つばめちゃんは神浜の魔法少女が尊いようです   作:名無ツ草

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第十三話 手を組みましょう

 美雨さんとの顔合わせから数日後。

 

 私は、これまでに協力を呼び掛けていた魔法少女たちを自宅へと集めました。

 

 参京院のトラブルシューター、志伸あきらさん。

 古書店・夏目書房の一人娘、夏目かこさん。

 地域組織・蒼海幣の構成員、純美雨さん。

 

 そして、私の魔法少女の契約に立ち会った琴織つばめさん。

 

 

 この日はこの四人の魔法少女たちと行う、最初の会合でした。

 

 

「私たちは魔女を中心としたそれぞれの経緯で集まりました」

 

 

 私の言葉に全員が頷きます。

 使い魔を追う中で出会ったあきらさんと、魔女の起こした土地買収騒動で関わることになったかこさんと美雨さん。中でもかこさんは魔法少女の契約をするきっかけとなった出来事でもある。そして、これらの問題を追っていく中で判明した出来事もあった。

 

 

「あきらさん、実はあなたと私たちと出会いにもその事件が関わっている可能性もあります」

「そ、そうなの!?」

「もう一度言います。――私たちを繋ぐものは『魔女』です」

「……待つネ。ひょとしてアナタ……『すべて同じ魔女の仕業』とでも言いたいのカ!?」

 

 

 美雨さんの言う通り。

 私の復讐相手である魔女は、神浜の各地で災いを引き起こし、私はそれを追う道程で皆さんと関わってきた。

 しかし流石は美雨さん、まだ多くを語っていない段階でそこに気が付くとは実力のみならず洞察力も優れている様子。彼女と協力関係を築けるかどうかは、魔女を倒すうえで肝心になるでしょう。

 ちらりとつばめさんを一瞥する。彼女は何も言わず、ただ私の言葉に耳を傾けている。

 

 

「私たちを繋ぐのはとある魔女なのです。なので共に連帯を……」

「ちょと待つネ」

 

 

 協力関係を持ち掛けようとしたところで、美雨さんに止められました。本当かどうかわからない理由で協力するつもりはない。まずはそちらの事情を話してほしいと言いました。あきらさんとかこさんも同じ意見のようです。

 

 一応、最初から私の事情も話すつもりではありましたが、どうやら必要以上に警戒されていた様子。

 つばめさんを見れば、彼女はただため息をひとつ吐いただけでした。私の対応はそんなによくなかったでしょうか……?

 

 

 私は正直に包み隠さず、自らの事情を話しました。

 私の復讐と、そのためにキュゥべえと契約して得た力のことを。

 

 

「私は魔女も真の敵なのかと疑い、復讐相手を見つけ出すために『敵を見極める力』を得ました」

「ええと、それってつまり……レーダーみたいな感じ……ですか?」

「……まあ、分かりやすく言えば……」

 

 

 レーダー。確かにその表現が適切かもしれないし、間違っているかもしれない。つばめさんが「センサー」「第六感」「敵対mobアイコンが赤く見えるようなもの」と様々な例え方をしたこの能力ですが、結局は相対した相手が敵かどうかが一目でわかるものとしか言いようがなく、それ以外に何か効果があるのかまでは分かっていないというのが現状。ですが、復讐のための力としては特に問題は無く、望み通りのものが手に入ったと言えるでしょう。

 

 

「そうですよね? つばめさん」

「ええ。ななかさんの能力に間違いがない事は私が証明しましょう。視界内の相手が敵かどうかを直感で識別できる能力……。多分そんな感じです」

「……なんか、曖昧だね?」

「あまり能力の調査とかしてませんでしたからね。固有魔法って無為域に理解できている割に自覚してない効果とかあったりするんですよ」 

「ああ! 土壇場で能力が進化したり、秘められた効果を自覚するやつですね!」

「わかるわかる、王道だよね!」

 

「……話、ズレてるネ」

 

「あ、ごめんなさい。ななかさん、どうぞ」

「……こほん。続けますね」

 

 

 私の魔法についても理解をいただけたので話を続けます。私の復讐相手は実際に魔女であり、高弟たちは魔女の口づけを受けて操られていたにすぎなかったこと。

 そして……、

 

 

「私の追っている魔女と言うのが、皆さんとの出会いを繋ぐ魔女なんです」

 

