トレギアだけど、元の宇宙に帰りたい   作:鵺崎ミル

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トレギア来た時のニュージェネさん達

『来てくれたのかトレギア……!』
「見た目で驚いたけど、あれ僕たちの知ってるトレギアだよね。雰囲気的に」
『間違いないな。そもそもタロウに対する敵意がない。あの闇のオーラも、あくまで自己修復に用いているようだ』
『なぁ、3人とも。そっち意識向けるよりこっち解決しようぜ。やばいから』


「トレギア……やはりでやがったな!!」
「やはりこの機に乗じてタロウを狙ってやがるのか!!」
「あいつ許さねぇ!!もう意地でも変身していくしかないぞ!!」
「わかった!」
「……いこう!!」
「いくぞ、X!」
「もうエネルギーがどうこう言ってられる状況じゃないな。諸先輩方、光の力……!!」
「あっ、違うんです違うんです!!みなさん、あのトレギアはちょっと違くて!!」
『しまった。トレギアの説明全然してなかった』
『普通はこうなるよなぁ』
『というか誰もキーホルダー化したトレギアには気づいてなかったのだな。哀れな男だ』


太陽のそばにいるならば

 

 

 拝啓、俺のタロウへ。

 この思いが届いてたらどうか親友として教えてほしい。

 冷静かつ恥を晒さずにこの状況を誤解なく伝える方法はあるだろうか。

 

 ……返事がない、届かなかったか。辛い。

 

 グリムドパワーの転用で焼け爛れた傷を少しずつ癒しながらも、どうにかして上手く説明できないか思案する。手が右往左往するように慌てふためいているし、視線は挙動不審のそれだし、全く落ち着いていない自覚がある。助けて。

 

「トレギア?」

 

 訝しんだ様子のタロウが声をかけてくる。少年時代によくみたなその小首傾げる仕草! なんか懐かしくて嬉しい! 

 いやそうじゃないちゃんと説明しろよ俺。科学者だろ!! ヒカリ長官に論文発表する時よりプレッシャー感じる事なんてないだろ! 頑張れ!! 

 

「あ、いや、この姿は理由があってだな……今ちょっと組織の長的なのやってて」

「お前がか?」

「あ、うん」

 

 やめてくれタロウ。その視線は俺に効く。やめてくれ。

 

 というか論外もいいところな口まわりはなんだ!! コミュニケーション下手か!! いや元からそうだったわ。とにかく落ち着こう俺!! 

 

「(。▽。)バオオオオン?」

「( `・ω・´)」

 

 ガタノゾーアは動かない。というか、グリムドが何やら干渉しているようだ。邪神同士で通じるコミュニケーションがあるのだろう。がっつり背中向けて隙だらけだったんで、動いていたら俺は問答無用で海に沈んでたな。

 ありがとうグリムド! ならば、今はちょっとタロウの説得に意識を向けておこうか。

 

 深呼吸を2回。ようやく落ち着いた。タロウと邪神に挟まれてこの速度で落ち着いたことに自画自賛しておこう。傷も見た目は癒えたので、闇堕ち全開スタイルであること以外は問題もない。

 咳払いをして、タロウに事実のみを端的に伝える事を優先する。

 

「先に言っておくが、私はお前の親友であるトレギアとは違う。並行世界のトレギアだ。お前の親友は、今封印状態にあってヒロユキ君……タイガが預かっている」

「なに……!?」

「邪神と対峙するお前の姿を異世界より見て、何振り構わず転移してきたのさ。共に戦う為に」

 

 自分で言っててなんだが、すごい納得できない情報だよな。

 信じる以前に飲み込むの時間かかると思う。でもそれで納得してもらうしかないんだよ。

 

「この姿で無茶な説明をしている自覚はあるが信じてほしい、私は……」

「信じるさ!」

 

 !! 

 

 そんな!? 俺でも説得力ない自覚あるのに!? 

 

「今のお前からは私への敵意を感じない。グリムドが中にいるようだが、今まさにその力でガタノゾーアを牽制している事もわかっている。何より並行世界であっても、私とお前は親友だったのだろう? ならば信じるさ」

「タロウ……!!」

 

 ああタロウ!! 俺の太陽!!! やっぱりお前は太陽なんだ!!! 

