグルする。

 目的地はもう目と鼻の先なのに!

 危険な状態の友達がすぐそこにいるのに!

 見えてるのに届かないなんて!

 

「すみません! 開けて、ください!」

 

 私は全力で結界をノックした。

 ガンガンと結界を叩く。

 

「!?」

 

 そうしたら、なんか内側から魔術が飛んできた。

 危なっ!?

 しかも、同時に結界に結構な魔力が注入されて、その密度が一気に上がっていくのを私の魔力眼が捉える。

 

 おのれ! 門前払いか!?

 攻撃してきたってことは敵だな……!

 けど、諦めるもんか!

 私は静香に会うんだ!

 危険な状態の友達を見捨てられるか!

 

 結界は一瞬にしてその強度を上げていく。

 今この瞬間じゃないと突破できなくなる。

 よし、壊そう!

 

「北神流奥義『破断』!!」

 

 私は全力で振りかぶった奥義を結界に向けて叩き込んだ。

 ……後から考えると、考え無しな行動だったと言わざるを得ない。

 言い訳させてもらうなら、静香がピンチと聞いて不安に苛まれてたのと、一週間近くに渡る徹夜の強行軍でハイになってたのだ。

 攻撃された=敵=静香を取り戻さねば!

 元から知能が足りない上にデバフまでかかった私の頭は、そんな安直な結論を弾き出してしまった。

 

 私の奥義が強化される寸前だった結界に穴を空ける。

 結界は強化前だったにも関わらず、私の最高の奥義をもってしても全体は砕けなくて、人一人が侵入する分の穴を空けるだけで精一杯だったけど、今はそれで充分だ。

 私は結界をぶち破って空中城塞の庭園の中に着地した。

 

「ペルギウス様! 侵入者です!」

「なんだと!?」

 

 城の中からそんな声が聞こえてきたと同時に、私は魔力眼の出力を強に上げる。

 静香は転移者だからか魔力を全く持ってなくて、魔力眼による索敵だと見つけられない。

 でも、静香が身につけてた護身用のマジックアイテムの魔力なら追える!

 

 そして、見つけた。

 目的の魔力は空中城塞という異名に恥じない立派な城の中から漂ってる。

 何故かアリエル様の魔力まで見つけたけど、そっちは無視して、私は新たな目的地を定めて一直線に駆け出した。

 全力の踏み込みで、足下の石畳を粉砕しながら。

 

 そんな私に凄まじいスピードで誰かが襲いかかってきた。

 

「我が名は『光輝』のアルマンフィ! ペルギウス様の居城に押し入る不遜な輩よ、死ね!」

「邪魔!」

「おぐぅ!?」

 

 なんか凄いスピードで近づいてきた狐の仮面をつけた人に攻撃されたので、殴って吹っ飛ばした。

 敵✕攻撃=迎撃。

 移動速度は誇張抜きで光みたいに速かったけど、攻撃のモーションに入ってから普通の速度になったので、水神流を応用したカウンターパンチが綺麗に決まった。

 後から思い返して一言。

 剣を抜かなかっただけ偉い。

 

 吹っ飛んでいく狐面の人を無視して、空気中に漂っている魔力を目印に、階段を登って上へ上へと走る。

 そうしたら大広間みたいな場所に出て、そこでさっきの狐面の人のお仲間みたいな、色々な形の仮面を被った集団が私の前に立ち塞がった。

 総勢11人。

 その中から鳥みたいな仮面を被り、背中から黒い翼を生やした魔術師風の女の人が前に進み出てきて口を開く。

 

「止まりなさい侵入者! なんの目的でこの地に足を踏み入れたのですか!?」

「お見舞い!」

「はぁ!?」

 

 意味がわからないとばかりの顔で、手に持った杖を私に向けてくる女の人を無視し、カーブして大広間の横の扉から先に進む。

 静香のマジックアイテムの魔力はこっちから漂ってきてる。

 仮面の人達が立ち塞がってた方向に用は無いのだ。

 

「何をしている!? 早くケイオスブレイカーの迎撃機構を……」

『静香! 大丈夫!?』

『わ!? エ、エミリー……?』

 

 渋い男の人の大声が響いてきた瞬間、私は静香のいる部屋へと辿り着いて、扉をバーンと思いっきり開けながら日本語で叫んだ。

 静香は部屋の中で本とにらめっこしながら魔法陣を描いていた。

 

 顔色は別に悪くない。

 ベッドの上から起き上がれないなんてこともない。

 敵にアレコレされてる様子もない。

 

 …………あれ?

