みちのくKanon―20thAnnIversary.veR―   作:衛地朱丸

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変更点等は下記の通りです。
旧作該当話:第六話「見知らぬ少女との邂逅」
変更シーン:・バーコードバトラーで戦う相手をオリキャラから朋也に変更


第八話:見知らぬ少女

「勝負だ! 祐一!!」

 翌日早々、無駄に元気だけは溢れる朋也の声が水瀬家の軒先に響き渡る。

「ふわぁ。おはよぅ、ともちゃん……」

 家の中に招き入れようとするのはいいが、今の大声で覚醒しないとは。流石だな名雪。

「いいぞ、少年。ポケモンバトルでもすっか?」

「どうせ厨パぶつけて無双するつもりだろ? その手にはのらねぇ!」

 バレたか。勘のいいガキめ。

「だったら何で戦うんだ?」

「これだ!」

 満を持して朋也がリュックサックから取り出したのは……

「バーコードバトラー2か、懐かしいな」

 九十年代初頭に発売された、バーコードを読み込んでバトルするというゲームだ。それなりの人気を博して、スピンオフ漫画はもちろん、スーファミで連動ゲームが出たほどだ。

「しかしそれだと、お前が強いカード繰り出して来そうだな」

「心配いらねぇ! 今からお互いにバーコード探しに行って、やり合えばいい!!」

「今買って来た証拠は?」

「レシートがあれば十分だろ?」

「いいだろう! 乗った!!」

 こうして俺は朋也とバーコードバトルすることになった。

「細かいルールはどうする?」

「合体は無しで、武具の使用はあり。薬草と魔法は無制限でどうだ!」

「順当だな。ある程度吟味する時間は必要だし。夕方五時過ぎに俺の部屋でバトルってのはどうだ?」

「いいぜ! 激強バーコード見つけて、ゼッテェーテメェをぶちのめす!!」

 そうして朋也は一方的に宣戦布告し、水瀬家を後にするのだった。

「よく分からないけど、ゲームで勝負? いつの間にか再会して仲良くなったんだね」

「今のが仲良しこよしに見えるか?」

「ふぁ。本当に仲悪かったら、ゲームなんかで遊ばないよぉ……」

 確かに一理あるな。

「名雪? 昨日会ってからずっとあの調子なんだが、理由は知ってるか?」

 俺の名を知った途端噛み付いて来た朋也。からかう分には一向に構わないが、訳もなく歯向かわれるのは鬱陶しい。

「うにゅぅ……昔からああだったような……」

「七年前もか?」

「うん……。なんか祐一が遊びに来る度、不機嫌だった気がするよぉ。ふわぁ……」

「寝不足なら、大人しく二度寝したらどうだ?」

「うにゅ……」

 肯定だが否定だがよう分らん返事をして二階へと戻って行く名雪。俺も一旦自室に戻り、外套を羽織り、商店街へと繰り出した。

 

 

「HP23400、ST10900、DF1600……。う~む、微妙なスペックだ。他を探すか」

 商店街に出て、早速俺はバーコードを探していた。昔やり込んでいたこともあり、大方の数字の読み方は記憶している。

 まずはキャラクターとアイテムの判別の仕方。右一桁が0~4ならキャラクター、5~9はアイテムとなる。また、5は一回限りの武器、6は無限に使える武器、7は一回限りの防具、8は無限に使える武器、9はHP増幅アイテムとなる。

 戦士と魔法使いの見分け方は、右八桁が0~6なら戦士、7~9なら魔法使いとなる。

 魔法使いは魔法を使えるという特徴があり、戦士とのステータス差はない。そういう訳で魔法使いを見つけた方が有利となる。

 ステータスの読み方は、HP、ST、DFによって異なる。ちなみにSTは攻撃力、DFは防御力を表す。

 HPは二桁目が一万の位、以下三桁目が千、四桁目が十の位となる。数値の算出方法は一万の位は数字÷2で小数点以下を切り上げた数字、千、十の位は数字そのものが数値となる。この算出で求められる最高数値は49900となる。

 STは三桁目が千の位、四桁目が十の位となる。算出方法は、千の位は数字+5で算出された数字の一の位に2を足した数値。算出された数字が8、9の場合、例外的に攻撃力が10000を超える。十の位は数字+5で算出された数字の一の位の数値となる。この算出で求められる最高数値は11900となる。