 俺の精神を焼き焦がす程、純粋で美しい瞳がたまらない!!! 

 

 力強く差し出される手を握る。

 友情の握手(シェイクハンド)! 

 

 激痛と羞恥で動揺の極致にいた俺の心が、暖かな光で今では天にも昇る高揚感で満たされている!! 

 ここにきてよかった!! 

 

「……なんだその茶番は。人の期待を散々裏切ってきた貴様が、この終焉のシナリオにすら首を突っ込むだと? 反吐が出る!!」

 

 あ? なんだこいつ。

 タロウとのひと時邪魔するとか空気読めよ。

 

 見ればガタノゾーアの近くで、一応人間の姿を取っているよくわからん奴がわめいている。地球人サイズなのもあって全然気づかなかった。

 ……あー、完全に忘れてたこいつ。タロウとガタノゾーアしか意識向いてなかったわ。

 

 本人曰く内原戸哲夫だったか。

 今回の黒幕であり、俺が放出しまくったグリムドエネルギーを使ってデザストロを蘇らせ、そのデザストロを生贄にガタノゾーアを降臨させた闇の存在。本来最も警戒すべき存在なのだが、メフィラスが手玉に取っていた様子をみて、優先度がどんどん下がっていったからな。

 

 言動からして、元から俺……いや()を知っていたのか。なるほど、俺が正史とずれた結末を迎えたことで、舞台裏より覗いていたこいつが不満を抱いて黒幕として活動し始めた、と。運命修正力というのは本当に厄介なものだな。

 

 今ならトレラアルディガブチ当てたら簡単に消滅しそうだが、撃っても良いだろうか? 

 

「ガタノゾーアがどう動くかわからんからやめておけ」

「おっと、そうだな? 流石はタロウ」

 

 俺の気持ちを察するのも早い。ああタロウはやっぱりタロウだなぁ!! 

 俺のタロウはもっと早く察してくれるけど!! 

 

「無視をするとは良い度胸じゃないか……愚かな道化が」

 

 無視したわけではないが。

 あとちょっと言い返せない悪口はやめてくれるか。俺も()も、道化呼ばわりされてもおかしくない真似は結構してるから。

 

「遙かなる魔皇も何故貴様のような奴に住み着いているのかわからん……穢らわしい道化め。どうせああいう結末であるならば魔皇をその身から解放してしまえば地球諸共楽しい終末であっただろうに」

「(・ω・)?」

 

 遥かなる魔皇ってグリムドのことか? 本人、「なにその異名? 別神と間違えてない?」って反応してんだけど。

 さらっと正史で起きた事に言及していたあたり、こいつ正史にも潜んでいたのだろうか。グリムドがレイガに消し飛ばされたの見て画面外で発狂とかしたんだろうな。

 

「この際だ、貴様も魔皇も大いなる闇に呑まれてしまえばいい!! 大いなる闇よ!! 奴らに真の闇として鉄槌を!!」

「( _ 〜_;) ……」

 

 俺に対する憎悪は中々のものであるようで、血走った眼になって叫んでくる。正直、そこまで恨むことある? という気分だが……よほど()の末路楽しみにしてたのかなぁ。

 あと何使役したような態度してるんだろうかこいつ。ガタノゾーア、なんか困ってるけど? 

 

「くるぞトレギア」

「え? ああ」

 

 タロウに促されてちょっと驚く。あの顔で動くとは思わなかったが、一応召喚主の意向には沿ってあげるらしい。

 どこまでも響き渡るような、ちょっと法螺貝っぽい声をあげながら触手を幾本も海面より出してきた。

 

「(・ω・)ノ」

「(。△。)バオオオオン!!」

 

 邪神同士のコミュニケーションもどうやら終わったようだ。別に「よそう、邪神同士戦っていてもしょうがない」とか停戦になることはなかったらしい。そういや移動中でもグリムドはガタノゾーア説得するとか一言も口にしてなかったな。

