つばめちゃんは神浜の魔法少女が尊いようです   作:名無ツ草

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日常回です。


第二十五話 会議は踊り、そして逸れる

 神浜市参京区。

 あるファミレスにて。

 

 私達とのチームとこのはさん達のチームは一堂に会していた。

 

 

(以前もなんかこんな始まり方したなあ)

 

 

「それではご注文を」

「私は抹茶アイスを……」

「あちしはこれ!」 

「ボクはこの限定スイーツかな」

「ホットウーロン茶と杏仁豆腐ネ」

「つばめさんは何にしますか?」

 

 

 みんながみんな、思い思いの品を注文していく。

 うーん、統一感がない。

 仮にもこれから方針を纏め合う身だというのに、これでは面白くない。

 仕方ありません。ここは私が美緒から教わったファミレス必勝術を披露するといたしましょう。

 

 

「山盛りポテトフライ二皿。あとポップコーンシュリンプも一つお願いします」

「「!??!!?!?!?」」

 

 

 あきらくんと葉月さんが『こいつ……やりおった!』って顔でこっちを見る。

 ふっ、こういう時はシェアできてお手軽につまめるものを出すのが常套手段ってものですよ。

 カロリーなんて気にしませんよ。どうせ魔法少女だし。無敵のJKだし。

 

 

「お代は気にしなくていいですよ。ちょうどクーポン持ってますので」

「それはどうも……」

 

 

 そしてテーブルの中央を占拠する山盛りのフライドポテトと揚げられた小エビ。脇に添えられたケチャップとマヨネーズもこんもり。

 話題が何であれ、喋るには十分な量のスナックが揃った。

 

 

「それじゃ、始めましょう」

「はい。葉月さん、今日集まったことについては、提案者であるあなたからの説明をお願いします」

「りょーかい! 集まってもらった趣旨ってやつね。それは……」

 

 

 ポテトをつまみながら話を聞く。

 簡潔に言えば今回の議題は魔女の討伐権について。

 

 私含めたななかちゃんのチームとこのはさんのチームは同じ地区で活動している関係上、魔女結界でのブッキングも起こりうる。

 実際、最初に出会ったときも魔女結界の中だったし、つい先日も私たちのチームを追い越してこのはさん達が先に魔女を討伐していった。

 

 別に魔女狩りについて明確なルールがあるわけではない。命を賭けた戦いの中でそんなことを悠長に抜かしている暇なんてないし、魔女を放置したら逃げられる可能性もある以上、魔女狩りは自然と早い者勝ちになる。

 

 でも獲物を目の前で横取りされるというのが面白くないのも確かだ。美雨さんが特に悔しがっていたのは記憶に新しい。

 横を見れば当の彼女はシュリンプを優先的に食べている。どうやらエビが好きらしい。

 中華系ということでエビをチョイスしてみたが、正解だったようだ。

 

 当時の記憶を掘り返されて不機嫌になるかとも思われたが、好物に意識が向いている美雨さんは気にした様子はない。

 

 とはいえ、私たちがこれからも魔女狩りを続ける以上同じ魔女を狙うことなんていくらでもある。そのたびにあれこれと揉めていてはきりがない。

 なので、葉月さんは一度チーム同士で話し合い、魔女をどうするのかを決めよう……というのがこの会合の目的であった。

 

 

「それじゃあ、一人ひとつずつ案を出してもらいましょうか。えー、まず……」

「私から提案するヨ」

「お、いきなり」

「『早いもの勝ち』。これが一番簡単で公平なルールネ」

 

 

 魔女の下に最初にたどり着いたチームが戦い、他のチームは待機。

 この前の件を引きずっていることを加味しても、美雨さんらしいシンプルな意見だ。

 問題は、それが全く解決案になっていないことだけど。

 

 先にも言ったが魔女狩りにルールなどない。なので魔女の下への先行順というものにも明確な基準はない。

 そこに言ったもの勝ちになるルールを増やしたところで、結局揉め事の種を別に増やしただけになる。当人同士の話し合い? それができないからこうして話し合っているのだ。この辺は冷静なようでいて直情的な美雨さんらしい盲点だ。そういう抜けたところがあるのが可愛いんだけどね。

 

 結論から言えば平等に戦った人数で分配するのが一番なのだけども、やっぱり自分の取り分を多くしたいと思うのが人の性。そうそう簡単には答えにたどり着けないのであった。

 

 

