ウルトラマンブレーザー放送記念に、執筆中のまま死蔵していた蛇足ネタを投稿。
あらゆる世界を観測する世界『オムニバース』。
元は上位者が消滅し無の世界として存在していたそれを、ウルトラマントレギアが改造した惑星規模の空間世界だ。
そこに生きる者たちの種族はバラバラだが、その多くは共通点がある。
トレギア(正確にはグリムド)の力により、死の運命より脱し、正史からも外れた並行同位体であるということだ。
今の彼等は世界を観測、観光、介入する組織にして民『オムニバーシアン』でもある。
介入は滅びより世界を救う時のみという崇高な理念を抱えた彼等は日夜、あらゆる世界を観測し続けている。
それはさながら世界を俯瞰して眺める神のごとき行いであり、それに相応しき精神性を……
「この馬鹿!! 地球観光しに行って現地の流行病に引っ掛かって死にかけるとかなにやってんだ!!」
「すまん、地球人がかかる病気でも俺なら別に問題ないと思って……」
「かかる時はかかるに決まってるだろ! 対策すらしてなかったら当然だわ!」
「こないだ観測してた別宇宙の侵略宇宙人、侵略は途中まで上手くいってたのに衛生管理しなかったせいで疫病で絶滅してたなー」
「なにそれこわい」
「らっきょうの品種改良は順調ですね……次はマンダリン草の因子と合成するのも検討してみましょう」
「品種改良は結構ですけど、そういうのなるべく研究室か元の土地でやってくれませんかね? この土地元々薬草用に開拓したんですけど」
「らっきょうも薬草みたいなものなので通してください。より薬草らしくする為にやはりマンダリン草の因子合成は急務ですね」
「そこまでして増やしたいもんか!?」
「エメラル鉱石のエネルギー効率最高じゃない!! あのベリアルが星ごと採掘するわけだわ!! これを用いて、にせウルトラ兄弟を強化した暁には全宇宙はサロメのもの!! ……あばばばばば!!?」
「ヘロディアさん、オムニバーシアンは世界征服の野望口に出したら自動で罰(ゴロサンダー製電撃お仕置き)くだるの知ってるのに何度やらかすんですか。つうか貴女が自分で進言して承認された枷でしょう?」
「つ、つい口癖で……痛い……」
「この人いつかうっかりで死にそうだな」
「ザラブ星人が怪獣リング状態で帰ってきたぞ!」
「戦死したのか? どこの星だっけ」
「U40にあるオペルニクス星観光してたはずだけど」
「あそこ平和な星じゃなかったか?」
「ちょっと待て、今調査記録を引き出す……撤退時たまたま近づいてた隕石が直撃したらしい。事故死だな」
「……け、結果的に星を守ったということで」
「観光先を地球にするオムニバーシアン多くね?」
「まぁ、侵略しようと考えたやつのが多いし。俺も地球侵略の為に100年ぐらい潜伏したからな」
「へぇ、じゃあ今度オススメの場所あるなら教えてくれよ。どこ潜伏してたの?」
「日本国北海道石狩地方」
「どういうところだ?」
「それがずっと川に潜って生活してたからよくわからないんだ。気づいたら色々変わってたぐらいだし。たまに俺を目撃した奴は片っ端から殺してたから交流もできてない」
「ダメじゃねぇか……」
……別に獲得してはいなかった。
そもそもオムニバーシアンの組織理念は建前であり、本質はトレギアが元の宇宙へ帰る為の手段として構築されている。オマケにトップであるトレギアが元の宇宙へ帰還する最大目標を達成したことで、その存在意義は建前以外消滅している。
トレギアのいる宇宙が危機にあるならば話は別だが、今のところ
そのトレギアも世界時間で月に2~3度程しか顔を出さず、基本は元の宇宙で過ごしており、今日もタロウの前で感情を爆発させている。
結果、彼等は必要最低限の責務をこなしつつ、後は趣味に邁進するもので溢れかえった。要するに割と
本質を忘れて侵略行為に走る愚か者がでないだけ、引き締め自体はしていると言えるだろう。
トレギアが並行同位体として招いた存在の大半が侵略宇宙人であり、文字通り更生したとはいえ悪党としての本質が完全に消えているわけではない。
