トレギアだけど、元の宇宙に帰りたい   作:鵺崎ミル

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この小説は、トレギアのSSを書きたい思いから始まった、アホの物語である!

何が言いたいかというと、シリアスに傾いた分ネタへの揺り戻しが起きやすい世界。


トレギアだけど、元の宇宙に帰りたい

 

 

 混沌とはそもそも何を示すのか。

 

 ()は光も闇もない虚無を求めて、この原初の混沌に手を出した。

 

 では邪神グリムドとは虚数世界に存在していたものなのだろうか。実数世界の生じる前は虚数世界と表現してよいのだろうか。

 

 俺は科学者にして哲学者だ。いくら()が数万年考え続けて至った答えだとしても、鵜呑みにする事はない。

 何より、体感しているものがその答えを否定している。()が辿った道程が示している。

 時間があるなら、一度議論もしてみたいな()。最初の質問はこうだ。

 

 

 [ヒョホホホホホホホホホホホホホ]

『“無”という存在なのかグリーザ。流石の私も“無”はどうすることもできないな』

 [ヒャハハハハハハハハハハハハハ]

 

 

 

 “無”に手出しできない“虚無”とはいったいどういう理屈だ?

 

 

 

 断言する。グリムドの力である混沌は“有”に属する力だ。ただ宇宙創世より以前の存在だから虚無だと解釈しえただけだ。

 あ、まってください長官。「素人質問ですが」とか言い出さないで。これはですね、イメージを強化するのに必要なんですよ!! 

 

 そう、光も闇もある混沌、それがグリムドなのだと強くイメージすれば、グリムドはそのように“在る”のだ。

 虚無の力として()へ応えてくれたように。

 原始生命のプールとも言うべき超古代の怪物ガゴゼを知っておきながら、混沌が万有である事を理解しなかったのは盲点だった。

 原初の混沌は万能の願望機と同じ特性だ。望まれた力を、“最初からそう在った”力として提供できる。契約者の持つ指向性に従うのだ。

 

 劇場版にて、タロウが完全に食い尽くされたりしなかった理由もわかった。原初の混沌にあんな憑りつき方されたら普通は終わる(死ぬ)

 それはトレギアからすれば考えたくもない話であり、全く信じていない話でもあった。太陽がグリムドに負けるのは解釈違いだけど、グリムドに囚われたタロウと共に在りたいというクッソ拗らせた感情があの闇堕ちタロウを生み出したのだろう。完全に支配できなかったのはタロウ本人の力やタイガ達の力もあるが、トレギア本人が奥底で望んでいなかったと俺は思う。

 

 だから、俺はこういう変身ができるのだ。

 

「その姿はなんだ……?」

 

 動揺を隠せない()。ふ、これが可能性だ。

 アーリースタイル(元の姿)に、グリムドが鎧となって共にあるトレギアだ。

 

 トレギア アナストロフィととりあえず名付けたこの姿。

 

 グリムドが怪獣として実体化した姿の部位がそれぞれ甲冑のようなパーツとして俺の身体に貼り付いている。

 もうちょっと光に寄ったキラキラしたのをイメージしていたのだが、グリムドにラメ付けましたみたいな程度しかキラキラしていない。

 まぁグリムドの怪獣体自体がかなりごてごてした感じなのでアーマーとしての相性がいいのはわかる。ただ、この頭に2本生えてる赤い角……すごく、タロウです……。

 

「お前の混沌(虚無)を、切り裂く混沌()だ!」

「戯言を!!」

 

 ちょっと照れくさい想いを隠すように吠えた俺に対し、最期の力を振り絞るように激しく闇を吹き出しながら、()が吶喊してくる。

 全然光に見えないので戯言と言われても言い返せない。言い返せないが、それでもこれはグリムドと共に戦うもう1つの姿なんだ。

 

「シェアッ!!」

「ぐっ!? あ゛ぁ゛っ!!?」

 

