2020年11月6日 地球:日本 所在地天候:曇り
昨日はまたテンパった記録となり未熟さを痛感するばかりである。
振り返り記述といこう。報告書の下書きみたいな形式が続くが、この日記は元より私のためにあるのだから構うまい。
事の起こりは深夜であった。
私は明日こそは蜂蜜とハンバーガーの併せ技を推す店舗へ挑むという覚悟を決めながら、のんびり横須賀の港を眺めていた。
開店時間まで睡眠という名の消費エネルギーの節約行動を取るか、油断なく各国情報を収集するか悩んでいたところ、私が張り巡らせた網に同族が引っかかったのである。
この同族、禍特対に接触してから日本政府、各国政府を手玉に取りつつ情報工作に勤しんでおり、変身撮影時の体たらくはどこへやら中々の手腕をふるっていた。
惜しむらくは、狙いが透けて見える事だろう。あれでは気付く者が無視できない数いるはずだ。組織内の実権派が気づけば煽動工作などどうとでも対処できるはずだが、それらは1人1人暗殺でもするつもりだったのだろうか。
ちなみに身体造形だが、同族と言えど別宇宙のザラブ、私とは若干の差異が見られた。興味深いのは、コートの下は身体前面部以外を透明化していた事だ。地球人の美的センスに迎合しない意思表示のつもりだろうか。
話を戻すと、その同族がよりにもよってこの横須賀に出現した。
何をするかと思えば、ウルトラマンに偽装して横須賀にいる自衛隊、在日米軍艦隊へ攻撃を仕掛けたのである。この時点で同族はウルトラマンの人間態を確保拘束していたようなので(把握したのは日誌を記している今日である。放置しているが同族が滅んだ今、多分大丈夫だろう)、ウルトラマンへの印象工作としては妥当な行動と言えた。
正直に記すが、私は目視時点においては直接的干渉をする予定はなかった。
巻き込まれぬよう撤退を視野に入れていたほどだった。
問題はあの愚か者が横須賀を襲撃現場に選んだ事である。
私が来訪しようと思っていた店は米軍基地から離れていない。私が常連と化している店も然り。私がこのまま撤退してしまえば、これらの店は勿論、横須賀という街そのものが炎に飲まれることはたやすく想像できた。できてしまった。
気が付けば私は、にせウルトラマンの光学迷彩を全力で解除していた。
同族からすれば混乱の極致であっただろう。全ての罪を擦り付ける予定が、軍艦1隻に蹴りを入れる瞬間ザラブの姿に戻っているのだから。踏みつけた足が本来のものと気づいた同族の茫然とした様は中々に秀逸なものだった。
続けて巨大化した私は、呆ける同族の顔に向け、全力で拳を撃ち放った。
海へ倒れ込んだところへ両手の指先から光弾をばら撒き打ち据える。
『地球人諸兄へ謝罪する。この外星人2号ザラブは貴星へ対し不平等条約の締結を迫り、あげく国家群同士の争いを誘発する破壊工作を実施。そして外星人1号ウルトラマンの信用を落とす為、姿を偽装しての横須賀襲撃を行った。これらは我が母星における重大な犯罪行為である。せめてもの贖罪として、これは速やかに処理しよう』
相手が対処不可能に陥っている間に各種機器をハッキングし、加えて拡声して呻いている同族の罪を開示する。なお、ザラブにおいて星間協定も結ばれていない未開惑星をどうしようが犯罪でもなんでもない。つまり単なる嫌がらせシャウトである。この時点で私個人も相当自棄になっている。実行しておきながら内心後悔しているのだから始末に負えない。昨日の日誌に、不本意である叫びのみが記されている事が悲しくも我が嘆きを証明してしまっている。
そのような私の悲嘆など知る由もなく、寧ろ嘆きたいのは向こうであろう同族は、
単調な拳を絡め取り、隙だらけな胴体へ光弾をひたすら浴びせていく。とっさに私へ高出力の破壊電磁波を放ってきたようだが、私は一流工作員。苦もなく対処し彼を蹴り飛ばした。
【ヘロディアの追記:映像資料では、貴方がヤケクソ染みた高笑いしながら光弾を浴びせていたところに直撃を受け、「ぐぁ!? 貴様!!」と苦しみながら蹴って距離を取った情けない姿なのですが。】
再び海へ倒れ込む同族に私は笑いながら、彼を踏みつけ、溺れいく様に溜飲を下げる。こうして振り返ると相応のストレスを蓄積していたようだ。
【ヘロディアの追記:映像資料では、「このザラブの恥晒しが!」などとキレながらずかずかと歩いて乱暴に踏みつけている一流工作員(笑)が映っていますけど? 】