 

 あきらさんが追っていた使い魔の親である魔女も、土地買収騒動の裏に潜んでいた魔女も、私が追っていた魔女と同一の存在。たった一体の魔女を討伐するためだけに、私は彼女たちを集めました。

 

 

「じゃあ、つばめさんも?」

「そういえば……つばめさんもずっとななかさんと一緒にいましたよね」

「私ですか?」

「うん。つばめさんが協力してるのにも理由があるのかなって」

「そうヨ。琴織つばめ、アナタは何で常盤ななかと知り合ったネ?」

「……ふふ、それを聞かれてしまっては仕方ありませんね。ではお話するとしましょうか、私がここにいる理由を……!」

「一体……」

「どんな理由が……」

「あると言うネ……!?」

 

 

 意味深そうな言葉にごくり、と三人が息を呑む。つばめさんも深刻そうに頷き、口を開きました。

 

 

「――いやあ、特にないんですねこれが」

「「「……え?」」」

「私は夜の巡回中にななかさんが契約するところで出会ったんですけどね。この人、魔法少女なんて碌なものじゃないぞって忠告しても覚悟決めちゃってたものですから。これは先輩魔法少女としてしばらく面倒見てやらなきゃと思った次第で、それからこうして魔女退治に付き合ってるわけなんですよ」

 

 

 何やらきょとんとしている彼女たちにつばめさんが馴れ初めを説明します。あの夜、私の決意を聞いてもらったうえで、魔法少女という世界の厳しさを忠告してくれたつばめさんには大きな恩があります。

 

 

「つばめさんとは魔法少女について様々なことを教えてもらいました。今回来てもらったのは、単なる私のわがままです」

「ええ。とはいえ、私の友達が巻き込まれている時点で十分関係者ですけどね。個人的な意見として、その魔女には一発入れてやりたいとは思っているのです」

 

 

 そう言ってつばめさんはかこさんを見ました。直接の被害は受けておらずとも、例の魔女に対しての怒りは私たちと同じ。いや、もしかすれば誰よりも義憤に駆られているのかもしれません。親しい人物が被害を受けたとはいえ、あくまで他人事でしかないものに立ち上がれるというのは、それだけの思いがあると言う事でしょうから。

 

 

「つまり……?」

「私が協力する理由なんて義の一言ですよ。袖すり合うも他生の縁。あなた達の先達として、魔女狩りにいくらかの力添えをしたいのです」

「おお……!」

 

 

 つばめさんの言葉にあきらさんが感心しています。困っている人を見捨てられない性分であるあきらさんの琴線につばめさんの動機が触れたようです。

 

 

「まあ私の動機なんて横に置いといて、その魔女についての情報はどんなものなんです?」

「確かに……私たち全員に関わっている魔女なんて……」

「なんか実態が掴めないよね……」

 

 

 やはり大きな魔女とは言え、広い範囲にかつ自分たちが共通して被害を受けていたというのはにわかには信じがたい模様。事実、私も魔女がこれほどの広範囲に手を伸ばしていることに幾らかうすら寒いものを感じました。

 

 

「それについても説明いたします。飛蝗(ひこう)という現象を皆さんはご存知でしょうか?」

 

 

 私は標的である魔女についての私見を語りました。

 バッタが群れを成して農作物を荒らしていく災害のように、各地を転々としながら留まった場所を喰らいつくすように大きな不幸をまき散らしていき、時が経てば別の場所に移動して同じことを繰り返す性質をもった魔女。あきらさんとはその魔女の拠点の周辺で生き倒れていたのに遭遇し、かこさんや美雨さんとはその魔女が拠点を築く段階でもたらした不幸の標的となった。

 さらに厄介な点は、これらの拠点は残留し続け、街が元の姿を取り戻すとまた同じように不幸をまき散らし、人々の絶望を捕食するということ。

 

 

「そんな規模の魔女とは……かなりの強さネ」

「ええ。階級分けすれば恐らく中は堅い。これほどの規模からして、活動期間も結構な昔からと想定できます。中級魔女の中でもかなり上位に位置するかと思われます」

「中の上……?」

「簡単なカテゴライズですよ。一つの街で多くの被害を出すならば中ぐらいです。その辺りの説明は、後日纏まった時間が取れたらしましょうか」

 

 

