続きは明日、明後日といった形になりますご了承ください。
星々は瞬き、月は見降ろし、街の灯りは夜更かしに耽る。
静寂と喧騒が同居している矛盾を心の片隅で楽しみながらも、俺は成果を得られぬ散歩に肩を落としていた。
「……駄目だ、マブゼの秘匿アジトがわからない」
「(´・ω・)」
「グリムドが謝ることじゃない。防諜対策にかなり特化したアジトなのだろう。腐ってもチブル星人か、天才だな。邪神の精神系探知すら妨害するのは予想外だったが」
そう、俺が今回方々を歩き回っているのはチブル星人マブゼのアジトを突き止め、破壊してニセウルトラマンベリアル誕生を可能ならば阻止する為だ。全力でシナリオ破壊する腹積もりである。前回別れ際タイガにした挨拶が完全に無駄になってもやる価値ありと判断しなおした結果だ。
破壊予定のシナリオがこちら。
【23話・激突! ウルトラビッグマッチ!】
【宇宙人が経営する美蘭フーズ本社をアジトに構えるザラブ星人、ゴドラ星人、スラン星人は今日もウルトラマン達を倒すという議題を前に会議を躍らせていた。そこへチブル星人マブゼが通信してくる。彼は最強の手札を得たという。ベリアル因子からベリアルそのものを生み出そうという計画は、彼の研究の集大成として成功し街はニセウルトラマンベリアルにより蹂躙される。タイガはすぐに止めようとするがニセウルトラマンベリアルはベリアル本人に迫る力があり苦戦を強いられる。トレギアも乱入し、事態が悪化していくなか、あのウルトラマンゼロが降臨した!闇の巨人2体と光の巨人2体によるビッグマッチが今始まる。】
このように、実はニセウルトラマンベリアルがどこで誕生するかまではわかっている。
そっちは網を張っているし、仕込みも終えているので併せて動ける算段だ。だが、先に連中を潰してもニセウルトラマンベリアル誕生は阻止できない。なぜならベリアル因子はチブル星人が保有しているからだ。逆に言えばあいつさえ仕留めれば今回のシナリオは破壊完了できるのである。
まぁ、それが上手くいかなくて頓挫しているわけですが。なんでこう俺って物事上手く進められないのかね。というか特定できないのが想定外すぎる。15話における研究施設は割とザルだった方だが*1、本人がいる場所は分からずじまいだったのは確かだ。邪神グリムドの探知すら誤魔化せるとはどれほどガチ潜伏してるんだ?
「ニセウルトラマンベリアルは両手とトサカにバナナついてるような滑稽さと裏腹に滅茶苦茶強いのは理解している。前回で図らずも共闘は楽しめたから、遠慮なしに破壊する気だったが……」
邪神センサーからも逃げられている以上、諦めるしかない。当然ながら、ニセベリアル&俺 VS タイガ&ゼロなんてやりません。ゼロそこ替われ。
幸いにして、暴れる場所がわかっているのでペガ星人の施設修復技術をまた利用できる。自動発動にすることで、多少の被害は防げるはずだ。ベリアルの火力の恐ろしさはこんな身体になる前に戦争仕掛けられてるのもあって身に染みている。救うことが間に合わない命も出てくると思う。辛いが、ウルトラマンは神にはなれない。ここを履き違えると、身を滅ぼしてしまう。
そういえば、先日のギーストロン戦でタイガに真意悟られまいとしたわけだが、あれは正直失敗だったと思う。まだシナリオに意識引っ張られてたと反省した。
あそこで介入するぐらいならもっと開き直っておくべきだった。そもそもあんな動きになったのは、闇堕ち俺として動く場合への備えのつもりだったんだ。
元々あいつの悪行で周囲から嫌われまくっているわけだが、悪党RPしやすいとも言える状況でもあった。ウーラー救う過程で必要に応じて嫌われ役で動いたり、成功した後に上手くこの宇宙から消える理由付けになるだろうと狙っていたのが本音である。うん、いちいち変な伏線貼ろうとするぐらいなら素直に動けやという話だ。
自分のアホ加減に割と落ち込んだが、タロウ抱き枕で一晩熟睡することでなんとか回復した。
「グリムド、頑張ろうな」
「(・ω・)ノ」
とりあえずより回復する為、気合入れに何か食べよう。
