トレギアだけど、元の宇宙に帰りたい   作:鵺崎ミル

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整理とこれから

 ふーむ。

 

 俺が闇堕ち合体して地球時間で5日程経過した。

 その間に何をしていたかというと、自分のスペック確認、そして力の根源である邪神グリムドの把握だ。

 

 無数の邪神の集合体にして総括。封印されし深淵の奥底にあっても、あらゆる知生体が持つ無意識の海より自らの存在を示し続けた原初の邪。こう書くとヤプールなどが可愛い虫けらにしか見えなくなるほど規格外かつ常識外の存在である。その為、単純に純粋悪的な存在と伝説で解釈されたりもするこの邪神だが、権能と規模が桁違いなだけでやってることは一生命体の生態で解釈できる存在だった。

 まぁガゴゼからしてそんな感じだったからな。宇宙古代文字が記された洞窟に存在した怪物だし、無関係ではないだろう。

 

 全ての知性体に対して『邪神』のイメージを無意識から発生干渉したり、取り憑いた相手の虚無感を煽ったりこそするが、そこに所謂悪意はない。無論我々からすれば悪意にしかみえないが『生態』に過ぎないし、抜け出し実体化して地球がやばいことになったのも同じように自分が棲みやすい世界にしてるだけだ。というか、自我と呼べる精神構造がないようである。道理で前世記憶描写ではトレギアのやることなすことに異を唱えたりしないばかりか、完全復活後取り込んだトレギアの影響受けまくっていたわけだ。

 まぁ、グリーザなんて例もあるのでそんなもんだろう。原初の混沌で生きた最古の概念性生命体というのが邪神の正体なのかもしれない。規格外すぎて、ただ在るだけで今を生きる生命体にとって害悪になるから封印または討滅するしかないが。

 

 わかりやすい悪党は、光も闇もないんだとか言いながら悪徳積み重ねてたトレギアだけである。同じ俺と思いたくないわ、なる寸前だった身で言うのもなんだけど。ちなみに統合の影響か、闇堕ちトレギアの悪行記憶も一応ある。もうなんていうか、気持ち悪い。『私の中の邪神たちが力あるものを引き寄せてくれるから、運命や宿命に関わるちょっかいかけやすい』とさらっと邪神のせいにしつつ、自分の足で洒落にならない干渉をしている。

 

「ぐ……嫌悪を抱いてる分否定できるが、覗きすぎて同調でもしたら危険だな。『深淵をのぞき込む時、深淵も覗き返している』か……タロウの忠告に感謝だな」

 

 俺が前世の記憶と割り切るように表現徹底してるのは混ざり過ぎないようにする為なのだが、この闇堕ち記憶も割り切らないと混ざってきて大変なのだ。アストラル粒子転化システムの応用でお互い自我保持は極めて強固なはずなのだが、前世記憶は『元々存在していたもの』であり、別の魂が宿ったわけではない点。闇堕ちトレギアは『邪神による強制同化』&『同一人物』の2点。これによってどうしても影響は受けてしまうのである。

 そんなわけでこいつが取った行動と共に生じていた狂気、暗い喜び、激しい自己嫌悪、親友への感情といった強い情動は俺にとって毒だ。俺はあくまで前世の記憶と照らし合わせて時系列確認や違いの有無を検証したいだけなのに滅茶苦茶クる。

 

「かといって、これ消去や排除すると良くないんだよなぁ」

 

 邪神グリムドが明らかに相性の悪い俺の精神を気にしてないのは、この記憶ありきだというのもなんとなくわかるのだ。そもそも俺はトレギアだが邪神に身も心も捧げて契約したトレギアではない。邪神が俺に力を与える道理がないのに、こうして自在に扱えている。

 つまり闇堕ちトレギアそのものがまだ俺の奥底に存在しているからだと推察できるわけだ。この記憶に耐えきれず虚無に飲まれれば元通りだし、抵抗している今もまた、鮮度の高い虚無の情動を糧にできる。いやぁ、実に効率的だな。本能でしか考えてないくせに。

 

「ともあれ能力は把握したし、扱い方もバッチリだ。超絶強化されてるが、所詮は借り物の力、慢心だけはしないようにしないと。これは宇宙すら破壊できる力と言えるだろう」

「(ノ゜∇゜)ノ♪」

「なるべく短い付き合いでありたいもんだねまったく」

「(ノ;∇;)ノ」

 

 なんかしょげるような感情をカラータイマーから感じたのだが気のせいか? 我々知性体と同質の自我はない、はずだよな? 

