なあに半年も1年も誤差ですよ、トリガーだってナチュラルに2年経ってますし。
この地球に宇宙人が密かに暮らしている事は、最近知られている──。
ウーラーが眠り、トレギアが去って1年が経とうとしていた。
E.G.I.S.は宇宙人との共生という未来を示す政府公認の企業モデルケースとして、マグマ星人とマーキンド星人を正規雇用し(既に宇宙人1名、アンドロイド1名雇用しているが)、警備組織として日々多種多様な依頼をこなしていた。要人警護、貴重品警護、遺失物捜索、宇宙人トラブルとの表向き対処係、事件調査、広告看板、ハッカー対策、YouTuber案件……警備組織とは?
外事X課にいいように使われているようにも思える纏まりのなさだが、実際モデルケースとして適用された企業である都合、認知度向上の為に色々顔を出す必要性はあったりする。
今日もまた、E.G.I.S.に1つの依頼が舞い込んだ──外事X課から。もはや恒例行事であった。
佐倉警部の表情から既に厄ネタであることを悟ったE.G.I.S.女社長佐々木カナは、全員を集めて話を聞く姿勢を整える。聞くだけは聞いておこうという態度も隠していないが、結局受諾するしかないこともなんとなく理解していたからだ。
かくして彼の口から語られた内容はまた奇妙なものだった。
「宇宙人の行方不明者が多発?」
「ああ、あれから少しずつ表舞台に顔を出せる宇宙人も増えてきているし、正式な手続きを以て入国した扱いを受ける宇宙人も多くなった。彼らは我々が常に追跡可能な状態になっていて、それで発覚した。1人でも問題だがほぼ同時期に3人いなくなっている。もしやと調査したところ不法入国している宇宙人が次々消息不明になっていることが判明した。把握しているだけでも38名。実際はもっと多いだろう」
正規入国宇宙人の失踪者はケンタウルス星人、グローザ星系人、ターラ星人の3名。少なくとも事前調査では3人に共通点らしいものはなく、面識もない事がわかっていると言う。佐倉は他にも行方不明になったと思わしきポイントなどを資料と共に次々と開示し、ほぼ承諾前提のように話を進めていた。これには佐々木も呆れるばかりだ。
話が進む中、ヒロユキは佐倉の語る正規入国宇宙人の扱いに対し、不満げに呟く。
「追跡、ですか……」
思ったよりも声が響き、失言を悟る。だが佐倉は柔らかな表情でヒロユキに語りかけた。
「今はまだしょうがないことだ。なに、『追跡なんて金と人員の無駄だ』と判断される平和と信頼関係を目指していけばいいんだよ。それに今回のように、実際行方不明に気付けているから今は無駄ではない」
「……はい! となれば、行方不明になった宇宙人達を急いで見つけないと!!」
「ヒロユキ、ステイ」
「ハイ」
不満を露わにしていたくせに1発で絆されて動くんじゃない。佐々木の圧に若き青年はあっさり席に座り直した。
相変わらずの様子に、面倒ごとを持ち込んだ側である佐倉も苦笑する。
「話を戻そう。君達にはこの事件の原因究明を含めた協力を依頼したい」
「もし陰謀なら規模が大きすぎる気もしますが。それに今は表向き裏向きという話もないでしょう?」
「これからが人類と宇宙人にとって大事な時期である以上、お互いにいらぬ風聞やレッテルは産みたくないし、早期解決が望ましい。厳しい手続きをクリアした正式入国者が自発的に行方不明になったとは考えたくないのもあって、ヴィランギルドの仕業かとも思ったんだが……」
「違うんですか?」
「潜入工作員からの報告では彼方も騒ぎになってるようでな……元々一枚岩という組織ではないにしろ、仲間割れとも考えにくい。捜査形式の幅を広げる意味でも君たちの手を借りたいのが本音なんだ」
「……」