「ん-、でもそれだと結局誰が判断するのかで揉めそうかな~」

「だったらやっぱりコレだよ!」

「あやめちゃん、何かいい案があるの!?」

「あるよ! あちしの勘がこう言ってる、じゃんけんで決めればいいんだよ!」

「……え、それだけ?」

「分かりやすい解決方法ね、流石はあやめね……!」

「へへ~っ!」

「そもそも、魔女の前でそんな真似してる余裕ないヨ!」

「なに~ッ!?」

 

 

 おっと美雨さんがキレ出した。あやめちゃんも乗っかり出した。これは放っておくと面倒なことになる。

 

 

「はいはいストッププリーズ」

「あぐっ!?」

「もぐっ!?」

 

 

 ポテトを突っ込んで話を強制中断。

 はいおやつ食べていっぺん冷静になろう。

 

 

「美雨さんもあやめさんもちょっと本題を見失ってます。魔女と戦うのは最優先。報酬については倒した後に決めたほうが安全確保の面でも重要でしょう」

「むぐ……ッ。だたらつばめは何か案があるのカ?」

「そーだね。ここは一番の経験者であるつばめさんの意見を伺おうかな」

「ははあ……」

 

 

 私に意見を出すように求められた。キャリアとしては美雨さんのほうが長いんだけど、それは大事な問題ではない。

 ここで平等制を出してもいいが、美雨さん達がヒートアップしている段階で真逆の意見を言うと突っぱねられる可能性もある。なのでここで提案するべき彼女たちの意思を汲んだもの。つまりなんらかの優劣で決める意見だ。個人的にその流れで考えればグリーフシードを得る権利があるのはやはり貢献度が最も高いチームだろう。

 であれば……、

 

 

倒した魔女の身体を剥ぎ取ってその部位で順位付けを行うとかどうですー?ズギャアアアアアン

 

 

 

「想像以上にグロい!!」

「バイオレンス!!」

「コワイ!」

「魔物をハントするゲームじゃないんだから……」

 

 

 あきらくんやかこちゃんが悲鳴を上げる。

 絵面は確かにグロいけど、分かりやすく武勲を示すならこれが一番ではないだろうか。魔女の身体はマジックアイテムの材料にもなるし一石二鳥。調整屋に持っていくとみたまさんがサービスしてくれるし、自前でアイテムを作ってもいい。

 私は使い魔が大量にいる結界を見つけたら突撃して乱獲することもある。意外と楽しいんだこれが。

 

 

「ふむ。となるとやはり首などの急所に近い部位が高得点になるでしょうか」

「いやいや、手足とかの攻撃部位も貢献度高いですよ」

「見てわからない場合はどこを急所と判断するべきかしら」

「素材としての価値……ですかね?」

 

 

 ななかちゃんとこのはさんから意見が出される。

 部位と一口に言っても、魔女の姿かたちによって物議を醸しだす恐れもあるか。そこは盲点だった。

 

 

「なんで剥ぎ取り制で話を進めようとしてるの!? 嫌だからねそれ!!」

「というかつばめ、そのルールお前が有利じゃないカ」

「あ、わかりました?」

 

 

 あきらさん達から必死のストップが入ったのでこの案はお流れに。

 話の流れを変えるための冗談半分だし、第一それを採用したら防御無視の私が魔女の身体を刻みまくるスプラッタ劇場が繰り広げられてかこちゃんにドン引きされてしまう。かこちゃんの顔が曇る瞬間なんて私は見たくない。綺麗な顔が恐怖に歪むことへの興奮には理解を示すが、かこちゃんは既に曇るとかそういう段階じゃない悲惨な過去を経験しているのだから、たくましくも笑顔でいてほしい。

 

 え? 現在進行形で怖がってる? まあ……ジョークだから許そう。よし、理論武装完了。

 

 

「そういえばこの人の武器って装甲無視なんだっけ?」

「魔法で攻撃の威力も上げるし、インチキの類ネ」

「インチキじゃないです。頭脳プレイです」

「一度戦ってみてわかるけど、いきなり戦い方を変えてくるのが恐ろしいわ」

「ええ。見た目以上に手数が多いのがつばめさんの厄介なところです」

「君たち好き勝手言い過ぎじゃないですか? この程度ならやちよさんぐらいもやりますよ」

 

 

 やちよさんは長年の経験がなせる業か、純粋に魔法少女としての技能が頭一つ抜けており、私の搦め手にも冷静に対処してくる。同じ槍を使う者として何度か手合わせをしてもらっているけれど、10回に1回勝てればいいほうだ。

 

 

