剣姫転生 〜エルフの娘は世界最強の剣士を目指す〜 作:カゲムチャ(虎馬チキン)
鬼神の勧誘が空振りどころか、予想してたとはいえ最悪の結果に終わり。
私達は代わりの戦力を求めるように、推定ルイジェルドさんが目撃されたという、第二都市イレルの近くの村を目指していた。
いっそ、あのまま鬼ヶ島を占拠して鬼神を脅すって案もオーベールさんから出たけど、
それをやったら鬼族と密接な関係を築いてるビヘイリル王国そのものを敵に回すってことで、
少なくともルイジェルドさん捜索が終わるまではダメってルーデウスに却下された。
つまり、裏を返せばルイジェルドさんが見つかったらやるかもしれないってことだ。
私達も
そんなこんなで第二都市イレルに到着し、まずは街の郊外に出て、見つかりにくそうなところに転移魔法陣を設置した。
鬼神の勧誘が成功してたら、アトーフェさんのところのネクロス要塞みたいに鬼ヶ島に設置する予定だったんだけど、ダメだったからこっちになった。
鬼ヶ島に近い第三都市の方じゃダメなの? って一瞬思ったけど、そこじゃ敵陣に近すぎて逆侵攻されたら怖いという真っ当な意見に納得させられました。
で、設置した事務所直通の転移魔法陣を通って、ルーデウスが事務所に帰還。
通信石板を取りに行くと同時に、オルステッドに鬼神勧誘の顛末を報告しに行った。
行ったんだけど……しばらくしても戻ってこない。
「遅いわね!」
「遅いですね」
「何やってんだ、ルディの奴」
エリスさんはお預けを食らった犬みたいに不機嫌になり、ロキシーさんと師匠は訝しげな顔になった。
まあ、遅いっていっても、報告が長引いてるなら別におかしくもないくらいの時間なんだけどね。
だから皆、ルーデウスの様子を見に行こうとまではしてないわけだし。
多分、オルステッドとの話し合いが白熱でもしてるんでしょ。
暇だったから北神三剣士の皆と軽く遊び、オーベールさんのパラボラアンテナがあやうく丸坊主になる直前あたりで、ようやくルーデウスが帰ってきた。
何やら凄い渋い顔をしながら。
「……報告です。オルステッド曰く、どうやら推定ルイジェルドの目撃情報があった場所から更に進んだところに、スペルド族の村があるそうです。
そこにはルイジェルドもいると言ってました」
「ホント!?」
エリスさんがめっちゃ嬉しそうな顔になった。
今にも飛び跳ねたいのを必死で抑えてる感じだ。
私は純粋に良かったねーって気持ちだったけど、他の皆は何故かルーデウスと同じく眉間にシワを寄せてる。
「ルディ、オルステッドはそれを以前から知っていたのですか?」
「はい」
「では、知っていて黙っていたということですか?」
「……そうなります」
「はぁ!?」
ロキシーさんの質問にルーデウスが答えた瞬間、エリスさんの笑顔が一転。
般若もかくやってほどの恐ろしい顔になった。
オルステッド殺したるって心の声が聞こえてきそうなレベルだ。
ルーシーあたりに見られたら泣かれそう。
それにしても、オルステッドが知ってて黙ってた?
意味がわからん。
頭脳労働担当の皆さん、よろしくお願いします。
「オルステッド曰く、ルイジェルド含むスペルド族の人達は疫病に感染しているそうです。
そして、その治療法は無い。
少なくともオルステッドは知らない。
だから俺達に教えてもどうにもならないと思って、黙ってたらしいです」
「何よそれ!! ちょっと、あいつ殺してくるわ!!」
「エミリー、頼む」
「了解」
「離しなさい!! この!!」
暴れるエリスさんを取り押さえる。
この中で明確にエリスさんより腕力が強いのは私だけだからね。
格としてはギリギリ神級のオーベールさんも、あくまでそれは奇策含めた総合力での話だから、肉体のスペックでは帝級相当のエリスさんと大して変わらないのだ。
「エリス、オルステッドも悪気があってやったんじゃないんだ。
実際、隠し切れないと見て、さっきこの情報を俺に伝えてきた時、オルステッドは凄い申し訳なさそうな顔で頭を下げてきた。
許してあげてほしいとまでは言わないけど、この緊急事態の最中に仲間割れするのは堪えてほしい」
「……………………わかったわよ」
エリスさんの体から力が抜けた。
説得の言葉もそうだけど、ルーデウスもやるせないみたいな顔してるのに気づいたからかな。
それはルイジェルドさんと関わりのある人達皆がそうだけど。
エリスさんとルーデウスは言わずもがな。師匠もノルンちゃんとアイシャちゃんがルイジェルドさんにお世話になったことあるみたいだし。
ロキシーさんは……わかんないけど、他の皆が辛そうな顔してたらロキシーさんだって辛いか。
比較的平静なのは、ルイジェルドさんとあんまり縁の無い私と北神三剣士の皆だけだ。
「こうなった以上、オルステッドもでき得る限りのことをすると約束してくれました。
彼は通信石板で各地に協力を要請してからこっちに合流する予定です。
俺達の方は一刻も早くスペルド族の村に行って、ルイジェルドと合流。
オルステッドや各地から派遣されてくる予定の医師達の受け入れ態勢を整えて、一緒に疫病対策を考えましょう」
「「「了解」」」
ルーデウスの言葉によって、私達のこの先の行動が決まった。
鬼神の勧誘のはずが、いつの間にか疫病に立ち向かうことになるなんて想定外。
ここに来る前に、オルステッドが言い淀んでたのはこれだったんだね。
嫌な予感の正体もわかってスッキリ。
ただ、疫病なんて戦闘力で解決できないこと筆頭みたいなのを前にして、私が役に立てる未来は想像できないけど……。
まあ、雑用でも何でも、できることをやるしかないね。
雑用、アスラ王国、低ランク冒険者時代……うっ、頭が。