この時間だと、コンビニになるだろうか。おでん、いいかもな。
◇
─数日後・美蘭フーズ本社─
「我々が地球征服を行うには、どうしてもウルトラマンが邪魔だ!」
「さようさよう」
「奴らを根絶し、この星を我らの手に!」
「さようさよう」
「おいザラブ、お前船降りろ」
「!?」
「落ち着きなさい」
資料だけはちゃんとある会議室。誰が描いたか中々凛々しく納まっているタイガやトレギアの絵姿もある。
そこで話されているウルトラマン抹殺計画は、議題だけは大層なものだったが実情は暗澹たるものだった。
メンバーはザラブ星人、ゴドラ星人、スラン星人。
地球人に化け、暗躍した共通点もあるが、戦闘の実力という意味ではスラン星人が1歩上を行くような面子だ。事実、この議会ではスラン星人が緩衝の役どころを担っているが、実力不足であったら跳ね返されていただろう。だが、別に有益な提案を出せているわけでもない。結果、ザラブ星人がふざけた提案を出し(本人は真面目なつもり)、ゴドラ星人が怒りに震え、スラン星人が宥めるという天丼が繰り返される惨状であった。
こういう結果になるのも、全員が『ウルトラマンタイガ、トレギアに直接挑んでも勝てない』ということを理解しているからだ。スラン星人はまだチャンスがあるかもしれないが、こいつが本気出せるのはマックスが相手の時です。
「そもそもあいつら消そうとして、光の国に目を付けられたらどうすんだ」
単体でも凄まじく強いせいで忘れられがちだが、ウルトラマン達は事実上の軍隊持ちだ。彼らは別に侵略意識など皆無だが、侵略行為が茶飯事のスラン星人達からすれば『ただの恒点観測員が無双できるような一族が宇宙警備隊と称して100万人の精鋭選抜して別宇宙にすら介入してくる存在』であり、タイガ1人消せたら解決するというわけではない。寧ろ本気出されたら最悪母星すら滅ぼされる危険性のある相手だ*2。
頭の片隅ではやりすぎてはいけないと考えているわけだが、だからといって懲りずにこうして暗躍するのが侵略宇宙人の性である。
「その光の国すら今でも倒せていないトレギアを仕留めれば、手出しもできないのでは?」
「じゃあいっそVIP待遇するとか? 光の国の人達、何食べるんだろう」
「ザラブ! お前は話にならん!!」
ザラブ星人の案を全否定するゴドラ星人だが、仲間に引き入れるというのは可能だったならば魅力的な案だとスラン星人は内心考える。即座に頭を振って否定するが。結局は、ウルトラマン全員を返り討ちにできるような戦力が欲しい。こういう結論になってしまう。
ちなみに光の国の住人はそもそも食事を必要としない生命体だ。光(ディファレーター光線)さえあれば生きていける。食事に娯楽以上の意味を持たなくなっているからこそ、人間態となって美食に執着する事が目立ったりする。ゾフィーのことなんかいいよ(迷言)。
「お前はもう喋るな!」
「まぁまぁ色々アイディアを出してるだけじゃないか。ブレインストーミングとかいうあれだよあれ」
「そうそう! そうだ、今夜の晩御飯なにがいいかなぁ」
「お前の晩飯とかどうでもいいだろうがあああああ!!」
怒るゴドラ星人をスラン星人がなだめるも、ザラブ星人が余計な事を言い結局取っ組み合いになってしまう。
後何度これを繰り返すのだろうかと思うとスラン星人が腹部にキリキリとした痛みを覚える。
この踊り狂った会議を止める救世主が欲しい。なんで捕まったんですかゾリンのばかやろー。
マウント取られてボコボコに殴られるザラブ星人と宇宙忍法タコ殴りの術を披露するゴドラ星人の間に入りながら、スラン星人が救いを求めた時。
『私に考えがある!!!』
威勢のいい声が、通信機器より響き渡った。
「その声は、チブル!!」
『光の国を恐れさせるのに一番ふさわしい存在があります』
投射映像で姿を現したのは、知能指数1万から5万*3を誇るという、知能特化の宇宙人チブル星人。巨大な頭脳に貧弱な3本足がくっついた極めて極端な肉体をしている。
