TSクズ娘は百人の男を誑かしたい   作:げれげれ

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13話「ラブラブデート大作戦!」

「くくくくく……どうですか、この私の服にアクセ!」

「決まってんなぁ……、高かったろソレ」

「従僕からの献上品なのでタダですよ!」

 

 皆さまどうもこんにちは。

 

 生まれ持った絶世の美貌で男心を惑わす、現代のクレオパトラこと傘子美音です。

 

「……不良相手とはいえ、あんまりカツアゲすんなよ」

「この私に最も似合う服を持ってきてくれた人を私から解放すると宣言したら、山のように献上品が届いただけです。言わば私の人徳です」

「よかった、なら何処かの誰かが救われたんだな」

 

 最近の私は、実に絶好調です。

 

 とある品種改良ネギのお陰で、イケメンとデートにこぎ着けたのです。

 

「マス子、この儚げで清楚なコーデ素晴らしいでしょう? 実に、私によく似合ってると思いませんか?」

「それは外見に対してか? 中身に対してか?」

「そりゃコ-デですし、外見でしょ」

「なら、よく似合ってるぞアマネ」

「やったぁー!!」

 

 そんなこんなで、私は友人二人を誘ってデートの作戦会議、兼ウインドウショッピングに出掛けていました。

 

 清楚な私は、デートなんて初めてですからね。ここは、男をとっかえひっかえしてるマスコビッチと謎の恋愛巧者であるネギネギに色々聞いておこうという作戦です。

 

「だが、その下に防弾チョッキとか着れるのかの? ゴツゴツせんか?」

「それは、まぁ。私なりに何とかしてみますよ」

「デートの前提装備が、やたら重いんよなぁ」

 

 聞くにセイさんはちょっとばかり巻き込まれ体質で、デートするたび大変な事件に巻き込まれるらしいです。

 

 しかし、そのセイさんのお陰で私は2度も命を救われたのですから、むしろ感謝しなければなりません。

 

「あとアマネ、確認しとくがマス子のデートが先でええんじゃな?」

「そりゃあ、そうですよ。こういうのは2回目にデートした方が、印象に残りやすいんですから」

「そういうもんか」

「マス子の普通で平凡なデートの後で、私の特別でスペシャルなデートを楽しむことにより、アマネちゃんの魅力がより深く伝わるという訳です。つまりマス子は、私の引き立て役ですね」

「マス子の人気を知っていて、ソレを言えるお前の神経が分からんわい」

 

 まぁ確かにマス子は人気あるみたいですが?

 

 どう贔屓目に見ても私の方が絶対的にかわいいですし。

 

「好きにすりゃいいさ。私はセイさんに感謝を込めて、色々と楽しんでもらうつもりだ」

「それでええと思うよ。じゃ、マス子のデートは水曜日で、アマネは週末じゃな」

「ぐっふふふふ、一気に落としてやりますよ。いっそ、隙を見てホテルに連れ込んで……」

「おーい、ソレやったら捕まるのはセイさんだからな。落ち着けー?」

「はっ」

 

 いけません。そうですそうです、私の目的はセイさんと付き合う事じゃありませんでした。

 

 感謝を込めつつデートしてあげて、かつセイさんに私の魅力で骨抜きになってもらうだけでした。

 

「アマネ、最初からいきなり落とすのは無理だぞ。何度かデート重ねて、告白するもんだ」

「えー、何でですか」

「デートってのは、相手と付き合う予行演習みたいなもんだからな。いざ二人きりになって話が合わなかったり、あるいは喋ることがなくて気まずくなったり、そういうのが無いか確認してるんだよ」

「……それで?」

「初日はセイさんを立てつつ、よく話を聞いて相槌を打って、楽しい時間を過ごしてもらう事を意識しろ。そしたらマジで可能性はあると思うぞ、まだ本性バレてないし」

 

 ほう、成程。モテるマス子がそういうなら、そうなんでしょうね。

 

