後編は1時間後投稿です。
2020年11月17日 地球:日本 所在地天候:晴れ
動揺に絶望と狂乱のブレンドソースを振り撒いたような状態でザラブとしてあるまじき醜態を晒してしまった。
あれほど控えるように言われておきながらも、オムニバーシアンの掲示板にて錯乱しながら救援要請を繰り返した事は努めて忘れたい所業だ。もっとも、そのおかげで同胞達も緊急性を理解してくれた為、優先度を高めてくれた。レイブラッド星人リスクこそあるが、間に合わないとみた場合はリスクを承知の上で即時回収が決定されたようだ。
そう、即時回収だ。
あの衛星軌道に浮かぶゼットンを倒す手段が極めて限られるのである。
まずは時系列から語る必要がある。
メフィラスが表向き撤退して数日後、衛星軌道にどうみてもゼットンそっくりな超巨大物体が出現した。
地上からだと月より巨大なサイズで観測できるほどであり、当然ながら国はパニックに陥った。
私もパニックに陥った。知る由がなかったからだ。
其の為、恥も外聞も投げ捨ててウルトラマンへ問い質しに移動して真実を知り発狂したのが昨日の顛末だ。
天体制圧用最終兵器ゼットン。
ウルトラマンにより得た情報により判明した名称。この世界におけるゼットンとは、なんと恐ろしいことに光の星が持つ究極の兵器だったのだ。
デラシオン*1が持つという究極の対惑星兵器ギガエンドラ*2を彷彿とさせるが、危険指数はかの兵器を上回る。
推定全長6000m級という超弩級巨体より放出される1兆度の火球は、その規模とエネルギー量も破格であり、惑星どころか星系ごと蒸発させ数百光年先まで影響を与え滅ぼすというのだ。もはや日誌を読む者が存在できるのかすらわからなくなってしまったが、私が無事に生存し日誌を残すことができた前提で語るならば、読者諸君は私が発狂するのも理解してくれたと思う。
これだけの火力を放つのだから使い捨て兵器かと思いきや、超高熱対応の専用シールドを有しており、再利用が前提となっているのだと言う。全くもって冗談ではない。私のよく知る光の国が光の星ではないことを深く感謝したい。
わかりやすさも投げ捨てた乱雑な書き方となっている自覚はあるが、上述した通り、このゼットンを倒す手段は限られている。理論上はグリムド様の力を持ってすれば機能停止に追い込むことは不可能ではないのだが、この宇宙の性質上、【グリムド級が太陽系に出現すると光の星が本気を出す】危険性が極めて高い。
あのゼットンが光の星が有する最高戦力なわけがないからだ。地球を滅却するにあたり、適切な兵器があれだったというだけのはずだ。最大限楽観視してあれが最高戦力だとしても、唯一無二であるはずがない。必要数製造されている事は確定事項だろう。兵器とはそういうものだからだ。
介入がただの一時凌ぎにしかならないどころか大規模戦争の切掛となってはたまらない。何より相手は宇宙の番人であるという態度を隠さない姿勢だ。オムニバーシアンが組織ごと悪とされた時、乗り込んでくるリスクすらある。よって直接介入は断念し、滅亡直前に私を回収する方針となったわけだ。
皇帝陛下曰く、【この手のシナリオは最終的に何とかなる。ウルトラマンと人類を信じろ】との事だが……ガタノゾーアの時と違い、希望の光が仕事するとも思えないので正直信じていない。
2020年11月18日 地球:日本 所在地天候:晴れ
ほらみろやっぱり駄目じゃないか。
追記
流石にこの一言で済ませるわけにはいかなくなったので意識を改めるためにも今日あった事を綴ろう。
ウルトラマンが敗北した。
馬鹿正直に突撃して返り討ちにあった。監視衛星による映像記録を見るともう絶望しか感じない程ゼットンが強い。最終的に撃ち落とされたウルトラマンは衛星軌道から海へ落下、落下途中に変身も解けたそうだがよく死ななかったものだ。迅速な回収を成した禍特対も驚いた事だろう。ただその際に正体が政府側にも露見したようで騒動になった。
今更抹殺計画を稼働する愚か者はいなかったが、やれ説明責任だの情報封鎖だの騒ぐ様は現実逃避のそれであり、呆れて現実を突きつけた私に非はあるまい。
「今更禍特対の責任が何だというのか。ウルトラマンが敗北したという事は地球はアレにより太陽系ごと消滅するのだぞ」
この言葉を前に静まり返った首相官邸の重苦しさときたら、まるで……いや、文字通り世界の終わりを悟ったものだった。
沈痛な面持ちを次々浮かべ、崩れ落ちる者すら現れる。こういう空気にしたかったわけではないが、この時の私も自棄であったと今では思う。
なにせウルトラマンが負けたのだ。一報を耳にした瞬間、もうだめだおしまいだと膝をついてしまった程だった。本日冒頭の一文はその時のものである。
そんな誰も彼も絶望の渦に呑まれていった中、茫然とした表情から僅かに自我を取り戻した男が私に問いかけてきた。
「ザラブ、貴方はどうする」
