つばめちゃんは神浜の魔法少女が尊いようです   作:名無ツ草

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第三話 初の邂逅

 私が神浜市で魔法少女活動を始めてから一週間が経った。

 

 そこそこ精力的に活動しているのだが、未だに参京区で活動する魔法少女を私は確認できていなかった。

 こんな大きな街で、魔女が度々出現していると言うのに妙な話ではあるが、参京区を大雑把に巡回しているため、もしかしたらすれ違っているあるいは単純に魔法少女が抜けた穴に収まっただけなのかもしれない。

 魔法少女は死亡率がべらぼうに高いのでそういうことは往々にしてあったりする。七枝は私と親友の美緒、後は先輩以外の魔法少女はほとんどいなかったので縄張り意識が希薄だったけど、他の街では縄張り争いが普通だという。

 神浜は大きな街だからそのあたりは結構厳格だろう。となれば、地区を越えてみれば他の魔法少女に出会えるかもしれない。

 

 そうした考えを父に相談すると、何やら闇の深そうな情報が返ってきた。

 

 

「そうか。では一つ耳寄りな情報をやろう。どうやらこの街は大正以後に成りあがったが今は寂れている東と、歴史ある名家が多く開発の盛んな西で住民の間に軋轢があるようだ。そうした背景がある以上、魔法少女のグループも同じように分かれていると考えた方が良い。そうなるとお互いの領域関係はデリケートなものになる。さて、どちらから先に接触するべきだと思う?」

「……西ですか?」

「その通り。引っ越してくる者はそのほとんどが新西区や栄区で、昔からの住人は工匠区や大東区などが多い。恐らく西の魔法少女に対しては、新参者であっても東の魔法少女はあまりいい感情を持たないだろうね」

 

 

 神浜は大きな都市である関係上、地域ごとで住民の意識や価値観が異なり、それがトラブルのもとになる事も多いらしい。父は建築関係者としての見解からこの辺りの問題点をいち早く注視していたらしく、その事実を基にしたアドバイスには大きな説得力があった。

 大人の住民がそうであるならば、より感情的な――悪く言えば世間知らずな――年齢層ばかりの魔法少女たちの排他的意識はより強いだろう。

 

 そうした考えの末、私はまず西の魔法少女の中の誰かに接触することにした。開発が進んで地方から移り住んでくる人間も多い場所の方が、外様の人間を受け入れる土壌があると考えたからだ。

 

 ここで重要なのは真っ先に代表者には出会わないこと。アポイントメントも無しに代表者の下で行くなど魔法少女でなくとも非常識。まずは末端に接触して、そこから順繰りにお目通しを叶うのがいい印象を与える秘訣だと父は言った。やっぱりほとんど一人で事業を成立させているだけあって人間関係の構築のコツを分かっているんですね。

 

 

「さてさて。魔女はいませんかねっと」

 

 

 そんなわけで参京区から西に向かって水名区。放課後の夕暮れ時。

 かつて城下町だった名残を残すこの地域は、歴史を感じさせる古い街並みが残っている。純和風の建物が並ぶ光景は、まるで時代劇の世界に入り込んだような感覚になる。実際に城も残っており、物のついでに見物に行ってみようかと実は思っている。

 

 だがまずは魔女を探すことが大事。魔女がいる所に魔法少女あり。先客がいた場合様子を見て、それが実力者かつリーダー的存在なら距離を取る。大人数の場合も同じことが言える。人数が多すぎるとその場の勢いで交渉が決裂する可能性が無きにしも非ず。

 最初に出会うなら、単独かつほどほどの実力を持つ子が良いなと考えつつ、私は自らの眼を発動した。

 

 視界に移る人間の中心に、青白い光が重なって見える。

 そのままぶらぶらと歩いていくと、指先に橙色の光を宿す少女が歩いているのが視界に移った。光の持ち主は同じ橙色の髪が特徴的な、水名女学園の薄紫色な制服を着た小柄な少女。身体から微かに放たれている魔力は、魔法少女である証拠だ。

 

 

「おっと、先に魔法少女を発見。まずは一人目ですね」

 

 