 鎧袖一触。たった1発の反撃で()はあっさり吹っ飛ばされた。

 闇堕ち俺の状態はグリムドを内包した姿。

 今の俺はグリムドを纏った姿。違いはそれだけであり、俺自身の最大スペックも変わらない。寧ろ、クソザコの俺が鎧纏っただけなので総合的には弱体化している。

 ただ、グリムドが表に出ている分、その気になれば『グリムド自身の最大出力を繰り出せる』ので単純火力だけは上を狙えるか。街中とかならデメリットしかないからやらんけど。

 

 単純な強化形態というわけでもないのに、俺がわざわざこういう形態になってるのは、理由がある。

 

「わかるか()。これは、グリムドを封印していない。拘束ベルトもないままに共に在る」

「!?」

「間違っても力が抜けださないように雁字搦めにしたのは、お前がグリムドをパワーソースにしかみてなかったからだ。だが、グリムドと絆を結んだならば、結べたならば、グリムドは抜け出すことなくこうして力を貸してくれるんだ」

 

 なお、実際は半分抜け出しても再封印できないぐらいでトレギアの言うことは素直に聞いていた模様。まだ半身トレギアの中に残ってたにしても従順すぎる。前世記憶曰く、同一個体として認識してた説もあるようだが。

 まぁわざわざ()にそんな余計な事は言わない。

 

「絆だと……!? 邪神と!?」

「普通の光の戦士なら、できないだろうな。だが、()ならできたと思うぞ。俺ができてるんだから」

「何が言いたい……!」

トレギア(俺達)にしか成せない事はあった、と言っている。別にグリムドに限った話じゃない。タロウへのコンプレックスなんか抱かなくても、タロウの傍に立つ資格はあったんだ」

「……」

 

 闇を知ろうとしたのはぶっちゃけ好奇心が爆発したせいだが、タロウという太陽に焦がれて、理想を高めすぎて、自分ではたどり着けない境地だと理解して絶望したのも事実だ。

 本当自己分析すればするほど自己嫌悪の渦は深まるばかりなんだが、事実こんな()に成り果てる始末なんでどうしようもない。

 

 けど、俺は俺だから成せたことをやり遂げたぞ。原作の運命に翻弄されもしたが、俺は原作より命を救えたはずだ。

 グリムドともこうして絆を示すことができた。俺にできたということは、()にだってできたことなんだ。

 狂気に陥らずともタロウの傍に立てた事を示し、ドヤ顔で勝利宣言を決める。絆を叩き付けまさに気分は完 全 論 破。

 

 そこへグリムドがもそもそと俺に何かを伝えてくる。半分申し訳なさそうに、半分呆れながら。

 

「(;´・ω・)」

「え、こんな会話の域をデフォでやれるの俺だけ? 普通まずわからない? あのトレギアだと、意志があることに気付けてもそれだけじゃ思考体系違いすぎて交流はできなかった?」

「……おい」

「……いや、お前ならやろうと思えばできたでしょ。長官ほどとは言わんが開発分野にかけては天才だと自負している。宇宙古代呪文とか駆使して意思疎通用の翻訳機は作れるだろ」

「……まぁ、作れただろうな。やろうとすら思わなかったのは確かだ。だがお前さぁ……」

 

 赤い瞳とグリムドからジト目を感じる。締まらんなぁ、くそう! 

 結論は間違ってないけど過程を間違えてる論文を提出した気分ですごく恥ずかしい。

 タロウの傍に立てたという違いを突き付けるだけでは弱いから、俺が得た新たな絆を示して完全無欠の勝利を決めたつもりだったのに……。

 

 無様に頭を抱える俺へ、完全に侮蔑した視線を投げかけていた蒼い影だったが、やがてため息をついたように肩を落とすと、両手をあげる。

 わかりやすい降参のポーズだった。

 

「言いたいことは終わったか? とっくに勝敗自体はついているのだからそろそろトドメを刺せ」

「どうした急に」

「興が冷めた。いや、諦めがついた。グリムドを奪われた時点で私はもはや消滅するしかない」

 

 目覚めて乗っ取り返そうとしたが失敗し、最期の賭けであるトレラシウム光線もダメだった以上、詰んでいるのは確かだ。

 消滅するまで狂乱しながら暴れたり捨て台詞を吐きながら自ら死ぬと思ってたから意外だ。台詞の通り悟ったのだろうか。

 