 というか一考ぐらいしとこうよ俺。転移途中で真面目にグリムドへお願いしておけば違ったかもしれん。

 

「すまんタロウ。私の体内にいるグリムドでは、ガタノゾーアの説得は難しいようだ」

「構わない。それより共に戦える事が喜ばしい。まだ完治もしていない身体で私より前に立つなよ? 今度は守らせてくれ、トレギア」

 

 そっと前に立つタロウ。

 やめて、俺の心が飛び跳ねるから。

 必死に平静装うのだって大変なんだぞ! ただでさえ取り繕って私口調なのに!! 

 

「ふ、それはお前のトレギアにでも約束してやるといいさ。というか多分今頃嫉妬で神経焼き切っていそうだ」

「?」

 

 このまるでわかってない顔! そういうとこだぞ!! 

 

「(。△。)バオオオオン!!」

「タァーッ!!」

「ハァッ!!」

「( `・ω・´)」

 

 空からシャドウミスト、海面から触手の嵐が襲い来る戦場で、俺とタロウは力強く駆けだした。

 

 

 

 ◇

 

 

 

 ─街の一角─

 

 

 タイガのお父さんであるウルトラマンタロウと、僕たちが知ってる変なトレギアがガタノゾーア相手に戦っている。

 片方は並行世界の存在なのに、息がぴったりなようで、親友だったというのも頷けるほど見事な連携を見せていた。

 触手の全てをタロウが捌いて、シャドウミストをトレギアが邪悪なオーラでもって相殺している。

 そして隙間を縫うように各々が光線技でガタノゾーアに攻撃していた。

 

 そんななか、僕とタイガ達はというと。

 

「あのトレギアが闇に堕ちていないなど!? じゃああの見た目はなんだ!!」

「多分事情あるんですよ。仮面邪魔だって言ってたし」

『それにほら、父さんと共闘してるだろ!!』

「俺は信じてもいいと思うがな。ジャグラーって面倒臭い奴を知っているからな」

「俺とXも信じていいと思うけど」

「……でもトレギアだぞ!?」

「「……」」

 

 みんなへの説明と説得に苦労していた。

 ガイさんや大地さんは割とすんなり信じてくれたけど、ヒカルさんやショウさんには中々信じてもらえない。カツミさん、イサミさん、リクさんもなんかトレギアずっと睨んでるし。これは間違いなく悪いトレギアから酷い目に合わされてる。同じ被害者だからわかる。

 

 あのトレギアもどうしてややこしい恰好で来るかなぁ。今も闇(混沌?)の力を存分に振るってるようだし。

 あと何故かタロウの背後にいるせいで、「あいつはタロウの信頼を利用して不意打ちを狙っているのでは?」とまで邪推されている。

 僕だって、タイガを苦しめてきた方のトレギアだったらそのぐらいやるとは考えてしまう。せめて光の力で戦ってほしいんだけどなぁ! 

 

『埒があかないな。ヒロユキ、あのトレギアのキーホルダーを見せてやると良い。少なくとも我々を苦しめたトレギアはここにいるとな』

『だからってあのトレギアを信用できるという保証になるか?』

『……むぅ』

 

 タイタスそこは押し黙らないで欲しかった……! 

 

『ああもう! どうすればいいんだ! こうしてる時間自体が勿体無い!!』

 

 全くだよ。頭を抱えるタイガに、僕達は疲れたように同意する。

 ……あっ。

 

「あのトレギアがやったみたいにテレパシーで情報叩き込む?」

それだ!!

 

 これしかない。僕たちで大丈夫だったんだから皆も大丈夫でしょ。

 これだけ頑ななんだから、精神力だって強いに決まっている。僕は皆を信じるようん!