 ――魔法少女は文字通り魔法を使う。ではどのような魔法を用いるのか。

 

 治癒。強化。念動力。そうした基礎的な魔法の他にも、魔法少女にはそれぞれの願いや性格を昇華した固有の魔法が存在する。それはより強力な強化魔法だったり、弱点を見抜く魔法だったり、幻惑や暗示といった精神に作用する魔法だったりと千差万別。似た魔法があれど全く同じ魔法などこの世には存在しないだろう。

 

 そして私の固有魔法は、その中でもかなりの変わり種。

『父の蘇生』という願いから生まれた私の魔法は、魂を見ること。

幽界眼(デッドサイト)』と名付けたこの異能は、視覚情報として魂を認識する力を私にもたらした。

 

 ではどのように魂を認識するか。一般人の魂は普遍的なイメージの通りに青白く揺らめく火の玉として見える。反対に魔女の魂はドス黒い淀みで、直視し続けていると気分が悪くなる。

 そして魔法少女の魂は、とても色とりどりに輝いている。少女の魂を希望という色で染め上げ、ソウルジェムという形にしたからだろう。彼女たちの魂はキラキラと輝き、指輪となっている関係上通常なら指先あたりにその光を見ることができる。そのためわざわざ確認せずとも一発で丸わかりだ。

 

 そんな橙の少女は歩きながら周囲をしきりに警戒している。おそらく魔女を探しているのだろう。肌感覚としては契約を結んで間もないと言ったところ。

 

 

「うーん。ちょっと心配ですね」

 

 

 魂を見る目の副次効果として、魂の持つエネルギーを可視化することができる。このエネルギーが強ければ強いほど大きく輝いていたり。激しく燃え盛っていたりする。そしてそれは、ソウルジェムから生成される魔力を計る目安にもなるのだ。

 その点で言えば、橙色の魔法少女の魂は暖かい火、厨房の炎のように小さくも強く燃えている。その魔力量は中の下と言ったところ。実力のピンキリ差が激しい魔法少女の中で言えば素質のある方だと言える。下級の魔女なら単独で戦っても問題は無いだろう。

 

 

 結論:様子見して苦戦しているなら助けよう。

 

 

「お手並み拝見といきましょう」

 

 

 先ほどの少女が魔女の結界を発見して、その中へと入っていく。それから少し時間を置いて、私も後を追った。

 結界の風景は柵がいたるところに突き刺さった昏い草原という見覚えがあるもの。私が数日前に戦った羊の魔女。その別個体の結界だ。

 使い魔は人型。本体ともども遠距離攻撃が得意でそれなりに厄介な部類に入る。新米ならば、多少の苦戦は必至である。

 

 

「どこまで進んでいますかねーっと」

 

 

 結界の中には使い魔の姿は見当たらず、魔女の元にあっさりとたどり着いた。

 少し遠くから眺める先、羊の魔女とコック姿の少女が戦っている。

 魂の色からするに先ほどの少女で間違いない。彼女が手に持ったフライパンから火の玉を投げつけると、魔女の体毛に黒い焦げが出来上がっていく。しかし魔女が煩わしそうに身体を振ると、ボロボロと燃える箇所が脱落していき、大したダメージにはつながっていないようだ。

 魔女が襟から眼球を射出して反撃し、橙の少女はこれをフライパンで防いでいる。うむ。飛び道具を防ぐのにフライパンを活用するとは分かっているじゃないかと一人感心する。ピー〇姫の最強武器はフライパンだし、銃弾を防ぐのにも役立ってくれる。フライパン一つあれば戦えるのだ。まあ私の得物は槍なんですが。

 

 ところで、前々から思っているが、魔女も使い魔も自分の体の一部を切り離すのって痛くないんだろうか。攻撃すれば痛がる様子は見せるので痛覚はちゃんとあるはずなのだが、トカゲの自切めいてあらかじめ脱落しやすい構造になっているのだろうか。生命体としての理屈を魔女に持ち出すのはナンセンスではあるが、どうしても気になる……。

 

 

「ああもうしぶといですね! ラムチョップにしてやりましょうか!?」

 

 

