つばめちゃんは神浜の魔法少女が尊いようです   作:名無ツ草

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扉絵イメージ【朝。ウズメによってベッドから引きずり降ろされるみふゆ。「いい加減起きなさい」「いや~おふとんが~~!」】


第五十一話 フェザーズ・オブ・ディペンド・フェントホープ……⑤【牧野郁美】

ChapterⅦ【牧野郁美】

 

 

 私は牧野郁美(まきのいくみ)

 

 マギウスの翼、黒羽根として活動するしがない魔法少女の一人。

 ついでに言えば栄区の専門学校一回生の19歳。年齢だけならみふゆさんや七海やちよとタメである。そんなところで並んだところで何も嬉しくないけど。

 

 なんでそんな私が聖リリアンナなんていう縁もゆかりもない学校で、しかもウワサに巻き込まれちゃったのか。それはみふゆさんから里見灯花への届け物を頼まれたから。

 

 工匠区の電気街で機械部品を買って届けるっていう簡単なお使い。羽根の私たちがやることでもないんだけど、普段マギウスのお世話をするウズメさんは出払っていて、みふゆさんも忙しかったから私たちのほうにお鉢が回ってきた。

 

 ちょうど次のシフトまで時間があったから、お店を中抜けして届けに行ったまでは良かった。

 問題はここから。機械のパーツを受け取ったマギウスが瞬間移動装置っていうのを完成させると、さっそくの実験台として私を結界の外に転移させたの。親切のつもりだろうけど、正直ありがた迷惑でしかない。

 気が付けばそこは有名なお嬢様学校の聖リリアンナの敷地内で、どうやって見つからずに出て行こうかと迷っていたらいつの間にかウワサの中に引き込まれていた。

 

 外にも出られず、人の気配がない校舎を彷徨っているうちに音楽室に辿りついた私は、折角だからと半分やけくそな気分で歌の練習をしてた。そうしたらいきなり扉が開いて、このウワサに巻き込まれた他の魔法少女、入名クシュちゃんと七瀬ゆきかちゃんが入ってきたんだ。

 

 このウワサがクシュちゃんを主演にしたものであることが分かって。その内容が『オトランドのうみべで』っていう童話を再現したもので(とはいっても本人は内容を人づてにしか聞いてなくてしかも途中までなんだけど)私とゆきかちゃんがお供役に選ばれたことも判明して。

 そうして私たちはウワサから抜け出すために一緒に行動してまずは一つ目の試練をクリアー! そして次の試練へ向かおうってなったところで、また別の人が目の前に現れた。

 

 

「ここからは私も同行しよう。いつ出発する?」

 

 

 そんなあからさまな台詞を吐いたのは、私たち羽根のローブよりも鳥のモチーフが強い暗紫色の外套なんていう、くみが言えたことじゃないけど怪しい恰好の魔法少女。

 

 この人の名前は鶴喰夜鴉さん。

 最近マギウスの翼に入ってきて、令ちゃんが責任者を務めている広報部で活躍している人。

 組織内での話題に持ち切りの夜鴉さんがどうしてこんなウワサの中にやってきたのかと言えば、私を探すようウズメさんに頼まれたからだって。

 

 それを聞いた時、私はとっても嬉しかった。

 だって私なんかのためにあのウズメさんが気を遣ってくれたからだ。

 ああうん。あの人が羽根のみんなをちゃんと大事に扱っているのは分かっているんだけど、それでもやっぱりウズメさんから助けが来たっていうのは心が熱くなった。

 

 それに夜鴉さん自体も心強い。

 翼の中で遊撃兵を務める双樹あやせさん(明らかに年下だけど普通に怖い)と戦闘演習で一歩も引かない鍔迫り合いを見せて、さらにはウズメさん主導の作戦にも組み込まれたっていうまさに期待の超新人! 私なんかよりもよっぽど二人の助けにはなれると思う。

 