 つばめさんの発言にあきらさんが首を傾げます。この人は時折、魔法少女や魔女に関して専門用語を用いた分析を行うことがあります。私たちは未だそうした事情について詳しくないので文面から推測できる範囲で理解するしかありませんが、それでも分かるのはつばめさんから見てもこの『飛蝗』が強大な魔女であること。常に命を懸ける必要のある魔法少女の世界ではベテランと呼んでも差支えのない彼女が言うのですから、この魔女が決して一筋縄ではいかない存在であるのが伺えます。

 

 

「私ひとりでは限度がある。つばめさんの手を借りてはいますが、正直それでも手は足りません」

「確かに私なら半日で三か所は潰せますが、それで全部ハズレだったら意味ないですしね」

「もう一度改めてお願いします。協同して事に当たりましょう。これは契約ではありません……『盟約』です」

 

 

 私怨だけではなく、魔法少女としてこの地に災厄を振りまく魔女を倒さなくてはいけない。利害の一致による協力関係ではいけない。仲間として、より強固な結びつきでなければ対抗できない。私は再び皆さんに頭を下げました。互いを利用するのではなく、背中を預け合う戦友となるために。

 

 

「……ボクはななかに協力するよ」

「あきらさん……」

「ていうか、そういう事情がなくてもそのつもりだったけど……」

「わ、私も! 及ばずながら……ですが……」

 

 

 あきらさんとかこさんが頷く。彼女たちも、魔女の災厄を放置しておくわけにはいかないと手を挙げてくれた。今はそれが何より心強い。

 

 

「ありがとう……!」

 

 

 本心から感謝の言葉を述べれたのはこれが初めてだったかもしれません。それぐらいには彼女たちを強引に勧誘してきた自覚はありますので、せめてこれだけは誠意を伝えたかった。

 

 

「美雨はどうするの……?」

「……」

 

 

 そして、最後に残ったのは美雨さん。

 あのような接触である以上は、厳しい反応になるとは覚悟していましたが……。

 

 

「……私、元々連帯することには反対してないネ」

「じゃあ……!」

「いいヨ。手を組むヨ」

「ありがとう、美雨さん……!」

「……でも、アナタの指示では動かないヨ」

 

 

 美雨さんは言いました。自分には組織の看板があるためそう簡単に他人の指図を受けるつもりはない。さらに言えば、私のことを品定めしていると。一度は実力を試すよう仕向けた以上は、当然の反応でしょう。

 

 ですが、それでも構いません。

 

 美雨さんのような経験に優れた人の力を借りれるのであれば、多少の疑いも甘んじて受け入れる。むしろ、彼女に認めてもらうためにこちらの力量を見せることができる機会を与えられたと思えば僥倖だ。

 

 

『手厳しいですね。どうします?』

 

 

 美雨さんの感触が喜ばしくないことに気を揉んだのかつばめさんがこっそりと念話を繋げてきました。おせっかいを焼きたがる人ですね。

 

 

『無論、彼女に認めてもらえるようにしますとも』

『中々やる気ありますねえ。フォローしましょうか?』

『お気遣いなく。これは私の課題ですので』

 

 

 流石にずっとつばめさんにおんぶにだっこと言う訳にもいかない。ここは自分の力で、美雨さんから信頼を勝ち取ると致しましょう。

 

 

「なるほど、だったら美雨さんには自由に行動してもらいましょう」

「……ほー……。自由でいいのカ?」

「盟約を結んでいただけるのであれば目的は同じ。結果さえ伴えば構いませんので、無理に一緒に行動する必要もないかと思われます」

 

 

 美雨さんの強みは地域に根差したネットワークであり、そこから魔女に繋がるような情報を得られる可能性がある。逆に言えば、それらを知らない私の指示では強みを活かしきれない恐れがある。彼女が満足できる働きをするためにも、ここはあえて自由に動いてもらうとしましょう。

 

 

「私が調べた魔女の拠点の情報を共有します。美雨さんはどこに向かうかだけ教えてください」

「……承知したヨ」

「あきらさんとかこさんはどうなさいますか……?」

「ボクはななかの立てた計画に載るよ」

「あの、私も……」

「ありがとうございます」

 

 

 二人は私の計画通りに動くようです。これならば全員で行動するよりも柔軟に動くことができそうです。

 

 