 橙の少女が中々倒れない魔女に毒づく。あの恰好といい、もしや料理が得意な子なのだろうか。中々にニッチな料理名が咄嗟に出てくるあたり詳しいのは間違いない。私なんてジンギスカンぐらいしか思いつかなかった。まあ、そもそも魔女を見て食欲が湧くかというと一切湧かないどころかむしろ食欲は失せる一方であり、食事の事なんて気にしていられないのが実情である。

 

 そんなことを考えながら、私は駆け出していた。

 静観は終わった。あの少女は決して劣勢ではなくむしろかなり有利に戦いを進めている。だが一撃の威力には乏しいのか、あるいはあの魔女の生命力が予想以上に大きいのか、中々魔女は倒れず、少女の顔には焦りの色が見え始めている。

 あのままでは集中力か魔力のどちらかが先に尽き不覚を取る可能性がある。私はここが助太刀のタイミングだと判断した。

 

 少女が巨大な火の玉を作り、羊の魔女に命中させる。

 巨大な火柱が上がり、巨体が煙に包まれる。

 

 

「私の激辛フルコース、どうですか!」

 

 

 肩で息をしながら少女は手ごたえを感じているようだ。……だが、私の眼には、煙の中に渦巻く穢れが映っていた。

 煙を吹き飛ばして、巨大な毛の塊となった魔女が飛び出してくる。

 転がっての体当たり。単純軌道であるがそのスピードは侮れない。

 

 疲弊しているのもあっただろう。呆気にとられ身動きが取れない少女に、魔女の巨体が眼前まで迫り――。

 

 

「っらあ!」

 

 

 そして私は、少女目掛けて突撃する魔女を横合いから吹き飛ばした。

 

 

 

 ◇

 

 

 

 ――胡桃まなかは目の前の相手に手こずっていました。

 

 リリアンア学園の受験に失敗し、滑り止め先の水名女学院に入学したまなかが店の評判を広める機会を得るためにあの白タヌキと契約をして早一週間。

 

 最初はあまり乗り気でなかった魔女退治ですが、魔女は人に危害を加える存在。被害者の中にはいつかまなかの料理を食べにくる未来のお客さまがいると考えれば、不思議なことにやる気が湧いてくるものです。

 

 魔女との戦いにも少し慣れてきた頃合いのまなかは、今日も水名区で魔女退治を行っていました。いつもなら他の魔法少女の方と組んで行いますが、残念ながら今日は誰とも出会えずにまなか一人です。一人で使い魔を相手にしたことはありますが、魔女を退治するのはこれが初めてです。

 

 そうして水名区を歩いて見つけた魔女の結界。

 中に入れば使い魔が手に持った杖を振りかざして襲い掛かってきますが、焦らず冷静にフライパンで防いで反撃を叩き込みます。

 

 そうして結界の奥に進んでいき、待ち構えていたのは羊みたいな見た目をした魔女。

 ふわふわした見た目からよく燃えそうですねと思ったまなかは炎をフライパンで撃ち込んで攻撃しますが、見た目に反してあまり燃えてくれません。そういえば羊の毛は窒素が多く含まれているので燃えにくいと言う話をまなかは後で思い出しました。

 

 しかしフライパンで直接叩くのもあの羊毛に防がれてあまり効果がなさそうだと思い、時折飛んでくる魔女の攻撃を防ぎながら、まなかは炎を撃ち続けます。

 

 そうして何度も攻撃を繰り返していれば、流石に効いてきたのか魔女がよろめき出しますが、そこからがさらにしぶとく一行に倒れてくれません。まなかはこの時ブッチャーナイフが欲しくなりました。毛を削いで精肉して、ラムチョップにでもしてやろうかと思いました。ラムステーキでもいいですね。

 

 

「ああもうしぶといですね! ラムチョップにしてやりましょうか!?」

 

 

 そんなことを考えていたら実際に口に出していました。お店には羊肉の在庫は無いので作れませんがね。高いんですよ羊肉……。

 しかしそろそろ魔力も限界。ソウルジェムも半分以上が濁ってきている頃でしょう。

 まなかはフライパンに魔力を集め、今までで一番大きな炎の球を作り上げて魔女に投げつけました。

 巨大な火柱が上がり、魔女の身体が煙に包まれます。

 