最初はシロでも、ヴィランギルドから何かしらの交渉を受けた結果、身を隠すことになったという線は捨てきれない。あるいは攫われた可能性も視野に入る。だが、ヴィランギルド自体も唐突に消息を絶った構成員が多発し構成員不足が著しいという報告があがっており、なんらかの悪意ある第三者による集団誘拐事件の線も浮上していた。となると、多くの難事件を解決してきたE.G.I.S.にも頼りたいとなるのが外事X課の判断である。
関わらせておけば、怪獣出現時にタイガ達が出動しやすいだろうという打算も含んでおり、佐々木カナはそれを悟ってため息をついた。
懇願するような視線と、期待に応えたい視線が自分に集中している中、一応は深く検討した体裁を取る為、渋い顔のまま佐々木は唸り……首を縦に振った。
「……わかった、引き受ける。全力で調査するから、報酬はしっかりね」
「ありがとう!」
依頼受諾となれば、迅速に動いた方が良い。
幸いにして調査の方向も、人員も十分だ。まるで最初から決めていたかのように、佐々木は手早く指示を飛ばす。
「ホマレ、マグマは2人で宇宙人の伝手で調査を」
「はい」
「おう!」
「ピリカとマーキンドちゃんはネットなどから情報収集を。ダークウェブアクセスも許可するから」
「オッケー!」
「承知しました」
「ヒロユキは、ここんとこ無理してるし今は休んでと……言っても聞かないよね」
ただでさえ最近「僕は地球人と宇宙人の懸け橋になるべき存在ですから!」と使命感に燃えすぎているヒロユキ。社長の立場としてもやんわり諫めているが、聞いてくれない。一警備員として業務に専念しながら、タイガに変身して戦うという事がハードワークなのは言うまでもなく、無茶をするのが目に見えていた。
「はい!」
「はぁ……」
案の定、元気よく笑顔で返事する青年に、二度目のため息が零れるのだった。
◇
タッグを組むことになったホマレとマグマ星人は、E,G.I.S.専用車にて軽く街中を走らせていた。
最初から目的地は決まっている。外事X課の調査範囲外を狙っていくならば、彼等が頼っていないであろう情報屋に頼ればいいからだ。
「俺が知ってる情報屋はファントン星人だが、マグマはどうだ?」
「あいつか、対価の割に精度が高いからいいと思うぜ。俺が頼りにしてた奴にスラン星人がいたんだが、あいつおっ死んだらしくてなぁ」
「ヴィランギルドの面子も捕まったり倒されたりで大分減ったよな……ゾリンが捕まるとは正直思ってなかった」
「海外は知らねぇが日本じゃ半壊も良いところだ。鞍替えして正解だったかもしれねぇ。地球人と法の膝元で共存共栄できるってんなら、無理に非合法の立場に拘らなくてもいいからな」
話している内容はカタギの人間に聞かせられないような類ばかりだが、それでも心なしか互いの表情は柔らかい。
対ウーラー作戦においての共闘から、ホマレとマグマは宇宙人同士で友情が育まれていた。
道中、情報屋への対価も兼ねてたい焼きなどを買ったりしつつ、2人はファントン星人が縄張りにしている高架下トンネルに到着する。
メインが情報屋とはいえ、こんな人気がない場所で開く露店に果たして意味はあるのかと疑問に思ったりもするが、本人なりの趣味だろうとホマレは考えている。
「あれ、ファントン星人の奴、店を開いたままいねぇなんて珍しいな」
トンネルを覗くと、いつもなら人間に擬態したファントン星人がわざとらしい商売言葉を使ってきたりするものだが、店が置かれているだけで彼はどこにもいなかった。
訝しむマグマ星人だが、ホマレは警戒をはねあげる。珍しい、という言い回しで済ませていいものではない。彼ならば通常絶対に取らない選択肢だからだ。
