内原戸「ガタノゾーア降臨!勝った!絶望のEDの始まりだ!さぁウルトラマン達よくたばれ!!」
メフィラス「盾やるんで、逃げて良いよ」
タイガ達「あざーす!!準備整ったら戻るから!」
内原戸「」
ガタノゾーア「(・ ̄・)?」
蠢く闇を背後に置き去り、ウルトラ戦士達が撤退する。
邪神ガタノゾーアからの逃走。そして、ウルトラ戦士にとっての撤退という選択肢。
どちらも元来ならば困難極まる行動だったが、タイガ達は無事港までの帰還に成功していた。
地面に降り立つなり、変身が解除され全員が倒れ込む。
特にジードとして戦っていたリクは傷だらけであり、たった1発の光線がどれほどの威力だったかを物語っていた。
「あれ、やばいね……カツ兄」
「ああ……撤退中に見えたが、あのロボット怪獣達じゃ太刀打ちできないだろう」
あれほどとは思っていなかった。カツミは海の向こうを睨み拳を握りしめる。
姿を現さない内からウルトラ戦士ですら絶望が去来しかねない圧倒的重圧。邪神ガタノゾーアの持つ格を改めて実感させられる。恐怖した自覚が肌から離れない。
だが2人と違い、ヒロユキは自分自身が恐怖以上に焦りがあることを自覚していた。彼はこの地球出身である。現地に生きる当事者として、他のウルトラ戦士達よりも一段階、守りたい想いが強い。
あれを放置すれば、地球そのものが終わると確信してしまった以上、この焦りは当然と言える。
「あんなのが地上に辿り着いたら大変な事になる……やっぱり今からでも戻って」
「勝つためにもそれは駄目だ!」
立ち上がりながら自然とタイガスパークを構えたヒロユキ*1に、リクが声を張り上げ抑える。一番身体が悲鳴をあげているはずだが、しっかりと立ち上がり、ヒロユキの目を見据えて続ける。
「ヒロユキ君の気持ちは間違っていないし、その想いは正しい。でも無策で飛び込んででもやらなきゃならない時と、そうでない時があるのを君は知っているはずだ」
「……!」
『彼の言っている事は正しいぞ、ヒロユキ』
『ウーラーに2度目の戦いを挑んだ時、結局俺達は何もできなかった』
『だが3度目は違った。そうだろ?』
「そうだね……すいません、ありがとうございます」
タイガ達からも諭され、ヒロユキはリクの言葉に頷かざるをえなかった。
ここで変に拗ねたり、道を誤らないのがヒロユキの美徳であり、トライスクワッドの絆でもある。自分だけで完結しない思考が今の彼等には自然と芽生えていた。
だが現実はそんな彼等を押し潰そうと非情の姿をかたどっていく。
ガタノゾーアが出現した上空にある暗雲……闇が凄まじい速度で広がっていた。
加えて、海上で大きな爆炎があがる。ロボット怪獣のどれかが大破炎上したようだ。
カツミ、イサミも立ち上がる。彼等が稼いでくれている時間はもう1秒たりとも無駄にできない。
「……急ごう。まずはガイさんたちと合流するべきだ」
「……らっきょうさんは勝てるとは言ってないけど、体勢を立て直せとは言ってたもんね」
「勝てないとしてもあれだけが策じゃないだろ、薤白さんメフィラス星人なんだし」
「でもメフィラス星人だよ? カツ兄」
「メフィラス星人なんだよなぁ」
『え、あいつメフィラス星人なの!?』
『さらっとすごいこと言ってるな』
『なんで悪質宇宙人が味方してんだ? 意味わかんねぇ』
「あ、らっきょうのおじいさんについてちゃんと話してなかったっけ。動きながら説明させて、そもそも彼は……」
騒がしくも走り出す中、ヒロユキだけが首を傾げた。
「メフィラス星人って何……?」