 

『え? なんで普通に元気そうなの?』

『なんでって……あ、もしかして、私が病気って手紙貰って、それで来てくれたの?』

『そうだよ! 治療法を見つけるのも大変な病気って話じゃなかったの!?』

 

 静香、ピンピンしてますけど!?

 

『あー、その、ごめんなさい。病気ならもう治った、ってわけじゃないんだけど、とりあえず今すぐどうこうなるような窮地は脱したわ』

『……うん。見ればわかるよ。はぁぁぁ、良かったぁぁぁぁ』

 

 私は徹夜の疲れもあって腰が抜けた。

 静香が苦笑しながらそんな私を支えて、でもちょっと嬉しそうな顔で色々と経緯を話してくれた。

 

 なんでも静香の病気はドライン病っていって、この世界の人間は七千年くらい前にとっくに克服した病気だったんだけど、異世界人の静香はその免疫を持ってなくて、七千年も前の病気だから治療法の情報とかも残ってなくて苦労したらしい。

 そこで、ルーデウス達は七千年前を知る人物として、魔大陸にいるゼニスさんを探す時にもお世話になった不死身の魔帝、『魔界大帝』キシリカ・キシリスを頼って、この城の転移魔法陣で魔大陸へと赴いた。

 

 そこで運の良いことに数日とかからずにキシリカを見つけ、『不死魔王』アトーフェラトーフェっていう危ない人に目をつけられつつも、どうにか治療法を持ち帰ることに成功。

 そのおかげで、今の静香は容態が安定してるんだって。

 ただ、静香の体に免疫がないことには変わりないから完治とはいかず、この世界で長く過ごせば今度こそどうなるかわからないそうだけど。

 でも、とりあえずは無事で良かった。

 

『……静香は早く帰らなきゃダメだね。今回みたいなことがまたあったら嫌だし、これからは私も積極的に何かするよ。

 研究じゃ役に立てないけど、秘境の地にある伝説の素材が必要になったとかだったら遠慮なく言ってね。取ってくるから』

『ありがとう。その気持ちだけで充分よ』

 

 私の言葉を冗談と受け取ったのか、静香がくすくすと笑う。

 その元気そうな姿を見て私も笑顔になれたけど、今のは決して冗談でもなんでもない。

 迷宮だろうが、遺跡だろうが、伝説の魔物だろうが攻略して必要物資を取ってくるつもりだよ私は。

 

『あ、でも今はルーデウスの方が大変だから、できればそっちを手伝ってあげ……』

「おい」

 

 そんな話をしてたら、いつの間にか部屋に大柄な男性が入ってきてた。

 銀髪金眼。

 どことなくオルステッドに似てる、王者のオーラみたいなものを纏った壮年男性だ。

 

「あ、ペルギウス様」

「これはどういうことだ、ナナホシ? 何故、我が城に無断で押し入ってきた輩と楽しそうに話している?」

「え!?」

 

 静香は、まさか私が家主に無断で侵入してきたとは思わなかったのか、驚愕と共に真っ青な顔になっていった。

 私も自分の顔色が真っ青になるのがわかった。

 静香の話を聞いたことによって、この城の人達が敵だっていう誤解はもう解けてる。

 

 チラリと窓の外を見る。 

 そこには台風でも通り過ぎたかのように滅茶苦茶になった庭園があった。

 他のところは芸術品みたいに綺麗なのに、その一角だけが滅茶苦茶だ。

 しかも、私は結界をぶっ壊した上に、自宅警備員の一人と思われる狐面の人まで思いっきり殴っちゃったわけでして……。

 

 やっちまった!

 私は恐らく家主と思われる銀髪の人に対して、流れるような土下座を決めた。

 

「ごめんなさい。やって、しまい、ました」

「えっと! その! ペルギウス様! 彼女は私の友人で! 私が病気で大変な状態だって手紙を読んで駆けつけてくれただけで! あと、えっと、その!?」

「ふん! そんなことは先ほどまでの様子を伺えばわかるわ。

 忌々しいラプラスの因子を持つ上に考え無しの愚か者が我が居城を荒らしてくれたことには腹が立つが……早とちりとはいえ友のためにと、この空中城塞にまで乗り込んできた気概に免じて、今回だけは不問にしてやろう」

「ありがとう、ございます」

 

 家主の人、ペルギウスさんは寛大だった。

 ただし「次は無い」とも言われたけど。

 ……うん。

 とりあえず、誠意を見せるために、私が壊した庭園は弁償しよう。

 迷宮貯金で足りるかなぁ……。

 足りなかったら、また一攫千金を求めてベガリットにでも行こうか。

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