オムニバーシアンの事実上No.2であるメフィラスですらメビウスに対する復讐心を捨てていないので、趣味に傾いているのはそれはそれで平和の証とも言えた。
◇
─『オムニバース』グリムドバシレイオン・玉座─
「久々に戻ったら、お前ら自重忘れすぎじゃないか?」
「返す言葉もありません」
報告内容を読み終えた俺は、無意識に眉間を揉み込む仕草をとる。
今月だけで、自動お仕置きシステム発動回数10回(内9回がDr.ヘロディア)、死亡報告10例である。
軽度の違反行為など200例を超えているんだが、緩み過ぎにもほどがある。グリムドによる探査で数字改ざんされていないことも確認済みだ。
「一応、世界維持の為にある組織なんだがな……」
「無論、責務を軽視していることはありません。ただ、第二の人生を楽しむことを優先してしまっているといいますか」
なるほどらっきょう事業を拡大させまくっている奴が言うと説得力が違うな。
世界征服の野望やら侵略意識を再発してない分が娯楽や趣味に傾いているなら、咎めるほどでもないかもしれない。
ただ、オムニバーシアンの性質上、あんまり緩み過ぎてると後が怖いんだよな。
ウルトラマンノアやらキングやらにアウト認定貰ってしまえば崩壊の未来しかないんだぞ。
幸いにしてキングは、「君が始め、君が成した存在達だ。責任を果たし続けなさい」と有難くも厳しい言葉をいただいて見逃してもらっている。
アブソリューティアンとの対決は必然であるわけだし、戦力という意味でも腑抜けになるのは大変よろしくない。
「エンペラ星人が厳しい引き締めしてたのも頷ける。多種多様な宇宙人や怪獣は絶対的引き締めが必要ということか」
「……」
俺の言葉に、メフィラスが汗を一筋垂らしている。
方針切り替えは望ましくないのだろうな。明晰な頭脳からすぐに反論してこないのは、俺から委任されていたから責任は感じているからだろう。
ただ、口にこそ出したが過剰な引き締めは本意ではない。というか俺がやりすぎるとグリムドがやりすぎてしまう予感しかしない。
普段俺の意思に沿った行動しか取らないからこそ普通なのであって、何か頼み事したら基本邪神の尺度で結果を出してくるからな。
武装などの召喚依頼したら禍々しいものしか出さないし、処刑したクール星人は悲惨極まる末路だったし。
Dr.ヘロディアの用意した自動処罰機構だけでも割と過剰に思ってるぐらいだしなぁ。どうしたものか。
いっそ、俺のタロウにオムニバーシアンの2代目皇帝とか就任してくれないだろうか。太陽のカリスマ性は語るまでもない。教官としても優秀だし、組織の引き締めは慣れたものだろう。
ふむ……思い付きだが、良い選択な気がしてきたぞ? 俺とタロウの国……悪くないじゃないか。
「陛下」
「ん?」
「顔がキm……いえ、私に汚名返上の機会を与えてくれませんか」
妄想を捗らせていると、メフィラスが考えをまとめたようで声をかけてきた。
なんか気持ち悪いとか言いかけてなかったかこいつ。
「元々オムニバーシアンという組織の骨子を組み上げ、彼等の引き締めや教育を行ったのはお前だ。やる気があるならいいぞ」
「ありがとうございます」
「それよりさっき俺の事気持ち悪いとか言いかけなかった?」
「いいえ、ウルトラマンタロウで邪な妄想に耽っているとしか思えない醜悪な表情に嫌悪感を覚えただけです」
「おい」
ふざけんなよ!
俺は親友に邪な感情など抱いたことはないぞ!!
「(;´・ω・)」
「なんだグリムド! タロウグッズは親友としての愛の表れだし、タロウとの一時でテンションあがってしまうのは普通だろうが!」
グリムドからもなんか引かれている反応貰ったんだが心外だ!
太陽の傍にありたいだけだ!! タロウは太陽なのだから、太陽光を浴びるようにタロウ成分を補給することも何もおかしくない!!
「そういうところですよ陛下」
「(;´-ω-)」
オムニバーシアン達の問題を話す場なのに、なんで俺が責められるような空気になってるんだ!?
意味わからないんだが、タロウ助けて!!