()にしては受け入れるのが早かったな。散々光と絆に対して頭ごなしに否定していたような頑固者だったはずだが」

「貴様を私と認めるなど絶対にしないが、もはや私の感情以上の反証ができない。それに、グリムドとの絆とやらはともかく、そのグリムドと出会う前にお前はタロウの元へ帰った。これを私にもできたと突き付けられるぐらいなら、お前を認めぬまま終わりを迎えよう。ただ虚無へ一足先に還るだけだ」

 

 なるほどさすが虚無主義。己すら無価値であるからこその挙動ということか。

 まぁじゃないと劇場版の時みたいな馬鹿な破滅行為しないよな。そして決して同一人物だと認めないまま消えることで最後の抵抗をしているつもりなのだろう。消える直前に毒ある言葉を吐くつもりなのが簡単に想像できる。

 

 けど悪いな、俺は自分殺しなんかしたくないし、お前を許す気なんかさらさらない。

 

「シェアッ!!」

「!!」

 

 無抵抗を良いことに、俺は蒼い影へ光線を撃つ。

 それは破壊の性質を持たない。保存と変化の性質を持つもの。

 ウルトラ戦士が人間の姿を取った際、元に戻るための変身アイテムを作成する技術。

 怪獣をカプセルに封じ込め、使役する技術。

 怪獣の力と魂をリングに変化させ、使役する技術。

 

 それらの技術の応用が、この光線の正体だ。

 破壊の一手ではないことと、身に覚えがあり過ぎる光線の性質に()が目に見えて動揺する。

 だが今更抵抗しようがもう遅い。我々ウルトラ族が一度発動した術式は、途中で防げるほど柔なモノではないのだ!! 

 

「貴様、これは!?」

「ま、わかるよな。今回はフーマにお前がやったような、アストラル体を封じ込める技術も併用している」

「なんの狙いで……まて、貴様まさか」

 

 流石は()。気づいたか。だってお前はトレギア()だもんな。

 ただの影のくせに蒼白となっていることが伝わるほどの動揺を肌で感じながら、俺は最高の善意(あくい)でもって引導を渡す。

 

「ちゃんと、お前のタロウの元へ送り届けてやる。安心しろ♪」

「おいまてやめろ、やm……」

 

 蒼い影が光に飲まれて消えていく。やがて、淡い闇のようなオーラを纏った、俺の顔がついたウルトラアクセサリーが手元にやってきた。

 この世界を生きた、トレギアの魂が内包されている。封印術式もかけているので、自分の力では元には戻れない。グリムドの力もないしな。

 闇のゲームに敗れた者は魂を奪われるというわけだ。……前世記憶の受け売りだが。

 

「グリムドを俺が引き受けたからできた選択肢だ、喜べ()。そのボロボロの魂、太陽の傍で癒してもらえ。そして癒えたら、命をもらって蘇ればいいさ。ウルトラマンとして」

 

 それが最大の罰になり、救いになるだろう。

 この世界のトレギアの物語は、死に逃げなんて許さない。

 

 

 

 

 なによりお前自分の愛するタロウと、俺より先に再会できる勝ち組だぞ。はーマジはぁ、なんだって元凶にこんなご褒美与えなきゃならんのだくそが!!! 

 

「(;´・ω・)」

「なんだグリムド! 空気読めとか言うなよ! どっから覚えたそんな概念!!」

 

 

 

 ◇

 

 

 

 俺達の前で、トレギアにまとわりついていた闇が弱弱しくなっていき、やがて完全に沈黙した。

 その姿は、俺達と相対していたトレギアの姿と変わらない。

 闇を祓ったのか、飲まれたのかがわからなくて声をかけることもできず困惑していると、トレギアは自分の身体をみてあっけらかんと呟いた。

 

「あ、現実じゃ変わらずこの姿なのな。拘束ベルトのきつさからは脱出できないのかーそっかー」

「(・ω・)」

「今はまだ封印されている方が色々楽? 確かにあの形態、グリムドの負担増えるのは事実か。現実でグリムドの力が暴発したら不味いし、慣れるための練習を熟してからでも良いのは確かだ」

「(・ω・)ノ」

「ふむ、仮面は拘束と関係ないのか。じゃあ外そう、色んな意味で仮面被る必要もないんだから。変身アイテムは考えなおすかな」

 

 口調の柔らかさでわかる。というか俺を見ずに自分の事を真っ先に気にしているから断言できる。

 このトレギアは、信用できる方のトレギアだ! 

