トレギアだけど、元の宇宙に帰りたい   作:鵺崎ミル

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今日は番外編です。短いですが。
オレギアさんがいた世界についての現状。


番外・消えたトレギア

 ベリアル率いる一大勢力『テラー・ザ・ベリアル』と光の国による、複数の宇宙を巻き込んだ全面戦争【オメガアーマゲドン】。

 

 宇宙1つでも果てしなく広大だというのに、別宇宙にまで戦線が拡大したこの戦いはもはや光の国とベリアル勢力だけに留まらず、あらゆる勢力もその波に飲み込んだ。

 数多の戦士が散り、数多の星が滅び、無数の命が失われた。ベリアルは、かのエンペラ星人の勢力ですら成していなかった偉業に手をかけたといって良いだろう。最も、そんなものを偉業として認める光の戦士など誰1人いなかったが。

 

 敵勢力の幹部クラスは難敵であったが、ウルトラ戦士達ならば決して勝てない相手ではなかった。だが、この広大過ぎる戦線は光の国にある限界を突き付けていた。

 

 ──守り切れない。

 

 無論、光の国にいる戦士たちに、『1人でなんでもやってみせる』と粋がる者はまずいない。該当するとしても、余程の世間知らずな若者程度で、それは経験で失われる一過性のものだ。

『ウルトラマンが人間を救うのではない。人間と力を合わせ戦ってきたのだ!』かつて暗黒の魔神(ダークルギエル)を前にそう啖呵を切り、人類と共に戦ったウルトラマンタロウを筆頭に、彼等は現地勢力や他の正義を心に宿す者たちと共に、巨悪と戦い続けた。

 

 それでも足りないのだ。こればかりは宇宙の広大さが恨めしく感じてしまう。

 光の戦士達が向かった先では、助けることができる。共闘することができる。そして、勝つことができる。向かえなかった先では、悲劇と絶望が支配していた。

 

 ウルトラマンは神ではない。

 誰もが自覚し、そして戒めにしていたことだったが、この戦争を前にその事実は彼らの心を傷つけていた。

 

 余談だが、この元凶であるベリアルですら、宇宙の広大さにため息を溢していた。側近からあげられる戦線報告書の数と、積みあげる傍から失われていく物資に顔を顰めていたりする。

 宇宙の全てを手に入れてやると配下へ偉大な夢を見せる悪のカリスマだが、現実は広大過ぎる宇宙にて攻勢を仕掛け続けることに苦労していた。

 レイブラッド星人とか本当に宇宙数万年も支配してたのか疑問符すら浮かぶレベルである。あのエンペラ星人ですら全宇宙の支配には至らなかったというのに。

 

 こんな具合で敵も敵で苦労していることなど知るよしもないが、現実としてこのままでは果てしない戦乱がいつまでも続いてしまう。この為、光の国は逆転のキーアイテム作成を急いでいた。

 

 ウルトラマン達で数が足りないならば、その力を少しでも貸せるようなアイテムを生み出せばよい。

 

 光の現地勢力はもちろん、宇宙警備隊隊員でも実力の足りない者などに、前線で戦い続けるウルトラ兄弟などの頼もしい力がサポートとして機能すれば、多くの命を救えるという発想からウルトラマンヒカリが主導で開発を進めた。

 

 幸運なことに、かつてヒカリの復讐鬼化報道以来失踪していた、有望な局員であったトレギア*1も正気に返って復帰していた為、開発は予定より早く進んでいた。

 

 タロウは、帰還して傷も癒した友人が、戦争勃発早々から目覚ましい功績を積み上げているのを噂で聞いて、我が事のように喜んでいた。

 キングブレスレットという強力なアイテム*2を保有している為、トレギアが開発したアイテムの恩恵を得る機会にないのは残念だったが、共に戦う仲間たちが彼のアイテムを活用してくれているだけで嬉しかった。

 

 唯一保有しているトレギア謹製のアイテム……かつてトレギアから直接譲り受けた、共同制作の完成品『タイガスパーク』はいつか息子へ譲るつもりである。キングブレスレットが万能すぎるのも考え物だ。水の入ったバケツにすら変身する万能性を有し、純光エネルギーの集積機構に加え、何気に光エネルギーを常に一定に保つコントロール機能すら内包している為、タイガスパークの恩恵を得るまでもなく別宇宙の活動を容易にしてしまっているのだ。

 