 

「みなさん、これだけ言ってもわからないようなので、あのトレギアについての情報を全部説明します!」

「ヒロユキ君……?」

「あ、なんか嫌な予感」

「タイガ、よろしく!」

『ちょっとの頭痛は許容しろよな!!』

 

 いっけ────!! (送信ボタンを押すイメージで)

 

「「「「「!!!?」」」」」

 

「お、おい!?」

「ちょっとどれだけの情報転送したんだい!?」

 

 この手に限る。

 暴力的情報量*1で頭痛が発生し、信じてなかった5人がたまらず跪いたのをみて、僕はちょっと満足気に頷いた。

 

 堂々巡りの会話にちょっと苛立っていたからと言われたら否定できない。

 

 

 

 ◇

 

 

 

 ガタノゾーアと対峙し、タロウと共に戦うというもう何も怖くないテンションの俺だが、残念な事に状況が傾いているわけではなかった。

 この邪神、呆れた事にまだまだ本気ではなかったのだ。いや、遊んでいたわけではなかっただろうが、「1対1(レギオノイド達は数に含まれていない)」が「2VS1」になっても、何も困っていないのである。この分だと、まだ隠している力がある。

 

 俺が増えた分、触手やシャドウミストの密度が跳ね上がっている。タロウが宣言した言葉を撃ち砕いてやろうとでもしているのか、俺の方へ狙いが傾いているのがムカつく。足手まといに来たわけではないぞ俺は! 

 

「グリムドの前では、シャドウミストなど意味をなさないと知れ」

「(`・ω・´)」

 

 不意打ちのように湧き出てきたシャドウミストが、放出されたグリムドエネルギーによって消失する。タロウの消耗を抑える意味でも、これの対処は光エネルギーに頼らなくても良い俺が行うべきだ。

 

 この力を発してる間、俺が邪悪極まるオーラを発散させているのがなんとも悪い絵面だが。これあれだな。予告CMとかあったらミスリードに使われる奴だ。

 

 まぁしょうがない。ここは開き直ることにする。

 シャドウミストだけではなく、暗雲も晴らしてやる勢いでグリムドの力を振るいまくる。

 だが、シャドウミストが消し飛ばされようが暗雲の穴が広がろうが、ガタノゾーアに動揺は見られない。それもそのはず、本人への決定打に欠けているからだ。

 

「トレラアルディガ!!」

「(。▽。)? バオオオオオン!」

 

 ……修行を重ねて結構強くなったはずなんだけどなぁ。グリムドの力が弱点になっているわけでもなく、悲しい程通用していない。タロウの方がずっと火力ある。

 仕返しとばかりにシャドウミストをまたばらまかれたので、相殺していく。

 

 このままだと先にタロウのカラータイマーが鳴るぞ。

 キングブレスレットに蓄えた純光エネルギー*2がフルで溜まっているようで3分過ぎても意気軒昂であるようだが、地球上で消耗が激しいことは変わらないのだから。

 

「ふむ、キリがないな。状況をどうにか変えたいが」

「トレギア。ガタノゾーアを一瞬でも怯ませることはできるか?」

「その程度ならば手段はある。なにをする?」

 

 タロウに秘策アリか。怯ませる程度なら、アナストロフィに変身してグリムドの力をより強く引き出したり、怪獣リング使用による不意打ちが可能だ。

 して策とはいったい? 期待する俺の瞳に応えるように、タロウは輝かしい顔でもって頷いた。

 

「ヤツの懐に潜り込みウルトラダイナマイトで」

「絶対するなよ!!? いいか!? 絶対だ!!!」

「トレギア!?」

 

 馬鹿かお前!!? お前それ正史でグリムドにぶっ放して闇堕ちした技だろうが!!! 

 それにウルトラ心臓あるから平気なだけでマジで全身爆弾となって吹き飛んでるからな!!? あれを初めて見た時俺がどれだけ恐怖に包まれたか知らんとは言わさんぞ貴様!!! 

 

「どうしたどうした!! 2人に増えても何もできないか!? 大いなる闇の前に終末を受け入れるがいい!!」

「(。-。)」

 

 なんかうるさいなこいつ。てかガタノゾーアがこいつ見る目がだんだん冷たくなっていってるんだけどわかってんのか? 

 

 だが、ガタノゾーアも千日手はお望みではないらしい。奴がにたりと笑い、視線が動いた事を見逃しはしない。

 視線の先はタイガ達がいる街だ。嫌な手を打つじゃないか!! だがな!! 