『『『しまったヒロユキ知らなかった』』』
◇
「3ゲットシッパイ──!!」
ガタノゾーアが有する鋏状の腕に挟まれ、ビルガモの頑強な装甲がべきべきと音を立てて破壊されていく。トドメとばかりに放たれた怪光線により、そのボディが木っ端微塵に吹き飛ばされた。
「ははははははははは!! なんだただの雑魚ではないか!!」
粉々になった残骸が海に沈んでいく様を内原戸が嘲笑う。割と破片が流れ弾になりそうな位置にいるが気にしてはいないらしい。
『勝負はまだ1回の表ですよ』
ドラゴドスがその長いボディを駆使しガタノゾーアの触手を器用に回避する。さらにその尻尾の先にある回転鋸により、ガタノゾーアの触手を斬り刻んでいった。だが、それはガタノゾーアにとって痛痒にも値しない些末事だ。
──グァオオオオォン……
千切れた触手は瞬く間に再生し、千切れた先はそのまま闇そのものへと変じてドラゴドスへ襲い掛かる。
シャドウミスト。
ガタノゾーアが有する絶対的な力を持つ闇の1つだ。吸引した生命体を即死させ、光の肉体を蝕み、精密機器を破壊する。質量判定がない為に物理的に防ぐことは不可能であり、光線銃程度では掃う事すら叶わない。生命と文明双方に致命傷を与える闇は、当然ながらロボット怪獣にも致命的に働く。
「グオオオオン!?」
ゆっくりと散布される闇だが、霧散することなく規模だけが拡大していったことで、ドラゴドスもついにその身体に触れる事を許してしまった。それだけで機関の一部が破損し、ボディの各所でばちばちと火花があがっていく。
『ドラゴドス、主砲放て』
苦しむドラゴドスを意にも介さないメフィラス星人からの指示が飛ぶ。ドラゴドスは無情な命令にも忠実に応えるべく、闇を必死に振り払いながらガタノゾーアへ向かいその口を開いた。
「グオオオオオオオオオ!!!」
120万度に達する超熱線がガタノゾーアへ直撃する。放射熱波で周囲の海も激しく沸騰蒸発する高熱だが、ガタノゾーアは怯むことすらしない。それでも長時間照射されるのは嫌なのか、鬱陶しげに触手を振るい熱線の継続を妨害した。
──バァオオオオォォォォォン……
「グオオオッ!?」
「無駄だ無駄無駄無駄ァ!! 大いなる闇には100万度だろうが! 1億度だろうが! 1兆度だろうが!! 無意味と知れぇぇ!!!」
振り切れたテンションで我が事のように誇る内原戸。えぐい熱波が彼にも来ていたはずだが、テンションが高い故か気にしていない様子でその顔には汗すら浮かばない。その足元たる海はぐつぐつと茹っている。メフィラス星人は内心ちょっと引いていた。
「ベリアルヘイカノタメニー!!」
熱線攻撃と入れ替わるように、レギオノイドが吶喊をしかける。あらゆる鉱石を容易く掘削する鋭利なドリルがガタノゾーアの外殻へと突き刺さるが、激しく火花こそ起きたものの欠片1つ散らない。熱されて柔らかくなったという様子もなく、その頑強さは文字通り歯が立たない強度だ。
加えて至近距離故にシャドウミストがレギオノイドの全身に降り注ぐ。
「ヘイカノタメニ、アカルイミライヲー!」
あっけなくレギオノイドが爆散した。
ビルガモ同様、成果なき退場に内原戸はご機嫌といった様子で高笑いしている。
「ははははははは!! 大いなる闇の前では貴様らなどただの鉄屑!! たかが知れた時間稼ぎだったな!!」
『……よろしい、次』
「は?」
「「「アカルイミライヲー!!!」」」
レギオノイドがあらわれた。
レギオノイドがあらわれた!
レギオノイドがあらわれた!!