 だが、思わぬ凶報がタロウの元へ届けられた。

 

「トレギアが……消滅した!?」

 

 光の国でも厳重な警戒が取られていた区画にて、トレギアが逆転のキーアイテム『ウルトラカプセル』の試運転を行おうとしていた際、見ただけで心を削ってくるような悍ましき闇が彼へ襲い掛かり、助ける間もなく彼の姿ごと消失してしまったのだという。後に残ったのは、起動するはずだった彼の力が込められたウルトラカプセルだけ。

 

 ベリアル軍の仕業であることに疑いようはなく、情報漏洩が起きていた事や直接的妨害行動があった事実に、光の国に強い衝撃が走った。

 

 トレギアはウルトラカプセル開発組の中でも、最もウルトラマンヒカリに近く、それでいて最も弱かった為狙われたのではないかと推測が立った。その為、彼は殺されたのではなくウルトラカプセルの精製方法を得るために攫われたのだという結論が出るのは早かった。

 

 後方から支援してくれる仲間の悲劇に誰もが拳を震わせたが、特に憤ったのはウルトラマンタロウである。

 自分の立場を理解した上でなお抑えられない衝動から、ベリアル軍の前線基地でも惑星級の規模だった要塞へ単騎で突撃する無謀に走った。

 

「私の友人をどこへやった!!」

「知るわけないだろ!?」

「貴様たちがトレギアを攫ったのはわかっているんだ!!」

「いやマジで何言ってるかわから……うわああああああああ!!」

 

 タロウが吶喊した惑星要塞は壊滅した。昔ならいざ知らず、今のタロウは宇宙警備隊の筆頭教官。更に磨きあげられた実力だけではなく、安否すら分からない友を想っての行動を前に、敵など存在しなかった。

 タロウは基地の最高司令であった幹部すら鎧袖一触で消し飛ばし、その基地内に残されていた全データを回収し、無力化され降参した宇宙人達から情報収集も行った。仲間たちが応援に駆け付けた頃には、事後処理しか残されてない始末だった。

 だが、そこまでしても結局トレギアの居場所を得るような情報すらなく、タロウは失意に首を垂れることとなる。

 

 タロウの勇猛な働きは瞬く間に宇宙をかけめぐった。何も知らない人々はやはりウルトラ兄弟はすごいのだと歓喜に沸き、彼をよく知る同胞たちはタロウの想いを察して心を痛めた。そしてその中でもウルトラセブンは、タロウの気持ちを十全に理解していた。理解した上で、このままではいけないとすぐに動いた。

 セブンはタロウの元へ真っ先に飛んでいき、彼を全力で殴り飛ばした。

 

「タロウ! なんだそのふぬけた姿は!! お前の友人にそのザマを見せるつもりか!!」

「セブン兄さん……!」

 

 宇宙を平和に近づけた偉大な戦果に対する労いなど一言もかけなかった。

 筆頭教官としてあるまじき軽挙な単騎行動へ走った事を叱咤し、その上で友人を想っての無謀な行動は、それを知った友人が苦しむ事に繋がる愚行であると厳しく指摘した。

 優しさの欠片も感じないセブンの言葉だったが、タロウはセブンの真意を間違うことなく受け止め、彼に頭を下げた。

 

 セブンは心の底からタロウを心配している。自分が間違った行動に走ってしまって、その結果みんなが苦しむ未来が来て、そして更に自分が苦しむという負の悪循環が来ないように最速で止めに来てくれた。友人が戻ってきた時、また暖かく迎えられるような恥じない己であるべきだと言ってくれているのだ。

 

 戦うことも探すことも、間違った方法で行えば意味はない。

 

 頭をあげたタロウの目をみたセブンは、安堵して頷いた。そして彼の肩を叩いて、改めて労った。

 

 なお、偶然現場に居合わせたモブトラマンはドン引きであった。

 

 

 

 タロウは反省した。そしてトレギアの生存を信じ、また再会した時にお互いの無事を喜び合うことを決意した。改めて胸に宿った輝きを強くする。悲劇を前にしてなお、光は光であった。

 

「一度は帰ってきたんだ。また帰ってくるよな、友よ……」

 

 

 

 

 こうして、突如発生したトレギア消失事件の影響は、大なり小なり広がっていった。

 光の国はこの一件からセキュリティを強化する意識を高め(活かせるとは言ってない)、ウルトラカプセルの開発は秘匿性も重視されヒカリ1人に委ねられて予想よりも遅れていくことになる。タロウも、単騎吶喊の反省から一度光の国へ帰還することになった。