 彼が右手を自身の顔へ向けると、顔を覆っていた蒼い仮面が砕けて、ウルトラマンとしての素顔が現れた。

 あの苛烈な赤目をしてたとは思えないほど穏やかな表情。

 顔だけでも闇から解き放たれたようで、それが自分の事のように嬉しくて駆け寄る。

 

「トレギア、無事だったんだな!」

「ああタイガ、すまない。心配をかけてしまったようだ」

 

 トレギアはすっかり肩の荷が下りたような柔らかい雰囲気を身にまとっている。

 やはり、あの闇がトレギアを狂わせていたのだろうか。

 

「今のトレギアが、本当のトレギアなんだな!」

 

 今目の前にいるトレギアこそ、父さんの親友だったウルトラマンに違いないと喜びを隠せずにいると、彼は困ったように頬を掻いた。

 

「あー……そうか、そういう考えになるのか。タイガ、それは違う。あれも本当のトレギアだ」

「えっ!?」

「手短に話そう。戦わなければカラータイマーも急かすまい」

「わかった、教えてくれ。トレギアに何があったのか」

 

 俺の言葉にトレギアは頷くと、指を俺の頭へ突き出し……莫大な情報量を一気に叩き込んできた。

 

『!?』

『うわ!?』

『ッッ!!?』

「ぐ、これは……!?」

 

 俺もタイタスもフーマもヒロユキもいきなり叩きつけられた情報の波に頭を押さえる。

 確かに手短だけどこんな強引なテレパシーアリかよ!? こいつやっぱりトレギアなんだな!!? 

 頭痛のような衝撃が一瞬で済んだのは、これでも配慮してくれたんだと思うけどさぁ!! 

 

「伝わったかな? ヒロユキ君の方には大分端折った情報量に留めたが」

「ああ……」

 

 トレギアの言いたいことは伝わった。

 自分が平行同位体のトレギアであること。俺達と戦ったトレギアが、絆の力で一度倒された時に肉体を蘇らせようとして呼び寄せたトレギアであること。

 最終的に、あのトレギアではなく自分自身が主導権を握ったこと。今のトレギアは、僅かながら先の運命を知っており、ウーラーをなんとしても救いたくて今まで運命に沿いながら自分なりに最善を打とうとしてきたこと(打ったと言わないのは謝罪の気持ちも捻じ込まれていたからわかる。というかこの謝罪の情報がとんだ長文量で、これがなければだいぶ情報量減らせたと思う)。

 

 そして、俺達と戦ってきたトレギアは、今のトレギアに敗れてウルトラアクセサリーと化して眠っているということ。

 その小さなアイテムと化したあいつを、トレギアは俺に差し出してきた。

 

「タイガ、君達の傷が完全に癒えた時、いつか光の国に帰るときが来るだろう」

「……」

「その時、このウルトラアクセサリーと化している私をどうかタロウの元へ渡してやってくれないか。仮面を付けてなお素直になれなかった馬鹿な私だが、今度こそタロウの元へ帰れるだろう」

 

 色んな宇宙で暗躍し、多くの文明や人々を苦しませた巨悪。

 絆と光を否定する為だけに、俺達を苦しめてきた張本人。

 だが、それでもこのトレギアもウルトラマンであり……。

 

「このトレギアも、父さんの友人……」

「そうだ、タロウは友人だ。親友だ。太陽だ。私にとっても、この私にとっても」

 

 トレギアの言葉には強い想いが籠っている。

 父さんとの絆を強く感じるものだった。父さんを太陽と評するのは、正直よくわからないけれど。

 どっちにしろ、俺の答えは決まっていた。頷いて、このアクセサリーを受け取る。

 

「わかった、預かります」

「ありがとう。ああ、光の国で実体化したら1発ぶん殴っていいと思うぞ。きっと光の国に美しい流星が流れることだろう」

「……自分自身ですよね?」

「悲しいことにね」

 