『数はあるんですよ数は。ドラゴドス、レギオノイドを上手く盾として使いなさい』
「グオオオオオン!!」
「……大いなる闇よ!! あのようなブリキ人形、さっさと片づけてしまいましょう!!!」
◇
「さて、データはよく入ってきていますが、間に合うかどうか……」
転送装置を利用して、レギオノイド軍団を次から次へと召喚し文字通りの捨て駒として活用しているメフィラス星人。使い捨てているのは彼の目的である情報収集と解析、そして時間稼ぎだ。重要なのは怪獣リングで召喚した最初の3体であり、彼等は目的を誤魔化す為と時間稼ぎを兼ねているにすぎない。
「ビルガモはシャドウミストを浴びる前に破壊されてしまいましたが、レギオノイドは目的を果たしてくれました。この怪獣リングに蓄積した闇のデータを急ぎ解析せねばなりません」
値千金の情報を得たメフィラスはほくそ笑む。過去のシャドウミストと同質ならば問題ないが、変異してたら用意した防御壁がまともに機能するかわからないのだから。
あの黒幕本人は情報収集であることに気づいているそぶりはない。何もかも無駄と考えているからだろうが、ありがたい慢心だ。有効活用するに限る。メルバを闇に還元していた以上、アレはアレで何か絶望の布石を更に打ってはいるとみているが、読めている伏せカードなど、手札があれば恐れるに値しないというものだ。
「邪神は気づいていそうですけどね……」
召喚主の知性など底が知れたものだが、邪神の方は話が別になる。
ティガの世界に出現したガタノゾーアは、TPC極東本部基地ダイブハンガーを闇で覆って機能マヒを引き起こしている。加えて、各所のデジタル回線を闇で遮ることで人類の連携力を大きくそぎ落としていた。これを海上に姿を現す前に実行しているのである。慎重というより、より効果的に絶望を与える手法を熟知していると言っていい。
わざと世界にティガとの戦いを中継させ、打ち倒し絶望を見せつける。それでいて、意図的に石化に留めて希望の道筋を残す遊び屋な側面を持ち合わせている。ティガ復活の一大作戦すら絶望の演出に仕立て上げ、一番効果的なタイミングで妨害へ走っているガチ勢が、愚者であるわけがない。
今回現れたガタノゾーアは、他者の手によって招来、降臨した形式故に事前準備と事態把握が若干遅れていた。だからそういった先手を打っていないだけで、今頃はこの地球の状況や布石をじっくり把握しているのだろう。どうやって遊ぼうか、と考えているに違いない。
故に最も気を付けるべきはガタノゾーアによる策と悪意だとメフィラスは判断する。
「上空は……既に暗雲に呑まれましたか」
戦闘中でも一切関係なく広がり続けた闇の雲。恐らく、あと1時間もしないうちに地球全土を覆うとみている。幸い、広がっている最中はシャドウミストで形成されているわけではないので、戦闘機などで突っ切ることも可能だ(劇中、明らかに暗雲の中を突っ切っている描写がある)。だが人類すべてが絶望した時、あの雲は絶望の闇となってゆっくりと地上へ降下してくることだろう。
仮にただの暗雲のままだとしても太陽光を完全に遮られ続ければどうなるかなど語るまでもないが。
「そういえばタイガ達は合流を済ませているのでしょうか?」
街中へ意識を向けてみれば、ヒロユキ達はヒカル、ショウと合流しているようだ。既に力も返還しており、順調と言える。特にビクトリーの力が戻ったのは良い傾向だ。街に闇が染み込んでいる問題について、取れる対策が増える。
つい笑みが零れてしまうが、その笑顔が邪悪に染まっているのはしょうがないことだろう。思い通りに事が運ぶ時の快感はたまらないもの。それも敵の策を打ち崩す愉悦は実に甘美だ。