 

「(。∀。)」

「読めてるんだよ!!」

「トレギア!?」

「!?」

 

 一閃。

 

 街へ向け、ほぼノーモーションで放たれた闇の一撃を、両手で受け止めるようにして全力で防ぐ。

 俺が先に動かなければ、タロウが庇っていたに違いない。

 いくらタロウでもこれを喰らえば問答無用で穴が開きかねないが、俺なら話は違ってくる! 

 

「はあああああ!!」

 

 闇の一撃を受け止めている俺の両手には、グリムドの力が収束している。絶対的闇による万物貫通の概念が付与されていようが、闇に属した攻撃に変わりはない。対極にある光の概念防御、あるいは同質同格以上の闇でもって干渉が効くのだ。そう、グリムドの力ならば!! 

 

「はぁ!!」

 

 絶対の一撃を斜め上に弾く。闇の一撃と暗雲では闇の一撃に軍配があがったらしい。上空に新たな穴が空き、陽光が街にも降り注ぎだした。どうよこの完璧な計算を。すぐ塞がれるかもしれないが、これでニュージェネ達も変身エネルギー蓄積が少しマシになるだろう。

 

「Σ(。△。)!?」

 

 ガタノゾーアも流石に驚いたようだな。

 邪神達が振るう攻撃は、基本的に同質の対象を想定していない。だから知らなかったのだろうが、俺は知っている。何も無策で飛び込んだ間抜けではないのだ。メフィラス達が得たデータは全てオムニバースで解析されているのだから。それにあのゼットンシャッター達を用意したのは俺達だぞ。概念攻撃対策だって万全なんだよ!! 

 

「やるじゃないかトレギア」

「同質の攻撃であれば、今のように対応できる。ただ守られるだけの私ではないぞタロウ」

「(。▽。)バオオオオオオン♪」

「(#`・ω・´)」

 

 ガタノゾーアが、笑っている? 

 なぜだ? なんの笑みだ? 嫌な予感がする。

 

 グリムドも警戒を高めるように圧を強めてきた。ガタノゾーアが何かを狙っているのは間違いない。

 

『陛下! 気をつけてください!』

 

 メフィラス!? なにがあった!? 

 

『ガタノゾーアが世界に伸ばした暗雲を一部再収縮しています! あの規模を凝縮した一撃は計り知れません!!』

 

 はぁ!? 

 

 とっさに上空を見上げてみれば、ガタノゾーアより後方にて暗雲が巨大な渦を巻き始めていた。

 ストリウム光線の干渉があったとはいえ、陽光が降りる穴がいつまでたってもふさがらないのはそういうことか!! 塞ぐよりも別の攻撃に意識を回していたのか!! 

 

「おお! あれぞまさに絶対的闇の一撃!! あらゆる光を呑み込む究極の黒!!」

 

 内原戸が感動したように打ち震えているが、奴の言う通り、渦の中心にはもはや世界に漆黒の穴があいたと勘違いしてしまうほど闇が凝縮されている。

 あれの性質は……確かにあらゆる光を呑み込むのだろう。光の力をもって戦うウルトラ戦士にとって、最も絶望的な一撃かもしれない。

 

 だが、それを俺がいる場で放つ意味……そう、あれの対策はただ1つ。

 俺がグリムドの力をより闇に近い形で深く、強く引き出す事。

 

 ……そうか。理解した。

 

 

『闇堕ちする危機』は、俺に来るのか。

 

 

 ………………。

 

 ふん、運命め。どこまでも喧嘩を売る気ならば、いいだろう受けて立ってやる。

 

『陛下、お約束の言葉を私に言わせるおつもりですか?』

 

 察しが良いなメフィラス。だが安心しろ。

 俺は確かに間抜けで、脆弱で、タロウ無しでは容易く闇に堕ちるウルトラマンだ。

 

 だが今ここにタロウがいるんだぞ? 