 

「私の激辛フルコース、どうですか!」

 

 

 精一杯強がって見せますが、実のところそろそろ体力が限界です。

 これで倒れていてほしい。そんな私の願いをせせら笑うように、煙の中から身体を丸めた魔女が飛び出してきました。

 ゴロゴロと巨大な身体がまなか目掛けて転がってくる。

 それを認識したときは魔女はもう避けられないぐらい近くにまで迫っていて――

 

 

「っらあ!」

 

 

 槍の一撃が、その巨体を横から吹き飛ばしました。

 直角に軌道を変えられ、巨大な柵に激突する魔女。

 まなかが唖然としてそちらの方を見ていると、不意に声をかけられました。

 

 

「ふぅ。危ない危ない。もう少し様子見をしなくて正解でした」

 

 

 私の側に歩いて来たのは、槍を持った魔法少女。紫色の衣装に身を包んだ彼女は、ぽんぽんと労うように私の肩を叩いてきました。

 

 

「ご苦労様。後は私がやりますね」

「……あなたは?」

「物陰からこっそり見てた、ただのおせっかい焼きですよっと!」

 

 

 言葉と同時。彼女は魔女が飛んでいった方向に跳躍し、そのすぐ後に甲高い魔女の断末魔の叫びが聞こえてきました。

 

 どうやら魔女が倒されたらしく、気が付けば周囲の景色は水名の街並みに戻っていました。

 少ししてから、道の向こうから先ほどの人が歩いてきました。姿はすでに変身を解き、水名の隣の参京区を象徴する臙脂色の制服に身を包んだ彼女の手にはグリーフシードが握られており、魔女が確かに倒されたことを証明していました。

 

 

「いやー、先ほどのは危なかったですね。大丈夫ですか?」

「先ほどは助けてくれてありがとうございました。わたしは胡桃まなかです。あなたは」

「琴織つばめと言います。別にそんな礼を言われるほどの事はしてませんよ。ぶっちゃけ私、最初からあなたのことを見てましたので」

「え?」

 

 

 最初から見ていた。謙遜混じりにいわれたその言葉に思わず聞き返しました。

 具体的にどのあたりからと聞くとその魔法少女――琴織つばめさんはあなたが魔女の結界に入る前からですねとばつが悪そうに答えました。曰く、魔女の結界を探していたら偶然まなかも結界を探しているのを見た。一目で契約したてだとわかったが、魔女の強さも同じぐらいだと同様にわかったのでどれくらいの実力なのかを把握するために様子見をしていた、とのことらしいです。危なくなったら助けに入るつもりだったということですが……。

 

 

「それなら最初から声をかければいいじゃないですか」

「まあそうですよねぇ。結果的に助けられたから善し、と言えるほど私もお気楽ではありません。ただどうにもスパルタ思考といいますか。新米の成長を促すためにも手助けに入るのは最後って感じのスタンスで考えてましたね。あ、これグリーフシードです。私はラストアタック以外何もしていないのでどうぞ」

「あ、どうも」

 

 

 つばめさんは自分のやり方が意地悪だったなと反省しながらわたしにグリーフシードを渡しました。事情は何であれ、つばめさんがまなかを助けたのは確か。何かお礼をするべきだと思い、浄化した残りを差し上げようとすると、つばめさんは手で制してきました。

 

 

「私があれを倒せたのはあなたがぎりぎりまで頑張ったからです。横からかすめ取るような真似はしたくありませんよ」

 

 

 なんと謙虚な方なんでしょう。ですがそれではまなかの気が収まりません。では代わりに何かお礼をと言えば、つばめさんはそれなら、とあることを口にしました。

 

 

「では一つ聞きたいことがあるんですよ」

「なんですか? まなかに答えられることならなんでも答えます」

「この辺りのまとめ役、……あるいは抜きん出て強い魔法少女とか知ってますか? 私は最近神浜に来たばかりなので挨拶の一つぐらいはしておきたいと思いまして」

 

 

 つばめさんは元々神浜の住民では無く、進学を機に神浜に引っ越してきた魔法少女でした。そのため土地勘もあく、また魔法少女たちのコミュニティについても詳しくないとのこと。