 

 トレギア消失の影響が1番あったのはタロウだったが、最も悪く響いたのは、タロウではなく他にいた。

 

 

 

 完全にとばっちりを受けたベリアル軍である。

 

 

 

 惑星要塞1つ丸々失う大損害について、元凶であるタロウがあそこまで暴れた理由を報告書で受け取った『テラー・ザ・ベリアル』最高幹部ダークネスファイブ*3の面々は困惑に包まれた。

 

「なあスライ、俺達そんな計画聞いたことねーぞ」

「私もです。というか光の国の新兵器強奪計画はあのストルム星人が一任されていたはずですよ。彼は潜入には長けていますが、ウルトラ族1人拉致るなど不可能です」

「ヴォー ヴォー」

 

 つまりは事故または第3勢力の仕業であるとダークネスファイブ筆頭格たるスライは結論付ける。

 そのせいで結果としてとんでもない損害と、別で進行していた作戦に支障が出る懸念まで生じるなど頭を抱える事態であった。

 

「完全な濡れ衣とばっちりかよ……理不尽すぎるだろ! てかタロウまじやべぇな!!」

 

 唸るデスローグはもちろん、グロッケンも表示される損害報告書の数字にめまいすら覚える。

 あろうことか基地内に集積してあった資料なども処分すら間に合わず、根こそぎ奪われたのだと言う。

 基地責任者を処断してやりたいところだが、とっくにタロウによって殉職しているのでそれすらできない。

 

「というかこれ、まずくないか? 光の国の防諜対策は腑抜けもいいところだったのに、こんな事件があってはストルム星人も苦労するぞ」

 

 嫌でも悪い予測を考えてしまうヴィラニアス。

 なんかベリアルに心酔してるだけの弱い宇宙人なので、彼等からすれば別に捨て駒もいいところなのだが、作戦失敗の危機を容認できるかは話が別だ。

 ただでさえ最大規模の計画を進行しているところに、悪い報告など連続して聞きたくないのが本音である。

 

「ストルム星人も現状把握はしているでしょう。こうなればいっそ完成前に勝負を付けるしか……」

 

 スライが口にしているのが、まさにその最大規模の計画だ。

 超時空消滅爆弾による宇宙の崩壊。それを地球圏で行い、ウルトラ戦士達に完全敗北を突き付ける壮大な計画である。

 光の国がある宇宙は消失ではなく支配したいので、崩壊させる宇宙は隣接したサイドスペースが検討されている。

 

「超時空消滅爆弾計画か……地球を餌に、宇宙1つ丸ごと消し飛ばして一網打尽……だが陛下が地球で囮になるのが気に入らねぇんだよな」

「陛下でなければ、光の国は総力を結集してくれませんからね。悔しいですが」

 

 グロッケンの懸念は尤もな話だが、スライは現実を受け止めている。これを最大限に活用するには特大の餌が2ついるのだ。「地球」と「ベリアル」だ。

 だからこそ、成功すればベリアルの悲願を達成できるに違いないが、あくまで兵器を利用する都合、事前に阻止されたりベリアル本人が討たれたりしたら水の泡と終わる危険性もはらんでいた。それを理解しているから、このベリアル肝入りの計画には、ダークネスファイブも命の賭け時であるとして気合を入れている。

 

「だが、この計画成就の為ならば、我らも捨て駒になる決意もある!」

「そうだなヴィラニアス。死ぬまで陛下の為にあるってのを証明してやろうぜ!!」

「ヴォー!!」

 

 悪には悪の絆がある。

 それを憎き光の国の連中へ証明してやると昂る彼らに対し、その仲間たる地獄のジャタールの一言は彼等を現実へ引き戻させた。

 

「ギョポ……で、誰が陛下にこの要塞失陥報告するんだ? 自分たちとは関係ない事故でとばっちり受けましたって内容だよなこれ」

「「「「「……」」」」」

 

 そう、壮大な計画をネタに彼らは現実逃避していたにすぎない。

 最近なんかウキウキで自分の息子を生み出す計画を練り上げている我らが総大将へ、この報告を入れたくないのだ。

 敗北は敗北である。あの要塞が失陥したことで、あらゆる計画に悪影響が生じることは必然であり、よりにもよってその原因が濡れ衣。

 全員、静かになった後。

 5人中、4人がスライへ目を向けた。

 

