トレギアファイト 五番勝負
勝負、最終
ウルトラマントレギア アナストロフィ
空は輝きを喪失した絶望の闇が覆っているというのに視界は不思議なほど明るい。だが、視界を得た代償とでもいうのだろうか。見渡す限りが凡ゆる生命体の死体で埋め尽くされ、死者の嘆きや怨念が風となって吹き荒れる地獄の有様を嫌でも見せつけられる。
邪神魔獣グリムドが君臨した星の全てはこうなった。
全てを嘲弄するような1つ目の邪眼、何かを食すわけでもないのに攻撃的な牙を生え揃えさせた醜悪な口。禍々しい紅き角を4本携え、蒼い体毛を髪のように粗雑に伸ばしている。第二の顔を有する蒼い体躯に無数の紅き棘、一際巨大な1対の棘は翼のように大きく広がっている。両手足は白骨を思わせる色合いと頑強さであらゆるものを破壊する意思が宿っているようだ。同じ蒼のはずなのに、不気味な滑らかさを宿した2本の尻尾。人々がイメージした悪魔や邪神を思わせる要素を節々に備えており、この邪神魔獣こそを、無意識のうちにモデルとした可能性を思わせる。
あるいは、人々のイメージが逆流して、この邪神魔獣の姿を象ったのかもしれない。
「■■■■■────!!!」
邪神の咆哮で世界そのものが揺るがされるように、周囲一帯の全てが振動した。柔らかな死体はその身に残存する僅かな血を無様に噴き出し、硬い死体はかつて生きていた証明もろとも砂塵と化し、怨霊たちは虚無へと還るように霧散する。その生きとし生けるものすべての存在を認めぬかのように、生命の行きつく先である死すら冒涜する有様は耐え難い怒りを胸に宿らせる。
だが、それが邪神なのだと冷静に荒れ狂う情動を諭し、無思慮な行動に走ることを避ける。
目の前の魔獣は決して隙を見せているわけではない。迂闊な一手は己に無残な最期を与えるだけに終わるだろう。
「……シェアッ!!」
咆哮が止まる寸前に足を踏み出し、吶喊する。大地を踏みしめているつもりでも、その足先にあるものは命を宿していたものだ。
湧き上がる感情が慟哭となって口から飛び出そうになるが、それでもここで足を止めたり、思考をずらす余裕などない。
<<(◎)>>
「!!」
邪眼が此方を見据える。
当然の権利を行使するように、その視線は対象を
「(`・ω・´)」
「セヤァッ!!」
トレギアとしての力、グリムドのもたらす力。2つを拳で融和させながら、邪神魔獣の胴体部へ叩きつける。衝撃と同時に融合した力は爆発し更なる火力を生み出した。
並の怪獣であれば、この一撃で消し飛ばせるほどの火力だが、魔獣は僅かにのけぞったぐらいで効いてはいない。70m級の巨体である以前に、力が体内へ通っていないようだ。
続けざまに一撃、また一撃と叩きつける。拳が効かない相手などもう散々戦った。動揺などもはや無い!
「■■■■──z__!!」
痛みすら覚えていないだろうが、煩わしさは感じたのだろう。軽い返礼であるかのように、邪神魔獣は咆哮をあげながら、体のあらゆる角からグリムボルトを放出してきた。
此方を狙っているつもりでも、まるで自然の落雷だとでも言わんばかりに、無駄な攻撃が当たり構わず周囲を爆砕していく。遠くへ飛んだものに至っては地平線の向こうまで届き、絶望の闇すら容易く引き裂く紅い輝きを生んでいた。
確信する。この邪神魔獣は、そのスペックばかりが膨大でも、戦闘経験値が高いわけではない!
「それも、効かない!!」
「────!?」
グリムドアーマーよりグリムシールドを顕現させ、直撃ラインのグリムボルトを完全に防ぎきる。流石の魔獣と言えど、これは驚いたようだ。
度重なる鍛錬と経験により、グリムドアーマーは雷の属性に対して絶対の耐性を誇る。向こうからすれば理不尽だろうが、こちらとしても理不尽の権化と相対している気分だ。
既に守るものもいない世界だが、守るものがいる中でコレと戦おうものなら、その難度は計り知れないだろう。
「トレラアルディガ!!」
「────!!」
グリムシールドを解除して、不意打ちのように高火力の光線技をその邪眼に向かって叩き込む。
激しい爆発が邪神魔獣の顔面部で発生するが、その巨体は倒れない。
煙が晴れると、傷1つない邪眼が此方を興味深げに見つめてきている。
「■■■■────!!」
「!?」
その巨体が、まるで軽いものであるかのように邪神魔獣が飛び上がる。
宙で一回転したかと思うと、此方に向かって加速落下する。加えてグリムボルトをまき散らしながら右足を突き出してきた。
「!!!」
「(; ・`д・´)!」
命の危機。
牽制技とは思えない火力のあるグリムボルトをグリムドアーマーで弾きながらかろうじて後退回避する。
グリムドの放った空中キックは地面に突き刺さると周辺地域一帯を爆散させた。
無数の死体や土が舞い上がり、それらは今なおまき散らされているグリムボルトですべてが塵と消える。中心部から四方八方へ地割れが走り、激しい揺れが世界そのものに悲鳴をあげさせていた。
「────?」
「(; ・`ω・´)」
…………なんてやつだ。
邪神魔獣は回避されたと思っていなかったのか、足元に意識を向けて首を傾げている。
威力は恐ろしい。だが、それは本当の隙だと理解している! 今度はそちらが雷撃を浴びるがいい!!