 

 

 ◇

 

 

 

 これで今度こそ、すべてが解決したか。

 ピリカを完全復活させてE.G.I.S.側でも完全無欠のハッピーエンドを迎えさせる部分も残っているが、それは俺がいなくても問題ないしな。

 万一に備えてヒロユキ君に転送した情報には、ピリカ復活までに必要なルートも与えてかつ予備案も用意している。大丈夫だろう。

 

 正直、()の突発的行動によって、最終的に、奇麗に分離できたりタイガ達に俺の事情を認識してくれたのは最高の結果を生んだと言えるだろう。

 あいつはあいつで愛しいタロウの元で新生活送れるもんな!! クソが!! 

 

 ここまで打ち解けられたならば、もうしばらく滞在してタイガ達に協力しても良かったかもしれないが……やはり、元来の目的へ舵を取るべきだ。

 

「私は、どれだけ時をかけても元の宇宙に帰る。私が会いたいのは、私の親友なのでね」

「そうか……じゃあ、お別れだな」

 

 ちょっと名残惜しむように言ってくれるタイガの優しさに嬉しくなる。

 だが俺としても関わった責任まで捨て去るつもりもないさ。

 

「なに、この世界とは十分すぎるほど縁がある。グリムドもこの世界のグリムドなのだから。だから、元の宇宙に辿り着くまでの第二の故郷として、また来るよ」

「! じゃあ、その時は歓迎する!」

 

 トレラ・スラーによるゲートを開く。

 これまでより最大規模に歪んだその扉は、こことは異なる世界へ飛び立つためのものだ。

 別宇宙へ行くよりもずっとエネルギーを消耗するから、つくづくグリムドのエネルギータンクっぷりには感謝だ。

 そうだ、最後に大事な話をしておかないと。

 

 

「ああ、そうだ。私がここからいなくなる以上、運命のうねりがどんな代替を用意するかわからない部分がある。タイガ達なら大丈夫だと信じているが、その時は少しでも力になるつもりだ」

「代替?」

「雑に言えば、ラスボス(グリムド)の代わりかな」

 

 無いのが一番だが、劇場版相当のボス、でてきそうなんだよなぁ……。

 こればっかりは完全な未知であり、当たってほしくない予測でしかないので杞憂になることを願おう。

 

「ああ、その時はまた一緒に戦おう!」

「ありがとう、ではさよならだタイガ、タイタス、フーマ。そしてヒロユキ君! 君たちの完全勝利だ、おめでとう!!」

「(・ω・)ノシ」

 

 言いたいことは情報伝達で一方的に叩き込んだし、振り返らないまま、ゲートの向こうへ飛び込んだ。

 

 

 やっとスタートできる。俺の太陽を目指す旅が。

 歓喜を胸に宿しながら、俺は目の前の混沌たる道を走り出した。

 

 

 

 ◇

 

 

 

 長きに渡ったトレギアとの戦いも、思わぬ形とはいえ決着し、僕らはウーラーが残した暖かな光を眺めていた。

 地球全土を渡っていく光は、見上げる命全ての心に、優しい輝きを伝えてくれている。

 

『ヒロユキ、見てるか』

「ああ、君と僕で……いいや、ピリカさんと皆で一緒につくった想い……」

『ああ』

 

 僕たちが辿り着けた奇跡を心の隅々まで刻み終わった頃、フーマがタイタスの脇を肘で突いた。

 

『で、推理外した感想はいかがですか賢者さん』

『フーマ!』

『いや、あれは無理だって。俺もタイタスの言うことが真実だと思ったし』

「平行世界かー……ああいうトレギアもいたってことなんだね」

 

 タイタスは恥ずかしそうだったが、あれは本当に正解出すの無理だよ。

 あんな嫌な宣戦布告しておきながら菓子折り渡したり、ホマレ先輩を傷つけておきながら(報復狙いで先輩の命を狙っていた革命闘士残党の方はトレギアが倒していたのも知った。そこで終わればいいのになんで無理に運命に合わせようとしたんだろう。この辺の謝罪の言葉うんざりするほど長かった)退院祝い渡したり、本当に変なトレギアだった。

 

『あんな爆弾みたいな情報頭に叩きつけたあげく、言うだけ言ってすぐいなくなったりするとことか、まさにトレギアだったな』

『あと、一番見ている相手がタイガである点もそうだったな。タイガの父親と親友だったなら、無理もないのだろうが』

『でも戦い方は正直、俺らと敵対してたトレギアの方が……』

『それ言ってやるなよ。絶対凹むぞあのトレギア』

 

 すっかり肩の力が抜けたような皆にいつも通りの空気が戻ってこようとしているのを感じる。

 あとE.G.I.S.に、ピリカさんがいてくれたら……ってそうだった! 