「なーなー、つばめの槍っていっぱい変形したけど他にどれだけ変形するんだ!?」

「そうですね。私の骨喰はまず基本の直槍と攻撃力を増した十字槍の形態が主ですが、可変する両端の刃を組み合わせることでまず斧、鎌、錨、矛の四形態があります。そして柄のほうにも仕掛けがありましてこの前も見せたように真ん中で分離してヌンチャクになりますし、この状態から他の形態に移行して攻撃範囲を広くできますね。それとここだけの話ですが、石突を捻ると中からナイフが出てきますね」

「うおー、すっげー!」

「つばめ、あまり手の内を見せびらかすなヨ」

 

 

 この程度ならまだバレても問題ないですよ。

 武器のギミックなんて共に戦っていればいずれ知られるもの。

 なら今のうちにある程度は話しておいて私の実力を把握しておいてもらうのも一つの策略だ。

 などと言い訳をするが、実際は興味を持たれたので嬉しくなっただけである。こういう外連味ある武器を使ってみたいというのは誰しもが一度は夢見るはず、なのに魔法少女の方々ときたら驚きはすれど同意はしてくれない。趣味全振りじゃなくて実益も兼ねた良い武器なんだけどな……。

 

 

「欠点として、これだけ機能を盛った制約として槍を実体化できるのは一度に一つだけ。他の人たちみたいに武器を大量に作って弾幕を張るとかはできません」

「え、てことは仮に落としたら……」

「はい。拾うか破棄しないと再生成できません。若干の隙ではありますね」

 

 

 これは割と重要な情報だ。

 最高位の魔術師である父が概念兵装として改造した私の骨喰は、その存在自体が魂と強く紐づいており魔力で多数作り出すということができない。制約と誓約……ってわけじゃないけどそれぐらいの縛りがないと実体化の際のリソースが洒落にならなかったのである。やちよさんみたいに多数作って空中に浮かべて足場にするとかまず無理。

 一応、異形顕現をすれば頑張って二本目を出現させられるが今のところそこまでするほどの事態に陥ったことはない。

 

 

「弱点言うなヨ」

「これぐらいは言っておかないと共闘した場合に混乱するじゃないですか」

 

 

 仮に敵対した場合でも反魂魔術で罠を仕掛ければ隙は稼げますから問題ないし。あと徒手空拳も音子さんに仕込まれてるのである程度は戦える。

 もし誰かがこっそり聞いていても、私が変形武器を操って相手を翻弄する戦い方を取ると誤認してくれればそれでよし。

 一応これもブラフということで。

 

 

「あれ、もしかしてもうつばめさんの中では共闘するつもりだったりする……?」

「おっと気づかれましたか。ともあれ順番がどうのこうの言っても、多分これが最も穏便な案でしょうし。誰が先で言い争うよりも、力を合わせて戦うほうがいいんじゃないです?」

「つまり、戦った人全員にグリーフシードの権利があるってことかな?」

「いえすいえす」

 

 

 スムーズに出てきた要約に頷いておく。

 おそらくだけど、最初から葉月さんもこの提案をするつもりだったのだろう。

 

 

「それ、早いもの勝ちと何が違うカ?」

「魔力を消費した人に平等分配。戦闘に参加したことは見て分かるはずだし、ちょっとでも魔力を回復できるならそれに越したことはないでしょ?」

「……しかし……」

 

 

 美雨さんはまだ渋る。

 平等制に反対、というよりは単に葉月さんの良い様に進められるのが前回先を越されたのを思い出させて反発しているだけだろう。

 

 

「それとも、誰かが独占したほうがいいの……?」

「……誤解ネ、私にそんな考えはないヨ」

 

 

 だからこうして、若干露悪的な言い方をされると尻込みしてしまう美雨さんであった。

 葉月さん情に訴えるような真似もできるとは恐ろしいな。チームの窓口としてテキパキ動いているのも頷ける。

 それはそれとしてポテトうまうま。

 

 

「まあまあ。平等って言うだけじゃ実際どうなのかって分かりませんしもぐもぐ、ここは一度共同で魔女狩りしてみるのはいかがですもぐもぐ。それで不満が出たなら別の案を考えてみればいいんだしもぐもぐ」

「いいこと言ってるんだろうけど食べるか喋るかどっちかにしない……?」

「いやそろそろ冷めてしまいますし……あ、もうポテトがない」

「半皿も食っておいてなに言うカ」

「美雨さんはエビ食べてたでしょー」

 

 

 話してない時とかあやめちゃんがめちゃくちゃ食べてたし、やっぱり八人で二皿は足りなかったか。

 次から集まる時はもう一皿増やしてもいいかもしれない。

 