「じゃあ初日は、金銭を要求したりするのはやめておくとしますか」

「なあマス子。私これ、セイさんを騙すみたいで気が引けてきたぞ」

「恋愛ってのは、ある程度、騙し合いみたいなところも、ある、から?」

「……物言いに随分と、自信なさそうじゃが」

 

 よし、私の中で完ぺきなデートプランが立ちましたよ。

 

 この私の圧倒的な美貌で誘惑しつつ、色々なデートスポットを巡りセイさんにも楽しんでもらい、次のデートをしっかり約束して終わる。

 

 ふむ、となると色々と仕込みが必要ですね。

 

「ようし、一丁やってやりますか。ではマス子、しっかり情報収集をお願いしますね。好みとか性癖とか聞きだしておいてください」

「初デートで性癖を聞き出す女子がどこにいる」

 

 今の私は、狩人です。殿方の愛を貫き心を射止める、ラブハンターです。

 

「最低限、好きな食べ物とかスポーツとか、そのレベルの情報は仕入れといてくださいよ! 親友なんですからね!」

「……へーへー。ま、タイミングがあれば聞いとくよ」

 

 この私の前に立って篭絡されない男など、全人類に一人もいる筈がありません。

 

 待っていてくださいね! セイさん!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「セイさんの好みの拳銃はベレッタだったぞ」

「何その情報」

 

 木曜日。

 

 セイさんとデートを終えたマス子は、光の無い瞳で登校してきました。

 

 こんなに疲れ果ててるマス子を見たのは初めてです。さすがに心配になる顔色です。

 

「大丈夫かマス子、学校休んだ方がええんじゃないか?」

「いや、へーき。体は無傷だったから」

「……えっと。何があったかお伺いしてもいいですか?」

「いいぜ……」

 

 体は無傷だった、って。それは裏を返せば、精神はすり減ってるということになりませんか?

 

「セイさん、俺とのデートの初心者だから近場に遊びに行くだけにしようって、スポーツクラブに連れて行ってもらったんだ」

「ほう」

「駅前の小さな建物さ。腕が使えなくても、簡単なフットサルとかは出来るだろって。私もノリ気で、セイさんについて行ったんだが……」

「な、何があったんですか」

 

 スポーツデートですか。それは、楽しそうではありますが。

 

「元暴力団の怖い人が絡んできて、負けたら臓器売り飛ばされる条件で試合することになった……」

「えぇ……?」

 

 何がどうなったらそうなる。

 

「たまたまその日はイベントで、フットサルの大会やってたんだ。飛び入りオッケーの」

「それで?」

「せっかくだからと参加したら、同じチームになった人がタチの悪い不良だったんだ。その不良を目の敵にしてた暴力団の人が喧嘩売ってきて、臓器を賭けて試合することになり」

「……」

「流石に付き合いきれなくて逃げ出そうとしたら、AMFとかいう新興勢力が乱入してきて三つ巴の乱闘になった」

「カオスの極みじゃな」

 

 ……。なんか聞いたことがあるグループ名が出てきましたが、気にしないようにしましょう。

 

「私も喧嘩慣れしてるしセイさんも強いしで無事に逃げ出せたものの、帰り道に『試合に負けたのは逃げたお前達のせいだ』って不良グループに付け回されて警察沙汰。家に帰れたのは日付が変わってから」

「わーお」

「セイさんを振った人の気持ちが分かった、毎回のデートがアレとか耐えられん……」

 

 話を聞く限り、セイさんについた疫病神は相当の様ですね。

 

「お、お疲れじゃマス子」

「次のデートの約束も一応したんだが、期待半分不安半分……」

「あれ、また約束したんですか」

「い、一応な? もう二度とデートしませんとか言ったらセイさん更に傷つけちゃうし。だから、その、一応」

「ふーん? まぁ、良いですけど」

 

 まさかマス子、本気でセイさん狙ってないでしょうね。

 

 ……いや、違いますか。セイさんが好きなら、どんなに大変でもデートした後は楽しそうにするでしょうし。

 

