つばめちゃんは神浜の魔法少女が尊いようです   作:名無ツ草

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「クロスオーバー」タグを試験的に外しました。警告が出たらもう一度つけます。


第二十三話 二年目の春

 一年というものは、意外と短いものである。

 

 

 神浜に引っ越して、魔女を狩って、事件に巻き込まれて、仲間ができて、色々とコネを作って、友達と遊びまくって、勉強もして、アニメや漫画にどっぷり浸かって。

  

 全速力で青春を謳歌したこの一年もあっという間。

 私は気が付けば高等部二年生となり、新しい教室で新しい一年を始めようとしていた。

 

 とは言っても参京院の高等部にクラス替えはほとんどない。

 なのでこの一年も去年と同じ顔触れで進んでいく。

 そのはずであった。

 

 

「えー、まず初めにですが。この二年で編入してくる人を紹介します。……とはいっても、中には覚えている方もいるかもしれませんね」

 

 

 ガイダンスの前に、担任の先生からそんなことを告げられた。

 入ってきて、という言葉とともにがらりと教室の扉が開き、そこから入ってきた一人の女子生徒。

 

 銀色のハーフアップヘア。紫色の瞳。均整の取れた顔。纏う雰囲気はクール。花弁のように揺らめくのは青色の魂。

 

 

 ……って、確かあの人は。 

 

 

「家庭の事情で転校してしまいましたが、またこの伝統ある学校に戻ってきた静海このはさんです」

「……お久しぶりです。静海このはです」

 

 

 静海このは。

 私が参京院に入学してから6月までのわずかな間、同じ部室にいた生徒。

 転校したと聞いたが、まさかまたこの学校に戻ってくるとは。

 

 しかも、魔法少女になって。

 

 

(偶然……ってわけでもないんでしょうねぇ)

 

 

 記憶が確かであれば、静海さんは転校する前は魔法少女になっていなかった。

 だとすれば、あの白い害獣と契約したのは転校後、あるいは転校のタイミングだ。

 

 静海さんの家は孤児院だと文芸部の人からの又聞きで耳にしたことがある。その時は教育政策で孤児院の統廃合を行う動きがあった。けれど突如として多くの政治家の汚職が絡んでいたことが明るみになり、その政策はひとまず見送りとなった。

 

 ……うん。これ完全に魔法少女の願い絡んでますわ。

 

 この手の悪事が一気に明らかになる場合、それは高い確率で魔法少女の契約が関わっていると音子さんは言っていた。

 魔法少女は願いの段階で表社会に影響を与えることが多く、あまりに強い影響は好ましくない歪みを引き起こす。そうした異変を感知し、どうにかこうにか無理のない範囲に調整するべく各地の神秘機関は忙殺されているらしい。

 

 そんな事情を知ってしまうと魔法少女の願いそのものが世の摂理を捻じ曲げているんだなあとか柄にもなく思ってしまう。

 とは言っても、そのあたりの是非を下せるほど自分が世の中をわかっているなどとうぬぼれてはいないで、私の生活に悪影響が出ない範囲ならどうぞご自由にというスタンスを貫いているのは依然変わらないが。

 

 

 いささか話はずれたが、要するに孤児院を巡る騒動で静海さんが何かを願った可能性は高いということ。

 大方、魔法少女になって魔女退治のために別の場所に行ったけど、最近魔女が多くなってきたから神浜に戻ってきた、というところだろうか。

 

 

 自己紹介を終えた静海さんは自分の席に座ろうとして、二つほど前の席である私の横を通り過ぎる。

 

 その途中、目が合う。

 会釈をすれば曖昧な表情での会釈が返ってきた。

 

 

 ……うん、これ私のこと覚えられてないわ。

 

 

 仕方ないっちゃあ仕方ない。

 一年前はクラスも違ったし、部活は同じでもほとんど会話もなかった。

 私がなんか一方的にきれいだな~ぐらいの覚え方していただけで、無駄に威勢の良い新入りと幽霊部員の間に接点なんてほとんどないに等しかった。

 

 

 だがこれからは話が別。

 同じ学校に通う以上、そう遠くないうちに魔法少女として関わる時が来る。

 ほぼ毎日顔を合わせることになる仲だ。気まずい関係となるのはなるべく避けたい。

 

 今のうちに少しでも距離を詰めておくべきか。

 それともお互いに魔法少女だと知った後で関係を深めていくべきか。

 

 私は少し考え、深く関わるのは魔法少女として出会ったときでいいだろうと結論づけた。

 変に気を遣って勘繰られるよりは、適度な距離感を保っていたほうが個人的にも楽だったからだ。

 

 

 

 

 ……で、

 

 その時は思いのほか早くに来た。

 

 

 

 夜の廃墟。

 

 

 そこにいるのは静海このはとその隣に立つ二人の魔法少女。

 それに対するは常盤ななか率いる()()()()()()()()()

 

 それぞれが別に魔女の結界へと入り、戦闘を終えたことで改めて対面した両チーム。

 

 一触即発、というわけではないが互いに油断ならぬ緊張感が走る。

 

 

 

 ――ガァー! ガァー!