 ……とはいっても、こうして顔を合わせて話してみるとここまで愉快なことを口走る人だとは思ってなかったなぁ。

 正直これまでは最初から姿を隠してて堅い喋りで葛葉さんほどじゃないけど不気味だとは思っていたから、なんだか意外だった。やっぱりあのキャラ維持するのってストレス溜まるのかなぁ。くみはもうメイドキャラは慣れたけどねっ♪

 

 そんなこんなで四人で進むことになった私たちは視聴覚室でクシュちゃんの記憶を見た後、また次の試練の場所まで向かった。

 そこは私が最初に目覚めた中庭の噴水。

 『オトランドのうみべで』で主人公は過去を映す泉をのぞき込んだ……みたい。う~ん、クシュちゃんの想像も混ざってるというかうろ覚えすぎてこの子の脳内当てゲーム状態だよっ。

 

 とにかくクシュちゃんは次の記憶を集めるためにその水面をのぞき込んだんだ。

 そして……。

 

 

「……」

 

 

 記憶を見終えた私たちは押し黙るしかなかった。

 

 予想していなきゃいけなかったんだ。

 海外にいた頃に出逢ったアネカちゃんという魔法少女。その人に憧れて魔法少女になるぐらい姉のように慕っていた人と離れて、この神浜に来ている意味。

 唐突にいなくなったアネカちゃん。探しに出かけて、いなくなった学校の近くで魔女を倒して、それでも彼女は見つからなくて。家に帰ったらキュゥべえがいて、アネカちゃんの行方について尋ねて。

 

 ……魔女になったアネカさんを倒したことを知ったクシュちゃんの慟哭は、今も耳に焼き付いて離れなかった。

 

 

「……なるほど。つまり君が願うやり直しとは、死人との再会だったか」

「うん……」

「あれ? ってことはその代償って……」

 

 

 ふと思い浮かんだその言葉で、クシュちゃんは自分の持ち物を漁り始めた。

 

 『入場料はプライスレス』――巻き込まれた『ユメミノカガミのウワサ』の文言の一節。

 その対価はクシュちゃんがいっぱい集めていたグリーフシードで、両手で数えきれないぐらいにあったはずのそれは二つにまで減っていた。……というか、くみが一年で集めた数よりも全然多いよぉ!?

 

 グリーフシードは魔法少女にとっての生命線。主に神浜の外で活動しているクシュちゃんにとってはそれこそ寿命を捧げたようなものなのに、全く後悔するようなそぶりは見えなかった。それだけアネカちゃんと再会することを望んでいるだってのが分かって、くみたちも協力しようって改めて決意したんだ。

 

 

「魔女の魂の欠片が亡者への対価……いや、現在から逆算して必要な量のグリーフシードを徴収した、というほうが妥当か……? どちらにせよ、それだけあれば向こう一年は魔女退治をサボっても問題ない量だったであろうに。このご時世によくもまあ集められたものだな」

「結構前から余った分を溜めてたし、今は神浜の周りに魔女がよくいるから……他の魔法少女がいないところで魔女を粛清してあげてるの」

「あ、はい」

 

 

 そういえばマギウスが神浜に魔女を集めてるから、外縁部を巡回してるだけでもけっこう魔女と遭遇するんだ。そしてそれを全部倒してるクシュちゃんは強い魔法少女。

 私なんて魔女を一体倒すだけでもいっぱいいっぱいなのに、それだけの数をなんてことないというように言うクシュちゃんは素質が違うんだろう。

 

 それに、強いのは力だけじゃない。

 魔女が元々は魔法少女だと知ってもそうやって戦いを続けることができるその心。私なんて内心謝りながら倒さなくちゃやってられないことなのに……って言ったら、クシュちゃんはきょとんとした顔でこんなことを言ったの。

 

 

「えっ……? 魔女は魔法少女じゃないよね?」

 

 

 穢れを溜めて呪いを生み始めた魔法少女の魂から生まれる呪いの化身が魔女。

 それを粛清することで呪いを浄化する行為は、決して悪いことじゃないって。

 

