トレギアだけど、元の宇宙に帰りたい   作:鵺崎ミル

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5番勝負の4番目何がいいかなって検討してた時、つべの円谷チャンネル見て即決した奴。


VS タイラント

 ウルトラ戦士たちの間で、暴君怪獣タイラントを知らない者はそういないだろう。

 シーゴラスの角、イカルス星人の耳、ベムスターの腹、バラバの両腕、ハンザギランの背中、レッドキングの足、キングクラブの尻尾。これらのパーツを過不足なく纏め上げ、洗練し、君臨した大怪獣だ。合体怪獣はいずれも手強いが、このタイラントも例に漏れない。ウルトラ6兄弟のうち、休憩をはさみつつも5人を倒して地球へ殴り込んだその戦績は凄まじいものだ。

 

 で、このタイラントをタロウはあっけなく倒している。流石は俺のタロウ!! なわけだが、これはいくつか説がある。

 

 まずは怨念説。そもそもタイラントはウルトラ兄弟に倒された怪獣や超獣、侵略者達の怨念を宿して誕生しており、これがウルトラ兄弟への特攻となって極めて有利に働いた。しかし、戦っている間にそれらを消化してしまった、あるいは俺のタロウに倒された怪獣の怨念が宿っていなかった為、スペックを有効活用できずに敗れ去った説。

 

 次に、体力説。海王星より誕生したタイラントは真っすぐに地球へ向かうわけだがこの最中にウルトラ兄弟5人と戦う。ゾフィー戦後は流石に休んでいたが、そこからはノンストップだ。戦闘遅延がなければ土星から地球までわずか20分という超スピードで向かっていたわけで、スタミナ切れしてない方がおかしいハードスケジュールだ。

 

 もう一つ、タロウの戦略説。

 別にタロウがいつまでたっても末弟扱いする5兄弟たちを捨て石にしたとかそういう話ではない。タイラントの構成パーツであるバラバの腕にある鞭を引きちぎられた後、それを光の槍ウルトラランスへ変化させ投槍、それがタイラントの身体に突き刺さり大爆発している。タイラント自身の武装を用いたことで、タイラントの力を上乗せした技となり打ち倒せたという説だ。個人的にはこれを推したい。タロウだからありえる話だ! 

 

 案外全て複合した結果かもしれないが、1つ断言できることは、もしタイラントがもっと全力で己のスペックを活かした戦闘をしていた場合タロウも厳しかったということだ。

 地球に降り立ってからは冷凍ガスもベムスターの吸収能力も、角からの雷撃も、尻尾からの猛毒も使っていない。ゾフィー達を叩きのめした驚異的な格闘能力と、エースを一撃でノックアウトしたデスファイヤー、そしてバラバのムチ攻撃しか使えていない。全身兵器の怨念怪獣としては再戦を叫びたい試合模様であろう。

 

 そういえば、元の宇宙だとベリアル軍にもタイラントがいたな。相当強い個体らしく、ウルトラ戦士たちの光線技は無条件でベムスターの腹から吸収しつつ、イカルス星人のアロー光線で反撃したり、シンプルかつ最も驚異的なタコ殴り戦法で大暴れしていたと聞いている。奇しくも同じくウルトラ兄弟が皆で立ち向かったテンペラー星人とタッグを組んでいるそうだ。

 

『話が長いゴロ。そのタイラントと戦うんだろ? 早く準備しろ』

「うるさいな、あの無敵のゾフィーすら倒した奴と戦うとなるとそれなりに心の準備いるんだよ」

『常在戦場の心構えで未知の怪獣にも果敢に挑むウルトラ戦士たちが聞いたら素で呆れそうな情けない台詞だな』

「ぐっ……」

 

 タイラントについてあれこれ語っていたら、ゴロサンダーリングから容赦ない指摘が飛んできた。

 そう、俺がこれから挑むのはそのタイラントだ。決めたのは自分だが緊張するのはしょうがないと思うんだ。

 

 なお、俺がタイラントと挑むのは私情が関わっている。

 今いるこの世界、なんと丁度タロウが地球へ赴任している頃の時代だったのだ。

 元の世界じゃないの確定してるとはいえ、タロウはタロウだ。タロウが活躍する度に幸せに身を捩り、余計なお世話だと自覚しながらも陰ながら応援したり、サポートしてしまったりしたのはしょうがないことだと思う。