 

 

 

 その時、両者の間を鴉の群れが横切った。

 

 

「うわっ……!」

「ひゃあ……っ!?」

 

 

 咄嗟に顔を覆う静海さん達。

 しかしななか達はわかっていたように無反応だった。

 黒い羽根が舞う中、唐突に人影が現れ、彼女たちの前へと進み出てくる。

 次第に晴れ行く視界。

 そこに現れた人物とは――。

 

 

「すいません。遅れてしまいました。もしかして、もう倒しちゃいました?」

 

 

 何を隠そう、私である。

 ……ふっ、この登場は決まりましたね。

 

 

「琴織さん……!?」

「やーやー静海さん。つい数時間ぶりですね」

 

 

 まさかクラスメイトが魔法少女だとは思っていなかったのか、静海さんは私を見て驚いている。

 

 

「おや、お知り合いでしたか」

「クラスメイトですよ。てか、この子ら全員私たちと同じとこじゃないですか」

 

 

 同じ。

 それはつまり静海このはたち三人が参京院教育学院の生徒であるということ。

 下校中に三人一緒に帰ろうと集まっているのをチラッと見たのだ。

 

 

「あら。やはりそうでしたか。どうにも見覚えのあるお顔だと思っていましたので、もしやと思いましたが、奇遇なことですね」

「このは、それ本当?」

「……ええ。同じクラスの琴織つばめさんよ」

「どうも。琴織つばめと申します。こっちのななかさんのチームメイトですよ」

 

 

 静海さんの隣の金髪女子に挨拶する。

 いやデカイな。身長170cm以上あるし、露になっているその胸もデカイ。

 

 

「あ、これはご丁寧にどうも~。私は遊佐葉月(ゆさはづき)。よろしくね。

 ……で、チームって言いましたけど、他の方はお友達の魔法少女ってことでいいのかな?」

「あ、ボクたち?」

「は、はい! お友達です!」

 

 

 ななかちゃんを中心として魔女を倒すための盟約を結んだ、という建前でできたチームだけど。

 かこちゃんとは元々友達だし、他の皆さんとも割と頻繁にプライベートで遊んでいるので、もう友達といっていい間柄だろう。

 

 

「友達、違うネ。手を組んでるだけヨ」

「え……?」

 

 

 美雨さんの言葉に思わずそちらを見た。

 確かにななかちゃんやあきらくんよりは回数少ないけど、美雨さんとも色々遊びに行っていながら友達ではない……?

 

 なんか、ショックだ……。

 

 

「……つばめ、悪かたから。そういう目で見るなヨ」

「いーですもーんだ。……それで、どういう経緯でこのような状況に?」

 

 

 美雨さんのことは置いておき、確認のために話題を切り出す。

 

 

「ええ。実はこの方たちが使い魔を退治するところを、私が拝見させていただいたのです」

「そうだね~、覗き見していたよね~」

「……まあ、覗き見だけで正解だけど」

「つけいる隙のない見事な連携でしたわ」

 

 

 ななかちゃんが純粋に賛美するあたり、実力も中々といったところか。

 しかし覗き見、というか割と人間観察するななかちゃん、結構いい趣味していると思う。

 

 

「私たちが見失た使い魔、たまたま出くわして倒した。それだけヨ」

「……こちらが横取りをしたとでも?」

 

 

 美雨さんのそっけない言葉が癪に障ったのか、静海さんの顔が険しくなる。

 私はそこにすかさず口を挟んだ。

 

 

「まあまあ。魔女ならともかく、たかだか使い魔程度で言い合うのはどうかと。

 それとも、武勲とかを焦っていましたか美雨さん?」

「わかりやすく拗ねてる……」

 

 

 ふーんだ。

 どうせ友達じゃないもんね。

 

 