極端に肥大化した頭脳の端っこへ埋め込むようについているぎょろ目にたらこ唇からはとても知性など感じられないが、本当に宇宙有数の超天才種族だ。
「ふさわしい存在?」
『ウルトラマンベリアルです!』
「「「ベ、ベリアル!?」」」
チブル星人のあげた名に3人が驚愕する。恐れおののくのも無理はない。
光の国に対する侵略が本命ではあったが、ベリアルの起こした戦争は複数の宇宙すら巻き込んだ大規模なものだったからだ。その被害を受けた宇宙人は決して少なくない。ゴドラ星人など、地球で暗躍していたら邪魔だと言わんばかりに殺された同胞がいるほどだった。
「だが、あいつはウルトラマンジードに敗れたはずでは」
巻き込まれたトレギアがいた宇宙平行世界では今もベリアルは大軍勢を引き連れ大暴れしているが、この世界ではその限りではない。既に過去のものとなり、ベリアルの息子であるウルトラマンジードが彼に引導を渡して眠らせたことは宇宙において周知の事実となっていた。
ゴドラ星人の指摘に対し、チブル星人マブゼはニヤリと笑う。
『とっておきの秘策があるのです!』
◇
「(・ω・)!」
「ふむ、そろそろか?」
邪悪な気配を感じる。この背筋を冷たい闇で握り潰されるような感覚は、ベリアルのものだ。ベリアル因子を集束、覚醒させようとしているのだろう。
もっとじっくり牛タン・ハラミ定食を堪能したかったが仕方がない。
急いで食べ終えて、また来ることを決意する。
「すいません、お勘定!」
「あいよー」
電子決済で手早く済ませて、外に出る。
通行人に不審がられないよう、歩きながら裏通りへ回りつつトレラ・スラーで転移。美蘭フーズ本社近くにやってきた。
「タイミングが勝負だな。ギーストロンと同じだ。初撃の蹂躙を許すな」
のうのうと街を破壊させる気など毛頭ない。今美蘭フーズを変身して潰さないのは、ベリアル因子集束装置の誤作動を嫌ったことと、チブル星人マブゼが直接来ることを期待しているからだ。あいつは仕留めないとロクなことにならない。興奮すると慎重さを失う性格のようだし、原作のように直接来る可能性は高いはずだ。
スマホ(宇宙人仕様。トレギア&タロウケース)でTVを確認する。
電波ジャックで宣戦布告してくるはずだ。出現タイミングを教えてくれる最良の告知と言えるだろう。
しばらく立ちスマホの状態で待っていれば、映像が乱れ、チブル星人の異形な姿が映された。投射映像を直撮りはどうなんだとつい思ってしまう。
しかしこいつら、本当に地球人の反宇宙人感情増幅するような真似ばかりするな? 静かに暮らしてる宇宙人の気持ち考えてくれ。何蝶ネクタイ付けてるんだよ。
『ご機嫌麗しゅう! この度我々の存在を脅かすウルトラマンを、奴らの同胞の力をもって、抹殺することに致しました!!』
威勢のいいチブル星人の言葉に続いてカメラが動く。
スラン星人が窓を開けてザラブ星人が、機材の射出器を用いてベリアル因子を発射。
放たれた災厄の種は、スマホの映像ではなく、俺の目に直接映っている。
『さぁ、ウルトラマン狩りの始まりだ!! 出てきなさい、醜きウルトラマンたちよ~~~!!』
「言われるまでもない、いくぞ」
トレギアアイ、装着!! デュワッ!!!!
……お手軽だけど、なんか専用の変身バンク作りたいなぁ。
◇
『デモンストレーション前に攻撃するなどなんたる無粋な!! トレギアァ!!』
『突発的に動くからそうなる。計画というのはもっと慎重に、綿密に練り上げるべきだ。勉強になったね』
『おのれええええええ!!!』
E.G.I.S.本社に備え付けられた大画面には、登場直後にトレギアに頭を蹴り飛ばされ地面に叩きつけられる黒いウルトラマンが映っている。
先程映った宇宙人が怒りの声を上げ、トレギアは悪い意味で慣れたあの厭な煽り口調で彼を嘲笑っていた。
「なんだこれ、ヒール同士の争いか?」
「あの黒いウルトラマン、手がバナナみたいですね」
「わかる」
皆が驚いている隙に、本社から抜け出し、現場へ向かって走る。
というか皆落ち着きすぎでは!? あれトレギアが止めなければ街に向かって破壊光線放ってましたよね!?