別に生かしてもよかったのだが、殺処分が妥当と判断。わざと足を跳ね除けさせ、飛び上がり全力逃走を図ったところを追撃光弾で処分……実際は光学迷彩にて隠蔽展開したベムスターに食わせて処理した。隠蔽したのは、過去出現した禍威獣の犯人にされたくなかったからだが、こうして記していると少し早まったかもしれない。メフィラスやウルトラマンであれば、恐らくわかってしまう。
【ヘロディアの追記:正直うっかり逃げられそうだったから慌てて殺したのかと思いましたが、映像資料では、確かに怪獣リングの召喚を行ってから逃がしていますね。光学迷彩併用の隠蔽召喚は、中々応用力を感じる技術ですので参考資料として使わせていただきます。】
『ザラブの追記:だからヘロディア……勝手に書き込まないでくれないか。それと、これは確かに外部へ見られる可能性を視野に入れたものとはいえ個人日誌だ。多少の脚色ぐらい許されるだろう。色々暴かないでもらいたい』
ともあれ、多くの反省と教訓を残しつつも、恐らくザラブとしては初めて、『個人による未開拓惑星都市の保護行為』を成し遂げた。ザラブとしては異端もいいところだが、オムニバーシアンとしては正しき行いだろう。……はぁ、隕石の時といい何故こうなる。
この騒動に関して、朝から各種報道機関が喚き散らしている中、私は巨大なハンバーガー相手に格闘していたことを記して本日は〆とする。
追記:蜂蜜はケチャップマスタードと併せての使用。内側へ注ぐように用いたが、これは失敗だったかもしれない。元より私の口では食べにくいサイズな上、液体調味料(粘度は高いが)を使用してしまえば苦戦するのも当然だった。だが味わいは意外と悪くない。目の前で焼きあげてもらうのも空腹を刺激する良い演出であった。
2020年11月7日 地球:日本 所在地天候:晴れ
静観し、安穏とした潜伏生活を行うという私の目論見は崩壊した。
具体的に言えばメフィラスの仕業である。
あの野郎、横須賀にて潜伏していた私の映像をネット上にばら撒いたのだ。それもさも一般市民による盗撮と言わんばかりの画質や視点でだ。名乗りこそあがってないが、ザラブの光学処理を解除した形で映像撮影など最低でもメフィラス級の科学力は必須。ウルトラマンでないならメフィラスでしかない。
当然ながら潜伏生活を楽しむ宇宙人など単なる娯楽の対象でしかなく、地球人の間で随分と盛り上がった。
劇場で良い席を確保し堪能する様子。遊戯場にて、箱モノが取れない余りアームの強さをハッキング操作しようとして自重しうつむいて立ち去る様子。歩道にて片方だけ落ちた靴下を拾い上げ、右往左往する様子。古い戦艦の周囲を飛び回ってしげしげと眺める様子。意図的に流行らせようという悪意が透けて見える。
だがウルトラマンではなく、私にこのような嫌がらせをする狙いが読めない。
ともあれ横須賀がザラブを探し回る人々で溢れかえったのはため息しかない。
何が「正義のザラブさんありがとう」だ。むず痒いし吐き気がする。
スマートフォンカメラで撮影されたような映像だったのもあり、私を見つけられないかとスマホを人に向けて翳す者もあちこちに沸いていた。無理に決まっているだろう馬鹿じゃないのか。
追記:ウルトラマンの人間態は無事に保護されたようである。
情報を見るに、先んじて起動点火装置( β-Capsule )を人間の同僚に託しわざと誘拐されたようだ。個で完結した存在と思いきや、他者を信頼する精神性を獲得しているようだ。我々のよく知るウルトラマンに近づいているとみても良いかもしれない。これでカラータイマーさえ付けば完全に馴染みあるウルトラマンなのだが、この世界のウルトラマンは体表でエネルギー残量を示しているようだ。……正直カラータイマーよりも安全性に優れて【混沌皇帝による追記:馬鹿かお前。カラータイマーは他者へのエネルギー譲渡やエネルギー保存、蘇生補助といった効能もあるからこっちがいいに決まってるだろ!! 確かに壊されたり盗まれたら死ぬけど、滅多な事ではそうはならんからな!!】
2020年11月8日 地球:日本 所在地天候:晴れ
特定された。おのれメフィラス。
不明サイトより専用アプリをダウンロードし適応することでスマートフォンカメラ越しに私の光学迷彩を貫通する技術がばら撒かれた。