 

 俺のタロウではないとはいえ、思わぬところでタロウ成分を遠方より摂取できてご満悦だった俺だが、流石にいい加減寄り道滞在は良くないと思いなおして、この世界を離れることにした。ぶっちゃけこのままだと普通にバレそうだし。だから、最後の余計なお世話としてタイラントを海王星で撃ち滅ぼし、タロウにはたっぷり正月休みを堪能してもらおうと思ったわけだ。

 

 前世記憶によると自転車に乗れない少年を手伝うのに結局ほぼ1日使ってたようだが。それでも怪獣騒動などなくてもいいだろう。あの自転車の少年なら、そんな命に係わる勇気を見せずともきっと乗れるだろうし。というか怪獣が暴れている中で自転車に乗る位なら逃げた方が良いぞ真面目に。

 

 ちなみに完全な余談だが、この世界のトレギア()に関しては、バカな真似しないようにがっつり教育を済ませている。タロウへのコンプレックスが悪化したり、光と闇について拗らせたりしたの、討論相手いなかったのも大きかったからな。光の国へ密かに侵入し(愛する母星を悪く言いたくは無いが、本当に容易く侵入できて困った。俺もウルトラ族とはいえ、別世界出身だし加えてグリムド宿してるんだけどセキュリティに引っ掛からないのどうなんだろう)魔法空間に拉致って、がっつり自分VS自分をやらせてもらった。

 

 個人的には黒歴史との相対だったんで辛かったです。光への解釈が絶対すぎてウルトラ族にすら失望しちゃうアホだったからな。

 決め手は「もっと開き直ってタロウと接した方がいいぞ(ねっとりボイス」である。最悪精神同調による洗脳も考えていたが、ここのトレギアはアーカイブだけに頼らず(特に地球の美食や自然の美しさ、人間の尊さなどは実際に五感で堪能しなくては意味はないと力説して伝えている)、タロウと共に得た実際の経験を重んじる考えを獲得したから大丈夫だろう。

 

 万が一に備えて、残機処理発動する危険については簡単な加護で防止している。救えるならば、万全が肝要だ。

 グリムド曰く、あの加護は平行世界から完全ランダムで取り寄せるからこそ、一定以上の抵抗力ある個体は候補から自然と外れるそうだ。つまり俺は本当に運も抵抗力もなかったんだな。

 

『いやだから早くいけよ』

「はい」

「(; ・`д・´)」

 

 

 

 ◇

 

 

 

 ─海王星─

 

「ぐおおっ!?」

「キシャアアアアアアア!!」

(; ・ω・)

 

 唸り声と共に誕生したタイラントへ速攻を仕掛けた俺は、逆に反撃を受けていた。

 目覚めと同時にスピンキックを頭へ入れたのに、倒れすらせず、殴りかかってきたのには驚いた。グリムドアーマーを駆使してタイラントの猛攻に耐えているが滅茶苦茶きつい。

 タイラントの攻撃力は知識で得ていたがやはり実際に戦うとなるとそのえげつなさが文字通り身に染みる。前世記憶で引き出した映像資料ではただ闇雲に殴っていたらゾフィーが倒れたみたいな印象だったが、こんな馬鹿げた力でバラバの両腕を振り回していたらそりゃゾフィーだってタダでは済まない。

 グリムドアーマー越しでもこのダメージ。間違いなく、あの幼年体ツイフォンより火力がある。それはその気になれば星を破壊することすらできる化け物という事だ。

 

「グオオオオオオオオ!!」

「なんの!!」

「ギュラララァ!!」

「がふっ!?」

 

 アロー光線を避けて、腹に向けて斬撃の手刀トレギアスラッシュを放つ。光線吸収能力を潰す算段だったが、器用に受け止められてしまった。

 反撃に派手にアッパーを喰らって悶絶する。

 

「ギュルルルオオオン!!」

「!!」

 

 悶絶した隙を許すことなく、両腕を振り回しながら突っ込んできた。

 もうあの宇宙嵐より苛烈なデスゾーンに身を委ねるわけにはいかない。素早く後方へ下がって距離を取る。

 だがそれを読んでいたかのように、タイラントは今度は角から雷撃を飛ばしてきた。そんな能力あったっけお前!? 

