悲劇の失恋後、妹に組織票の傀儡にされていた彼は、「SELECTION PROJECT」の舞台で頑張る心友のために反撃の狼煙を上げる。
これは、美山鈴音の活躍に一喜一憂しながら他の子の魅力にやられてついつい浮気エールしてしまう“チアーズ”の物語。かもしれない。
※アニメを見てください。視聴前提の作品ということでもありますが、何よりストーリーの完成度が高い。スポコン、天才、成り上がり、美少女、ドラマ、青春。どれか一つでも好きなキーワードがあれば視聴すべきです。というかしてください。この気持ちを共有してほしい。クリエイターとしてこんな完成度の作品を書きたいと憧れられるようなストーリーにハマること間違いなしです。みんな可愛くまったくストレスがないし、涙あり笑いあり、そして何よりカッコいい。このあらすじを見た人は必ずアニメを視聴しましょう。
「埼玉県出身。十年に一人の歌姫、美山鈴音」
ネット配信されているアイドルオーディション企画に懐かしい顔があった。あの頃とは違って髪が長くなり、軽くウェーブがかかっていて、後ろ髪を大きなリボンで結わえている。
あの頃と変わらないゲキ強顔面偏差値で、アイドル候補の女の子たちの中に並んでも全く違和感がない。
「(……君も向こう側へ行くんだな)」
今まさに緊張して若干固くなっている同じ歳の少女をみて目を細める。
僕は彼女に出会った時のことを思いだした。
美山鈴音という少女は歌うことが好きで、それは病弱で入院しがちだった頃に歌の動画で励まされた天沢灯というアイドルに憧れたことがきっかけだという。
といっても、出会ったのはちょうど入院している僕の祖父のお見舞い中で、彼女が天沢灯大好き勢になった直後なのだが。
病院なのに綺麗な歌声が聞こえて不思議に思って声を辿れば彼女がいた。それから話すようになり、祖父のお見舞いも兼ねて彼女と会うようになったのだ。
そして、気兼ねなく話せるくらい仲良くなった頃だ。
「灯ちゃんはスゴイんだよ! 一回目のセレプロで優勝して歌唱力、ダンス、容姿も完璧で今じゃアイドル界のスターダムまで上り詰める勢いだって……待ってて……ほら! ネットでもみんな話題にしてるくらい今全世界全宇宙の人が注目してるんだよ!?」
いささかを超えて大袈裟な言葉だったが、彼女の真剣な目には絶対に布教してやるというオタクの意思が存在していた。そしてその熱量を毎日のように聞かされて、いつしか彼女伝いで天沢灯について相当な量の情報を知るようになっていた。
結果。
僕は天沢灯のガチ恋勢になった。
「あー、灯ちゃんしか勝たん」
「……ねぇ」
「つらい。灯ちゃん今日も可愛すぎてつらすぎる……」
「……」
「うおおおおおお!! ア・カ・リ! ア・カ・リ!」
「…………」
何故か日に日に彼女の目は冷たいモノに変わっていたが、僕はそれでも好きを恥じることなく、唯一と言っていいオタ友と(一方的に)語り合った。
最後の方はニコニコと笑って聞いていたので、僕のアカリ愛を認めてくれたのだろう。
祖父が退院するその日、僕は「アカリ命」と書かれたTシャツで入院中の彼女の元へ訪れて、別れを告げに行った。
確か、「ありがとう美鈴ちゃん。君のおかげで灯ちゃんに出会えた(対面はしていない)」とか「これからもアカリ推し同士、離れていたってずっと友達だ」とか言った気がする。
その時はアドレス交換だったり、連絡を取り合うという発想がなかったので、彼女とはそれきりだった。
それでも、僕にとって……一時は食事も喉に通らない悲劇の失恋のきっかけになる存在だったとしても、天沢灯にガチ恋して幸せな推し生活を与えてくれた心友だと思っていたので、ずっと彼女には感謝の気持ちを持ち続けていた。
だから、彼女の顔をこうして画面越しに見た今、驚きが胸中を占めるのと同時に、喜ばしさもあった。
僕たちがお互いに別れを告げ、立ち去ろうとしたとき、美山鈴音は言ったのだ。
「今度は画面の向こう側で。また会おうね」
彼女は約束を果たしてくれた。
まだアイドルデビューもしていないオーディション中ではあるが、かつて美山鈴音が憧れ、僕がガチ恋したーー今は亡き伝説のアイドル、天沢灯が誕生したセレプロの舞台で、頑張っている。
これはもう、推すしかないだろう。
本当は妹の推し活の傀儡となり従姉妹のブロックを見るついでだったのだが、楽しみが一つ増えた。
来栖セイラ、完成度が高いな……何年も頑張ってる努力が見える。モデルでも通用するルックスにこの歌唱力。若い女性層は多分この子にエールが集中するだろうし……仕方ない、友達連中と妹が手を回してないだろう親戚に連絡して組織票をつくるか。妹の傀儡はもう終わりだ。心友のために反撃の狼煙を上げるのだ。
「さぁーて、忙しくなるぞー!」
ーー結局、みんなセレプロを視聴していてすでに推しができているということで断られた。
くそっ、まさかオタ布教がここにきて他の子達のエールに繋がるなんて……みんな可愛いし美人で魅力的だから仕方ないとはいえ、ごめん美鈴ちゃん……せめてこの一票のエールにすべての想いを込める! だから頑張れ、応援してるからな……!