憤慨しながら調べたところ、迷彩貫通技術はアプリそのものを解析したところで本命技術は得られない保護措置(アプリを起動したスマートフォンを対象に、加工微粒子がレンズに付着する形で適応している為、機種を選ばない仕様であると同時、両方の技術を要する形式。この微粒子自体に解析防止措置も付与されており、私ですら採取も解析も極めて困難)が取られている。原生人類への外星技術付与防止というより、私に即応対策させない事が目的だろう。
おかげで日誌を書いている今、官邸にいる。
既に内閣一同より謝罪(御足労云々と同族に騙されていた事)と感謝を受けている。
直径11㎜、銅製の玉を只管稼ぐ遊戯に勤しんでいるところを「ザラブだ!!」と騒がれあれよあれよと囲まれた時の心境を日誌に残す気はない。表向き友好な態度を取った末路がこれだ。次からはもっと不愛想な態度を取ることを誓う。
とりあえず、私はあの同族に全ての罪を被せつつ善性の皮を被る事を徹底する判断を取った。
「我々は国家群ではなく個々で完結している故、本来なら母星における罪であろうと静観するべきだったかもしれない」「だが私はこの星を好ましく思っている」「故に動いただけであり、感謝される事ではない」
などと聞こえの良い表現と実情をばらまいておいた。一流工作員故造作もないことだ。
特定アプリに関しては「どうやら、私を地球に歓迎させたいお節介な外星人がいるようだ」とだけ表現した。
間違いなくメフィラスは私の動向を見ている。私としては被害案件として敵対しても良いのだが、その結果、どう転ぶかわかったものではない。先日の映像流出からみて、ベムスター召喚は間違いなく撮られているからだ。あの男ならばいくらでも悪用手段を用意できることだろう。
そして、それを私が読んだうえでの行動を取るまで読みきっているはずだ。結果、メフィラスにとって不利な情報は開示できない対応一択にさせられている。メフィラスの計画通りに道化となるならば良し、静観でも良し、敵対するなら巻き添え暴露。地球から離れるならそれはそれで良し。そんなところだろう。
故に、私ができたことは1つだけだ。
「誤解を招くことは想定できるが、やはり迷惑をかけた星に意図的な隠し事はよろしくない。私は貴方達が禍威獣と呼ぶ存在を2体所持していることを開示する」
「どういうことですか」
「禍威獣を生体兵器……護衛あるいは侵略を目的に運用する事は外宇宙において一般的だ。私はベムスターと、ガンQ……そう呼ばれる2種の禍威獣を使役している。普段はこのようなリングにして保管されているがね」
そう、ベムスター&ガンQ所持の開示だ。暴露の悪影響を軽減するには、少なくとも国家中枢に知られていた方が良い。私は2体の身体情報、性能をある程度開示することで信用を得る手段を取った(ベムスターはともかくガンQの怪獣リングはかなり引かれてしまった。肉塊に目玉が1個貼り付いているような装飾故だろう。地球人の美的感覚はもちろんザラブとしても割と引く見た目だ)。
無論、護衛や環境調整(ただのエネルギー吸収行為だがモノは言い様である)とは偽っている。最後にこう付け加える事も忘れない。
「もっとも、ウルトラマンと敵対すればベムスターなど八つ裂きにされて終わる。私も同じ運命だろう」
彼等は私を正しく脅威に覚えただろうが、この一言できっと私の脅威度をさげてくれたことだろう。
2020年11月9日 地球:日本 所在地天候:晴れ
なんかウルトラマン抹殺計画とかいうのが進行してた。意味が分からない。
『外星人3号(私)と外星人3号が所持する禍威獣すら殲滅可能な戦闘力を有するとされる外星人1号は脅威である』
という建前の元で発案されたようだ。
多分交流不足故なのだろうなと理解できる反面、すごくらっきょう臭い。
何せ日本政府が私に情報提供を求めてきたのだ。それも縋るように。対応1つ間違えば私とウルトラマンが戦う羽目になる事は容易に想像がついた。おのれメフィラス。
「初めに言っておくが、ウルトラマンと呼称されている外星人は、陳腐な表現を用いるならば宇宙の番人だ。彼等独自の基準こそあるが、貴方達人類の善悪観においても善性にカテゴライズされるだろう」
「敵対は推奨できない、ということでしょうか」
「あの愚かな同族のように敵対行動を取ることは全く推奨できないな。最も、友好の手を取る切っ掛けを掴めない事が貴方達にとって憂慮すべき状況であることは理解している」