 

「しかし雷撃ならば!!」

「(`・ω・´)」

 

 腕のグリムドアーマーで吸収するように防ぐ。ゴロサンダーとの特訓を続けたことで、グリムドアーマーは雷撃に対する耐性を強化したのだ。

 

「トレラケイルポス!!」

「!!」

 

 牽制を兼ねて放った破壊電磁波は、ベムスターの腹にたやすく吸収されてしまった。やはりこうなるか。

 だが足を止めてくれたおかげでこちらも改めて態勢を整えることができた。

 

 あまりモタモタしてるとゾフィーが気付いて乱入してくる可能性が高い。

 助かる一方で、その後のやり取りの面倒くささを考えるとできれば静観してほしいが……。それに絶対万全なコンディションじゃなかったからなあの時のゾフィー。タロウの為にも、少しでも休んでほしい。

 この時期の宇宙警備隊近況報告、俺タイガスパーク開発に夢中だったせいでロクに耳に入ってないけど忙しかったのは知ってる。

 

「フー……よし、いくぞタイラント!!」

「S.T.A.R.S.……!!」

「!?」

 

 再度、タイラントへ向かって攻撃を仕掛ける。

 だがタイラントは今までにない鈍い唸り声をあげたかと思うと、ベムスターの腹から毒霧を噴き出した。

 みるみる広がる毒を前に慌てて足を止めたが、それがいけなかった。

 

「シャアアアア!!」

「!!?」

「(; +`д+´)」

 

 毒霧から突き抜けるように冷凍ガスが吹きだしてきた。避ける間もなく直撃してしまう。

 ウルトラ族共通の弱点である極低温攻撃*1は、俺にも例外なく全身をグリムドアーマーごと凍てつかせた。

 

「ぐあっ!?」

「ギュラララララオオオオオン!!」

 

 表層部のみ、されど全身の氷結。動かない身体にタイラントがバラバの両腕をもって乱暴に殴りつけてくる。衝撃がひび割れるように全身に走り、激痛がその後を追う。

 こんなコンボ直撃すればそりゃセブンもダウンする。アーマー化してるとはいえグリムドすら例外なく凍らせたのは予想外だが、グリムドには一時的なものにしかならない。俺が耐えていれば……! 

 

「シュゴアアアアアアアア!!!!」

「ぐわああああ!?」

「(; ;・`ω・´)」

 

 ウルトラマンエースを昏倒させるほどの一撃、デスファイヤーが俺の全身を焼き上げる。

 グリムドが氷結から脱する直前を狙った完璧なタイミング。タイラントの真髄はその火力や防御力だけじゃない、判断力だと思い知らされる。

 現実逃避気味に感心しているが、大ピンチだ。グリムドが全力で保護を意識してくれているからかろうじて戦闘不能にまで至ってこそないが、所詮はブルー族の肉体。膝をつき、情けなく倒れる寸前だ。

 

 しかし、逆にチャンスだ。トドメを刺そうとしてきたところをグリムドの触手で拘束浸食に成功さえすれば、グリムレイ・ヴェロスフォトスのコンボを叩き込む一発逆転を狙える。邪眼と視線を交わせば、ベムスターの腹も使えまい! 

 諦めない闘志を宿して俺はタイラントを睨む。だが俺がまだ戦えるぞと構えるも、タイラントはその一押しを狙わずにじっとこっちを見つめ、予想外の一手に出た。

 

「グオオオオオオン!!」

「!? ま、待て!?」

 

 タイラントは飛び上がり、海王星をあっという間に脱したのだ。

 やられた。奴の判断力について思い知らされたばかりなのに! 

 思えばタイラントはウルトラ兄弟を殺してはいない。ボッコボコにこそしたが、トドメを刺してはいない。

 そうだ、俺は勘違いをしていた。タイラントはウルトラ兄弟への怨念を宿しているが、ウルトラ兄弟への復讐として最大のやり方は彼等を殺す事なんかじゃない。

 地球を滅ぼす事だ。

 そうだよ思えばあいつタロウと戦った時も街の破壊を優先しようとした様子もあったじゃないか!! なんで気づかなかったんだ!! 