色々疲れるやり取りこそあったものの、業務改善命令を混沌皇帝の名で発令。メフィラスはオムニバーシアン達の再教育を3か月かけて行い、発足当初を思わせる引き締めに成功した。やっぱりあいつ優秀なんだよな。
皇帝不在期間が長い以上は、絶対定期的に緩むという結論も得た為(グリムドの監視網はトレギアへの反逆意識には強く反応するが、単純な気の緩みや野心は些事扱いで機能しないことが発覚)、定期的に組織理念強化期間を設ける事も決定。オンオフをよりしっかり分けて生きることができるように、精神指導が行われていくことが決定された。
組織が腐ることを防いだことで俺も笑顔を隠せないが、油断すればすぐに腐るようなこの組織を率いるのは困った事に俺だ。より盤石、より強固にする必要がある以上、避けられない事も起きた。
─光の国─
平和の体現者、宇宙の番人を名乗るには戦い以外にも相応の苦労がある。俺は今それを痛感している。
眼前には複数の画面が浮かび上がり、そこに表示されている膨大な資料が存在感を訴え続けている。研究資料ではない、研修資料だ。俺はそれらから目を逸らしてため息をついた。
隣には、教官としての仕事を終えて様子を見に来てくれた愛しい親友がいるのであまり無様な姿はみせたくないのだが。
弱音を吐くのも大事と学んでいるので、俺は素直にタロウへ愚痴る。
「なぁタロウ」
「なんだトレギア」
「俺、研究者なのになんで上位管理職研修とか王族作法研修とか受けてるんだろう」
「しょうがないだろう。お前は宇宙科学技術局の一研究員なのは事実だが、『グリムドの管理責任者』でもあり、『オムニバースの統治者』でもある」
「ぐぬぬ」
オムニバーシアンという組織の強固化。
つまりトップである俺も、皇帝の役職を真面目に取り組む必要が生じてしまった。自業自得と言われれば返す言葉もない。
元の宇宙に帰還した後、俺の処遇については色々あった。
俺は他のトレギア達と違って元の宇宙では何一つヤバい悪事はしていない。
ただ、体内に原初の邪神であるグリムドを宿している事と、別世界1つを支配する皇帝になっていることは問題になった。
『ウルトラ族としてどうなの?』という至極当然な問題である。
ただ、元が善性の塊みたいな種族なので、俺の事は完全に被害者扱い(事実だけど)。
俺の意思として、グリムドや彼等のおかげで元の宇宙へ帰還できたことを説明し、今後とも共に在る道を選びたい意思を語ると「尊重しよう!」とあっさり承認された。
面倒臭そうな政府側王族関係側の反応も、だいたい「キングが認めるなら」であっさり素通りしているのだから、権威というのは恐ろしいものである。
細かい部分はウルトラの父が全部詰めてくれた為、今の俺は特殊役職『邪神封印神官』『オムニバーシアン統治者(皇帝という表現は問題があった)』を授けられ、三重兼任している状態になっている。
結果、この2つの研修をウルトラの父より命じられ、多忙な中でなんとか学んでいっているわけだ。
でも正直マジでガラではない。タロウがいなけりゃ、基本孤独な活動に終始している性格性質だからしょうがない。
「いやわかっているんだ。俺の責務だというのは。グリムドの再封印ではなく、俺の個人管理を許可してくれたり、正式に外部協力組織としてオムニバーシアンを登録してくれたウルトラの父には感謝している。ただ、あまりにも俺らしくない責務でな……」
「何を言う、私はお前が立派になっていることが嬉しくてたまらないぞ。元々トレギアが一研究員で終わるなんてこれっぽちも思ってなかったんだ。別世界の皇帝になっているとは流石に思わなかったけどな」
「タロウ……わかった、頑張るさ」
太陽にそう言われたならしょうがないなぁ!! がんばるか!!
一転上機嫌になった俺は、再度大量の表示画面との戦闘を再開する。
映像資料も出てるせいで中々大変だが、心の余裕がある今の俺には大したことではない!!