 

「タロウ、あの闇が見えるか」

「ああ……あれはまずい……! 全ての光を否定する闇だ……!」

 

 闇を睨むタロウの表情は険しい。

 あのタロウが覚悟の炎を燃やしつつある。俺に止められたウルトラダイナマイトでもって、あの闇に決死の相殺を試みるか、放たれる前にガタノゾーアへの吶喊を意識しているのだろう。

 かつて、惑星ティカ=ドゥにて俺と民両方を救ったお前ならできるかもしれない。

 しかし悪いな、今回は俺の出番だ。

 

「迎え撃つにあたり、1つ策がある」

「本当か!!」

 

 振り向くタロウに力強く頷く。

 

「だが、これは私の精神に不安がある技だ」

「なに……!?」

「だから頼む。()()()()()()()()

 

 タロウの背後から前に進み、隣に立つ。

 

 

常闇の夜が世界を支配して

星の灯りすらみえなくなっても

太陽のように暖かい君がそばにいるならば

俺はまよわない

だからそばにいておくれ

 

 

「俺のタロウ(親友)ではなくても、お前はタロウだ。太陽がそばにいるのに、影に堕ちたりなどしない」

 

 タロウがまた無自覚に首を傾げる。

 俺の言葉に、この状況下でぽかんとできるのだから本当大した奴だよ。

 

「言っている意味がよくわからないが、私の親友も似たような事を言っていた気がするな。たしか詩で……」

「あ、それ掘り返さないでください闇堕ちしそう」

「えっ。わ、わかった」

 

 おのれ()!! 貴様も書いた詩タロウに覗かれてたのかよクソが!! 

 

「(。▽。)バオオオオオオン!!」

「素晴らしい!! あの愚かな巨人ごと、今こそ世界の終焉を!!」

 

 巨大な闇の球……いや、光を呑み込みすぎて球形であるかもわからない『黒い穴』。

 それがガタノゾーアの咆哮に合わせ、ゆっくりとこちらに向かって動き出した。

 

 貫通レーザーを放てる邪神の技とは思えない程、その技の速度は遅い。

 逃げたところで道中全てを闇で食い尽くす技だ。そして迎え撃とうにもあれはあらゆる光線をそのまま呑み込んでしまう。

 あらゆる抵抗の無意味さを悟らせ絶望を与える技だ。だから速度はいらないのだろう。

 

 だが忘れてないか。先程貫通レーザーを俺が防いだことを。

 グリムドの力を。

 

「いくぞグリムド!! アナストロフィとは真逆。混沌の闇を極限まで引き出す!!」

「(`・ω・´)!」

 

 

 

Come on!! 

 

「原初の混沌、グリムド!!」

 

ギュンギュンギュンギュン! 

 

ギュピーン! 

 

『(`・ω・´)』

「BUDDY GO!!」

 

 

 

Ultraman Tregear Chaosgrimdo

 

 

 

「!?」

「!?」

「(。O 。)!!」

 

 邪悪な闇が吹き荒れ、マントがはためきなびく。

 グリムドを抑えつけていた各所の拘束具は漆黒の鎧のように変質し、カラータイマーの位置にはグリムドの邪眼が宿る。まるで拘束具そのものを浸食し、顔を出したように思える。

 トレギアアイは両端にむかうにつれ漆黒に染まり、加えて角のように僅かに延長している。両の手のグローブは鋭利さを更に増している。

 そして、今俺の手には、黒い輝きを放つ、死の大鎌が握られていた。

 

「トレギア……その姿は」

「……カオスグリムド。グリムドを体内へ封印し力を引き出す()でもなく、混沌と共に在るアナストロフィでもなく、グリムドそのものを我が身に浸透させ、混沌の闇を纏った形態」

 

 

 

「闇を振るい闇を祓う……ダークナイトだ」

 

 

 

*1
(トレギアが送ってきた情報をそのままコピペ送信。要するに彼による膨大な謝罪文の山も叩きつけている)

*2
(キングブレスレットの機能の1つ。太陽エネルギーを吸収して、不純物は排出口から解放している為、純光エネルギーが常にリング内に蓄積されている。)