「グリムボルト・スタウロス!!」
「!!?」
邪神の雷を、擬似ウルトラホーンに集束、精密制御を可能とした必殺技として撃ち放つ。
強大な雷撃が邪神魔獣を中心に十字架を模して炸裂した。そのまま焼き尽くすまで攻撃を続けてくれる!!
絶え間なく続く裁きに、流石の邪神魔獣も苦しそうに呻いているのがわかる。だが、魔獣はその全身を静かにねじり始め、弾くように回転した。
「■■■■■────!!」
「なに!?」
超高速に廻るコマのように回転する邪神魔獣。そのままこちらのグリムボルトに対抗するように己のグリムボルトを纏いだしあろうことか相殺し始めた。
回転を始めてわずか数秒でグリムボルト・スタウロスを完全に相殺、霧散させる。
技を放つ余裕すら奪えていたと思ったのは甘い見込みだったようだ。
「■■■■──z__!!!!」
「グワッ!?」
回転の勢いを上乗せするように、邪神魔獣が突進してくる。
両腕で防ぐように防御したが、あの角でもってかちあげられ、そのまま宙へ撥ね飛ばされた。
全身が砕かれるような衝撃が襲ったが、グリムドアーマーにより致命傷は回避している。地面に転がりながら着地し、上手く受身を取った。ゴロサンダーからの指導が活きている。
「(`・ω・´)」
「大丈夫だ、戦える!」
邪神魔獣は此方の無事を見るや再び突進の構えを見せた。
同じ手はそう何度も食わん!!
Come on!!
Snake Darkness ring! Engage!!
『キシャアアアア!!』
スネークダークネスの強大な暴力としての力が、右腕に集中する。
溢れるばかりのエネルギーがグリムドアーマーをスネークダークネスの肥大化した右腕を思わせる造形へ変えていく。
「デモンブラッドジャッジ!!」
「────!!?」
スネークダークネスの右腕を70万トン級の破壊力で勢いよく叩き付ける、単純明快ながら極めて強力な破壊の一撃。
そこに俺の力、グリムドの力が合わさることで140万トン級の破壊力に達している。
そんな一撃をカウンター気味に打ち付けられた邪神魔獣は大きく吹き飛ばされ、地面へ叩きつけられた。
「ありがとうスネークダークネス、助かった!」
『キシャアアアア♪』
「( #゚Д゚)」
「もちろんグリムドにも助かってるぞ!」
「(*・▽・)」
怪獣リングの力は便利だし強力なのだが、重要な場面で頼ると、グリムドが拗ねるのが難点か。
「■■■■■────!!!」
怒りを宿したような咆哮をあげながら、邪神魔獣が立ち上がる。
今の一撃で片方の翼のような赤い棘がへし折れているのがわかる。
思った以上に効果があったようだ。グリムボルト・スタウロスの効果もあったかもしれない。
「■■■■──────!!!」
邪神魔獣の邪眼へ悍ましい力が急速に溜まっていく。
邪神魔獣グリムドが放つ必殺技『グリムレイ』──それを待っていた。今のアレが放てる最大の技にして最大の隙だ。つまりこれに勝る一撃を叩き込めば、そのまま勝利できる。俺の必殺技が、奴の必殺技に打ち勝てるかどうか、真の勝負だ!!
グリムドアーマーから混沌の力がとめどなく溢れ、擬似ウルトラホーンに集束。
アーマーの内よりカラータイマーを輝かせ、ウルトラマントレギアとしての力を両腕に集束。
併せて放つ混沌の力に、回転を加える!!