 

「グリムド! 転移で先回りできないか!?」

「(;・∀・)」

「必要ない!? 何を悠長な、あいつは1時間もかからず地球へ……!!」

「グオオオオオン!?」

「!?」

 

 焦って立ち上がると同時、飛び去ったはずのタイラントが落ちてきた。

 グリムドの言葉通りの事態に驚いていると、続いてスターマークが特徴的なシルバー族。宇宙警備隊隊長が海王星に降り立った。

 

「ゾフィー隊長!」

「この怪獣を足止めしてくれていたのは君か、感謝する」

 

 

 

 ◇

 

 

 

 光の国の技術を狙って戦争を仕掛けてきたバット星人を始めとした侵略宇宙人、地球侵略の野望とウルトラ兄弟への怨念著しいヤプール人、3万年前に光の国を襲ったエンペラ星人を筆頭にした暗黒宇宙の勢力、これらの活動は宇宙全体の平和を乱しに乱していた。無論、バット星人の主力艦隊は無事に討伐したし、ヤプール人もエースの活躍によりその大部分の力を喪失、残党レベルが地球へ来訪するもタロウによって駆逐された。エンペラ星人も今は小手調べのつもりなのだろう。テンペラー星人を差し向けたりヤプールを唆した程度で表立った活動はまだ見られない。

 

 だというのに宇宙が全く落ち着かないのは困った事だ。最もバット星人は諦めて等いないだろうし、ヤプール人は『完全なる浄化による死』を与えられない限り宇宙にあるマイナスエネルギーによって何度も復活するので対症療法に過ぎない実情はある。それにしても、便乗して宇宙を荒そうとする困った者たちが多すぎる。

 

 今回も、地球へ赴任中のタロウを除いた我々ウルトラ兄弟は、人知れず大きな悪の勢力を駆逐していた。宇宙船主体で侵攻しており、危険宙域に星もなかったので、警告のち全力でM87光線を撃つことで討伐した。首魁は名乗りをあげなかったが、『この宇宙艦隊は貴様らの光線など効かぬわ!!』だというので最大限の警戒を以て兄弟全員の最大出力で対応したのだが……文字通り蒸発してしまったので向こうのブラフだった可能性は否めない。ウルトラマンに「最初に牽制で確かめれば良かったのでは?」と無言で見つめられたのでちょっと気まずかった。

 

 しかし重要なのはあれが本隊だとしても分隊や先遣隊がいる可能性だ。タロウがいるから大丈夫だろう、という考えはタロウに対する信頼ではなく甘えだ。

 そこで我々は太陽系の各惑星へ向かい残敵確認のパトロールへ向かうこととした。

 私は海王星へ向かっていたのだが、激しい怨念ともいうべき邪悪なエネルギーが感じ取れた。

 

 なにか不味いことが起きている!! 

 

 急ぎ海王星上空までたどり着くと、そこには悍ましい程凶悪な怪獣(しかも体の部位が色んな怪獣や宇宙人の集合体だ!)と、果敢に立ち向かうブルー族と思わしきウルトラマンがいた。今太陽系にいるのは我々ウルトラ兄弟だけのはずなので少なからず驚いた。しかも宇宙警備隊かと思えば違う。いくら私でも100万人すべての隊員の顔と力を把握しているとは言えないが、その中でも極めて少数派であるブルー族の戦士は間違いようがない。いったい誰なのだろうか。

 加えて、彼が纏っている鎧はとても光の国の者が身に着ける類とは思えない不気味さを感じさせるものだったが、あれがあって初めて怪獣の猛攻にも耐えている事も理解できた。ひょっとしたら別時空のウルトラマンなのかもしれない。宇宙警備隊隊長としてはあらゆる可能性を模索するべきだが、悪しき怪獣を前に戦っている様子から光に属するものだと判断したい。

 

 そう見守っていると、あの怪獣は毒霧に冷凍ガス、高威力の炎と多彩な技を駆使してあのブルー族のウルトラマンを追い詰めていた。

 業火に焼かれながらも彼は力尽きてはおらず、まだ戦意があるようだったが、怪獣は決着はついたとばかりに無視して悠々と飛び立っていた。しまった、つい(けん)に集中していたせいでとんだ後手だ。隊長として恥ずべきことを! 