オレギア「ダークナイトだ(キリッ)」
メフィラス「あれだけ中二は嫌だとか言ってたくせに恥ずかしくないんですか」
オレギア「うるさいよ。てかお前の要望だったろ」

・ウルトラマントレギア カオスグリムド(ダークナイトモード)
懲りずに新形態ですごめんなさい。コンセプトは『予告版で絶対敵側と思われる演出ある形態』。
イメージしにくい場合は「トレギアが更に闇へ堕ちた姿」と思ってください。直球すぎる名称。skotos(闇)とかも検討したけど、同じ直球ならchaos(khaos)(混沌)でいいよねってなった。
本文中であったように、これはグリムドとの同化に近い形態です。うっかりすると、タイガ劇場版でおきたトレギアの末路や、ショーであったエンペラ星人と同じく『グリムドに呑み込まれて意識も消滅』します。滅茶苦茶危険な代わりにグリムドの力はアナストロフィ並に引き出しやすく、加えて深度が進んでいる故に身体能力もクソザコブルー族と違って跳ね上がっています。
つまり代償と引き換えに真っ当な強化形態と言えるでしょう。ダークナイトモードとか書いている通り、混沌の光を纏えばナイトモードになりますが、そっちは純白の騎士になる模様。
メフィラスに「混沌皇帝カオスデスポテースっぽい強化形態頑張ってくれませんか」と言われて、嫌々ながらも好奇心が働いて検討した結果見つけてしまった。あまりにリスクがある為、自重していたが、運命がどうあがいてもタロウか自分のどちらかが闇堕ちするよう誘導している事を悟り、その運命ごと跳ね返す最適解はこれしかないと自ら闇を纏った。
タロウがいるなら、邪悪な力に負けはしない!!

・【悲報】オレギアさん、ニュージェネ達に全然信用してもらえない。
残念ながら当然である。トレギアという存在が如何にクソ野郎であるかを示している。タロウは信じてくれたけど、これはタロウだからである。
時間の無駄だと悟ったヒロユキ達により、強制テレパシー攻撃を受けたことでやっとあれを信用していいのだと理解させられる。
その直後にいきなり闇堕ち全開なスタイルに変身するオレギア。ヒロユキ達が「空気読めよ!!」と全力で怒ったのは言うまでもない。

・キングブレスレット
注釈補足説明。
蓄積されている純光エネルギーは普段は物質変換能力などブレスレットの機能を使用することで消費していると思われるが、緊急時の補助エネルギーとしても回せることが分かっている。生命蘇生にすら使えるので、多少の戦闘時間維持ぐらい余裕余裕。タロウ本編では地球環境下+光太郎と融合していたのでより消耗が激しかったはずですが、タロウのカラータイマーって戦闘後以外で鳴った事あまりないんですよね。キングブレスレットの力以前にウルトラホーンやウルトラ心臓持ちなのもあり、他の兄弟よりタフです。強い。
ちなみにこれ、あくまで宇宙科学技術局が作成した兵器であってウルトラマンキングからの授かりものとかではない。ウルトラの科学力は怖い。

・ガタノゾーア、じわじわと内原戸への心証低下。
この感情推移をちゃんとわかってるのはグリムドとオレギアだけです。
ステンバーイ……ステンバーイ……。

・ガタノゾーアによる『闇の穴』攻撃。
独自設定。 
己の感覚器でもあった暗雲を一部凝縮し、『光吸収率100%』の闇を形成。それを対象にぶつける大技。
その特性を権能でもって最大限強化しており、あらゆる光線技を無効化する。
ウルトラダイナマイトは単純な光パワーの技というわけではないので、アタックすることはできるが、飲まれたらタロウの全光エネルギーが消滅していた。
なのでオレギアさんは必死である。

Q.メフィラスたち今なにしてるの?
A.オレギア来た以上はと腹をくくって、暗躍中。流石にあそこへ飛び込んでも足手まといな自覚はある。

Q.トレギア(アクセサリー)大丈夫?
A.設定上休眠状態だけど、起きてたら発狂してる。気分は特大の地雷NTRを実体験してる感じ。

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