「トレラシウム・グリムレイ!!」
全てを受け入れ混ぜるような回転を込めて放たれた必殺光線は、過去のただ併せただけの一撃とは異なり、輝かしい蒼い煌きを纏った凄まじい一撃へ進化していた。
邪神魔獣必殺の一撃とぶつかり、拮抗する。だが、真に力を爆発させたこの必殺技ならば、いける!!
「ウオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!!!」
「──────!!?」
全身が輝く感覚と共に、更に出力が跳ね上がる。
均衡は崩れ、混沌の力はより大きな混沌に呑まれるように押されて行き……。
「■■■■■■■■────!!!?」
俺たちの必殺技は、その断末魔のような咆哮ごと、邪神魔獣が構成する肉体の全てを消し飛ばしたのだった。
◇
─地球・日本某県にて─
唐突に始まってしまった再度の大一番たる戦いを終えて、俺はちょっと洒落たような料理店へ足を運んでいた。
改めてみんなとお疲れ様と祝いたいと和室1室を予約確保しており、怪獣リングで食事に興味がある面子はそれぞれ上手く適応させている。
入店時は1人だが、人数分の予約なので参加者人数分の認識阻害を適応している(ぞろぞろ入る際、怪獣達だとどこにぶつけるかわかったものではない為)。
「キシャー♪」
「ヌガーヌガー」
「モガーモガー」
予約できたのはそこそこ広い一室で、今は料理に舌鼓を打つ怪獣達が楽しそうにしていた。和室を選んだのも、椅子に座れない怪獣が多かったからだが、やはり正解だったようだ。
スネークダークネスのようにずっしりした怪獣たちは人間サイズでも地球人の規格に合わないうえに、座布団ですら上手く座れなかったりするのもいたので、限界サイズまで縮小して『認識阻害:子供』で誤魔化している。介助用ヒューマノイド型ロボット(製作者チブル星人)を付けているのでスプーンやフォークすら上手く扱えなくても大丈夫だ。
ゴロサンダーは器用に胡坐掻いて座っている。「メシより戦いがいい」とか言っていたくせに、刺身を口に入れてゴロゴロ唸って上機嫌だ。
ゼットンはあの黄色い部分から「ひゅぽ」っと音を立てて消えるように食べている。なんか宇宙七不思議を見た気分だ。
「うん、美味い」
「(・ω・)」
コウイカというイカの刺身を1切れ口に含めば、肉厚なのにイカとは思えぬその身の柔らかさと旨味にほっこりする。この甘い味わいはどこからくるのだろうか。
しっかり噛んで味わった後に日本酒だ。店員に勧められた、徳利とかいう容器に入った日本酒を、そのまま湯煎にて50℃程に温めた
しかし徳利という容器や盃というコップもなんとも良いものだな。こういうのを雅と表現するのだろうか。五感で楽しんでこその料理、食事なのだから、器にも全力を尽くす姿勢、素晴らしいな。
「なんだトレギア、こういうのはこれごと飲めばいいんだゴロ!」
「……」
徳利とは別の大きなガラス瓶をひったくってそのままぐびぐび飲み始めたあのおっさん怪獣は後で拳骨だな。
まったく、こういう風情ある料理店には相応の振る舞いや品格というものが求められるんだぞ。
「あ、そこの上座に置いてあるタロウに触るなよ」
「キシャー……」
「ヌガーヌガー」
「モガーモガー」
「ゼットーン……」
「トレギアお前さぁ……」
「(; ・`д・´)」
「? ??」
◇
様々な料理を堪能し、ゴロサンダーを1発ぶん殴ってから全員怪獣リングへ戻し店を出る。満足気に帰路へ着く。
楽しめた怪獣もそこそこいたが、味覚そのものが違っていたせいで満足できず肩を落とした怪獣もいた。そもそも食事形態そのものが適さずにリングのままだった怪獣もいるからな。
やはり擬人化機能は動作確認しておくべきだろうか……? 後日ゴロサンダーあたりに試行依頼してみるか。
すぐに魔法空間へ入ることはせず、ひんやりした夜風を楽しみ歩く。
改めて邪神魔獣との戦いを振り返るが、全力を出して、全ての成果を活かした勝利だったと実感している。
セブンという絶対に勝てない相手を知ったのもあって、あの邪神相手に気後れせず挑めたのが一番の成長だろう。無駄ではなかったんだなあの惨敗。
「グリムドが『セブン戦の口直しに自分と戦って修行成果確認しないか』といった旨の提案してきた時は驚いたものだが……正しく修行の〆になった気がするよ、ありがとう」
「(*・▽・)」