 DFは四桁目がが千の位、五桁目が十の位となる。算出方法は千、十の位共に数字+7で算出された数字の一の位の数値となる。この算出で求められる最高数値は9900となる。

 算出方法を見れば分かるが、HP、ST、DFが共に最高数値のバーコードは基本的に存在しない。例えばHPが49900のバーコードは、STが6400、DFが6000~6900となる。DFはそこそこ高いので防御タイプではあるが、攻撃力が不足気味である。

 また、攻撃力が11900のバーコードは、HPが4400~44400、DFが100~1900となる。今度は防御力が不足する。

 これらの算出方法から導き出される理想スペックは、HP44200、ST11700、DF9900となる。このスペックで且つ魔法使いなら最高なのだが、そんなバーコードは日本全国探しても見付かるかどうかは分からない。

「ふう、とりあえずこの店ではこれくらいでいいか」

 そこそこ強いバーコードを8、9個程集め、俺は次の店を目指した。

 

 

「……」

 二軒目の店を出た辺りからだろうか、誰かに尾行されている気がする。人に恨まれるようなことをした記憶はないのだが。

(ひょっとしてあゆか?)

 などとも思ったが、その可能性はすぐ否定された。あいつの場合尾行などという姑息な手は使わず、正面から突撃してくるはずだ。

「……この感じ、間違いない……。やっと見つけた……」

「っ!?」

 か弱い少女の声が聞こえたと思った次の瞬間、強烈なプレッシャーを感じた。

(気圧されているというのか……? この私が!?)

 プレッシャーの元を確かめる為後ろを振り返ると、そこには布を身に纏った少女の姿があった。

「あなただけは許さないから……」

 身に纏った布を取り払い、恨み言をぶつけてくる少女。

(許さない? どういうことだ?)

 見知らぬ少女が言った一言、俺の何を許さないのか全く理解できなかった。ただ一つ言えるのは、その少女の俺を許せない想いが先程のプレッシャーの正体だということだ。

「かくごぉぉぉ!!」

 次の瞬間、少女の拳が襲い掛かる。

「そうそう当たるものではない!」

 しかし少女の攻撃は非常に遅く、あっさりと回避できた。

「このっ!」

 一撃目を外した少女の次の攻撃が来る。

「当たらんよ」

 一撃目と同じ速さの二撃目も回避。

「ええいっ!」

「甘いな」

「やあっ!」

「貴様の攻撃、既に見切った!」

「とおっ!」

「無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄」

 その後何度も攻撃を仕掛けて来る少女だったが、一撃も俺に当たらなかった。

「はぁはぁはぁはぁはぁ……」

 ついには息切れ、攻撃を撃ち止めた。

「所詮貴様の攻撃など蟷螂の斧!」

 などと俺はソロモンの悪魔的な台詞で自分の余裕を見せた。俺に対する恨みは相当のようだが、如何せん身体が付いていかないようだ。

「許さない、許さない、許さない!!」

「っ!?」

 再び感じた少女のプレッシャーに、俺は動けなかった。一体やつれ果てたこの身体の何処から……? 

「くっ! 一体、俺に何の恨みがあるって言うんだ!」

「許さない! よくもあたしを7年もおいて……」

「7年っ!?」

 7年前といえばちょうど俺がこの街に来なくなった年。分からない、あの年に恨み言を買う行為をしたというのか……?

「あぅ……」

 完全に力を使い果たしたのか、少女はその場に倒れてしまった。

 一体彼女の目的は何だったのだろう? その真相を語らぬまま少女は倒れたのだった。

 

 

「何してんだ、祐一?」

「げぇっ!? 朋也!?」

 そんな時、俺と同じくバーコードを探していた朋也が通りかかる。

「いや、あの、これはだな……」

 あまりよい状況ではないと思い、俺は咄嗟に事情を説明しようとした。

「成程、ロリコンか。安心したぜ」

「俺はロリコンじゃねぇ!!」

 つか、どこに安心する理由がある!?