 

「逃がさん!!」

「ギュオオオオオン!?」

 

 猛スピードで星から離れようとする怪獣へ加速してタックルを決める。

 飛行速度は恐るべきものだが、空中戦が得意というわけではないようだ。

 怪獣は私の攻撃の勢いに押されて推力を失い、再び海王星にその身体を預けることになった。

 

 遅れて私も海王星の大地に立つ。

 

「ゾフィー隊長!」

「この怪獣を足止めしてくれていたのは君か、感謝する」

 

 改めてこの不思議なウルトラマンを見る。私の事を知っている点といい、同じ光の国出身のウルトラマンだろうか。

 というか、その鎧のデザインセンスといい、感じ取れる光とも闇ともつかぬ力といい、色々と大丈夫なのだろうか。……流行なのかな? デザインセンスに関して言えば私も若いとは言い難いので、これが世代差なのかもしれない。

 

「さて、話は後だ。この怪獣を倒そう」

「ゾフィー隊長、こいつはタイラント。ウルトラ兄弟への怨念を宿した凶悪な合体怪獣です。俺1人では力及ばず……!」

 

 そうか、タイラントというのか。平和の為に戦っている我々への怨念を宿した怪獣とは、また因果なものを感じるな。ヤプールといい、最近はウルトラ戦士達への怨念渦巻く敵が増えてきたように思う。例え正義の為平和の為と律していようと、相手が平和を乱す悪であろうと、戦うことを選べばそのものが罪であるかのように恨みや怨念が襲ってくるということだろう。ならば、その罪をも受け入れて戦わねばなるまい。

 正直、大艦隊を全力で討滅してすぐのパトロールだったので、コンディションは万全とは言えない。だが、隊長たる者弱音など目の前の勇者へ見せるものではないだろう。

 自信を漂わせ、それでいて安心させるように彼へ微笑む。

 

「なら2人なら勝てるだろう」

「……はい!」

 

 いい返事だ! 

 

「ギャオオオオオオオン!!!」

「シェアッ!!」

「ターッ!!」

 

 タイラントが怒り猛り迫ってくるのを2人で迎え撃つ。

 私が右腕、彼が左腕へ対処し暴虐な攻撃を押し止める。受け止めた威力に驚いた。これは1人で相対していたら今のコンディションの私では返り討ちにあっていた可能性が高い。硬直の隙をついて『部位の継ぎ目』を狙ってチョップを叩き込む。

 合体怪獣というものは、部位そのものは元の怪獣よりも強固になりがちだが、その部位と部位の境目は弱い傾向にある。そこを的確に攻撃すれば、弱らせることはできるだろう。

 

「継ぎ目を狙え!!」

「はい!」

 

 私の言葉に、彼は意を汲んで腕と身体の継ぎ目へ攻撃し始めた。

 見ればその手にウルトラスラッシュのようなエネルギーを宿して攻撃している。

 これは私も参考にさせてもらおう。……こうかな! 

 

「ハァッ!!」

「ギュオオオオオン!!?」

 

 タイラントの胴体と首の継ぎ目から激しい火花が散る。ウルトラスラッシュを宿したチョップ、良い威力だ! 

 感覚としてはマンやジャックなどが使っていた技にも似ている。今度彼等から聞いてみるとしよう。

 

「ギュラララララオオオオオン!!」

「回避!」

「!!」

 

 怯んだように見えたが、追撃を嫌ったのか牽制のように口から炎を吹き散らしてきた! 

 技の使い分けといい、この怪獣は知恵も回るらしい。危険だ、なんとしてもここで倒すべき怪獣だ。

 

「「シェアッ!!」」

 

 タイラントは炎で距離を取ったところを今度は冷凍ガスでさらに牽制してきたが、私も彼も当たらない。

 だが、近づけない。そこを見越した攻撃をしてくるつもりだろうが先手は此方が打つ! 