そう、あの戦いはグリムドがセッティングしてきたものだ。セブンとの戦いがあまり納得いってなかったのか、あるいは〆に自分が一切関わってなかったのが不満だったのかはわからないが、本当に唐突なタイミングで提案された。あの並行世界のグリムド、何者かに使役されていたようなのでそのまま盗んだものらしい。邪神魔獣グリムドを使役するヤバい奴とはいえ御愁傷様な事だな。
「(^_^*)」
グリムドから上機嫌な感情が伝わってくる。
並行世界とはいえ事実上同一の存在であるはずだが、派手に爆殺したことについては何も思っていないらしい。
じゃないとあんな提案しないとはいえ、相変わらず倫理観がよくわからん。
「(・ω・)ノ」
「自分は在るのだから何も問題はない、ねぇ。よくわからないが俺も並行世界の俺とよく殴り合ってるからグリムドが気にしないならいいさ」
ちなみに爆散したとはいえ、前世記憶にあるタイガ劇場版にあったようにエネルギー体となって対象へ憑りつくといった能力もあるので、肉体が滅んだぐらいでは死滅していない。
なので、グリムドがきっちり吸収同化処理をしている。これも改めて思うとめっちゃえげつない自分殺しな気がするが……うん、やっぱり邪神の価値観は奇々怪々だ。
俺ですら理解し合うにはまだ遠い存在である邪神だが、唯一交流できる身としては理解への努力は怠りたくない。1歩ずつでもグリムドを理解していくとしよう。
「よし、戻るかグリムド」
「(・ω・)」
「ところで理解しすぎてまた発狂とか闇堕ちとかあったりするのだろうか。ならグリムド理解しない方が良かったりするか?」
「( ・ω・)」
「目を逸らすな目を」
真打勝負は邪神魔獣グリムドでした。
こういう勝負ネタやってたから絶対予想されてた。冒頭元ネタは『FGO 英霊剣豪七番勝負』。
・邪神魔獣グリムド(50%個体)
グリムドが【アブソリュートタルタロスが回収使役していた個体(ウルトラヒーローズバトルステージエキスポ2021)】を掠め取って顕現させた。タルタルソース涙目。
バトルステージ媒体であるが故であろうが、特殊演出こそあったが所謂グリムド空間を使ったとは思えない(というかそれならレイガじゃないと詰む)様子だったので、蘇生したまたは回収されたこの個体は完全体ではなく50%個体であると思われる。ウルトラ戦士の一斉光線で爆破したけど。
顕現させた世界は『かつてグリムドが封印される前に訪れた結果終わらせてしまった世界(星)』。SANチェックもいいところだが、本人的には「仮にも自分と戦うんだから相応しいステージがいいよね」ぐらいの感覚で選定しているので悪気はない。オレギアさんはグリムドの邪神たる部分にはドン引きしているが、ある意味お互い様である。
・〇万トン級の破壊力
よくわからんが凄そうというのだけ伝わってくる表現。
よくある爆発時の破壊力をTNT(ダイナマイト)ならどれほどの量かで示すTNT換算で言うのだったらこの70万トン級の破壊力というのは町1つ消し飛ばす爆弾並の一撃になります。
ちなみにツァーリボンバがTNT換算で言えば50メガトン(5000万トン)らしいです。こうして比較すると今回放った140万トン級というのは人類兵器未満のように思えますが、爆発というのは広がっていくものです。この数値のパンチを放つってことはその破壊力が1点に集中することになります。あとはわかるな?
今回はカウンター気味に放ったのもあって邪神魔獣グリムドの大きな赤い棘を爆砕している【この威力!!】。スネークダークネスの活躍にグリムドは拗ねた。
・オレギアさん大勝利。
善戦した理由、グリムド宿してるから対グリムドの知識が豊潤、耐性も十分。最後は様々な経験とゾフィー隊長のアドバイスが活きて、ウルトラマントレギアアナストロフィとしての必殺技を完成させました。ちなみに善戦できなかった場合確定で負ける。突進技を1発もらった時点でもう危険域であり、次の一撃を受けたらHPゲージが削りきられる状況。タロウがウルトラダイナマイトで勝負を決めにかかった事が最善(同時に原作トレギアの狙い)であった解釈である為『善戦できないなら死ぬ』という扱いになりました。
・トレギアファイト総括
ツイフォン(幼年体)戦ではアナストロフィの成長を、スネークダークネス(人形)戦ではトレギアの成長を、ゴロサンダー戦では更なる磨きを、タイラント戦では新たな課題を得ました。セブン戦で得たものは、『完敗という経験』を得ています。コンプレックスで捻じ曲げて受け止めなかったし、ちゃんと糧にできる心身の強さを示しています。
そして邪神魔獣グリムド戦で、課題を突破し新必殺技を完成させました。改めて五番勝負編、完!