「ですが、貴方の同族は敵対した」
馬鹿な真似はよせと説得の選択肢を取ったが、対応してきた官僚は目を光らせながら問い質してきた。
地球人侮るべからずとはまさにこの事。勝ち目のない戦いなどするわけがないのは事実である。
地球侵略を企て、ウルトラ戦士と敵対した宇宙人の多くは、戦力差の調査すらまともにできていない点もまた事実だが。
「あの同族の狙いは地球人を国家間で争い合わせ、自滅させる事だった。故にウルトラマンに罪を擦り付けつつ、直接対峙を避ける手段を取っていた。実際に戦えば負ける事は理解していたはずだ」
「……確かに、貴方が彼を阻止しなければ、我々は容易くウルトラマンを敵視していた事でしょう。しかし、それはウルトラマンを信用することが難しい表れでもあります」
「2度も禍威獣を撃退した彼を信用できない根拠は? 少なくとも不法入国し、同族が人類根絶を企んでいた私よりよほど信用に値する行動に思えるが」
「ザラブさん。我々人類……いえ、国家というものは、コミュニケーションが取れず、行動による推測しか取れないものを無条件に信じる事は絶対にないのです」
──それ故貴方の同族に踊らされる事になっていたわけですが。
そう続けて皮肉気に笑った彼に、正論で諭す事等できるはずもなく。
結局私は、ウルトラマンに対するある程度の情報を提供することになったのだった。あらゆる可能性を常に検討し続け行動しなければならない政治家という役割に対する敬意とも言えるだろう。
最も、本音はウルトラマンに細やかな嫌がらせができるなら喜んでというものだったが。
¢月#日(地球時間2020年11月10日) 地球:日本 所在地天候:晴れ
あのクソ悪質宇宙人どこにいやがる。
地球人巨人化事件についての説明要求が止まらないぞクソッタレ!!
Q.なんでザラブはザラブ(シン)をベムスターで処理したの?
こいつの火力はザラブ(シン)を殺せるほどじゃないからです。対艦ミサイル通用しないしスペシウム直撃しても死なないんだぞ。切断耐性めっちゃ低かったけど。
・【朗報】神永、ウルトラマンだと世界中にばらされる前に決着が付く(なお仲間にはバレたし監禁もされている)
ザラブ(シン)の計画を読んで動いていたら結果的に仲間にバレた。ただ彼等に正体を明かした事そのものは喜びの感情でもって受け入れている。ただし救出時引っぱたかれた。
ちなみに本来のシンウルトラマンでは11月8日にザラブによる神永=ウルトラマン動画がばら撒かれた模様(映画本編内の駆け落ちトバシ記事から日付確認)。横須賀襲撃が5日なので、禍特対の襲撃映像調査は何気に3日を要している。浅見の巨人化はライブカメラ映像から11月10日だと判明(調査で深夜0時回った為11日1時半となっている)。
・ザラブ、潜伏生活終了のお知らせ
メフィラス「地球を救った英雄は讃えられるべきでしょう」
単に、日誌ザラブの性質と性格、行動パターンから予測して「政府視点でウルトラマンよりは信用できそうな外星人」を作っておきたかった。親しみを覚えやすい動画ばかり晒したのはその為。
自分が行動を移す前にウルトラマンが信用を固められるのは不都合であり、本来ザラブ(シン)が担うはずだった信用棄損行動を、ザラブ(日誌)を歓迎させることで生じさせる計略。楽観視して呑気に観光してた日誌ザラブ痛恨のミス。
・ウルトラマン抹殺計画
正直ザラブ(シン)が主導しなくても絶対政府は検討していた。不可能以前の問題であり、ガボラ戦での報告書を読んでもウルトラマンが信用できると鵜呑みにするようなお人好しはいないというだけ。
・ヘロディアたちによる追記
別にリアルタイム割込みはかけていない。【この日誌が彼女らの目に通された時に書き込んでいる仕様】。つまりザラブの生存と帰還は保証されているネタバレ追記でもある。ザラブが追記に対し返信しているのはいつか現れるかもしれない読者への配慮を兼ねた苦情。
日記系SSだとこういう日記に勝手に別の人が書き込んでしまうケースはあまり見られないように思える。ハリポタの『ハリーが所持している教科書をそのまま書籍に出した』本(ハリー達の落書きや追記が随所にある)とかすごく好きなので、是非増えてほしい一方、二次創作転生者系の書く日誌は読まれること自体が致命的ネタバレになるので困難という実情。無念。