「あっはは。仲良しなんですねえ」

「もちろん()()()はこの通り、互いに信頼できるチームメイトですよ。……まあ、友達かどうかは人それぞれの考えがあるみたい、ですが」

「なんか言葉尻強くない?」

「そ、そんなに気にしてるのカ? そんなに嫌だたのカ?」

 

 

 美雨さんが珍しく狼狽えている。

 面白いからもうちょっとこのままにしておこう。

 

 それはそれとして、遊佐さんが少し戸惑っている。

 さりげなくこちらの一挙一動を観察していたことから察するに、会話の主導権を握り損ねたというところか。

 

 とはいえ、ちょっと悪乗りが過ぎた。

 これ以上私が何をしゃべっても、全体の空気感が崩れたままだ。

 ここからどう話を続けようかとななかちゃんに目配せをする。

 

 

「……こほん。とりあえず、この件については特に追及するつもりはありません。私としても、それより興味が惹かれたものがありますので」

「興味……?」

「ええ。先ほども申し上げましたが、私はあなた達の戦いを拝見いたしました。

 特に使い魔にとどめを刺した連携攻撃。特に目立った合図や指示もなく意思疎通をしてみせた。それはつまり、お互いに深い信頼関係で結ばれているという証拠です」

「そうだろ! あちし達はずっと三人でやってきたからな!!」

「あ、あちし……?」

 

 

 聞きなれない一人称に困惑するかこちゃん。

 

 

「あー、この子。『あたし』を『あちし』って言っちゃうのよ。ちょっとお子様でしょ?」

「ああ、なるほど!」

「むー! お子様じゃないもん! 13歳だもん!」

「13歳!」

 

 

 お、かこちゃんがなんだか食い気味だぞ。

 同い年だから親近感を感じた、というか友達になりたいと考えているな。

 もう一人13歳魔法少女を知っているけど、逆に言うとそれだけしかその年代の魔法少女いないってことだしね……。いや、小学校上がったばかりの子が魔法少女とか残酷すぎるけどな???

 

 

「っと、ちょっと話がずれちゃいましたね~。失礼失礼。それで、ななかさんはそんなアタシたちを見てどうしたいんですか?」

 

 

 うーわ。聞かれる側から聞く側へと瞬時に回ったよこの人。

 会話の立ち回り上手すぎない?

 

 

「……ふふ、そうですね。どうやらあなたは中々お話が上手なようで。なのでここはもうぶっちゃけちゃいましょう。私、あなた達ともっとお近づきになりたいと思っています」

「お近づき……?」

「単刀直入に言えば、私たちと組みませんか? ということです」

 

 

 

 早速勧誘したよこの人。

 まあ同じ学校で連絡もつけやすいし、実力も申し分ないだろうしで、ななかちゃん的には是非とも仲間にしたい人材ってことなのだろう。

 

 

『……本当にいいのカ? 初めて会た相手にいきなり……』

『あー、ボクたちの時も結構変わんなかったような……つばめさんはどうなんだっけ?』

『私はむしろ誘った側ですね。その後の仲間集めは全部ななかさんが主体ですけど。てかこれ、どう見てもその場の思い付きですね』

『ななか、結構直感で動くこと多いよね。まあ、その直感が大体馬鹿にできないんだけど』

『は、はい! ななかさんの直感は大事にするべきだと思います! あの人たちはいい人だと思います!』

『ど、どうしたのかこちゃん!?』

 

 

 あの眼帯っ子が13歳だからでしょ。

 

 

 

 ……で、もう少し会話が進んだ結果、今日はひとまず話を保留にして後日遊佐さんが話を聞くということで解散となった。

 

 

「さて、初の感触としてはまずまず、といったところでしょうか。遊佐さんはともかく、静海さんのほうは中々厳しそうですね」

「ん-、それじゃあ()()()()()()?」

 

 

 バサバサと近づいてきた鴉を腕に止まらせる。

 

 私は反魂魔術の一環で、死を司るとされる動物の鴉を使役することができる。

 で、そこからもう一歩発展して、私の魔女としての在り方……"雛鳥の魔女"は鳥型の使い魔を生み出す。とはいえ私は完全に魔女にはなっていないので、精々が鳥と繋がりを得やすいというだけの効果だが、反魂魔術によって鴉限定ならこうして端末として使役することができるわけだ。

 その気になれば神浜中の鴉を使い魔とすることでこの街を監視下に収めることもできるだろうけど、私に掛かる負担が半端じゃないし、その必要性も薄いので現状は腕で羽づくろいをしているこの子だけである。