「北関東ブロック勝者ーー来栖セイラ!」
そ、そんなぁ……!
僕はその日、膝から崩れ落ち、来栖セイラ推しの妹に勝ち誇った顔を見せつけられた。
本当に描きたかったのはアニメの感想だとここでネタバラシ。
・一話で主人公がフェードアウトするかもしれない展開は激アツでした。まさか一話完結型のストーリーじゃないだろうと思いながらも、次の話が待ちきれない面白さがありました。
・あと、キャラの個性が誰も埋没してない。それぞれの個性の見せ方が自然でしかも性根が悪い子がいなくて、あと所々に笑える小ネタ仕込んでるのすごい。特に山鹿栞はお笑いパートかと思えるほど。家族登場のシーンを何回も繰り返し見て笑わないための特訓をしていますが未だ真顔で見ることができません。いきなりの梅干し口は卑怯すぎる。本人の自信の強さからくるナチュラルな言動も笑えるし今後の笑いと活躍に期待しています。
・家族やスタッフ以外下手に男ファンとか入れてないし絡みがないからスポコンものとして不純物なしで見れるのは強い。神童系とか成り上がり系とかドラマ好きな人は絶対セレプロ見たほうが良い。司会のマスコットとかでもキャピキャピせずオネェキャラのパンダで変に視聴者媚び媚びな展開もなくストレスなくストーリーを楽しめるからおすすめです。
・来栖セイラの「Girl's be ambitious!」が美山鈴音に受け継がれるの好き。まさにアイドルの顔って感じで鳥肌が立ちました。花野井玲奈の冷たい一言の返しでアレは激アツ。
・死んだ伝説のアイドルの妹が出てくることでアイドリープライドと似てるとか言ってる人いるけどセレプロは中身がそもそもオーディションなので展開が全く違うし、短期目標がある分、見ていてカタルシスを得られる場面が多いので、優劣つけたいわけじゃないけどセレプロの方が好きです。「宇宙よりも遠い場所」を思い出すようなまとまり具合でした。これからダンスとバンドでチームに分かれて対抗するようなので、もう詰め込みすぎだと思うくらい個性が爆発していて今からでも視聴するのをおすすめしたい。
・話のテンポも絶妙です。初めからメインメンバーが全員揃っていることもあってそれぞれ一話時点で紹介が一括で終わるのは強みですね。しかもいきなりのチーム対抗にすることで小グループの絡みを作り出したことで自然に馴染む展開になるし、三話のライバル関係が作るエモさとか見れて現実だったらぶっつけ本番とかまずないだろうストーリーだけど本当にあったら激アツって展開をこの作品は分かってる。
・子役系、小泉詩と萌え系、今鵜凪咲の二人が見せる素の顔はとりあえず必見。媚びてる裏にある素顔だけど、別に腹黒いわけじゃない計算高いってのがよく分かります。一粒で二度美味しい可愛さを見抜けるはずです。
・メタなこと言うとたぶん全員合格かなって願望込みで思ってるんですけど、此処から脱落者が現れたらそれはそれで面白いだろうしそういうハラハラ感があって、是非ともリアルタイムで見るべきです。
とにかくセレプロは今季見た中で一番惹きつけられた作品でした。
タイトルが英語のためライトなアニメ視聴者は寄り付かないし、動画工房とはいえアニメ自体が原作でアイドルものということもあり見ていないという人が多いはずです。
そんな人たちに「おまえ人生の半分損してる」と言いたいだけの二次創作でした。
アイドル系ゲームやったことないですけど、これがゲームになるなら、絶対やる。まぁ、オーディションのゲーム化とかどういう遊び方になるのか考えもつかないので無さそうですが。
とりあえず此処で締めます。以上、純真な主人公系ヒロインを見たら何故かヤンデレっぽくしたくなる作者の痴態兼アニメ見ようぜな布教活動でした。
最後まで見てくれてありがとうございます。
たぶん続きません。