 

「Z光線!!」

「!?」

 

 光線が直撃し、大きくのけぞるタイラント。

 やはりそうか! 多数の技や能力を有しているが、同時複数の行使はできないのだ! 

 冷凍ガスはベムスターの腹から噴き出しているのだから、なおの事吸収などできないと読んでいたが、切り替えもできなかったので確信する。

 

「今だ!」

「はい!」

 

 彼と共に一気呵成に攻めかかる。

 息を合わせて拳や蹴りを2人同時に打ち込みながら連撃を浴びせていく。

 角に雷を迸らせたが、それは彼が光線技で角ごと撃ち砕き、尾の一撃は私が弾いてカウンターに再び継ぎ目へチョップを叩き込んだ。

 いいぞ、タイラントは弱っている。星の上だから威力に制限をかける必要はあるが、ベムスターの腹に吸収されないタイミングでM87光線を撃てば勝てるはずだ! 

 私と彼とで力強くキックを叩き込むとタイラントはついに怯んだ! 彼へ目を合わせ、一度距離を取る。

 これで決める!! 

 

「M87光線!!!」

「トレラシウム・グリムレイ!!」

 

 私の必殺光線と、彼の必殺光線がタイラントに直撃する。そのまま断末魔すら許さず、粉微塵に爆散させた。

 残心の構えは崩さず、間違いなく倒したという確信を得て初めて気を緩める。

 彼のおかげで、地球の危機を未然に防ぐことができた。感謝しなくては。

 

「ありがとう、君のおかげだ」

「いえ、俺は……まだまだです」

「(;´・ω・)ノ」

 

 彼は、恐らく独力で勝ちたかったのだろう。しかし結果は及ばず、僅かながらに落ち込んでいるようだ。

 それに対して彼の纏う鎧からは何かしらの意志を感じる。私では悪意ではないぐらいしかわからないが、彼は労わるように鎧を撫でているので、彼らなりに絆があるのかもしれないな。意思を持つ武器や鎧というのは珍しくないが、持ち主と絆を育んでいる例はあまり見ない。微笑ましいことだ。

 何か彼に対してしてやれることはないだろうか……。

 そうだ! あの技について助言しよう! 

 

「ああ、君のあの光線技だが」

「あ、はい。すみません、あれはまだ色々試行錯誤してまして」

「そうか、道理で……いや、自分だけの技を極める努力は大事なことだ。僭越ながらアドバイスさせてほしい」

「いいんですか!?」

 

 思ったよりも食いつきが良い。これは宇宙警備隊隊長として有意義な助言をせねばなるまい。

 あの技は、彼本人の力と鎧が持つ力を組み合わせて威力の底上げを図っているようだったが、あれではただ別々に技を放っているに等しい。

 真の威力を引き出すには正しく合体技と成さねばならないだろう。現状では鎧の力の方が強いように思える。

 

「まずは、君自身の力をより鍛える事。そして、その鎧の力と併せるには色々やり方があるだろうが、君は簡単な事を1つ見落としているようだ」

「簡単な事、ですか? グリm……この鎧とは共に在るものですので、絆や息を合わせる意味であれば……」

「違う違う。簡単な事と言っただろう? 絆を深めることも、息を合わせることも、高め合うことも大事だが簡単な事ではないだろう」

「た、確かに……」

 

 理解はしたが思い至らないといった表情に、少し笑ってしまう。

 彼は頭が良いようだが、それ故に見落としには気づきにくいタイプのようだ。

 

「答えはね……回転だ」

「回転……そうか!!」

「な、簡単だろう?」

「はい、ありがとうございます!!」

 

 気づいてしまえば簡単だろう。そう、回転は全てを解決してくれる。

 回転しながらウルトラエネルギーを放出すればブルトンの念力場すら無効化でき、回転しながら360度光線射出で敵の包囲攻撃すら破り、拘束技も簡単に破壊も可能。体術に回転を加えればそれは相手の無力化へ繋げたり、あるいは無敵の破壊力を誇る必殺技と化す。

 

「どう回転するかは君のセンス次第だが、きっと良い結果を産むだろう」

「そうですね、色々試してみます。助かりました!」

「(^▽^)♪」

 