「タイガ、あいつはいったいなんなんだ」
『ベリアル……親父たちを昔てこずらせた光の国の大罪人だ。いくぞ、ヒロユキ!!』
「ああ!!」
Come on!!
「光の勇者、タイガ!!」
キュイイイイイイイン!
キュピコーン!
『ハアアアアアアアア!!』
「BUDDY GO!!」
◇
「デヤアアアアアアア!!」
「!?」
おお、ウルトラマンレオを彷彿とさせる超高度からのメテオキック。赤熱化し炎を噴き上げる勢いの一撃が見事にニセベリアルの脳天に決まった。並の怪獣であれば、あれで決まっていた事だろう。素晴らしい、日々成長しているなタイガ……!
この隙に、避難が遅れている人々を邪神テレポートで安全圏へ運ぶ。実に理想的なスタートだ、考え得る限りの最速で登場してくれたことに喜びを隠せない。前回共闘もしたことだし歓迎を表に出して声をかける。
「やぁタイガ。よく来てくれたね」
「ベリアルは放っておけないし、お前の狙いもまだわからないからな」
「強いて言うならば、今回はこんなふざけたゲームを開始した愚かな宇宙人を裁くためだが」
「これのどこがゲームだ!!」
……あれ、コミュニケーションミスったかな。ゲームに例える事の何が……いやこれ闇堕ち俺の言いそうな表現だわ、ごめん。
タイガが睨んでくるショックと自己嫌悪で固まりそうになるが、立ち上がったニセベリアルを見て気を取り直す。
こっちに意識を向いているタイガへ不意打ちをかまそうとしても無駄だ。
「トレラケイルポス!!」
「うわっ!?」
「チィッ!!」
タイガに当たらないようにしつつニセベリアル目掛けて破壊電磁波を放ったが、あいつ弾きやがった! ギーストロン相手に全然効いてなかったから予想できたけども。
親友の息子との語らいを邪魔する無粋の輩め!! なんだ睨んできやがってやんのかお前!!
「ハァッ!!」
ちょっと待って攻撃速度おかしい何その飛ぶ斬撃3連発おかしいでしょまってタイガあぶないまにあえ!!
「グハッ!?」
「トレギア!?」
「フハハハハハハハ!!」
声も本物のように鬱陶しい笑い声だな。そんなことを思いながら俺の身体は情けなく地に沈んだ。
オレギアさん、そんなこと思うってことはまだまだ余裕あるよね。ニセベリアル強化します。
同じ攻撃受けた原作タイガも同じく倒れ込みましたが、復帰もそこそこ早かったです。見た目はすごく凶悪な斬撃技だったので、ニセベリアルの出力が低かったのかタイガが頑強だったかの2択。
・美蘭フーズ
ヴィランギルド所属の宇宙人たちが隠れ蓑にして経営してた企業。
ゼットン星人ゾリンのペーパーカンパニーと違ってちゃんと展開されており、健康食品をメインに取り扱っていた。宇宙人向け製品もこっそり取り扱っていた節があり、不法侵入宇宙人たちにとっては必須な企業だったかもしれない。原作では本社ごと破壊されて終わる。
個人的に味わってみたい商品は『遺伝子組み換え健康食品 飲みやすい赤汁』。地球産大麦若葉を100%使用し、タッコング粉末が配合されている。海の化身さんが怒りの再上陸しないか不安になる。
・チブル星人マブゼ
倫理投げ捨てた鬼畜マッドサイエンティスト。実はトレギアに負けず劣らずの暗躍宇宙人でもある。劇中では特定されたラボにすら直接現れる事がないほど慎重であり、優位を確信して直接観戦しにきた以外では全て立体映像だった。
つまり本拠地または円盤がどこかにある筈だが、明らかにされる事はついになかった為、本作でもガチガチに隠蔽させている。
具体的には、ゼットン星人ゾリンに「トレギアを潰せ」と要望していた研究材料を全部貰えたので、本格的に対トレギアを意識して凡ゆる探知から逃れるよう専用宇宙船を改造した。宇宙最高の頭脳を自称するんだから、警戒すればそれぐらいはできるでしょう。
下手な介入は裏目だとか言いながら、マジで裏目になりまくってるオレギアさんは泣いていい。