そんな悪質な感情がつい念話に漏れていたらしく、海上で黒幕の男が何やら怒鳴っている様子が聞き取れた。あの男、自分が他者を愚弄し悦に浸る分には構わないが自分が愚弄されることは我慢ならないタイプらしい。
「失礼、考え事が漏れてしまいました事を謝罪いたします。紳士として、頭も下げましょう」
『~~~~~!!!!』
メフィラスの指示が飛び、捨て駒にしていたレギオノイド達が一斉に頭を下げる。その舐めた態度に黒幕は更に気分を害したらしく、念話で地球言語とは思えないが激昂の感情だけは伝わる侮蔑語を送ってきた。メフィラス大満足である。
代償とばかりにレギオノイドが10体ほどまとめて鉄屑と化したが。
「いい具合に煽れました。そろそろ向こうもしびれを切らして地上へ攻撃する可能性があります。次の手を打ちましょう」
実に気分がいいといった様子で口元を抑えつつ、メフィラスは在庫一斉処分とばかりに残るレギオノイド達を自動投下設定にすると黒幕への念話を打ち切った。続けて転移を行い身を隠し、念話のチャンネルを己の部下へと素早く切り替え、挨拶も飛ばして確認を取る。
「ザラブ、外事X課と接触はしていますか?」
『すでに通信機を用いて接触済みだ。直接の合流は避け、奴らの視点ではカメラで確認できる位置にいる。改めてガタノゾーアについても説明は済ませた。上空の暗雲については今説明中だな』
「よろしい。ガタノゾーアは此方の作意を見抜いている可能性があります。対策を初手で崩されても動揺しないように」
『わかっている』
メフィラスは楽しんでこそいるが、油断も慢心もしていない。己が忠誠を誓っている間抜けな皇帝とは違うのである。
「では、外事X課に預けている対シャドウミスト、その他汎用闇属性攻撃用絶対防壁【ゼットンシャッター】、対闇の使い魔ロボット兵器【シャドー】の起動を許可します。シャドウミストのデータは過去出現したモノに合わせていますが、解析完了次第即アップデートします」
『了解した。佐倉に起動タイミングであることを伝達する』
◇
内原戸は苛立っていた。待ちに待った絶望の狂想曲が始まったというのに、絶望の広がりがほとんど起きていない。闇を染み込ませたあの街区画に至ってはいまだに誰も絶望していない。暗雲は既に世界の7割を覆っているため、人間社会の影響、混乱は極めて激しいはずなのだが、それでも内原戸が描いた予想図より遥かに動揺が薄いのだ。
もっと絶望が蔓延し、暴動や悲劇が満ちていくべきなのに、国家統制や連携が意味不明に高く、「また宇宙人の仕業か!」とデモの準備をしだす類以上の暴動すら起きていないのはおかしい。まるで既知の反応である。過去にムルロアでも現れたのかと疑いたくなるが、そんな過去は内原戸が知る限り存在しない。
「さてはあのクソ野郎、人類に大いなる闇に関して適当な事広めやがったのか。劇の妨害など、なんと無粋なクズだ!!」
今敵対している、最も怪しい宇宙人こそ犯人だと内原戸は確信するが、メフィラスはそんな入念なネタバレや対策告知などしていない。潜伏と仕込み、娯楽重視で動いていた為、肝心要の情報は今日外事X課に提供したぐらいな悪質ムーヴをみせている。
つまりもっと単純な話で、この地球にいる現生人類達が内原戸が思っているより逞しいだけである。