 

 

「……いえ。その必要はありません。彼女たちも特に敵ではないようですし、監視の必要性は薄いかと。それにもし監視が露呈してしまえば、それこそ信を欠くことになります」

 

 

 魔法少女として活動していると、人間の負の感情についてある程度推測が立てられるようになる。

 会話を眺めていた感じ、静海さんはかなり周囲に心を許してはいない様子だ。

 

 それが魔法少女になったことと関係あるのかはわからないけど、あの二人以外を信じようとしていないのは確かに伺えた。

 

 

「ふむ。そうですね。ここは焦らずじっくりと仲良くなっていったほうがいいかも。かこちゃんはどう思いますか?」

三栗(みくり)あやめさん……私と同じ13歳の魔法少女……」

「かこちゃん?」

「え、あ、はい! 私も、あやめさんとは仲良くなりたいと思っています!」

 

 

 かこちゃんはさっきからずっと、眼帯の子――三栗あやめちゃんのことを考えている。

 こうなったかこちゃんはとにかく積極的だ。

 前に私たちとひと悶着あった13歳の魔法少女ともいつの間にか友達になるぐらいには普段の大人しさからは考えられないガッツを発揮する。

 あやめちゃんのほうは任せてもいいだろう。

 

 

「だ、そうです」

「ふむ、同年代であることはとても重要なようですね……。遊佐さんとは私とあきらさんが中心となって話を進めるのがいいかもしれませんね」

「だったら私は静海さんですね」

「え、大丈夫なの?」

「同い年どころか、同じクラスですから。いけますいけます」

 

 

 あくまで何の接点もない皆さんと比べたら、ですがね。

 

 

「おい、今私をハブらなかたか?」

「いえ別に? 手を組んでいるとはいえ、美雨さんにこれ以上負担をかけさせるわけにもいきませんから」

「そうですね……。中央学園に通っているとはいえ、あまりこちら側に足を運ばせ続けるのも心苦しいものですし、あまり無理を言うのはよくありませんね」

「ななかまで……わかったヨ! みんなは友達ネ! これでいいか!」

 

 

 うんうん。その言葉が欲しかった。

 

 

「ほっほ。美雨さんたら素直じゃないんですから~。まあ私もちょっと意地悪だなって反省してますから。これでお互い恨みっこなしですね♪」

「だから嫌だたネ。コイツの前で友達言うの……」

 

 

 失敬な。 

 私は友人相手には多少ふざけるだけだってのに。

 打って響かない相手にはそもそもボケるつもりはないのである。

 

 まあ、それはそれとして静海さんの相手は私がしたほうがいいだろう。

 美雨さんとはさっきの流れからしてお互い剣呑なことを言いそうだし。

 

 

 いやでも、やっぱり心配だなあ……。

 バレないように、遠くからつけておきましょうか。

 

 

 

 ◇

 

 

 

「はろー」

「琴織さん……なに?」

 

 

 で、次の日。

 私は昼休みに静海さんを捕まえることにした。

 

 弁当を持参して赴くや、怪訝な表情と隠しもしない声色。

 いや、猫かぶりを捨てるの早くない?

 

 

「いえいえ。昨日はあまり話とかできませんでしたから、こうして昼ついでにお話しでもと」

「常盤ななかの命令で私を引き込みに来たわけ? そういうのは葉月が担当するって言っていたはずだけど」

「いえ別に。というかななかちゃんのあの思い付きは正直突発すぎますよね」

「じゃあ、なに?」

「ただの親睦会ですよ。毎日顔付き合わせる仲で腹の探り合いとか正直御免なので。そこまで日常生活捨ててはいないんですよ、私」

「……まあ、いいわ」

 

 

 観念したのか、静海さんは弁当を持って立ち上がった。

 

 そのまま中庭のベンチに向かい、一緒に弁当を食べる。

 私のはヘルパーさんが作った大量に作り置きできるおかずで作られたお弁当。

 静海さんのは冷凍食品も見られるが品数も多く、栄養バランスが考えられた内容だ。

 

 

「結構手が込んでますね。静海さんが作ったんですか?」

「……いえ。作ったのは葉月よ」

「へえ、そうなんですか。……んん。遊佐さんが?」

「ええ。それが何か?」

「あの、もしかして一緒に暮らしているんですか?」

「……そうよ」

 

 