 

「……つばめさんって、結構食べるほうですよね」

「いやいや、そんなことないですよ」

 

 

 あきらさんと美雨さんは格闘家だから結構な健啖家だし、かこちゃんも麺類に関して言えばその小さな体のどこに収まっているのかと疑うほどに食べ歩きをしてみせる(この前付き合ったら軽く後悔した)。そんな三人に比べたら可愛いものだろう。

 

 

「……つばめさんの言う通り、ここは一度共同作業で魔女を倒して実績を作りましょう」

「賛成ですわ」

「いい案だわ葉月。それで、どういう割り振りをする?」

「ええっと、それは――」

 

 

 

 

「――っていう組み分けでどうかな?」

「オッケーです」

「承知したヨ」

 

 

 かこちゃんとあやめちゃんとあきらくん。

 葉月さんと美雨さんと、私。

 ななかちゃんとこのはさんは何かあった時のための要因として待機になった。

 

 

「今日は流石にこの後の予定もあるでしょうし、後日この組み合わせで行きましょう」

「ええ。よろしくお願いしますね遊佐さん」

「葉月でいいですよ~」

 

 

 そうして段取りを終え、このはさん達は先に帰っていった。

 

 

「……さて。どうでした、皆さん?」

「どうって……彼女たちのこと?」

 

 

 完全に店外へ出ていったことを確認してから、ななかちゃんは私たちに呼びかけた。

 どうでした、とはつまりこのはさん達をどう思ったか、について。

 積極的にこのはさんと絡んでいる私は別として、皆は割とプライベート面での関わりが少ない。

 悪人ではない、とはわかっていてもそれ以外の人となりまでは詳しく知らない。だから、皆に今回の会合での所感を尋ねたのだろう。

 

 

「……静海このは、分からないネ。三栗あやめ、見たまんまヨ」

「このはさんはあまり口出ししないタイプですからね……」

 

 

 このはさんは積極的に人と関わる気質ではないが、その分親しい人間とは深い付き合いをするタイプだ。だから浅い付き合いだと物静かだけど圧力を感じると思われるだろう。

 あやめちゃんは……うん、見たまんまである。年相応というべきか、あまり難しいことは考えていない。物事の良し悪しの分別はつくし、自分での判断もできる。かこちゃんと仲良くできていることからも問題はない。むしろ純粋な分こちらも下手に気負わなくて楽である。

 

 

「……ただ、遊佐葉月。何事も手際の良さを感じるネ」

「最初に会ったときもテキパキしてたし、すごいよねぇ~」

「それにとっても優しいんですよ!」

「そうですね。話の軌道修正も随分とこなれてましたし、要所要所でちゃんと会話の主導権を握っていたのは葉月さんですね。主催者なので当然っちゃ当然かもしれませんが」

 

 

 積極的に仕切っていたことといい、葉月さんはある程度この会議の流れを決めていただろう。

 美雨さんが早い者勝ちを提案する……なんて具体的なことまでは想定しないだろうけど、多少会議が揉めるぐらいは織り込み済み。そこから適宜口出しして自分の思うように話を持っていくぐらいは考えていたんじゃないだろうか。

 最初に出会ったときも話が脱線したらそこを起点に自分のペースに持っていこうとする人でしたし、今回は若干試す形でボケ倒してみせたけど、葉月さんは自分の意見を通すことに成功した。流石と言わざるを得ない。

 

 

「……そうですか」

 

 

 私たちからの評価を聞いたななかちゃんは少し考えこみ始めた。

 おそらく葉月さんについてだろう。あまり会議に口を挟まなかったのも、このはさん達の振る舞いを観察するためだろうし。

 

 さて、料理も無くなったので私たちはいつでも帰ることができる。

 支払い分を用意しようかと考えだしたところで、ある事に気が付いた。

 

 

「ところで、ななかちゃん何も頼んでないけどいいんです?」

「そういえば……ずっとメニュー見てたけど結局決めてなかったよね」

「……ああ、見られていましたか。これは失敬。少々分からないことがあったので、決定を先送りにしていました」

「……分からないって、なにが?」

「これです」

 

 

 ななかちゃんはメニューを手に取り、ある一点を指差した。

 

 

「実はその、このドリンクバーというものが気になってまして。これは一体何なのでしょうか」

「……え。知らないの……ななか?」

「はい。実はファミリーレストランも今日が初めてです」

 

 