あるとすれば、何振り構わず逃げなければならない時だけだ。その時逃走する方向は……。
「おい!」
「ついてこいマグマ! ファントンが危ないかもしれない!!」
「はぁ!?」
自分たちが来た側とは別の出口に向かってホマレが走り出し、マグマ星人が慌てて後を追う。
出口からすぐに草木ある横道へ飛び込めば、獣道に偽装された道が両足を迎え入れる。ファントン星人が逃げるとすればここしかない。
そのまま全力で突き進むと、開けた空き地に到着し……異形がホマレの目に飛び込んできた。
「!?」
それは闇の塊といった表現が真っ先に浮かんだ。
自分の身長と同じぐらいの高さまであるそれは黒と紫が渦巻くように不定形を象っている。スライムのような、泥のような、そんなものが自力で頂点を伸ばし、ずりずりと動くのは悪い冗談であるかのようだ。塊からは、まるで羽虫の群れのように闇のような粒子がざわざわとまとわりついており、怖気が走る。
不定形ながらも頭部と思わしき部分にはぼんやりと空虚な穴が2つあり、それが図々しくも目であると主張してきている。
宇宙人ではない。怪獣でもない。もっと冒涜的な何かだった。
「……ッ!!」
より見つめていれば、強制的に『理解』させられ精神が削れていたかもしれない。だが、ホマレは優先順位を間違えず、目的も間違えなかった。
塊は、ぱたぱたとテープのような不気味な触手を伸ばしファントン星人を捕えていたのだから。
「た、助けてくれ!!」
「そのファントン星人は解放させてもらう!!」
「うわ、なんだあれ!!?」
ホマレが吶喊をしかけ、遅れて到着したマグマ星人が思わず口を押さえて吐気を抑える。
電磁警棒を取り出し、闇の塊に叩きつける。塊は仰け反るように後退したが、ホマレは内心安堵すらしていた。
少なくとも、物理攻撃が通る存在らしい。
「マグマサーベル!!」
塊がホマレに意識? を向けた隙を突き、マグマ星人が自慢のマグマサーベルで触手を切断し、ファントン星人を救出する。
ホマレが攻撃を仕掛け、通用したのを確認してから動くあたりしっかりしていた。
ファントン星人は疲労困憊と言った様子だが、傷などはない。彼の解放に併せて、ホマレは塊と距離を取る。それは正しい判断だった。
ファントン星人の代わりを求めるかのように、十数本もの触手が塊より飛び出し、一斉にホマレへ襲い掛かったからだ。
「チッ!!」
電磁警棒と自慢の身体能力で捌いていくが、向こうは絶え間なく触手を突き出してくる。
殺意よりも捕縛を優先しているようで、だからこそ足首や肩といった狙われると鬱陶しい部分へ集中的に触手を絡めようとしてくるから厄介だ。ファントン星人がなすすべなく捕まっていた様子から、一度触手が絡めば、一瞬で無力化されると推察し、ホマレはとにかく回避と受け流しに意識を集中する。
1人だったならば多少の無茶を覚悟であえての突撃も検討したかもしれない。だが今は随分と頼りになる新入社員がいた。
「いっちょあがりだ!!」
触手をまき散らしていた塊が4分割され、崩れ落ちる。
下手人たるマグマ星人はマグマサーベルの輝かしい切味を見せつけ満足気だ。
地面に転がった断片たちは、そのまま霧散するように消えていく。痕跡1つ残らず消えた塊に2人は眉根をひそめる。なんとも不気味な存在だった。
「すまん、助かった」
「何、役割が変わらなかっただけだ。ファントン星人を解放した俺に来ると思ったらお前に行くんだもんな……同時攻撃するタイプじゃなかったからうまくいったが」
少なくとも目当てが宇宙人捕獲なのは間違いないが、触手を切断したマグマ星人ではなく、ホマレに集中攻撃を仕掛けたのが解せない。それも、マグマとファントンを無視して隙だらけという不合理さだ。