彼等はヴィランギルドに散々弄ばれた過去があり、対応力も高くなっている。加えてヴィランギルドとは無関係の怪獣がたまに地底やら海底やら宇宙やらに出現しており、悲しいかな異常事態には慣れていた。避難こそ真面目にやる様子がちょくちょく見られるが、怪獣速報は呑気に煎餅齧りながら眺め、ウーラーが大暴れしてるそばで反宇宙人デモを実行するイカれ具合である。無論、悲劇は0ではないし、嘆き怒る人々も少なからずいるだろう。怯え、狂乱に染まる人々もいるだろう。それ以上に落ち着いて対応できる市井の人々が多いのは、国家に対する信頼性が高いことを意味する。
ウルトラマンが現れる前から、ヴィランギルドによる完全な支配を防ぎ続けて、怪獣災害に適応する社会を築いた国家達が無能なわけがないのだ。
メフィラス達により概ねの情報を得た外事X課や、その外事X課の情報提供と協力的な宇宙人達によりある程度事態を把握している各国家首脳陣や特殊組織などは(あとヴィランギルド)、割と焦っているのも事実だ。元来なら一部は打つ手はないと諦めていたかもしれない。
しかし、彼等はウルトラマンがいることも知っている。協力してくれる宇宙人がいることも知っている。ならば、自分達ができる事を変わらず実行するまでだと、情報統制と避難対応、暗雲による被害の軽減、闇に対する可能な限りの対策を積極的に手を打ち始めている。ガタノゾーア降臨からわずか1時間という恐るべき対応力であった。
結果として市井の人々は「あらやだ怪しい雲、部屋干しに切り替えなきゃ。あの雲濃硫酸じゃなければいいわね」「こういう空だとバリケーンが降ってきた記憶あるわー」「一応避難しよっか。母さん、ガスマスクいるかもだからリュックと一緒にもっていこー」と絶望の欠片も見当たらない。諦観や鬱屈した怒りこそあるが、地球滅亡の危機とは微塵も考えていなかった。
全世界が闇で覆われた事実が広まった時は、より混乱の度合いは高まるかもしれないが、内原戸が期待するほどのパニックが生じる事はないだろう。
そもそもティガのいた地球で人々が絶望したのは、ガタノゾーアの絶望演出が優れていたのもあるが、滅亡の預言が広まっていたのも大きい。タイガ達がいる地球とは状況が全く違うのだ。内原戸が預言者を気取って、終末思想を蔓延する暗躍をしていたら期待通りに暗雲から絶望を意識したかもしれないが、彼は生贄収集に徹しており、光の戦士達を始めとする他勢力に存在露見を警戒していた。結論は内原戸の認識不足、仕込み不足であった。
内原戸を擁護すると、彼は決してガタノゾーアを君臨させただけで済ませるつもりはなかった。光の戦士達を討ち倒し、地球人を絶望させるために石化させ砕く演出を企んでいたし、仮に彼等がすぐ現れない、取り逃したとしても全世界へ世界滅亡の通達を念話で広げるつもりだった。
つまり、このロボット達による妨害はどこまでも内原戸の狙いを崩していたのだ。
それを理解している内原戸はただただ謎の宇宙人へ憎悪を向ける。途中から念話も聞こえなくなり、相手にされていないような態度が彼の臓腑を怒りの炎で焼き上げていく。
「ベリアルヘイカバンザイー!」
「ベリアルヘイカサイコー!」
「スベテノウチュウハヘイカノモノー!」
忌々しい鉄屑達は無限湧きを続けている。ガタノゾーアはちょっと楽しくなってきたのか、湧きポイントを予測して置きシャドウミストしたり、触手でレギオノイド達をドミノ倒ししてみたりと明らかに戯れているが、内原戸が見たいのはあくまでも人々の絶望だ。大いなる闇によるロボット解体ショーを見るために約1年も暗躍したわけではない。
「……いいだろう。大いなる闇の前ではただの鉄屑達なことに変わりはないのだ。雑兵は無視して、光の戦士達を潰すのみ」