 そういえばななかちゃん、いいとこのお嬢様で庶民文化には疎いんですよね。

 サブカル系知識が薄いのは分かっていたけど、こういう探せばどこにでもあるようなものも知らなかったとは、あまりお嬢様的な振る舞いはしないからよく失念する。

 

 

「変なところで世間知らずネ」

「つばめさんやあきらさんから色々と教わってきましたが、まだまだ知らないことばかりですわ」

「コイツから教わるのは悪影響しかなさそうヨ」

「そうでもないですよ? この間も流行りの文庫本を勧めてもらいました。ライトノベルとは、奥が深いものですわ……!」

「沼に沈めようとしてるだけじゃないカ」

「違いますー! あきらさんと一緒に見繕った健全なものですー!」

 

 

 いきなり趣味全開のニッチな作品勧めるとかないわ。

 こういうのは相手の趣味嗜好を把握するところから始めないと。

 そうして理解が深まってきたところに自分の推しを見せる。

 これはそのための準備段階なんですよ……!

 

 

「悪い顔してるネ」

「じ、自分の好きなものを人に知ってもらいたい気持ちは誰にでもあると思います……!」

 

 

 ナイスフォローですかこちゃん。

 

 

「とりあえずドリンクバーについて説明すると、あそこにあるバーから飲みたいものを好きなだけ飲んでもいいシステムなんだ」

「まあ! いくらでも飲んでいいのですか? ……物は試しといいますから。私はドリンクバーに挑みます……!」

 

 

 そう言ってななかちゃんは注文をした後、ドリンクバーのほうへと歩いて行った。

 その様子をこっそり眺める私たち。

 

 

「ドリンクの入れ方もわかるんでしょうか」

「流石にそれは指示があるから大丈夫じゃないかな」

「入れ始めたネ」

「最初は無難にウーロン茶ですか。あ、ボタンから手を離しましたね」

「押しっぱなしにするタイプって最初気づきにくいんですよね……あれ、なんか動きが止まりましたよ」

「何か考えてるみたいだね……え、いきなりブレンド!?」

「え、マジか」

 

 

 何も知らない状態でそれに気が付くとは、いやむしろ事前知識ゼロだからこその好奇心か……?

 あの清楚が形を成したななかちゃんがあんなパリピ感ある行動を取るとは予想外だった。

 私も美緒とその友達と一緒にファミレスに行ったときに謎にアガったテンションでドリンクバーの錬金術に手を出したことがあるが、まあ冒険したら大惨事。あれは生半可な知識で手を出すと地獄を見る。そんな魔境にドリンクバーどころかファミレス初心者のななかちゃんが挑むとは驚きである

 

 

「初めてでやるとはチャレンジャーネ」

「だ、大丈夫でしょうか……」

「あ、オレンジジュース入れ出した。割と無難な組み合わせですね」

「無難なんだ……」

 

 

 マズイ組み合わせを突き詰めるとキリがない。

 柑橘系とお茶はまだ飲めなくもない部類だ。

 ちなみにカルピスとオレンジとメロンソーダは中々イケる。

 

 

「なるほど、ドリンクバーとは飲み物を混ぜることもできるのですね!」

 

 

 そういって意気揚々と戻ってきたななかちゃんは中身を口に含んだ。

 なぜか私たちはその様子を見てごくりと息をのんだ。

 

 

「……どうです?」

「中々興味深い味です。たった二種類の飲み物を組み合わせただけでこのような味わいが生まれるとは、この常盤ななか。生まれて初めて知りました」

「マジか」

 

 

 これは研究しがいがありますわ。と中身を飲み干したななかちゃんは上機嫌でおかわりに向かった。

 

 どうやら、味ではなくその自由度がお気に召したらしい。

 ななかちゃんの家なら上等な飲み物はありふれているけど、こうして遊ぶような飲み方なんて考えたことも無かったのだろう。

 しかもコーヒースタンドの存在にも気が付いたらしく、嬉々として私ではやろうともしない組み合わせに手を出し始めている。

 今まさに出来上がりつつある謎のポーションとは対照的に、好奇心に目を輝かせるななかちゃんの姿は新鮮だ。

 

 

「……高貴なお嬢様がジャンクなものに手を出す瞬間からしか取れない栄養って……あるよね」

「何言ってるネこいつ」

「……なんとなく、わかります」

「かこ!?」




○琴織つばめ
 話を脱線させる役。ボケとツッコミの比率は7:3
 この後普通に魔女を狩った
 

○遊佐葉月
 原作では彼女のまほストにあたる話。ボケとツッコミの比率は0:10
 交渉人、というか他二人が対人向いてないので外交関係を一手に担ってる苦労人


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