 喜ぶ彼に大きく頷く。

 隊長として、導くことができるのは良いことだ。

 

「では私はそろそろ失礼する。他のウルトラ兄弟達もパトロールを終える頃だろう」

「はい、お気を付けて」

 

 お互い笑顔で別れて、海王星を後にする。

 そうだ、兄弟達にもしっかりと報告してやらねばなるまい。

 怨念を宿した怪獣の恐ろしさと、勇気ある不思議なウルトラマンについて。後は隊長として導いてあげたことも添えていいかもしれないな。

 

 

 

「で、名前は?」

「あ」

「ゾフィー……」

 

 合流後、彼等にも海王星の事について話したはいいのだがマンの指摘により彼の名前や素性を全く聞いていないことに気が付いて、頭を抱えたのは別の話だ。

 

 

 

 ◇

 

 

 

「やはりゾフィー隊長は強かったな。心身共に大分成長したと思えたのだが、上を見上げれば偉大なウルトラ戦士達ばかりだ」

『今回はしょうがないゴロ』

「(・ω・)ノ」

 

 単体討伐はできなかったが、本来の大本命であるタロウの安息は守られた。

 それにゾフィー隊長からトレラシウム・グリムレイの改善点の助言をいただけたのは大収穫だろう。素性説明という面倒なやり取りを覚悟していたが、察してくれたのか気遣ってくれたのか、此方への詮索を一切しなかったのは有り難かった。元来は色々確認するべきなのだろうが、隊長の事だからきっと全部見透かしていたのだろう。

 そんな偉大な隊長と共闘できた事は本当に良かった。やはり、仲間というものは大事だ。共に戦うことの素晴らしさがよくわかる。

 

 単独では負けとも取れる戦いだったが、負けだとしても糧にして次に活かせるのはいいものだ。発明開発と同じなんだな。

 

「さて、勝ち負け云々よりも大きな成果も得たところで……この修行もそろそろ切り上げて本来の目的を優先すべきだろうな」

『光線技改良に専念するのではないのか?』

「それは並行してできるからな。タロウの為に想って活動していると、やっぱり無性に俺のタロウに会いたくなったのが本音だ」

「(;・∀・)」

 

 なんか呆れられてるが本命だというのを忘れてもらっては困る。

 俺は! 元の宇宙に! 帰りたいだけなんだよ!! 

 

『じゃあ修行と戦いはひとまずこれで終わりか? あ、ゴロ』

「終わりという表現よりは優先度を下げるというべきか。ただ、〆に戦いたい相手が1人いてな」

『?』

 

 それは怪獣ではない。正面から勝負をしてみたいと思っているので、〆の相手として元々検討していた相手だ。

 

「では最後に、彼と戦えそうな世界線へ飛ぶとするか」

『おい、誰と戦うというんだ?』

「(・ω・)?」

 

 

 

 

「ウルトラセブンさ」

 

 

 

 

*1
(よく極低温環境である宇宙空間では平気なくせにと突っ込まれがちだが、苦手なのは惑星下での寒冷環境や極低温攻撃である。これを受けたウルトラマンたちは大ダメージを負いがちだが、割とキレる傾向にあるので諸刃の剣。特にウルトラマンジャック)




修行なんだから、勝っても負けても得るものはある。

・オレギアさんによるトレギア救済活動
色んな意味で完全に自己満足である自覚があるので、実は積極的には行っていない。英霊になって生前の自分に八つ当たりするみたいな気分に陥る為。
その為、滞在したり確認した程度の世界ならば「本来の歴史」を優先するが、がっつり関わった世界に限り、本来の歴史や運命など知るかと「タロウの為に」トレギアを修正している。闇堕ち前ならば今回のように論戦で済ませるが、闇堕ち後の場合は強制的に自分の記憶や精神を叩きつけて強制浄化(洗脳)処理している。宿っているグリムドは自身のグリムドと同化する(出力変わらないのでパワーアップはしない)ので問題ない。スペアボディの加護で闇堕ち後の引っ張り出した場合もグリムドは同化していると推察しています。