一度落ち着こうと内原戸は目を閉じる。地球を覆う闇は光を遮り、光の戦士達の力や変身の余裕を着実に奪っていくのだ。街の方へ姿を消した連中を強引に変身させ、消耗させた時点でただでさえ盤石な此方の勝利は決定的となる。そう、何も焦ることはない。仮に奇跡が二度三度重なろうが全てを無に帰す大いなる闇がここにあるのだから。
「……大いなる闇よ。戯れに、闇の一撃をあの街へ撃ち込んでもらえませんか。それだけで人々は恐怖を思い出し、混乱することでしょう」
加えて、闇の使い魔達を一斉に暴れさせる。
見ただけで正気を削る使い魔達が、人間を襲い始めた時、光の戦士達はその貴重な光の力を消耗せずにいられるだろうか。
「大いなる闇よ、饗宴には明確な合図が肝要でしょう。さぁ!!」
内原戸の表情から憤怒が消え、喜悦が浮上する。
ガタノゾーアはレギオノイドを器用に触手で鎌固めをして遊んでいたが、主賓として招いてくれた存在の言葉を無視するほど狭量でもない。内原戸を一瞥しつつ、レギオノイドを半壊しながらも攻撃してくる宇宙竜へ無造作に投げつける。
「グオオオオオン!?」
──バァオオオオォォォォォン……
ガタノゾーアの眼前で闇が収縮される。闇が輝くという矛盾を内包したそれは、全てを貫くレーザーとなって撃ち放たれた。
それはドラゴドスを容易く爆発炎上させ、減衰すらないまま港まで辿り着き──
──突如展開された青い輝きとぶつかり激しく霧散した。
「はぁ!?」
絶対の貫通力を有する闇の一撃が、街を蹂躙することなく終わる。
青い輝きを放つバリアーが、街全体を覆っていた。内原戸は驚愕に目を見開き、ガタノゾーアは面白そうに唸り声を響かせる。
「馬鹿な! 馬鹿な馬鹿な馬鹿な!? 大いなる闇の一撃だぞ!! あれを弾くレベルの障壁など地球の科学力では……否! そこらの異星人共の矮小な科学力ですら築ける道理はない!!」
ガタノゾーアが放つ闇の一撃。中でもティガにトドメを刺した技は単純に石化光線とも貫通レーザーとも呼ばれている。邪神の技とは思えぬ淡々とした名称だが、それは余計な意味合いを持たせない為でもある。
概念性の攻撃だからだ。
闇というものは様々な特性、概念を有している。その中で『闇は全てを飲み込む』という概念を攻撃に転じたものが貫通レーザーの正体だ。レーザーとしての方向性、貫通性、攻撃性にこの概念を適用したことで『万物貫通』の力を宿している。故に性能を示す以上の名付けなど邪魔なだけなのである。
これが防がれるなどあり得るはずがないと内原戸は狂乱しているわけだが、そんな彼の脳内に、先程と同じように念話が届く。
『ものを知らぬらしいから教えてやる……ゼットンシャッターは鉄壁だ』
「ふざけるなあああああ!!!」
内原戸は激昂したが、攻撃を防がれた当人であるガタノゾーアは、その目にじんわりと喜色を浮かばせていた。街にも、内原戸にも。
◇
「おおおおおおお!! やったぞ──!!!」
邪神が放ってきた恐るべき攻撃を見事に防ぎきった防壁に、外事X課の面々は喝采する。
グローザ星系人がもたらした特殊バリアは、凄まじい効果を発揮していた。かつてヴィランギルドにいた極悪な宇宙人チブル星人マブゼの宇宙船より奪った技術だと聞かされた時は複雑なものもあったが、こと防衛においては何事も目に見える成果が肝要だ。
グローザ星系人は、あの後「俺が気付かれたら、集中砲火を受ける可能性がある。お前らが観測できる位置にはいるから離れるぞ。指示は通信機で行う」と一度姿を消してしまい、ちょっと信じたことを後悔もしたが、今ならば全面的に信用できるかもしれない。
だが喜ぶ職員たちにそのグローザ星系人からの通信が入る。
『戯れに放たれた初撃を防いだだけだ、喜ぶ暇などないぞ』
空気が固まった。