 ちゃんと筋が通っているように聞こえる理屈だけど、でもどこか違和感があった。

 魔女はソウルジェムが濁り切った魔法少女が変わり果てた怪物。それがキュゥべえが言っていたことで、マギウスの翼の魔法少女なら誰もが知っていること。

 同じく疑問を感じたゆきかちゃんがそのことを尋ねようとして。

 

 

「ああ、その通りだ。魔女とは魔法少女の魂の残骸より生まれ出る亡者。この世界の淀みの結晶を撃ち滅ぼすことに、なんの躊躇いがあるだろうか」

「そうだよね。神父さんだってあれは魔法少女の迷える魂によって生まれる呪いだから粛清する必要があるって言ってたし……やっぱり間違ってないよね。キュゥべえは魔法少女が魔女になるって言ってたけど、どうしてあんなことを言ったのかな」

「ヤツは我々生者と死んだ魔法少女から生まれた魔女の区別がついてないんだ。種族の違いとは悲しいものだな」

「そうなんだ……いつも聞こうとすると逃げちゃうからわからなかった」

 

 

 夜鴉さんが意見を肯定するような言葉を挟んできて、それにクシュちゃんも同調してしまって、なんだか疑問を重ねる余地がなくなっちゃったの。

 

 

『ちょっと夜鴉さん!?』

『え、何か?』

 

 

 念話で呼びかければ完全にすっとぼけるような声が返ってきた。

 間違いない。この人はクシュちゃんと私たちの間の認識の齟齬をわかったうえであんなことを口走ったみたい。

 

 

『いや、だってその』

『分かってるとも。だが本人がそう納得している以上は不用意に認識をほじくり返す意味もない。魔女を倒すことを受け入れているなら、それで問題あるまい』

『それじゃあやはり入名さんは……』

 

 

 言いたいことはなんとなく分かるつもり。

 クシュちゃんはあくまで魔法少女と魔女は別物だって思っている……ううん、多分わかっていてもそういう風に考えてる。

 そうしないと大好きなお姉さんを殺したのが自分だってことを正面から受け止めなくちゃいけないから、自分の心を守るためにそうやって言い訳をしているんだ。

 

 

『つまりは主観的な意見の相違だ。魔女とは魔法少女が変貌したものなのか、あるいはその魂の残骸から生まれたものであり生前のそれとは別物であるのか。どちらの解釈であろうと問題は無い以上、そこにさしたる差もないとは思うが』

『でも……』

 

 

 だからってその強引なやり方にはちょっと言いたいことがあるんだけどねっ!

 

 

『個人的にもアレと魔法少女とイコールで結びつけるのは承諾しかねるのでね。元の人格や意識が喪失している以上、それを同一のパーソナリティと見なしていいものだろうか』

『それは……そうなんでしょうか……?』

『要は知人の死体が動いているのを仕留められるかどうかという話だろう? ならば私はやる。それこそが一時でも人の世のために戦い散った彼女たちの尊厳を守るための慈悲であり介錯だと思っている』

『尊厳……』

 

 

 それは、ちょっと分かるかも。

 くみだってゆみが魔女になったら他の人たちに被害を出す前に倒してあげなきゃいけないのはわかっているし、絶対になりたくないけど魔女になってしまったら誰かを傷つける前に倒してもらいたいと思うもん。

 それは欲望のままに呪いを振りまく怪物になんてなりたくないっていう、人間として精一杯の意地なんだ。

 

 

『鶴喰さんは結構ドライな考えなんですね……』

『あんなもの虚や鬼と似たようなものだろう。元に戻せるなら越したことはないが、その手段もない以上は殺す他なしだ』

『わかりやすいですけど、どうして例えが少年漫画……?』

 

 

 確かに最近アニメやってたけどぉ。やっぱり夜鴉さんって結構こっち側の人間だよね!?