声の主はこの国の総理大臣だ。
何かしら縋るように感じた私は、もしかして私なら対応策があるのではと微かな希望を抱いたのではないかと推察した。
回収が間に合うかもわからない以上、嘘をつくこともない私はある程度正直に話すことを決めた。
それで総理の希望が消し飛ぶだろうと確信していながらだ。
「上空に浮かぶアレを認識した直後、私が無様に錯乱する様を君たちも見たはずだ。禍特対にいたウルトラマンからアレの実態を把握した後、発狂しながらのたうち回る棘皮動物と化していたことも。私はアレに対して有効打を一切持っていない。である以上逃げるしかないが、通常の逃走ではもはや間に合うことはない。別次元に逃亡でもしなければあの火球から逃れる事は私にもできない……これが間に合わなければ、君達と運命を共にするだけだ」
逃亡方針を咎める者はいなかった。感情的になり責め立てられてもおかしくないと認識した上で話したにもかかわらずだ。
冷静だったのではなく、絶望の上塗りを受けたことによる諦観の支配だった。一部官僚は静かに啜り泣く程だったが、私に縋った当人であるはずの総理は違った。
青ざめながらも、じっと私の目を見つめてきたのだ。
「……頼みがある」
「何か」
「もし貴方だけでも生き延びる手段があるならば、この宇宙に私達がいた事実を残して欲しい」
この瞬間に私が覚えた空白は、オムニバーシアンとして蘇生したそれに匹敵しただろう。
絶望からの結論だというのに、総理の言葉は力強いものがあった。
「……わかった。私が生き延び、君達が滅んだ際は貴方達が繁栄していた事実をこの宇宙全域に刻むと約束する」
つくづくこの時の私はどうかしている。
地球人に予想を裏切られ、屈辱ではなく感銘を受けていたのだ。
総理の願いに対し、熱を帯びたように力強く誓った私は、今、この地球の歴史と文化情報を集めつつ、同時に同胞達へ事態の解決案を募っている。
日記を綴る傍らで、上空のアレを打ち倒す手段を必死に模索検討している。今の私もどうかしているな。無限に等しい平行世界が存在すると知っているなら、彼等にここまでの価値を抱くなど間違っている。
だが、それでも死なせたくないと思ってしまったのだ。このザラブが、他星人を。
私はザラブだ。約束など守ってやるものか。私が誓ったのは約束ではない。約束を全力で反故にしてやるべく、あのゼットンを倒す。それを誓ったのだ。
私の持つザラブとしての知識、オムニバーシアンとしての知識。この地球が有する知識。そして私と地球が有する戦力。
それで勝てる可能性を導き出すのだ。
2020年11月19日 地球:日本 所在地天候:晴れ
同胞達に「お前本当にザラブ?」等と掲示板で心配されながらも私がゼットン討伐法を導き出そうと苦心している頃、地球人も諦めない者が現れたようだ。
ウルトラマンはいい性格をしている。
単身では敵わないとわかった上で、突撃。その直前に地球で信頼する仲間……禍特対にメッセージとベーターシステムや高次元領域の情報を託していたのだ。
どのようなメッセージが書かれていたのか記すのは無粋というものだろう。だが人類は奮起した。
戦闘記録とベーターシステムの情報から必死にゼットンを倒す手段を模索している。
奮起したからかは知らないが、私の決意も悟られたようだ。
コーヒーを啜りながら、ベムスターやガンQの生体情報とにらみ合いをしていると、誰からの指示なのか各国代表が地球の戦力情報を積極的に開示してきた。
「助かった後のことを少しは考えて行動しろ」と呆れつつも有難く受け取った。
ウルトラマンは地球の即時使用可能な熱核兵器(TNT換算で200万キロトン)ではとても足りないと切って捨てたらしいが、それはあくまで公表された兵器群。なるほどなるほど。非公開兵器などない方がおかしいというものだ。
例えば表向き世界最強の水爆とされるツァーリ・ボンバなる熱核兵器が誕生したのが1961年……理論上は100メガトン(10万キロトン)までいけるそうだが、50メガトンに抑えたとある。
1961年。60年近くも前の話ではないか。今の私ならば理解できるぞ。60年もあれば地球人は悍ましい程の発展を遂げる事を。理論上可能ならばで秘密裏に試作された熱核兵器があることは資料を確認するまでもない。加えて言えば『万が一にも日本以外で禍威獣が出現した時の即応手段』『日本が滅亡危機に陥った時の即応手段』『外星人1号討伐決定時の即応手段』などと言った事情により稼働待機にある兵器群は平時よりもずっと多いようだ。
この情報を元に計算すれば、要求される最低限の火力は得られるかもしれない。
ただ、その為には私は勿論、ベムスターもガンQも死亡する可能性が極めて高いのだが。
……死にたいわけではないので他の手段も検討しよう。
2020年11月20日 地球:日本 所在地天候:晴れ