どう考えても街ごと消し飛ぶような一撃だったのに、それを戯れの一言で済ませる事が信じられない。
「戯れ? え、あれが?」
佐倉が嘘だろという顔で思わず聞き返すが、返事は無情かつ厳しいなものだった。
『その戯れの一撃だけで、ゼットンシャッターが相当摩耗している。本気でなら1発……先と同威力連射でも一瞬で破壊されるだろうな……ガタノゾーアの性格性質から考えて、そういった力押しはあまりしないとは思うが』
「……」
『次はシャドウミストで遊んでくるだろう。ゼットンシャッターは一度起動すれば後は自動防壁展開するが、防ぎきれなかった時の対処は速やかに頼む。闇の使い魔が蠢きはじめたら、シャドーを起動してくれ』
「……わ、わかった。私達にできることはあるか」
『今やってもらっているだろう? 希望を捨てずに動いてくれるだけで値千金だ。いいか、何があっても希望を捨てるな。ウルトラマン達の為にもだ』
◇
港と海が良く見えるビルの屋上。
わざとらしく、定点カメラなどから観測可能な開けた位置にグローザ星系人が立っている。
「はぁ……焦った。問答無用で俺のところへ飛んでくるとは」
グローザムに扮したザラブは安堵のため息を吐く。闇の一撃が寸分違わず己のところへ飛んできた時は心臓が止まる思いだったが、ゼットンシャッターが機能したことで助かっていた。ガタノゾーアの容赦のなさに心底震えあがると共に、性格が事前情報通りである事に只管ほっとしている。死ねばそれまで助かるならもっと遊べる。そんな考えだったのだろう。
あれが本物の貫通レーザーならば終わっていた。
ゼットン星人がウルトラマンマックス暗殺に足りうる防壁だと確信した絶対防壁。さらにチブル星人マブゼが再現改良強化を施したゼットンシャッター。
それを急遽、対闇特化に性質を付加することでガタノゾーアに対する防壁としたのが今回のゼットンシャッターである。
シャドウミスト対策に重点を置いてはいるが、ある程度は概念性の攻撃にも対応している。
確かに概念攻撃は非常に強力だが、他の概念をぶつけられる、余計な解釈を取られるといった形で対策は可能だ。
万物貫通の概念があろうが、闇に頼って成立する概念である以上、属性は闇。闇そのものが弾かれてしまえば、その攻撃には『全てを飲み込む力などない』という理屈で万物貫通の概念も消えるという、文字通り言葉遊びと解釈の押しつけとなる。
ただしこれは闇に有利な防壁として機能した副次効果で概念攻撃が対処できているに過ぎない。
ガタノゾーアのふるう闇がこの程度で完封できるなら、ティガは初戦で敗北などしない。本物の貫通レーザーならば闇を祓いきれず、概念を宿したままゼットンシャッターを容易く砕いていただろう。つまり、あれは文字通りの戯れで放たれた単なる闇のレーザーだ。
(気づいていない内原戸が間抜けなのか、気づかせないまま遊んでいるガタノゾーアが恐ろしいのか……後者だろうな)
メフィラスも予想していたが、やはりガタノゾーアはかなりの遊び屋だ。過去出現した事例から導き出された考察だったが、事実であるとザラブは確信する。
甚振り、嘲り、弄ぶ。簡単には死なないように、しかし確実に死に絶えるように闇で塗り潰していく。ガタノゾーアはそんな邪神だ。
(ガタノゾーアからすれば、いつでも壊せると確信したのだろう。絶望をより演出できるタイミングで破壊するつもりだ。壊せないと認識したならば、もっと苛烈になるはず……)
『そうでしょうね。あの男よりずっと悪辣ですよ』
「!」
『私はタイガ達に合流します。繰り返しますが、想定外は起きるものと思いなさい。ウルトラ戦士全員が揃った時点で決戦といきたいですが……打てる手は先んじて打って良いですよ』