 

「そうだ、相棒! あのトレギアが教えてくれたんだ! ピリカさんは助かるって!!」

『そうなのか!?』

「あの時諦めずに手を伸ばして掴んだものをドライブに入れてみろだって! 行こう!!」

『ああ!!』

 

 

 こうして、僕たちの世界に平和が戻った。

 E.G.I.S.には念願の後輩として、マグマ星人(警備士)とマーキンド星人(会計)が加わり、エオマップ星より新造ボディを送られて蘇ったピリカさんも帰還した。

 

 そしてついに公に宇宙人の存在が認められたことで、E.G.I.S.は地球人と宇宙人が共同で働く職場の、政府公認のテストケースとして新たな1歩を踏み出した。

 地球人と宇宙人が手を取り合って生きる未来、その1歩を決して踏み外さないよう、そして後に続く人が増えてくるよう願って僕たちは歩いていく。

 

 奇跡の物語は始まったばかり。

 未だ共存の課題は多くても、僕たちならきっと大丈夫だ! 

 

 だから、これからもよろしくね、相棒!! 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 サイケが渦巻く混沌の道を歩いていく。

 当てもないまま、ただ俺のタロウに会いたいという想いだけを羅針盤にする。

 1発で辿り着くなんて思っていない。だが、絶望することもない。必ずたどり着けると信じている。

 だからせめて、辿り着いた世界ではグリムドと共に楽しんでいこうと思う。

 

 そう、奇跡の物語は始まったばかりなのだ! なんか先に誰かに台詞取られた気もするな? 

 

「長い付き合いになりそうだが、よろしくなグリムド」

「(^_^)v」

「さて、記念すべき第二の世界は一体どういう平行世界なのやら……」

 

 光が差してくる。出口だ。

 俺は期待の一歩をその向こうへ踏み出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「我は究極生命体アブソリューティアンの戦士、アブソリュートタルタロス……違うな、もっとこう、威厳ある風に。我は究極生命体、アブソリューティアンの戦士! アブソリュートタルタロス……!」

「……」

「ふむ、ポージングはこうかな、手の角度はもっと上げた方がいいか? アブソリュート、タルタロス……よし、この部分で手を振るえばいい具合だ!」

「……」

「ではもう一度。我は究極……ん?」

「スゥー……間違えましたー……」

 

 

 

 拝啓、俺の愛しき太陽へ。

 俺は今、顔真っ赤にした自称究極生命体とやらに追い掛け回されています。光線がどれも即死級でヤバいです。

 速攻で別次元へ転移して逃げていますが無駄にしつこいです。

 

「殺す! 貴様は必ず殺す!!」

 

「なんで俺の時空転移についてこれるんだよおかしいだろこっち来るなあああああ!!」

「我は究極生命体、アブソリューティアンの戦士!! アブソリュートタルタロス!!! 私の誇りの為にも世界から消え失せるがいい!!!」

「それもう聞いたから!! もういいから!!!」

「(; ・`д・´)」

 

 ああ、早く帰りたいなぁ!!! 

 

 俺の尊い願いが叶う日はいつなんだ。教えてくれタロウ……! 