 静海さんの顔が少しだけ険しくなる。

 おっとまずい。これ以上詮索すると不信感を与えるだけになってしまう。

 しかし魔法少女で一つ屋根の下……。

 孤児院出身ってことだし、そこのつながりなら別におかしい話ではないかもしれない。

 

 

「ふむ……何やら複雑そうですし、そのあたりは聞かないことにしましょう。それはそれとして、これは大事な確認なのですが」

「なに?」

「静海さんが神浜を離れていたのは魔法少女になったからですか?」

「…………ええ。そうよ。魔法少女として生きるためには、魔女を追う必要があるでしょ? 最近は神浜に魔女が増えてきたから戻ってきた、それだけよ」

 

 

 突っぱねるような言い方。完全に信用されていない。

 でも物怖じしている場合ではない。

 最低でも今日は伝えるべきことはちゃんと伝えておかなくてはいけないのだ。

 

 

「そうですね。神浜から離れていたのなら、この街の魔法少女の事情についてもあまり知らないでしょう。なので、はい。不必要な問題が起きる前に教えておきたいと思いまして。静海さんを捕まえたのはこのためですね」

「……親切ね」

「はい。親切です」

「今のうちに恩でも売るつもり?」

「高く買い取ってくれるなら是非」

 

 

 あっけらかんと言ってやれば、静海さんはひどくやりづらそうな顔をした。

 突っぱねるような発言を真っ向から肯定し続け、これが交渉でも駆け引きでもないということを伝える。

 実際、私に静海さんをどうこうしようというつもりはないし、今のうちに仲良くなっておきたいというだけなのだ。しかしどうにも彼女にはその気持ちが伝わってないというか、そういう意識を持ってくれていないらしい。

 

 人間不信気味というか、相当にこじらせている感じが半端ない。

 

 

「静海さん的にはあんまり他所と慣れあうつもりはないのかもしれませんが、一応ここはかなりの街ですし、魔法少女も他の街の数倍ぐらいはいまして。なのでざっくり東西に分かれて勢力が二分されているんですよ。で、その両方にまとめ役となる魔法少女がいます。西に七海やちよ。東に和泉十七夜。あなた達のやり方が何であれ、この二人を敵に回すのだけはお勧めしません。単純に強いので、この二人」

「七海やちよ、和泉十七夜……。ええ、覚えたわ」

「それと、水名区には教会があります。何か揉め事があった場合、そこの紺染神父に頼めば匿うぐらいはしてくれるでしょう」

「教会……なんで?」

 

 

 意味がわからないと首を傾げる静海さん。

 

 

「ああ、他の街ならあんまり知られてませんよね。えーと、神浜(ここ)、粛清機関の直轄地です」

「! 粛清機関……! あの人が……?」

 

 

 その言葉で静海さんは思い至ったらしい。 

 というか紺染神父は知り合いらしい。本当顔が広いなあの人。教会に付属している養護施設以外にもいろんな施設を訪れているらしい。多分それはいつの間にか増えていたりする魔法少女を探る一環なのだろう。この前も両親を魔女に殺されたという魔法少女を引き取っていたし。

 

 

「そう。ご忠告ありがとう。でも私たちは私たちのやり方がある。あなた達のルールを脅かすつもりはないけど、慣れあうつもりはないわ」

「これは手厳しい。そんなに私たち、信用できませんか?」

「……わかっているなら、これ以上踏み込まないで」

 

 

 まあそういうことがあってから数日が経ち。

 

 学校では表面上仲良くしながら、放課後は魔法少女としての動向に気を配りつつもお互いに一定の距離を保つという微妙な関係を続いていた時である。

 

 魔法少女が何者かに襲われ、昏倒させられるという事件が起こったのであった。

 




○琴織つばめ
 友人の距離感が結構アバウト。
 人見知りのようでいて、顔見知り相手でも結構馴れ馴れしい。
 
○静海このは
 はじめのほうにちょろっとだけ出てた。
 今回で本格的に登場。

○純美雨
 ななか達とは同盟相手とか取引している関係だとか主張しているけど、どうみても友達です。素直じゃないね。


○鴉の使役
 つばめの使い魔。
 鴉たちはなんとなくつばめを主と認識し、なんとなくつばめの指示に従う。
 魔力を付与すれば感覚を乗せることが可能で、諜報にはうってつけ。
 口を借りることで念話の有効射程よりも遠くから言葉を伝えることもできる。

 要するに鎹鴉やべしゃり烏。
 あんまり大勢の感覚を共有すると脳が処理落ちするので普段は一羽だけ。
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