「あとセイさんの得意な武装はトンファーで、必殺技はトンファーキックで……。中国武術の達人と一緒に任務を受けたことがあって」

「もういい、マス子。もう喋らんでええ。すまん、私が悪かった。私が軽い気持ちでデートしてみぃとか言ったせいで」

「良いんだ。良い経験になったよ、もう、凄まじい人生経験だった」

「マス子……」

 

 それに、マス子のおかげで良い感じにデート本番のシミュレーションができました。

 

 結構な頻度で何かしらに巻き込まれると、心の準備をしておくことにいたしましょう。

 

「じゃあ次は私の番ですね。あー、デート楽しみです」

「コイツ私の話聞いてたのか?」

「私はマス子とは違うんです、いっぱい楽しい思い出を作らせていただきます」

 

 そんなげんなり恐れ戦いているマス子を尻目に、私は幸せだろう週末へと思いを馳せるのでした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 さて、週末。

 

 男性との人生初デートの日が、とうとうやってきてしまいました。

 

 しかもそのお相手は、あのイケメンのセイさんです。

 

 ワクワクしすぎて、昨日は中々寝付けませんでしたね。

 

「……お、久しぶり。えっと、アマネちゃんで良いかな」

「はい、大丈夫です。私は傘子美音と申しますわ」

「君そんな口調だったっけ?」

 

 セイさんはしっかりと、時間通りに駅前に姿を見せました。

 

 私服は少し安めのブランドの服を、それなりにイケてる感じに着こなしています。

 

「よし、じゃあどこか行きたいところある? 無いなら、適当に見繕ってる場所あるけど」

「へー、どこに連れて行ってくれるんです?」

「ん、水族館。今日、割引してるはずなんだ」

 

 水族館……この町の水族館は、確か入場料が550円でしたね。

 

 そして月に1度、400円で入れるサービスデーがあります。それが、今日なのでしょう。

 

 正直、安いデートスポットですが贅沢は言いません。

 

 まぁ、セイさんがイケメンなので許してあげましょう。

 

「さて、今からバスで移動するが……。俺が先に乗り込む、君もよく気を付けてくれ」

「はあ、何に気を付けるのでしょうか」

「この町、バスジャックとか多いだろ? 乗車した瞬間、襲われても対応できるようにな」

「そんなもの人生で一度も遭遇したことありません」

 

 さて。後は彼の立てたプラン通り、たっぷり水族館を楽しむとしましょう。

 

 一応、薄めの防弾チョッキを着こんではいますが……、まあ本当に必要になることは無いでしょう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……な、何事もなく、水族館に着いただと……!?」

「何を戦慄しているんですか」

 

 やはりセイさんの心配は杞憂で、私たちがバスジャックに巻き込まれることは有りませんでした。

 

 私にとっては至極当たり前の事なのですが、セイさんは少し動揺している様子です。

 

 どんな人生を送ってきたのでしょう。

 

「お、落ち着け。俺がこんな可愛い娘とデートして、何も起こらな訳がねぇんだ」

「あのー、セイさん?」

「きっと、かなりヤバい案件が水族館で待ってるに違いない。気を引き締めないと……っ」

「もしもーし」

 

 セイさんは水族館に入る前に、何やら戦地に赴く兵士のような険しい顔をしはじめました。

 

 イケメンの顔が七変化するのは見てて楽しいですね。

 

「先、入りますよー」

「あ、ちょっと待てアマネちゃん! 無防備に入り口に並ぶな、危ない! 水族館を甘く見るな!」

「セイさんは水族館をどんな死地だと思ってるんですか」

 

 そもそも水族館がそんな危険な場所なら、デートスポットに選ばないでください。

 

「あ、カップル割も併用できるみたいですよセイさん。これでさらにお安くなりますね」

「お、おお。すみません、大人二人……」

「カップル二人、です」

 

 ま、この類まれなる美貌の持ち主アマネちゃんとデートをしているのです。

 

 セイさんも緊張して、多少変な発言をしてしまってるだけでしょう。

 

 ここは大人で包容力のあるアマネちゃんが、優しく諭してあげましょう。

 

「今日はカップル、なんですよね?」

「……ああ、そうだな」

 