 ともかくタロウの元に帰ったら、グリムドを切り離して再封印する必要がある。この力を維持できたら宇宙警備隊に入ってタロウの隣で……いや、誘惑に負けてはいけない。

 

「それに最初に片付けないといけない問題がある。この宇宙でどうするかだ」

 

 記憶のおかげで把握できたんだが、このトレギアがぶっ殺されたタイミング、前世記憶で言う16話。つまりトライストリウムお披露目回なんだよね。羞恥と自己嫌悪と嘔気で胸をかきむしりながら確認したが、タイガの絆に計画破綻させられて動揺しまくりながら吶喊、返り討ちにあっている。この状態で復活したらボディが俺だったんだから、まぁ追い討ちだよなぁ……。

 

「で、前世記憶によれば……むぅ」

 

 過去の記憶で未来を知るのはなんとも言えない違和感を覚えるが、大雑把に把握した創作通りなら、この後より拗らせた俺はタイガに執着し、あげく、新たな計画は打ち崩され、決して消えることのない思い出を想起し爆死……何が腹立つって「わかる」ことなんだよなぁ……。

 そんで俺がなぞるように動けば間違いなくその通りにシナリオが進むことは断言できそうだ。トライストリウムに殺されたってことはそういうことなんだろうし、前世記憶と闇堕ち記憶を照らし合わせて差異なければ確定だ。

 ただ、タイガは俺がこれ以上介入しなくても、真っ当に成長していく事だろう。地球人との確かな絆を得たのだから。運命が与える試練など切り拓くに違いない。ぶっちゃけトレギアが介入しない方が悲劇はぐっと減るだろう。さっさとこの宇宙から離れて故郷探索を始めた方が良いに違いない。

 

 しかし、トレギアが介入したせいで失われる命が多い一方、介入しないと救われない命が1つだけある。

 

「大量廃棄物の海から意志を抱いてしまった疑似生命体、ウーラー……」

 

 わかっている。ウーラーは俺のトラウマとは無関係だ。

 俺が生み出してしまった疑似生命体……スナークはもういない。救える道すらなかった。俺はタロウではなかったから。

 だが、それでも。無視する事はできない。見捨てる事はできない。

 

 俺はタロウにはなれないが、タロウの親友として恥じない俺でありたい。そばにいてくれる事が、苦しくない俺でありたい。

 やろう。俺なりに、運命をなぞりつつ、最終回を迎えさせよう。

 

「俺がやるなら犠牲者も減らせるはず……と傲慢ぶる気はないが、努力は尽くすさ。すまないタロウ、帰還は少し遅れてしまうようだ」

 

 決して褒められた事ではない。怪獣が暴れれば、不幸になる人は決して少なくない。わかっていることだ。ウルトラマンは完璧ではない。だから、その罪を敢えて背負おう。

 みててくれスナーク……と決意を固めてたらなんか闇堕ち記憶流れ込んできたんだけど。まぁシナリオとの差異確認には……。

 

 …………は? 

 

 よりにもよってチビ助と名付けられたキングゲスラ虐殺してんだけど、なんなん? お前本当に俺か? 狂いすぎて引くわ。前世記憶の映像とも併せてダブルパンチで気持ち悪い。つらい。

 

「ゲボまき散らしそう、俺本当に耐えられるんか……?」

 

 タロウ、助けて!!!




スナーク:光の国の言葉で小さきものを意味する。これをペットに付けると意味合いは「チビ助」に該当する。つまり2話でトレギアがやらかした事は、どこまでも悪逆非道であると同時に、自分自身をも甚振っているに等しい所業だった。永続発狂しているからしょうがないでは済まされない。
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