「スライが適任だ」

「よろしく頼むわー」

「言うと思ってましたよ畜生!!!」

「ヴォー ヴォー」

「ギョポポー」

 

 邪悪なる軍団『テラー・ザ・ベリアル』。

 この日、その本拠地の一部が崩落することになるが、始末書に書かれた名前は名誉の為、秘匿された。

 

 

*1
(実はトレギア、めっちゃ優秀。科学技術局副長官の席が提案された程である。ただし提案された当時はタロウが長期遠征でいない+ウルトラマンヒカリ出奔中で、出世への喜びを感じられない程に寂寥感が胸にあったのか辞退している。曰く「タロウがいない光の国ってなんかぼやけてる」)

*2
(名前はいかにもキング由来っぽいが、宇宙科学技術局製。ウルトラメタリックガード超合金とかいう素材でできてる)

*3
(メフィラス星人魔導のスライ、テンペラー星人極悪のヴィラニアス、ヒッポリト星人地獄のジャタール、グローザ星系人氷結のグロッケン、デスレ星雲人炎上のデスローグ。ペット枠にヴィラニアスの相棒タイラントもいる。滅茶苦茶人気出た敵役グループで、ベリアルとの主従としての強い絆が明確に描かれた面子でもある)




オメガアーマゲドンの仔細っていつか描写されたりするんですかね。
ウーラー編決着は明日投稿されます。

・オメガアーマゲドン
実際の戦争地帯は要所要所に絞られたり、なんだかんだで規模は宇宙1つにつき銀河系1個分以内に収まっていたりするのでしょうが、複数の宇宙巻き込んでるなら大して変わらない。ベリアルがクライシスインパクトを引き起こした理由については、明らかに打ち解けていた「仲間」であったダークネスファイブを戦争で失ったからとか、キングが動く事を見越した壮大な計画だとか、色々ありますが、案外戦争に疲れていたのかもしれない。

・ウルトラマンタロウ
下手すると1万年ぐらいいなくなっていた友人と再会して嬉しかったのに、その友人が再びいなくなって流石にメンタルに響いた。ベリアル軍の惑星要塞1つ単騎で制圧するほど大暴れしてまでトレギアを探していたが、見つからず。このまま危うい戦いを続けていたら光を見失う恐れすらあったかもしれないが、そんなフラグが芽生える前にセブンがいつもの叱咤激励を飛ばしたことで復調。トレギアを探すことはやめないが、トレギアの生存を信じてウルトラ兄弟No.6としての使命を今日も果たしている。

見事に成長したタロウがこういう短絡的な行動するかについては意見が分かれるところでしょうが、今回はそれほどショックだったということで……。
なお、内山まもる先生の描いたウルトラマンタロウの話に「友情は永遠に…タロウとエルフ」というものがあり、そこではバルタン星人の首領となった幼馴染のエルフというウルトラ族を説得するためにバルタン星人の本拠地(てか母星)へ単身乗り込むというクッソ無謀なことやらかしていたりします。

・ウルトラセブン
どこぞのキン肉マンのお兄様より手厳しい事をしているが、深い愛を持つウルトラ戦士であることに変わりはない。愛ゆえにその手厳しさが凄まじく苛烈になりがちなだけである。レオにやらかした中の人ごと殺しかける特訓は有名だが、流石に今の時代ではシナリオに組み込めない。なお、セブンだけがこういう一面あるわけではなく、割とウルトラ族全般が大なり小なりこういう一面を持つ。心身ともに頑強すぎる種族なせいだと思われる。
でもリブットに「手荒な特訓になるよ!」と言われてもまだ挑めるが、セブンに「手荒な特訓になるよ!」と言われたら死を覚悟する。

・ウルトラマンヒカリ
描写されてないだけで実は滅茶苦茶凹んでる。ベリアル軍の侵入を許してしまったせいで大切な部下が失われたと嘆いている。まぁメビウスがメンタルケアするから大丈夫。

・ダークネスファイブ
今回最大の被害者。濡れ衣だーーー!!と太陽へ向かって吠えている。

・ストルム星人
難易度跳ね上がったけど後にやり遂げた。クライシスインパクト時のどさくさに紛れて盗む事に成功。ベリアルの指示に従い新たな計画を進める。

・ベリアル
ちゃんと始末書書いた。
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