 完全に覚悟完了しているセイさんの手を取って、私は物凄く勇気を出しました。

 

「じゃ、じゃあ、手をつないで歩きましょう」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「奇麗でしたね。グッピーの群れ」

「あ、あれぇ……?」

 

 やはり、水族館でもセイさんの危惧していたような重大事件は起こらず。

 

 かなり良い雰囲気でデートを楽しんだ私たちは、そのまま近くのファーストフード店で昼食をとることになりました。

 

「……本当に、何も起こらないのか? 今日は女の子とのデートなのに、こんな平穏で幸せで許されるのか……?」

「はい、セイさん。えっと、その、あーん」

「あ、どうも。あーん……」

 

 今日の私は、多少恥ずかしい行為だろうとガンガン攻めるつもりです。

 

 セイさん、私の勇気を振り絞った「あーん」を食らって、無事私に篭絡されてください。

 

「まさか呪いが解けた? でも、昨日も……」

「もー。セイさん、さっきから会話が上の空ですよ」

「あっ。ああ、ごめん、なんだか思った以上に平和な一日で」

 

 ところがセイさんは、女の子からのアプローチに慣れきっていたのか、私の渾身の「あーん」を完全にスルーしました。

 

 ……もっと攻めなきゃダメでしょうか。これ以上となると、そうですね。

 

「ところでセイさん、今からはどうします?」

「す、すまん。水族館あたりで事件に巻き込まれる予定だったから、この後の予定を立ててないんだ」

「もー、そんな不確定な予定を立てないでくださいよ」

「そ、その通りだ。ごめん、悪かった」

 

 この後のデートプランは、白紙の様子。

 

 であれば、もう必殺のコレしかないですね。

 

「ねぇセイさん。私、水族館で歩きすぎて、少し疲れてしまいました」

「あ、そう?」

「どこかで休憩でもしませんか───?」

 

 さぁ!

 

「……ふーん、そうか」

「ふふ」

 

 さぁ!! さぁあ!!

 

 この私からアシストしてやりましたよ。しっかり決めてください。

 

 未成年の女子高生を、性欲の赴くままホテルに誘って、セイさんの人生最大の弱みを私にください───

 

 

 

 

 

 

 

 

「俺ぁ、ここでノンビリするのが好きなんだ」

「そうデスカー」

 

 私が頬を赤らめて「疲れちゃった」と言ったら、河原の土手にあるベンチに案内されて、そこで駄弁る感じになりました。

 

 何でやねん。

 

「ここは良いよ。何せ、だだっ広いから敵の襲撃に反応しやすい」

「その基準はどうなんですか」

「しかも俺はここで戦いなれてるから、地形をよく把握してる。地の利は我にあり、だ」

「もー、デート中くらい敵の襲撃のことを忘れましょうよ」

「いや、普段はデート中に絶対何かしら襲撃があるんだよ……。本当、今日はおかしいんだ」

 

 まぁ、セイさんからすればこんなに可愛らしいJkが誘惑してきたら、美人局に見えなくもないです。

 

 少し警戒させてしまったのかもしれません。ガツガツしすぎましたかね、今日は。

 

「いいんじゃないですか? たまには、こんなにノンビリとしたデートも」

「……」

「セイさんは、普段からずっと頑張ってきたんですから。きっと、神様からのご褒美ですよ」

「そ、そうなのかな」

 

 最後のアプローチがてら、私はそのままセイさんの膝に頭をおろして。

 

 膝枕をしてもらいながら、のんびり雲を見上げました。

 

「こうしているだけで、結構楽しいですよ。私」

「そ、そう?」

「セイさんはどうですか? 私とのデート、楽しくないですか?」

「い、いや。そんな事はないぞ」

「それは良かったです」

 

 これはキてますよ、かなりいい感じです。

 

 セイさんからの、かなりの好感度上昇を肌で感じます。

 

 私、今すごく輝いています。セイさんとの完璧なデートを演出できている私、ピカピカに輝いています。

 