「そういえばトレギア」
「なんだタロウ」
集中している時だろうがタロウの言葉は聞き逃さない。
画面から目を外さないまま、俺は返事をする。
「君も地球の魅力を知ったのだろう?」
「ああ、何事も実体験は大切だと学んだよ。君の話を聞いた時は、そこまで関心を持てなかったからね。全く浅はかだったよ」
「しょうがないさ。あの時の私は、大分興奮して語っていたのもあって、要領を掴みにくかったのもあるだろうし」
「はは、確かに」
久々の再会時に、心身共に成長していたタロウの姿を思い出す。地球人との絆を、それはもう熱く語っていた事が懐かしい。
そして思いっきり映像資料の一部をすっぽかした。回想癖はこれだからと巻き戻す。
「それでだが、良ければ地球にちょっとした旅行と行かないか。久々に冒険というのはお互い立場があって難しいが、息抜きの旅行ぐらいは許されるだろう」
「 」
画面が伝達してくる全情報が脳を素通りしていった。
「トレギア?」
錆びついた機械のようにぎごちなく振り返れば、様子のおかしな俺に怪訝に首を傾げるタロウの姿。
長い空白が過ぎ去り俺の認識に色が付いた時、俺は宙に浮かぶ全資料をシャットダウンしてタロウの肩を掴んだ。
「いいな!! 是非行こうじゃないか!! 私も、俺も君と一緒に回りたい場所がたくさんあったんだ!! まずはどこが良いだろうか、やはり日本、それも1970~2020年あたりの時間軸の地球がある宇宙が好ましいな! この際だからサイドスペースの地球がいいかもしれない。リク君にもまた会いたいし、君もベリアルの息子である彼を直接知るのは悪くないはずだ! よしそうしよう! となると最初に足を運ぶべき地域は関東地区かな! 君は地球に長くいただろうが俺だって、そこそこ地球を歩いてきたから、お互いの認識を照らし合いながら観光していくのは絶対に楽しい! 地球時間で最低でも1ヵ月は欲しいが、サイドスペースの時間経過差を考えれば1週間が限度だろうか。旅行プランはかなり厳選せねばなるまい。事は急を要する今から休暇申請出しに行こう!!」
「トレギア」
「なんだ!?」
「落ち着け。君らしくもない」
「あ、ごめん……」
いかん、暴走してた。なにやってんだ俺。
やらかした……羞恥で顔を覆う。
そんな俺の肩を笑いながら叩くタロウ。
「楽しみということは十分伝わったさ、じゃあお互い都合のいい日を合わせておこうか。スケジュールの確認は大事だ」
「……そうだな」
その後、ネガティブな状態がしばらく続いた俺だったが旅行計画が完成するころには、調子を取り戻し、数日後にはウキウキで出発することになった。
この時の俺は『ジード劇場版』のことなど完璧に頭から抜け落ちており、案の定巻き込まれたあげく、メフィラスからは「此方が引き締めで頑張っているときに旅行ですか」と怒られ、大分散々な旅行となったのだがそれは別の話である。
蛇足だからと好き放題書いた回。
軽率につい伏線ばらまくようにジード劇場版編へ繋げていますが、ジード編結局書ききれないまま1年経ったのに(プロット途中で構想上手くいかず)劇場版編なんか先に書いたらガバしか起きないので特に始まる予定はありません。
戦力過多でタロウが無双する予感しかしない。
・オムニバーシアン、腑抜ける。
トップとナンバー2が割と好き放題やってる組織なんで、必然でもある。
ちなみにザラブは真面目に身を挺して守ったうえでの殉職が正解だったりする。事故死扱いで処理、蘇生後も特に誇って語ることもなかった。
端役だったのに、だいぶキャラ変わった気がする。
・エメラル鉱石
ベリアル銀河帝国が暴れていた宇宙での、主要エネルギー鉱物。
純度が高いものを使用すれば、ダークロプスが大量生産できたり、星1つ握りこむ巨大要塞を運用したり、ベリアルがアークベリアルに進化したりできる。
・光の国、柔軟な対応。
『ウルトラマントレギア』を良く知るものからすれば、だだ甘な対応ですが、元の宇宙では純然たる被害者なのと、キングが認めている点でこうなっている。
認められなかったら、『断罪者(ウルトラセイント)』によって処罰されてたかもしれない。ウルトラマンデュアルによると、なんか一応いるそうです、道を外れたウルトラ族処罰する聖者であり、問答無用で命を奪う能力を有するそうですが、私この作品読んでないので詳細は不明。まぁベリアルにすら能力使ってないので、処罰基準は単純ではなさそうです。罰する余裕なかった可能性?せやな……
・タロウ、友人と地球談義したくて旅行へ誘う。
タロウの性格から考えるに、奥さんや幼い息子連れて家族旅行ぐらいしていそうなものだが、公式が特にその辺言及していない。
とりあえず本作では軽い気持ちで親友を誘っている。トレギア視点では劇薬レベルの提案で案の定暴走した。そういうとこやぞ。