総理に伝達し、地球のあらゆる軍事基地が鳴動した。
ヘロディアが仕上げた計算式に合わせて動いてくれている事だろう。後は作戦実行の合図と共に動くだけとなった。
今回、私が想定している攻略法が理論上可能であるかどうか、実行に当たって必要な計算は同胞達(主にヘロディア)が行ってくれた。
結論として、やはり私達が爆散する可能性が極めて高いが、実行はできるようだ。懸念事項としてはそれでもゼットンのバリアを破れるのかというもの。再利用前提の対超高熱バリアは対象惑星に1兆度の火球が直撃した際の放射エネルギーを想定されたものと仮定するならば、想定より上回った時点で突破不可能だと言う。ウルトラマンの八つ裂き光輪同時攻撃を受けてから反撃してた点とその瞬間の映像解析から、物理障壁としての方が脆い可能性が高いとのことだ。そしてこれ以外の方法は残念ながら見つける事は叶わなかった。
私の攻略法とはなんなのか。結論から言えば『特攻』だ。
ゼットンのバリアはあらゆる熱と光を無効化する絶対防御だが、性質がバリアである事に変わりはない。
そして完璧であるが故に綻び1つで瓦解する可能性は高い。
ならば、私が砲弾となり突撃、衝撃に合わせてバリアの分解を行い、そこに一点集中した超火力を当てる。これしかないと結論付けた。
無論、地球の総火力をただぶつけるだけでは意味がない。無駄なく凝縮し、上述した通り『一点集中』させる必要がある。
そこでベムスターに地球の総攻撃を全て吸収してもらい、ガンQの目より私目掛けて照射する。これにより爆風などで広がるエネルギーも放射能も全て一方向に注がれるので無駄な被害も生じない。
問題点はいくつかある。まず次々と爆発されてもベムスターが間違いなく耐えられない。その為、全弾吸引直後に同時爆破してもらうしかない。緻密な計算力を要する。
計算力の問題は爆破タイミングだけではない。ガンQの視線射角と私の一撃に僅かなズレも許されないからだ。地球人は今ベーターシステムの活用法とゼットン攻略法に力を傾けているが、その計算の一助として秘匿スパコンの使用許可があった。それでも不足していた分はヘロディアに委ねた。
次に実弾時点でベムスターが飽和する恐れだが、少なくとも数万トンであれば問題なく吸収し昼寝できる余裕はある。ロシアのICBMは発射重量208トンだそうだが、これなら150本は余裕で飲み込める。ツァーリ・ボンバ級を弾頭に乗せる専用ミサイルがベムスターに届いてくれるかどうかだけが不安なところだが。
最後はぶっつけ本番になる事だ。衛星が視認したウルトラマンの戦闘記録を見る限りでは、ゼットンの反撃に移るまでは相応の時間を有するので、攻撃までの余裕はある。だが私がいけるのか。一流工作員ではあっても一流の戦闘員ではない。
だがもはや猶予はない。ゼットンがチャージを完了するまでおそらく残り数時間だろう。私の作戦は、火球が発生してからでは遅いのだ。火球生成中に破壊することでエネルギーが拡散すれば、結果は同じ。
ウルトラマンはまだ目を覚まさない。やるしかないのだ、私が。
この日記は、ゼットンを倒したとして無事に済むのだろうか。
これは私の生きた証だ。地球が残り、私が滅ぶ可能性を考え、ここに置いていくべきかもしれない。
……つまらん死亡フラグだ。やはり持っていこう。
作戦実行の合図を伝達した。
勝負だ、ゼットン。
…………ああ、畜生。
【後編へ続く】
・グリムド達は介入できない
メタ的に言えば、そんな展開が許されるならシンウルトラマン世界に降り立つのはオレギアである。それでも可能な限り協力している。あれだけ恐慌状態だったザラブが急にやる気全開でゼットン倒そうとしてる事に皆ちょっと困惑。
・株があがりまくる総理
ザラブはオムニバーシアンですが、ザラブ星人でもあります。
彼の心を動かす地球人が必要で、シンウルトラマンの登場人物から選定することになりました。
ザラブの状況から当てはめていくと、この総理しかいないなと。原作描写的に有能かと言われると解釈別れるでしょうが、ザラブがいた分、人間としての強さが光ったと思ってください。
・ザラブのゼットン攻略法
ベムQコンビだからこそ理論上実行できる、あらゆるエネルギーをかき集めての超圧縮ビーム。日本側が未把握の秘匿熱核兵器や新兵器含む、TNT換算で合計300万キロトンのエネルギーをベムスターの体内で起爆し、ガンQの目から照射。当然ながら反動でベムスターもガンQも爆散不可避。
それだけでは「効果はないようだ……」ですが、ザラブが肉体砲弾と化して物理とザラブの科学力全開で分解を試みることで罅を作り、貫通成功率を高める作戦でした。必然的にザラブ自らが照射ポイントになっているのもあり、彼は死を覚悟しています。あれだけ生存を願ってたくせに何やってんだこいつとも思いますが、隕石受け止めて死ぬようなキャラへ成長したのでしょうがない。