「7年前がどうのと一方的に攻められて、ご覧の有様だよ!」

 変に誤解されるのも困るので、ちゃんと理由を話す。

「7年前!? まさか!? いつ目覚めた……?」

 すると朋也が何かを知ってそうな素振りを見せる。

「この子を知っているのか?」

「いや……知らねー。ともかく家に連れ込んだ方がいいんじゃねぇか? なゆねぇなら看病してくれるだろうし。お互いのためにも、色々とな」

「その方が良さそうだな」

「その子に免じてバーコードバトルは明日にしてやる。じゃあな」

 意味深な台詞を残し姿を消す朋也。この子は名雪と何か関係があるのだろうか?

(それにしても……)

 ふと少女に目をやると、どこか寂しげな顔で眠っていた。先程まであれだけ俺を恨んでいた素振りを見せていたというのに。

 この寂しげな顔の奥にはどんな気持ちが眠っているのだろう? 目覚めた時少女はその想いを語ってくれるのだろうか……?

 

 

「ただいま~」

「お帰り祐一~~。思ったより早かったね……って、誰その娘?」

 少女を抱えて部屋に戻ると、当然の如く名雪が訊ねて来た。

「道端で倒れてるのを見掛けてな、そのまま放っておくのも可哀想だと思って連れて来たんだよ」

 真相を語ると面倒なので、とりあえず襲われたという部分は伏せた。実際に倒れたので、嘘は言っていない。

「悪いんだけど、空いてる部屋があったら布団を敷いてくれないか?」

「いいけど祐一、何かやましいこと考えてない?」

「考えてるか!」

「冗談だよ。隣の部屋に敷いてくるね~~」

 そう言い、名雪は俺の部屋を後にした。

「まったく。しかしこの様子だと」

 名雪は面識があるようには見えない。恐らく朋也の勘違いだろうな。

「祐一、敷いたよ~」

 しばらくすると、布団を敷き終えた名雪が呼びかけて来た。

「サンキュー、名雪」

 俺は少女を担ぎ、隣の部屋に移動した。

「後は俺が一人で面倒見てるから、お前は自分の部屋にでも戻ってくれ」

「分かったよ。祐一、手を出しちゃダメだよ」

「誰が手を出すか!」

「冗談だよ。祐一は優しいんだね」

 そう言い残し、名雪は部屋を後にした。

「優しいか……」

 確かに襲撃者を助けるのだから、優しいのかもしれない。いや、単に変わってるだけか。

「それにしても……」

 すやすやと眠っている少女の顔をじっくり眺めていると、なかなか可愛い顔に見えて来る。

「そういえばこの寒いのにスカートを履いてたな。パンティーの色は何色……って、何考えてるんだ俺は~~」

 可愛い顔に惹かれ妄想に走ってしまったことに、俺は自責の念にかられた。これではロリコンの汚名を返上デギン・ザビィッ!

「落ち着け! 俺は真相を知りたいからこうしてるんだ。決してやましい理由じゃなく……でも、少し身体を触るくらいなら別に。揉み応えのある柔らかそうな胸してそうだし……ぐわわ~~、早く目覚めろ~~!!」

 己の性欲との葛藤から、俺は少女が目覚めるのを心から待ったのだった。

 

 

「ん……」

 数十分後、少女の口が微かに開いた。

「ここは……? 懐かしい匂いがする……戻って来たの……?」

「!?」

 開口一番語った少女の台詞は、意味深なものだった。それはまるで以前この家に居たみたいな……。

「気付いたか?」

「!!」

 呼びかけると、間髪入れずに襲い掛かって来る。余りに突然のことで回避する余裕もなく、俺は少女に掴まれてしまった。

「くっ、何だこの締め付けは!?」

 俺を締め付ける力は、とても少女のものとは思えないほどの握力だった。一体この少女の何処にそんな力が!?