・オレギアさん的には半分勝ち、半分負け。
転移で連戦していた場合勝てたかどうかよりも、タイラントの海王星脱出を許してしまった時点でオレギアにとっては負け判定。
けど共闘してからは勝ち判定。
単独討伐に至りませんでしたが、強豪怪獣というのは知識があっても勝てるとは限らない。修行重ねて強くなったんですけど、『誕生直後のタイラント』は相手が悪かった。というか修行してたからデスファイヤーが直撃しても戦闘不能に至らず済んだし、ゾフィー合流後も戦えている。
ちなみにタイラント、これだけ暴れさせたのに、様々な媒体に記された技のいくつかなど未使用に終わっている。
本当タロウよく勝てたな……。

・トレラシウム・グリムレイ
度重なる修行と戦いを経てアナストロフィが身につけた技。ウルトラマントレギアとしての技と、グリムドの技を複合照射する。
単純だが、『グリムドの力を引き出しながら、トレギアとしての力も引き出す』という都合上、まだ未完成の技。
まだグリムレイに技の威力が呑まれがちでトレラシウム光線が添え物にしかなっていない。けどトレギアとしての力は日々鍛えられているので少しずつ成長してる。
オレギアさんの目標は真なる合体光線としての完成である。ゾフィーからアドバイスもらったから頑張れ。

・無敵のゾフィーがタイラント戦で『万全なコンディションじゃない』考察
当時の作風では客演でもやられる時は結構なやられ方をするのもあり、この頃のウルトラ兄弟の戦績は良いとは言えない(無論活躍は要所でしている。有名なゴルゴダ星磔シーンなど、罠に嵌りながらも自己犠牲故にああなってる上、エースにパワー与えた後エースキラーにパワーを奪われ、更にエースへパワーを与えるなど敵の有利フィールドだったのに意味の分からないエネルギータンクっぷりをみせている)。
所謂不遇描写だが、ゾフィーは特にその被害にあっていたウルトラ兄弟だろう(次点はウルトラマンジャック)。ただ、作風のせいと言わずともあくまで劇中描写として解釈すると何れも負けてもしょうがないフォローを入れることは考察次第で可能になっている。だいたいは不意打ちとか罠とか仲間庇ってとか。だが一番の理由は『疲労困憊』だと思われる。

そもそもこの時期というのは、本文中にあるように宇宙全体の治安が最悪。当然ながらウルトラ兄弟は超多忙であり、コンディションが万全とは言えない状態の方が多いと言える。ウルトラの父がヒッポリト星人に敗れた理由も、媒体次第とはいえ『極端に疲弊していた』が共通見解になっているし、バードン戦は疲弊してない方がおかしいハードスケジュールをゾフィーはやっている。
そこを鑑みて太陽系外縁部を『宇宙警備隊隊長がパトロールしていた』『他のウルトラ兄弟も太陽系内にいた』という点から考察すると、タイラントとは関係のない部分で大仕事をしていた可能性が高い。宇宙各地で正義の為に戦っているウルトラ兄弟がみんなして太陽系に集まるケースなんてお忍びBBQ大会という休暇でもなければ緊急事態でしかない。地球へ迫る悪の勢力(ジャッカル大魔王みたいなのとか)と戦ってたりしていた可能性は十分ある。その残敵掃討のパトロールをしていたらタイラントを見つけてしまい果敢に挑んでボコられた、というのは考えられないだろうか。カラータイマー、別に疲労してるからと言って鳴るとは限らないし。
タイラント、オーブファイトでもクッソ強かったので疲弊してる状態で戦ったら絶対負けると思うので私はこういう解釈を取り、本作に適用させています。

・ゾフィー隊長、うっかりキャラ説
エイプリルフールの捏造キャラとかMr.ファイアヘッドとか公式にすら色々ネタ扱いがされてたころと違って今のゾフィー隊長はすごく威厳あって格好いい描写が目立つ。
ただ、個人的にウルトラ族ってどっか天然な部分あるのと、ゾフィー隊長の過去の発言や挙動からみて「多少うっかり属性はある」と解釈してます。

・〆の相手はウルトラセブン
ウルトラファイトの主人公ですよ、挑まないと駄目
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