「……わかっている。任せておけ」
人の心を勝手に察知して返事をしないでほしいと思いつつ、メフィラスの念話へ一言返事を済ませる。口調が荒っぽいのはグローザムに成りすましている以上、徹底しているだけだ。工作員としての基本的な行動だ。断じて、ちょっとビビってしまったからではない。気合を入れ直そう。さっきまでこんなやつと対話していた黒幕にちょっと同情すら覚える。
『そういうことにしておきましょう。あと敵に同情などザラブ工作員が言うと品の無いジョークにしか聞こえませんよ』
「だから心読むなよ!?」
ガタノゾーアとメフィラスが好き放題やってて内原戸やザラブが巻き込まれてるだけな気もしないでもない。
・勝負はまだ1回の表
バルタン星人Jrの放った迷台詞。この後「さらば、ウルトラマン!」と言い捨て逃走するが、飛び立つ背中に容赦なくスペシウム光線をブチ当てられ死亡した模様(公式には生死不明)。
生きていたら再戦していただろうが、ウルトラマンジャック相手に無防備な逃走する方が悪い。
・レギオノイドわらわら。
鹵獲しまくってオムニバーシアン本拠地に100万体ほどいます。普段は色んな世界に飛び立って無人惑星や小惑星から資源調達している。一応採掘時現地民と接触した場合は交戦しない、救助活動は許可といったプログラムを仕込んでいる。なお、無断発掘発覚してもベリアルの仕業ということになるので認識コードはベリアル帝国軍のままという極めて悪辣な仕様。発案はメフィラス星人。にっこにこで採用したのはオレギア。
・万物貫通
独自解釈。ガタノゾーアの攻撃だし、ティガの肉体を突き抜ける攻撃名が『石化光線』だの『貫通レーザー』だので終わる名称なのもちょっと味気ないので、何故こんな名称でしかないのか考察した結果、余計な解釈加えました。そのせいで強くなって頭抱えた。誰か聖剣の鞘持ってきて。
罪深いな……ゆるるるるん!!って鳴いてるとあるガチチートキャラと同名の概念攻撃(あれほど強力にはしていないけど)にしてますが、あれが神の力であるように、これは闇の力です。闇に対して対処すればいいのです。そんなわけで対闇特化の絶対防壁で対応。オムニバーシアン達が必死になって作り上げました。
ガタノゾーア「いいね!やっぱり絶望を楽しむにはまず希望がないと!次はどんな抵抗してくれるかなぁ!」
対応した結果、邪神のテンションは上がった模様。
・ガタノゾーアの性格
電波とかその気になれば全部遮断できるくせに、ティガとの決戦はわざとらしく全世界中継を許す。いつでもトドメ刺せたくせに時間一杯まで付き合ったあげく、不可避のレーザーをわざわざ拘束してから至近距離ぶっぱ。石化したティガを海底に突き落とすだけで砕いたりしない。ティガ復活計画、最後のチャンスという瞬間を狙いすました様に妨害して失敗に追い込む。滅茶苦茶性格悪いです。
実は眠っている間も触手は端末として覚醒しており、文明が育つ様子を楽しんでいたらしく、これを蹂躙する瞬間を楽しみながら微睡んでいた模様。
内原戸と違い、地球や文明を見下していたりなどしない、寧ろ文明の集大成を歓迎しつつ蹂躙する節があるので、同じ闇の陣営としても微妙にズレがある。遊ぶのは似ているが、内原戸よりもずっと用意周到で穴がない。だから、ガタノゾーアにとっては内原戸も、ただの愉悦対象である。
・ゼットンシャッター活躍!!
本作ではチブル星人マブゼが獲得していたので、せっかくだから彼の宇宙船を鹵獲して確保した技術として再登場。
ケイネスムーブしたら、ガタノゾーアが笑顔で即破壊した模様。危機一髪。