不気味な上に不可解という気味の悪さが、不快感となってへばりついてくる。
だが、それを僅かでも剥がしてくれる存在がここにいた。
「あまり応用力のない使い魔だったのだろう。恐らく優先順位が設定されているのみで活動していたんだ」
地面にどっかりと座り込んだファントン星人が大きなため息と共に求めていた答えを吐き出した。
「あれはなんなんだ、知ってるのか」
「ああ、助けてくれた礼だ。ただで情報を提供しよう」
◇
─E.G.I.S.本社─
社長指示により、ネット上からの情報収集に専念していたピリカとマーキンド星人。
片や優秀なアンドロイドにして副社長、片やヴィランギルド主催のオークション経営に携わっていた経歴ある会計。共に情報収集にかけては相応の実力を有している。
しかし、宇宙人失踪事件に関しては手に入るのは外事X課より提供された資料以上のものは中々見つからずにいた。
「あー、ダメだ。組織犯罪なら絶対足が付く場所からも見つかんないし、失踪宇宙人の足取りも有益なものはなし。ダメもとで探った大型掲示板からじゃせいぜい突拍子もない陰謀論ぐらいだね」
求めた成果が未だに得られず、ピリカは肩を回し、目元を揉んで溜まった疲労を解す。アンドロイドなのに。
一方、マーキンド星人は訝し気な雰囲気を纏わせ、画面を前に唸っていた。
「ふーむ……」
「マーキンドちゃんも手がかりなし?」
「手がかり、と言いますか……ヴィランギルド時代の専用アカウントと機材を用いて宇宙人によるダークウェブサイトを閲覧していたのですが、おかしいんですよ」
「おかしい?」
マーキンド星人の言葉に、ピリカも彼女の見ている画面をのぞき込む。
宇宙共通語が用いられているサイトは怪獣取引、宇宙船売買といったものから地球侵略計画の賛同者を募るような眉唾な企画ページも入った類だ。これには思わず「うわぁ」と声が漏れる。
「このサイトを管理しているのはレイビーク星人なので、こいつの仕業じゃないかと思っていたんです。あれの母星はヒューマノイドの奴隷を酷使して発展してきた歴史がありましてね。案の定数を減らし過ぎて立ち行かなくなってからは、各惑星から奴隷確保しようと拉致侵略を行っているんですよ」
「うわ最低、滅べばいいのに」
「ピリカさん辛辣ですね。それが彼らの歴史と文化、考え方ですよ。許容できるかは別ですけど。ところが、交流ページをみてください」
マーキンド星人が交流掲示板と書かれたページリンクをクリックする。
そこには、マーキンド星人と同じように疑っていたのだろう、管理人を糾弾する宇宙人の暴言がいくつも並んでおり、当の管理人が必死に弁明しているコメントもあった。管理人の言葉には、寧ろ身内も行方不明だという実情が暴露されており、この件に関しての情報収集すら呼びかけているほどだ。
「マーキンドちゃん、犯人でも白を切るのは普通じゃないの?」
「私もそう思ったんですけどねぇ、ただ失踪宇宙人にヴィランギルド構成員も含まれている大規模な数である以上は流石に悠長すぎるんですよ。本当にクロなら報復を恐れてさっさとサイトを畳んで地球から脱出するべきタイミングです」
「え、ヴィランギルドもなの!?」
「騒ぎになっていた理由はそれのようですね。しかし彼は地球に拘り続け、あげく失踪したという身内の情報データまで開示して、情報提供を呼び掛けているわけです。彼なりに犯人追及をしているわけですから、シロっぽいです」
「つまり、ヴィランギルドや悪徳宇宙人達でも犯人がわかっていない?」
「そういうことになります」
結局わからない、という結論になったわけだが、これはこれで嫌な調査結果だった。
既存組織のいずれも犯人ではないということは、完全に暗躍している存在がいるということなのだから。