「――話は纏まったようで何より」

「……つばめさん」

「それで、まずは何からします?」

「簡単です。私たちで調べた魔女の拠点と思しき場所を全て調べる。そして発見次第、全員で退路を塞ぎ倒します」

「シンプルですね……」

 

 

 確かにこの作戦は単純です。ですが、その分確実性がある。魔法少女がひとりふたりでは人手が足らなくて不可能でしたが、これだけの人数がいれば魔女を探し当てることができるでしょう。

 美雨さんも随時連絡を取るという方針で承諾を頂けました。

 

 ――それでは、作戦開始です。

 

 

「では、取り掛かりましょう!」

 

 

 

 

 

 

 そんなわけで飛蝗討伐同盟(仮称)が結成されたわけですが。

 

 

 流石に魔女の拠点候補が数十か所もあるわけではなく、事前調査の甲斐もあって五人がかりで各所を潰せば一日で総ざらいできるぐらいには範囲と数を絞れていた。

 

 つまり何が言いたいかと言うと。

 

 例の魔女、割と早い段階で見つかった。 

 

 かこちゃんから見つけたと連絡が入り、私たちは現場に急行。

 そこにあった結界から感じられる魔力は、確かに例の魔女のもの。

 私たちは今まさに結界に入ろうとしているところだった。

 

 でもその前に、やるべきことはやっておく必要がある。

 

 

「では作戦会議、というかお互いの役割分担をしましょう」

「役割分担?」

「それぞれ得意な攻撃距離とか能力とかありますからね。前衛後衛ぐらいは事前に決めときましょう」

「……ム。確かに言う通りネ」

 

 

 この五人で魔女退治をするのは今回が初。

 ななかさんの采配を疑っているわけではないが、最初の陣取りぐらいは決めておきたい。というか、この面子でななかさん以外の固有魔法聞いてないので自分の動きを明確にするためにもここらで知っておきたい。美雨さんも流石にこれは必要だと理解してくれたのか渋ることなく頷いてくれた。

 

 

「かこちゃんは回復が得意だけど他には?」

「ええっと、『再現』です!」

「『再現』?」

「はい。その場にあった出来事を再現できます」

 

 

 その固有魔法は初耳だ。けれど、『再現』か。ある程度の制限はあるだろうけども、またまた悪用――いや応用のしがいがありそうな魔法だ。

 

 

「ふむふむ。それって魔法とかも対象に出来る?」

「どうでしょう……。試してみたことはないので分かりませんが、できるかもしれません!」

「あきらさんは?」

「『弱点を見破る』ことがボクの能力だよ。相手のどこを攻撃したら効果的かがわかるんだ」

 

 

 うーん便利。連撃が得意なあきらさんの近接スタイルにも噛み合っていて実に良い。クリティカル率が高いのはアタッカーとしてこれ以上なし。となると私はあきらさんとかこちゃんの間に立ってカバーに入るのが理想だろう。

 

 

「美雨さんは?」

「……私の能力、戦闘には役立たないネ」

 

 

 そう言って美雨さんは少し目を背けた。気になりますが、ここで追及するのは止めておきましょう。固有魔法って結構エグい能力も多くてあんまり他人に話したがらないものはあるだろうし、プライバシーには配慮しなくては。

 

 

「そうですか。ななかさんの能力は皆知ってるからいいでしょう。最後に私ですが、魂を見る能力です。ここから派生した様々な魔術も使えます。魔女相手に威力を上げる魔術も使えますので、あきらくんと合わせればクリティカルマシマシでしょう」

「魂……?」

「ええ。魔法少女の魂は特に強く輝いてますね。あきらさんは……おお、銀色で力強い。金属みたいな固さを感じます」

「へえ……」

「あの……! 私は何色ですか?」

「かこちゃんは優しい緑色ですねー。魔法少女の魂は基本的にソウルジェムが発する魔力の色と同じなのですよ」

「そ、そうなんですね」

「あ、美雨さんは海のように深い青です」

「当然ネ。あと、ついでみたいに言うなヨ」

 

 

 魂の色とそこから感じた印象を伝えると皆さんまんざらでもない様子。やっぱり自分が他人からどう見られているのかは気になるのだろうか。

 まあ、そんな話はさておき。

 

 