 

 

 

 

 トレギアだけど、元の宇宙に帰りたい ~タイガ編・完~

 




はい、というわけで、タイガ編完結です。
実質最終回というか、元来予定してた結末(帰還)から変更して打ち切りエンドみたいなオチの仕方にしています。

理由:実は元々タイガ編で完結予定だったけど、もうちょい続き作れそう。

本作書きだした目的が「トレギア転生SS書いてみたい」「トレギアに生存エンドが欲しい」「タイガの物語もうちょっと後味よくしたい」なので当初書きたかったものは全部クリアしています。元の宇宙に帰るための布石もちゃんと用意してたので、それ拾うだけでよかったのですが。
書いてるうちに書きたくなってるネタはそこそこ増えていきまして。
ですので次章プロット仕上がり次第、次の物語を投稿していくつもりです。

ただ『仮にエタっても、着地点となる回さえ書き上げたなら、一応形にはなる』という持論によって、ここで終わっても作品としては問題ないようにしています。もしプロット作成困難で終わったら元々予定してた最終回『帰還』をしっかり投稿するからエタることはありません。

色々枷も壊して、元の世界へ帰るためにあらゆる異世界へ飛ぶオレギアさんですので、ネタには困りませんし、やっぱり元来用意してたちゃんとした最終回『帰還』書いてこそとも思っています。
それでも続きはプロット仕上がり次第になるので、次の投稿は長くて1,2か月後ですかね。
本作を読んでくださった方に感謝を。続きが投稿された時、また、楽しんでいただければ幸いです。

・グリーザ
宇宙の孔。無。オレギアさんは、これに手出しできなかったトレギアについて物申しているが、実は「お前は自由にしていいよ」と台詞が続いているため、手出しの意味を見出せなかっただけという説もある。オレギアさんからすると、全ては虚無だという持論を本気にしてるなら、「その無を証明手段に使ってないなら、やはり虚無主義は単なる建前だな!」となるのでわざと手出ししなかったならそれはそれで煽る。
一応本作では、ガチで手出しできなかった説を採用。

・オレギアさん、ボディは結局闇堕ちスタイルのまま。
トレギアの精神は追い出せたが、シャイニングゼロみたいにはいかなかった。
契約自体は引き継げているし、絆もあるので習熟すればいずれはアーリースタイルデフォでグリムドがアクセサリー状態でも旅は可能です。
ですがグリムドは本能で効率性を選べる生命体。現時点では一体化してないとトレギアの味覚で食事が楽しめないのでこうなりました。
仮面は剥がしているから、傍目からは『なんかヤバイ格好してるけどウルトラマンなのは顔で伝わる』なのでだいぶマシ。

・情報伝達方法
タルタロスのネタバレ攻撃と同質のやり方だが、本質は長文ウルトラサインダイレクトアタック。
心を込めたテレパシーなので、オレギアさんの気持ちも正直に伝わるから誤解が生じない素晴らしいやり方。タイガ達が信じてくれてるから初めてできるやり方でもある。信用度0でこれやってもただの精神攻撃か、騙そうとしてると思われるだけ。
なお、大量の謝罪文が練り込まれておりタイガたちが頭痛を覚えたのはこれのせい。

・本作における劇場版タイガ
グリムドがそもそもオレギアさんに憑いていってるし、トレギアはアクセサリーで休眠中なので完全破綻している。つまり、これを無理矢理劇場版展開させる場合、グリムド相当の大ボスがタイガのいる地球に君臨することになる。なに、万一そうなってもタイガがいる!!

・今現在のオレギアさん
元の宇宙(せかい)に帰る為、無限に等しい平行世界を巡る旅を開始。
蝕む狂気であったトレギアは分離したので、前世記憶との混ざりだけ気にすればよくなった(オタクグリッターは自覚していない)。ちょっとアホじゃなくなった分だけパワーアップ。とりあえずまずは元の宇宙を見つける手段や方法の取っ掛かりを得られるような世界を探している。
旅に出て早々、アブソリューティアンがトラウマになった。

・アブソリュートタルタロス
愛称はタルタルソース。引き際を誤らないが、誤らなさ過ぎて逃げ癖あるとか言われたり肩書や実力、目的はガチでやばそうなのに妙に株の伸びが悪い。
大いなる陰謀を実行する前に、格好良い名乗りを練習してたところをオレギアさんに見つかってキレた。
なお、オレギアさんは無事に逃げ切った。別の平行世界に逃げられて追えなくなってしまった究極生命体涙目。この世界線におけるタルタロスはトレギアを仲間に引き入れない可能性が高い。
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