「そっか。デートってこんなに、楽しくて癒されるものだったのか」

「そうですよ」

 

 これは、貰いました。もう、きっと今セイさんの頭の中は私でいっぱいの筈です。

 

 ネギネギには悪いですが、貴方が落とし損ねたこの優良物件、私が占拠してやりましょう。

 

「くひひひひひひひ」

「え、いきなり何、その笑い方!?」

 

 そんなこんなで、この日。

 

「失礼、噛みました」

「何を噛んだらそうなるのさ」

 

 私はセイさんと、平穏で静かなラブラブデートを満喫したのでした。

 

 

 

 

 

 

 

 楽しい時間は、あっという間にすぎるもので。

 

「もう、夕暮れですね」

「そろそろ、お開きだな」

 

 流石に女子高生が、男とディナーして帰るのは親に許してもらえず。

 

「また、私とデートしてくれますか?」

「あ、ああ。……次も何も起きなきゃいいけど」

「そんな、大事件なんて滅多に起きませんよ」

 

 日が暮れる前に、私はセイさんと別れる事になりました。

 

「そうですね、再来週の週末、空いてますか?」

「ああ」

「じゃあ、そこ。私が予約してもいいですか?」

「分かった。楽しみにしている」

 

 しかし、今日のデートは間違いなく大成功です。

 

 私もマス子同様、見事に次のデートの約束を取り付ける事も出来ました。

 

「……ああ、良い日だった」

 

 デートを終えた後、セイさんはこの上なく晴れやかな顔をしていました。

 

 こういう普通のデートは、初めてだったのかもしれません。

 

 だとすれば、私も頑張った甲斐があったというものです。

 

「それでは、また再来週」

「うん、お疲れ様」

 

 私は、そんな笑顔のセイさんと手を振って別れました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……で、被害報告どうぞ」

「AMF(アマネちゃんファンクラブ)の戦力は、ほぼ半壊だ……。死者が出なかったのが奇跡だぞこれ」

 

 完全に、セイさんの姿が見えなくなった後。

 

 私は、今日一日中ポケットに入れて操作していたスマホを取り出して、従僕(トモダチ)と通話を始めました。

 

「バスジャックの未然鎮圧に、水族館爆破予告犯との死闘、ダム決壊して河原が水没しかける事故の未然解決。貴方達、今日だけで感謝状山盛り貰えますよ」

「そんなもんより、命の保証をよこせクズ。何で俺達が、こんな特殊部隊みたいな仕事を……」

「それを普段、単独ロハでやってる偉い人(セイさん)が居るんですよ。たまには、その人に休日を上げたかったんです」

 

 噂のセイさんの呪いは、本当に苛烈でした。

 

 実は私は本日のデートの為、従僕たちを総動員して事に当たっていました。

 

 水族館に行くプランを聞いてから、行く予定の場所に従僕を先回りさせ事件を未然に処理し、何とか今日一日何も起こさずにデートを終えることに成功していたのです。

 

 指示の出しすぎで、指先が腱鞘炎になりそうでした。そのせいで、昼過ぎに私はもう疲労困憊だったのです。

 

「この戦力だと、明日からの抗争に支障が出るんだが」

「あー、その辺は根回ししました。明日は、敵の事務所にポリ公ガサ入れさせるので大きな動きはないはずです」

「流石……。だけど、もうこんなアホみたいな仕事は勘弁してくれよボス」

「あー、ごめんなさい。再来週も、彼とデートです」

「救いはないんですか!?」

 

 私(と従僕)の必死の働きで、今日はセイさんにとってきっとすごく楽しいデートを演出できたはずです。

 

 これを続ければ、きっと私は勝てます。

 

 無駄に気を張り詰めなくてもいい、平穏の象徴みたいな女の子。男はそこに、癒しを求めるに違いありません。

 

「クケ、クケケケケケ。セイさんのハートは貰いましたよ!」

「再来週も……、またこんな命がけの……」

 

 こうして、私の人生初デートは大成功に終わったのでした。

 

 私の幸せのためなら、多少の従僕の犠牲は仕方ないでしょう。

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