「ではななかさん。作戦をば」

「あきらさんは近接距離で攻撃をお願いします。弱点を探り、皆さんに伝えるとともに攻撃を」

「わかったよ!」

「かこさんは中距離を保ちながら回復で支援を。あきらさんが会心の一撃を叩き込んだら『再現』で追撃を試みてください」

「は、はい!」

「つばめさんはかこさんに向かう使い魔の迎撃の他、適宜皆さんの援護をお願いします」

「了解、カバーリングはお任せを」

「美雨さんは……特にありません。自由に戦ってください。そちらもその方がやりやすいでしょう」

「ああ。お手並み拝見ヨ」

 

 

 ななかさんが布陣について説明する。

 今回、戦闘の指揮は彼女に一任している。この同盟のリーダーは彼女な訳ですし、戦闘に関しても私が必要以上にでしゃばるのはよくないと思ったからだ。

 

 さて、どれくらいの腕前を見せてくれるのか。

 期待していますよ、ななかさん。

 

 

「それでは皆さん、突入!」

 

 

 

 

 

 

 ……いやあ。

 

 ななかさん、指揮能力すっごおい。

 

 魔法少女としてまだ一か月ちょいしか立ってないと言うのにまさかあそこまで的確な指示を出せるとは……正直まだひよっこだと侮ってた。

 

 結界に入ってすぐ使い魔の群れがお出迎えしてきたわけだが、そこはあきらさんの空手と美雨さんの拳法によってあっという間に片付いた。そうして二人を先頭に私たちは討ち漏らしを片付けたり、かすり傷が蓄積してきた頃合いを見計らってかこちゃんの回復で体力を戻したり。そうして魔女のいる最深部までたどり着いた。

 美雨さんは自由に動くと言ったように、私は使い魔を捌きながら美雨さんの援護にも回った。とは言っても後ろに回り込んだ使い魔を掃討しにいったぐらいだけども。美雨さんの目にも留まらぬ連撃で魔女が怯んだ隙を見逃さずにあきらさんが渾身の一撃を叩き込んでいく。そこにかこちゃんの『再現』も乗っかり倍率ドン。無事魔女を撃破という流れである。

 

 そうして()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()結界も消滅し、私たちは元の廃墟へと戻ってきた。

 

 

「やったね! 倒したね、かこ!」

「はい! やりましたね!」

 

 

 魔女を倒したことを素直に喜ぶあきらさんとかこさん。あきらさんもいつになくはしゃいじゃってうーん可愛い。

 そんな勝利に浸っている二人をよそに、美雨さんは何やら考えているように黙っている。

 

 

「……」

「おや、どうしました美雨さん? そんな神妙な顔して」

「戦ている時のアナタたちの動き、ななかの指示か?」

「……ええ。正直、想定以上でしたよ。まさかあれほどに的確な指示を出せるとは」

「ああ。なかなかやるネ……」

 

 

 そういえば美雨さんはななかさんを見定めると言っていたっけ。なるほど、彼女もななかさんの采配について評価していたわけだ。どうやら、ななかさんの指揮能力は彼女の御眼鏡に適ったらしい。裸眼だけど。

 

 

「私を自由にしたうえで、アナタ達には指示を出した。私を軸にしてフォローする戦い方は的確だた。さらに言えばあきら達たちを差し込むタイミングもバッチリ。つばめを雑魚の殲滅に割り当てて私たちを魔女に専念させた……そのさばき方、見事だたヨ。

 ――だから認めるヨ……。ななか、策を仰ぐに相応しい人物ネ」

 

 

 あれだけの警戒心から一転、ベタ褒めである。

 私は後ろで腕を組んで訳知り顔で頷いておく。

 

 

「ありがとうございます美雨さん……!」

 

 

 認められたことにななかさんも素直に喜んでいる。

 こうして、私たちはこれでチームとしても絆を育むことができ、これからも共に魔女退治をして神浜の平和を守っていくのであった。

 

 

 ……と、めでたしめでたしとはいかないんだこれが。

 

 

「……ですが、まだ終わりじゃないんです」

「えぇ~?」

「そんなぁ!? どういうことですか!?」

「魔女は倒したヨ……!?」

「うーん。まさかとは思ったけど……そういうこと?」

「ええ。確かに魔女は倒しました。ですが、あれは本命の魔女ではありませんでした」

「えっ!? でもななかが感じた魔力は確かにそれだって……」

「――親元がまだいるってことですよ。これだけ広範囲に影響を及ぼしておきながら、あの魔女は私たちが倒すには弱すぎた。つまりは……」

「使い魔が成長したわけカ……!」

 