情報収集の方向性を変える必要がでてくると頭を痛めていると、マーキンド星人が声をあげる。
「おや?」
「どしたの?」
「いえ、今書き込みが1つ増えてまして……」
意味深な反応に、再び画面をのぞき込む。
そこには宇宙共通語でこう書かれていた。
『我々を狙っているナニカは魔術制御された【意志ある闇】だ。捕まるな、贄にされる。 Handle:X』
◇
「ここ半年、宇宙人の蒸発事件が多発していたんだが、その犯人があの使い魔達だ」
「使い魔?」
ファントン星人の言葉に、首を傾げるホマレ。
黒幕の手先というのはわかるが、使い魔という表現はあまりしっくりこなかった。
だがマグマ星人の方は納得したように頷いている。
「魔術……と言っても納得は難しいだろうから、一種族の固有能力とか未知の科学とでも置き換えてくれ。説明すると長くなりすぎるからな。黒幕が生成あるいは召喚して使役している怪物、という表現になるか。……わかるかね?」
「いや、分かると言われても魔術なぁ……」
「その手の類はこの地球だと珍しくもねぇぞ。ババルウの奴が九頭流村にいた赤目様……ナイトファングだっけか? を復活させたのも、お前らが護衛してた霊能力者の力利用してただろ*1。人柱の霊体達とも交渉してたがあれも魔術を併用してたはずだ」
「え、マジで?」
マグマ星人の言葉に、ホマレは思わず素で訊き返してしまう。
悪霊や本物の霊能力者がいたことは当時の事件で把握理解していても、あの時に魔術が使用されていたとは思っていなかったからだ。元ギャングなのであまり人のことは言えないが、思ったよりがっつりヴィランギルドの案件を把握している事にも驚いている。
「だが、俺程度でも倒せているのに、なんだってそんなに被害が出る?」
「私もそこが謎だったが、さっき捕まってわかったよ。あの触手に掴まると、全身が弛緩したように脱力してしまい、能力などの行使が一切できなくなる。おまけにあの闇そのものとも言うべき姿……影奥や闇夜の不意打ちであればまず防げないだろう」
触手から解放されてもしばらく口すら利けてなかったのはそういう理由だと語る。助けを求める声を出せたのは本当にあれで最後の一絞りに等しい抵抗だったようだ。
「宇宙人を攫って何がしたいのかはわからないが、魔術を悪しき形で扱うものが黒幕である以上、ロクなものではないだろう」
ファントン星人の言葉に、嫌でも生贄という単語が2人の脳裏に浮かぶ。
攫われた宇宙人達の生存期待は絶望的かもしれなかった。
「こういった魔術を扱える存在はかなり限られてくるが、活動時期がここ半年となると、少なくとも今まで表舞台に出てこなかったタイプだ。何か新しい情報が入ったらすぐに伝えよう。気を付けてくれ」
「ああ、お前もまた攫われないように気を付けろよ」
「わかっているさ、しばらく宇宙船に籠って情報を集めるつもりだ」
少なくとも事件に繋がる情報は得られた。
恐らく宇宙船がある位置であろうポイントへと速やかに撤退するファントン星人を見送る。
念の為周囲を警戒していたが、幸いにして杞憂に終わったようだ。
「マグマ、車に戻るぞ」
「ああ、一度報告も必要だろうからな」
走ってきた道を、今度は歩いて戻っていく。
だがそれは流石に悠長だったかもしれない。
使役しているという事は、倒されたことを術者が把握している可能性にまで至らなかったのは、2人にとってのミスだった。
トンネルまで戻り、車に乗り込む直前。何気なく背後を振り向いたのが救いだった。
それがなければ間に合わなかったに違いない。
「……!!!」
「どうした?」
「逃げるぞ!!!」