「許さない……許さない……!」

「またそれか……。一体何を許さないって言うんだ……!」

「よくもあたしを7年もおいて……。ずっと、ずっと待っていた……。すごく、すごく寂しかったんだから!!」

「寂しかった!?」

 その瞬間、少女の顔が変わった。今まで俺を睨みつけていたような表情が、何かを懐かしむような顔に変化したのだ。

「逢いたかった……ずっと逢いたかった……」

 そう俺の胸の中で泣き崩れる少女。その顔は心のそこから再会を喜ぶ顔だった。

「よしよし……」

 この少女が何者か分からない。俺はまったく知らないし、もしかしたなら誰かと俺を見間違えているのかもしれない。

 けど俺は少女をなだめようと、頭を軽く撫で上げる。さっき襲い掛かってたのも、自分を置いた者に対する逢いたい気持ちがいつのまにか恨みになっていたからなのだろう。

 ならばこうしてやることが少女の恨みを払拭する最良の手だろう。

 彼女が誰かと俺を勘違いしているのでも構わない。とにかく俺は彼女の想いを受け止めてやりたかった。

「あぅ……気持ちいい……」

 俺が頭を撫でてやると、少女は徐々に泣き止み、静かに眼を閉じる。

「もう少し寝かしておいてやるか」

 俺は少女を優しく抱え、静かに布団へ寝かせた。

「じゃあな、ゆっくり眠っていろよ」

 真相を聞くのは後でいいだろう、とにかく今は少女をゆっくりと眠らせてやりたい。そう思い、俺は一旦部屋を後にした。

 

 

「祐一~~」

 キッチンに行くと、そこには名雪の姿があった。

「部屋に行ってたんじゃないのか?」

「お昼近いからね。あの娘の様子はどう?」

「すやすやと寝ているよ」

「そう。どこの娘とかは分かったの?」

「いや、まだだ」

 部屋に連れて行った時から色々と聞き出そうとは思っていたが、何一つ聞いていない。とりあえずもう襲い掛かっては来ることはないだろうから、起きたらじっくりと聞き出すとしよう。

「祐一、お昼何にする?」

「軽い物がいいな。ファストフードでもいい。近くにマックやらモスはあるか?」

「マックはあるけど、市街地の方に行かないとないよ」

「そうか」

 一応聞いてみたが、やはりこの街にはないようだ。今から歩いて行くのは億劫だ。冬の今の季節じゃあ自転車で行くのも危なそうだし。

「ならカップラーメンとかあるか?」

「わたしのお母さん手作りが基本だから、家にインスタント食品はないよ」

「そうか」

 そういえばここに来てからの秋子さんの料理はすべて手料理だった。毎日インスタント食品ではない手料理が食えるのは幸せの限りだが、こういう時食うのがないのは辛い。

「うどんならあるけど、鍋焼きうどんにでもして食べる?」

「鍋焼きうどんか、悪くないな。作れるのか?」

「それくらい作れるよ」

「じゃあ頼む」

「分かったよ」

 出来るまで十数分はかかるということだったので、俺は一時部屋に戻ることにした。

(そういえば今日は『アニメージュ』の発売日だったな……)

 部屋で漫画を読んでいてふと思い出した。ちょっと商店街に買いに行こうと思ったが、先程バーコードを探していた限りではアニメ雑誌が売っている気配はなかった。やはり市街地まで赴かないと手に入らないのだろう。

(仕方ない……。後から潤にバイクで買いに行くように頼むとするか……)

「祐一~、できたよ~」

 キッチンの方から名雪の声が聞こえたので、俺は一階へ降りた。

「お、美味しそうな鍋焼きうどんだな~」

「祐一のために腕に奮いをかけたからね」

「じゃあ早速いただきま~す」

 キチンと食べる前の挨拶をし、俺は名雪特製の鍋焼きうどんを食し始めた。

「ハフハフ……チュルチュル……」

 うどんは熱く少しずつしか口に出来なかったが、うどんの隅々まで味が染み込んでおり、非常に味わい深い鍋焼きうどんだった。

「ふ~、食った、食った。まるで一流の店のを食べてるみたいだった」

「もう、誉め過ぎだよ祐一~」

「そういえば……」

 昼食を取り終え、ふと思った。自分が腹を空かせたくらいだ、あの少女も腹を空かせているに違いない。

「ちょっと様子を見てくるか」

 腹を空かせたままにしておくのは可哀想だし、何が食べたいか聞いてみるとしよう。そう思い、俺は2階へと昇って行った。




前回の更新から一年近く空いてしまい、続きを楽しみにしている方には申し訳ありませんでした。
同人の作業が一段落したのと、冬はKanon書きたいからという理由での投稿でした。
実はこの話自体も一年くらい前には書いていたのですが、次の話を書いたので。
とりあえず、3月くらいまでは、また投稿できればなと思います。
さて、本編の方はバーコードバトラーの話は削ってもいいかなと思いましたが、この後の展開にも絡んで来るのでそのまま残しました。
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