剣姫転生 〜エルフの娘は世界最強の剣士を目指す〜   作:カゲムチャ(虎馬チキン)

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86 シーローンからの帰路

 ベネディクト王妃を回収してランドルフさんが背負い、パックスはザノバさんが背負い、私達は行きと同じように秘密の抜け道を通って城から脱出した。

 ランドルフさんのヒトガミの使徒疑惑を解いたり、ルーデウスがランドルフさんの知るヒトガミ情報について一応聞いてみたり、抜け道の出口付近に無造作に転がってた魔導鎧一式を見てランドルフさんが驚いたり。

 

 その他にも、こんな話をした。

 

「そういえば、あなたは北神カールマン三世の戦友という話でしたねぇ。

 彼、何年か前に王竜王国に来ましたよ」

「へぇ」

 

 そういえば、シャンドルもアレクが王竜王国に出たって言ってたね。

 いや、それ以前に図書迷宮で見たアレクの日記にも、そんなことが書いてあったような気がする。

 

「私との列強の序列を賭けた勝負をしに来たそうなんですが、私はもうそういうのに嫌気が差してましてねぇ。

 同僚に頼んで、のらりくらりと煙に巻いてもらったんですが……その同僚曰く、彼、少し危ない目をしてたそうですよ」

「…………」

「差し出がましいことかもしれませんが、早く見つけてあげることをオススメします」

「わかった」

 

 そんな話をしてるうちに私達は城を脱出した。

 この後どうするかって話になったけど、とりあえず反乱軍に見つからなさそうなこの辺りで私達はキャンプし、ジンジャーさんの回収のためにルーデウスが首都に行くことになった。

 で、数日もすれば砦から私達を追ってきてたジンジャーさんと合流できたみたいで、ついでに軽く集めた首都の情報とかと一緒に二人は帰ってきた。

 

 二人が集めた情報によると、ランドルフさんの魔眼による守りを失った城は反乱軍が完全に占拠したっぽい。 

 まあ、あんな人っ子一人いない、もぬけの殻の城じゃそうなるよね。

 そして、パックスの姿が見当たらないから、反乱軍は血眼になってパックスを探してるってさ。

 これは、早くシャリーアに戻った方が良さそう。

 

 ということで、ランドルフさん達を加えた私達一行は、ペルギウスさんを呼び出すべく、あの人との通信場所になってる七大列強の石碑がありそうな場所に見当をつけて歩く。

 ルーデウス曰く、七大列強の石碑は魔力濃度の濃い場所、つまり魔物とかがよく湧いてくる人里離れた場所にしか設置されてないらしい。

 魔眼出力強なら、そういう場所を探すのは簡単だ。

 任せろ。

 

 でも、そんな旅の途中で、私達は思わぬ人物と再会した。

 

「よう! センパイじゃねぇか!」

「ギース?」

 

 それは師匠の元パーティーメンバーこと、転移の迷宮の時に随分とお世話になった猿顔の人、ギースさんだった。

 なんか変な瓶を小脇に抱えてる。

 

「ギースさん、何、それ?」

 

 この瓶、なんか変な魔力纏ってるんだけど。 

 マジックアイテム、だとは思う。 

 それと似た魔力が見える。

 でも、同時に闘気みたいな魔力も見えた。

 一番近いのは神子や呪子の人だ。

 お婆ちゃんの呪いを治したクリフさん曰く、マジックアイテムの魔力と、神子呪子の人の魔力は同質に近いらしいから。

 

 でも、瓶ってことは人じゃないはずだし、そうなると、生物型のマジックアイテム?

 なんにしても、ちょっと首筋がピリピリする。

 危険物の予感だ。

 大丈夫それ?

 

「おう、こいつはとある迷宮から出てきた代物だぜ。

 いやー、迷宮攻略の金をギャンブルですっちまってよー。

 どうにか金になりそうなもんを見つけたから、近くの街に換金しに行く途中だ」

「何やってんだ……」

 

 ルーデウスが呆れたような目でギースさんを見た。

 迷宮攻略のお金って、日本円にして1千万円以上あった気がするんだけど、全部すっちゃったんだ……。

 ギャンブルって怖い。

 それなら危険物に手を出してもおかしくないか。

 気をつけてとしか言えない。

 

「センパイ達こそ、なんでこんなところにいんだ?」

「あー、その、色々あったというか……」

「あん? ……あー、いや、なんか話したくなさそうな事情がありそうだな。わかった。何も聞かねぇ」

 

 死んだ目で沈黙を続けるパックスを見て何か察したのか、ギースさんはそれ以上追求するのをやめてくれた。

 この人、軽い感じに見えて結構真面目なのだ。

 

「とりあえず、換金目的ならシーローンはやめた方がいいぞ。今かなり混乱してるからな」

「へっ! センパイ、俺を誰だと思ってんだ? 戦闘以外なら何でもござれのギース様だぜ?

 シーローンがやべぇって情報くらいとっくに掴んでるっての。心配すんな」

「そっか。それならいいけど」

 

 軽い会話の後、ギースさんはあっさりと去っていった。

 こんなところで知り合いと会うなんて、やっぱり世間って狭いね。

 

 その後、私達は無事に七大列強の石碑を発見。

 五位のマークが剣を構えた耳の長い少女の紋章に変わってるのを見て微妙な気分になりつつ、連絡用魔道具の笛を吹いてアルマンフィさんを召喚。

 転移魔術の込められた棒みたいな魔道具を渡されて、それを使って空中城塞に転移。

 

 魔族の血が入ってるランドルフさんと、こっちもどうやら魔族の血が流れてるらしいベネディクトさんを通したことでシルヴァリルさんにお小言を言われ、

 ペコペコしながら後日正式に感謝と謝罪に来ることをルーデウスとザノバさんは告げた。

 ちなみに、ペルギウスさんは魔族嫌いが極まってるのか、今回私達の前に姿を見せることはなかった。

 

 帰る前に静香のところに寄って、ザノバさんの無事と今回の顛末を話して安心させてから、私達はシャリーアに帰還。

 オルステッドへの報告をしに行った。

 

 

 

 

 

 ◆◆◆

 

 

 

 

 

「計画を練る時は、計画通りにいかなかった時のことも考えとくべきだ、ってな」

「ジンクスですか?」

「おう、ジンクスだ。さて、じゃあ頼むぜ、『冥王』様」

「出てきて早々にこれですか。君も中々に人使いが荒い」


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