目を見開き、形容しがたい恐怖が身体も心も硬直させたのは一瞬。ギャング時代、E.G.I.S.時代と共に死線を潜り抜けてきた経験が強く活きた。
すぐさま車に滑り落ちるように乗り込み、マグマ星人も引きずり込むと、姿勢も礼儀も道交法も知った事かと全速力で走らせた。
「どうした急に!?」
「気づいてねぇなら後ろ見ろ!!!」
「あぁ?」
ホマレの尋常ではない態度にヤバいのが追ってきていることは理解できる。
喉元過ぎればなんとやら。先程の使い魔の触手か何かだろうかと、もう慣れたかのような軽い気持ちでマグマは体を捩って後ろを覗き──後悔した。
『■■■■■■■■■──────!!!!』
闇の塊が冒涜的咆哮と共に追いかけてきている。
自分たちの命を預かるこの車と、ほぼ同サイズのモノが触手を捩じらせ拵えた無数の足で駆けながら。
地面を蹴り砕きながら猛追してくる脅威を目にし、マグマ星人も血の気が引いた。
「おいおいおいおい!!?」
「───!!」
宇宙人としての動体視力と判断力を全力で駆使しながら減速無しでホマレは飛ばす。
全方位に集中しながらも、頭の片隅ではある推理を弾き出していた。
半年間暗躍を続けていたにもかかわらず、昼間のファントン星人拉致未遂に加え、ここまで直接的な報復ともいうべき行動に走るという事は『隠す必要がなくなってきた』か『隠す余裕がなくなってきた』かの2択だ。
どちらであろうと、黒幕は計画を次の段階ないし総仕上げに入っているに違いない。
相棒に宿るウルトラマン達──タイガたちの出番は近いかもしれない。急いで報告をあげる必要がある。
「これもっと飛ばせないのか!? 依頼人護送用とかも兼ねてんだろ!?」
「馬鹿言うなただの会社専用車だよ畜生!!」
『■■■■■■■■■──────!!!!!!』
「マグマ!! お前ビームとか撃てないのか!?」
「できる同胞もいるが俺には無理だ!! お前はどうなんだ!?」
「身体能力高いだけなんだよ!! 光線撃てるあいつらなんなんだよ!!」
「それな!!!」
……まずは逃げ切ることが最優先だが。
???「タタリガミだ!!」
・ヒロユキ君、ちょっと無茶傾向。
若きヒーローの多くが一度は通る道。ただ、原作ではなんだかんださらっと乗り越えてたりする。メインテーマが親子とかトレギアとかに寄ったせいだろうか。ちなみに原作劇場版ではトレギア討伐して半年後あたりの時系列となっている。
・意志ある闇
使い魔。質量があるので、所謂『シャドウミスト』ではない。
使役者の指示に従い対象を捕縛する為に蠢く。SANチェック1d3/1d6。
造形、能力など元ネタはいくつかありますが、イメージ的には監督の趣味(人間サイズでの殺陣)にとりあえず感覚で用意される系の雑魚要員。
・シャドウミスト
ウルトラマンティガに出てくる絶望の闇。
質量判定がなく、有機生命体が吸えば即死し、電子機器を問答無用で破壊し、地球全土を太陽光が届かない漆黒の星に塗り替えた。これが世界に蔓延した時点で誇張なく、詰み。この絶望を跳ね返した『光』は本当に尊く素晴らしい。
ちなみに似たようなものではオーレンジャーの『暗黒素粒子』が該当する。これも味方戦力を壊滅させ、東京を壊滅させた。戦いの末、暗黒素粒子をばらまく元凶は倒されたが、結果的に地球に癒えぬ傷を与えて敵組織が地球支配に成功するえげつない成果をあげた。
・マグマ星人こんな強かったっけ?
すまんちょっといいとこ見せてやりたかっただけなんや。劇場版では序盤の事件で入院退場してしまった不遇属性持ちなので、少し戦闘力上方修正措置とっています。マグマ星人、色々強さの幅が難しい宇宙人だったりする。サーベルからビームだしたりとか一応飛び道具技は持ってはいるんだけど、最近のマグマは剣術格闘1本っぽいし……。