 そのためにまなかを頼ってくれたと言うのは嬉しい話ですが、しかしまなかも魔法少女としては新米もいいところで、全然わかってないのはつばめさんと同じなのです。

 

 

「まとめ役? ……すみません、まなかも先週魔法少女になったばかりなのでそのあたりはまだわかりません」

「あらら。ホントに新米(ルーキー)だったんですかまなかちゃん。それにしてはかなりいい戦い方してましたよ」

「それはどうも。あ、でも強い魔法少女なら一人知っています。私と同じ水名の先輩で――」

 

 

「おや、そこにいるのはまなかさんではないですか!」

 

 

 噂をすれば何とやら。というかする前に件の人物がやってきました。

 青みがかった髪の彼女は竜城明日香(たつきあすか)。まなかと同じ水名女学院の二年上の先輩で、魔法少女となったまなかに先輩として何度か魔女退治をご一緒にし、このまえは学院でお昼を一緒に食べたりもしました。小さい頃から道場で学んできたという薙刀術を下地にしたその実力は確かなもので、まなかがこの一週間で知り合った中では最も強い魔法少女と言っていいでしょう。

 礼儀正しく、正義感の強い明日香さんなら、つばめさんの相談事にもきっと親身になってくれるはずだと思い、私はつばめさんに紹介しようとしたところに当の本人がやってきた形です。

 

 

「これは明日香さん。一体何かありましたか」

「実は近くに使い魔がいたので退治していたのですが、そちらに魔女がいたりはしませんでしたか?」

「はい。この辺りにいた使い魔の魔女ならもう退治しましたよ」

 

 

 明日香さんはまなかと同じくこの辺りにいた魔女を追っていた様子。きっと使い魔も離れたところにいた個体でしょう。既に退治したことを伝えると、まなかが魔女を退治したことに明日香さんは目を丸くしました。

 

 

「おや、魔法少女になったばかりだというのにもう魔女を一人で倒したのですか? なんと頼もしい!」

「ああいえ。確かにまなかが戦ったのは確かなんですが、途中で後れをとってしまいまして。最終的に止めを刺したのはこちらのつばめさんなんです。この人が羊の魔女を槍で弾いていなければ今頃危ないところでした」

「……む。そうなのですか?」

「つばめさん。この人は竜城明日香さん。まなかが知っている範囲では一番強い魔法少女です。一年前に魔法少女になったというのできっとつばめさんの求めている情報も知っていると思いますよ」

「琴織つばめです。最近神浜入りした新参者ですがよろしくお願いします」

「はい! 竜城明日香と申します!」

 

 

 つばめさんが挨拶をすると、明日香さんも快く応えます。

 

 

「つばめさん、まなかさんを助けていただき感謝します! しかし槍を使うとは奇遇ですね。私も薙刀を――ん?」

「どうしました?」

「……はて、槍を使う……? 参京院の制服……眼鏡を付けて後ろに纏めた髪……そして新しく来たばかり……」

「どうしましたか明日香さん? 何やらぶつぶつ言っているようですが」

 

 

 つばめさんが槍を使うと言うことを知ると、明日香さんが何かを考えだし始めました。ぽつりぽつりとつばめさんの特徴を上げていき、段々と目つきが剣呑なものに変わっていきます。

 

 そして、

 

 

「さてはあなたが噂の怪しい魔法少女ですね!? 覚悟ーッ!」

「どわーーーーっ!?」

「ちょ、ええええええ!?」

 

 

 いきなり明日香さんが変身してつばめさんに襲いかかりました。つばめさんは叫びながらも変身して槍で薙刀を受け止め、まなかは突然のことに驚くしかありませんでした。

 暫くつばぜり合っていた二人ですが、つばめさんが明日香さんを押しのけ、明日香さんが飛び下がって距離を取り、つばめさんは地面に刃を向けて槍を小刻みに動かす構えを取りました。

 

 

「ちょっと明日香さん、何をしているんですか!?」

「その髪、その槍、その力! なるほど、確かに噂に会った通り! 近頃参京区を荒らしている魔法少女とはズバリあなたの事ですね!!」

「はぁ!?」

 