 

 そう。あの魔女の魔力波長は確かに『飛蝗』のもの。だが、それはその魔女そのものと限られるわけではない。使い魔が人を喰らい、魔女として成長した場合は親とほぼ同じ波長の魔力を有することになる。私も魔女が抱える穢れの量がその辺の魔女と大差ないことに訝しんだものだが、ななかさんはちゃんとわかっていたようだ。やっぱり私、視覚情報として魔力を認識できるようになった代わりに普通の魔力感知能力が人より劣ったような気がする。

 

 

「はい。私の魔法も確かにあれが『敵』であることを証明していました。それに感じた魔力も近しい魔力だったので怪しめど確信が持てませんでした……ですが、あれを倒して尚『まだ敵が残っている』ということもこの魔法は伝えてきました。……つばめさんの言う通り、隠れた力がありましたね」

 

 

 え、そこでその話持ってくるの?

 

 だがまあ、ななかさんの能力が敵を見極めるだけでなく、その敵がまだ存命かを判別できると言うのは驚いた。確かに、復讐のための力ならば復讐が完遂できたかを確認するのは当然だ。いわゆる副次機能(おまけ)、あるいはいつの間にか魔法が成長していたパターンか。どちらにせよ、これのおかげでななかさんは標的をまだ倒せていないことに気が付いたわけだ。

 

 

「飛蝗は大量の卵を産みつけ蝗害は数年に渡る……。この魔女の生態は、そこまで似通っていたようです」

「だったら、まだ追うだけだよ!」

「……ですよね!」

「一度決めた標的、逃がすのは蒼海幣じゃないネ」

「……そうですね。皆さん、ありがとうございます」

 

 

 まだ狙いの魔女がいるだけでなく同様の魔女が何体もいる可能性を突き付けられても、皆は委縮するどころかやる気に満ちていた。当然だが私も同じ気持ちよ。こんな魔女が近所にいてまた放火! 殺人! 地上げ! なんてされたらおちおち趣味の満喫もできないのでね。全力で皆さんのタンク役として頑張らせてもらいますよ。

 

 

「ええ、私たちの戦いはこれからです!」

「ちょ、それ打ち切りフラグ!」

 

 

 おや、あきらさんナイスツッコミ。

 会合の時も薄々思ってましたが、これは意外と趣味の話が通じる(沼に引きずり込める)のでは……?

 

 そんな企みを胸に秘めていると、ななかさんが締めの言葉を口にする。

 

 

「そうですね。まだ探していない潜伏場所もありますし、他にも新たな出現地点があるかもしれません。戦いはまだまだ終わってなどいません。とはいえ、流石に今日はこの辺りといたしましょう。お疲れさまでした、皆さん」

「……そうだね。走り回って疲れたしお腹も空いてきたよ」

「ならどこか食べに寄るカ?」

「ええと……どこにしましょう?」

「まあ、無難に喫茶店とかでいいんじゃないですか」

「ならボクが選んでいいかな? 商店街にあるいい店を知ってるんだ。新作のデザートも出たらしくて行ってみたいと思ってたんだ!」

「ほうほう。ならばあきらさんチョイスで行きましょうか」

「意義なしネ」

「ではご一緒させてもらいますね。あきらさん」

 

 

 女の子らしく駄弁りながら喫茶店へと足を進めていく。

 そんなこんなで、私たちはここにチームを結成したのであった。まる。




〇琴織つばめ
 すぐ話が脱線するし、固有魔法のいやらしい組み合わせを考える。
 多分これからもえげつねえコンボやハメ技が出てくる。

〇常盤ななか
 固有魔法『第六感』
 相手が敵かどうかが分かる。不意打ちを防げるので地味に便利。
 敵が残っているかどうかを判別する力は本作での捏造。

〇夏目かこ
 固有魔法『再現』
 他人の魔法を再現できたりする「特性:おやこあい」。あるいは「まねっこ」

〇志伸あきら
 固有魔法『弱点看破』
 つまりクリティカル率や攻撃力が上昇する。強い。

〇純美雨
 単純に戦闘能力が高い。

〇キュゥべえ
 こやつの出番は消えたよ。
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