 

 いきなり何を言い出しているんですかこの人は!? つばめさんがこの辺りで暴れ回っている魔法少女? 一体何を言っているのか理解できず、まなかは明日香さんを見ました。

 

 

「何が目的かは知りませんが、秩序を乱すとは不届き千万! ここで懲らしめると致しましょう!」

 

 

 薙刀を手に飛び掛かっていく明日香さん。つばめさんは繰り出される攻撃を薙刀で受け流し続けます。まなかは状況についていけず、ただそれを見守る事しかできませんでした。

 

 

「むむ、流石ですね!」

「くっ、この型……武道を学んでいるタイプですか!」

 

 

 明日香さんの正確な薙刀捌きをつばめさんは最低限の動きで防ぐ。お互いが達人であることはこの攻防で明白に伝わってきました。

 

 

「すごい……」

 

 

 感心していましたが、すぐに我に返ります。横道とは言え、ここは普通に道路の一角。いつ誰が来るのかわかりませんし、もし他の魔法少女がこの状況を見ればさらに面倒なことになるでしょう。そうなればもう収拾を収められる自信はありません。

 

 まなかは意を決して二人を止めに入ろうとしたその時、

 

 

「せええええい!」

 

 

 大きく振りかぶった明日香さんの渾身の一撃を、つばめさんが半身になって躱し、さらには足を払いました。

 しかしここは水名。いたるところに水路が通っている城下町の名残を残す地区。まなかたちが今いる場所にも水路である小さな川が存在し、それはちょうどつばめさんの背後でした。

 

 

「あ」

 

 

 やってしまった。という表情のつばめさん。

 体勢を崩した明日香さんは唖然とした表情で落下していき――、

 

 

 ドボン。という音と高い水しぶきが上がりました。

 

 

「…………………………」

「……あの、つばめさん?」

 

 

 明日香さんが落ちていった川を見つめるつばめさん。

 まなかはそんなつばめさんを見つめます。

 

 

「……まなかちゃん」

「はい、なんでしょう」

「これ、正当防衛で通じますかね?」

「何寝ぼけたこと言ってるんですか、急いで引き揚げますよ!」

「はーい!」

 

 

 素っ頓狂なことを口走ったつばめさんを急いで救助に向かわせます。

 慌てて水路に下りていき、顔を上げた明日香さんを引っ張り上げるつばめさん。

 まなかはその上で、周囲に誰か見ていないかを確認します。幸いなことに、目撃者らしき姿は見当たりませんでした。そうこうしているうちにつばめさんとずぶ濡れの明日香さんが戻ってきました。川に落ちたことで頭が冷えて落ち着いたのか、すぐに襲い掛かる様子はありません。

 

 

「落ち着きましたか?」

「うう、このような姿をさらすとは一生の不覚……」

「このままでは風邪を引いてしまいます。どこか近くに良い場所は在りませんか?」

「私の道場が近いかと……」

「ならそこに行きましょう。案内お願いしますね」

 

 

 とまあ、これがまなかとつばめさんとの出会いなのでした。

 

 

 




〇琴織つばめ
早速問題起こしてるよこの子。考えているようで割とその場のノリで動きがち。


〇固有魔法「幽界眼」
魂を見る魔眼。死者蘇生の願いが昇華されたもの。霊体を視認することで、より効果的な攻撃を与えることができるようになる。一般人の魂は青白く、魔法少女はソウルジェムの色に、魔女は穢れに染まっているためドス黒く見える。また、魂の形で大まかな属性も識別できる。

魂から発生するエネルギーである魔力も視認でき、魔力の流れに干渉することで魔法へ物理的に干渉することもできる。魔女の口づけを引きはがしたのはこの力。


〇胡桃まなか
魔法少女御用達の料理人。
実力に裏打ちされた自信たっぷりなドヤ顔のお口がとてもキュート。こんなかわいい子がめちゃんこ美味しい料理作ってくれる店が寂れているってマジで?



(一人称パートについて)どっちが見たい?

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  • いいや両方だ
  • 先にEP1を書くんだよ
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