 

 

「……でも、それならなんでキュゥべえは逃げるのかな。別にそれならそれで正直に言えばいいのに」

「もしかして……入名さんの方にも問題があったりするんでしょうか?」

「え? そんな、別にキュゥべえを見つけたら全力で追いかけて捕まえようとしているだけだよ?」

「それだよ……」

 

 

 キュゥべえの実態を知ったらそういう感情を向けるのは仕方ないって思うけど……それでもそうやって話を聞かせてって感じの空気じゃない剣幕で詰められたら逃げるのは当然じゃないかな。

 

 

「確かにキュゥべえのことは魔法少女になった時から嫌い……大嫌いだけど!」

「ほら、そうやって態度に出てるっ! 殺意が漏れちゃってるんだよ!」

 

 

 可愛い顔してるのに、まったく可愛くない殺意が滲み出てる!

 ウズメさんみたいに既に首が落ちたような研ぎ澄まされた殺意じゃないけど、それでも『ブッ殺す』じゃなくて『ブッ殺した』ってなってるレベルの強い殺意だよぉ~~!!

 

 

「でも実際に殺したことはないよ? そんなことしたら色々問題が出てくると思うし……」

「それなら連中は殺しても残機が減るだけで別の個体がすぐに出てくるぞ。流石にやり過ぎるとほとんど姿を見せなくなるが」

「そうなんですか!?」

 

 

 くみもなんかそんな感じの話をウズメさんから聞いたことがあるかも……。

 この街はもうキュゥべえを締め出してるし、羽根の皆には接触禁止令が出されているから確かめることはできないけど、やっぱりあれって地球上の生き物じゃないんだなぁ。

 

 

「そうなんだ……じゃあ次見たら串刺しにしてから炙っても良いんだ?」

「うーん、この躊躇いの無さよ」

 

 

 そしてブレーキが外れたクシュちゃんが目をキラキラさせて物騒なことを言ってしまっている。

 いくら自分の気持ちに正直でも、もうちょっと自分のキャラとか大事にしたほうがいいと思うんだ!

 

 

「えっ……流石に冗談ですよね!?」

「……え、うん。そこまでひどいことをするつもりは……ない、かも」

 

 

 僅かな沈黙が全てを物語ってない?

 

 

「も、もしそうだとしてもやっぱりやめた方がいいですよ! 確かにキュゥべえのやり方はひどいと思いますけど、いくらなんでもそこまでされる謂れはない*1筈ですっ」

 

 

 そしてこっちはこっちで心が眩しいぐらいに光り輝いている!?

 最初は気が弱そうに見えたゆきかちゃんだけど、その奥には揺るがない芯がある。

 二人とも魔女と戦う運命に目を背けず受け止めている。

 私みたいにマギウスの救いにすがるしかなかった弱い人とは違う、真っすぐな心。

 

 ……でも、そんな真っすぐな心を持って私たちを救いあげようとしてくれる人もいる。

 あの人たちの真心に報いるためにも、弱い私たちは私たちなりに頑張らなきゃいけないんだ。

 

 

「マギウスの翼って……何をしている人たちなの?」

 

 

 クシュちゃんがついにそこを聞いてきてしまった。

 どうしよう。どこまで言っていいのかな?

 あんまり部外者には言わないほうがいいし、市外には極力漏らさないようにって言われてるんだけど……。

 でも二人とも魔女化については知っているんだし、言っても構わないよね。

 

 

 ということで、軽くマギウスの翼について説明したの。

 

 

「魔法少女の救済……?」

「うん。胡散臭い目で見る魔法少女たちもいっぱいいるし、教会の人たちには秘密で動いているけどね……」

 

 

 解放、なんていってもその手段には堂々と言うには憚れるようなことがたくさん。

 ドッペルを成り立たせているイヴは半魔女だし、そのイヴを作るためにはウワサで一般人から感情エネルギーを集めたり、魔女を育てて餌にする必要がある。

 真面目に魔法少女をやっている子からすれば、危険な組織だと思われてもおかしくはない。だから私たちは素性を隠すためにローブで姿を覆っている。

 

 

「でも今説明したドッペルがあるかぎり神浜市内では魔法少女は魔女にならないの」

 

 

 それが無かったら私たちは今ここにいない。

 そしてその今をずっと続けられるようにするために解放を実現する。だから私はマギウスの翼であの人たちのために戦っているんだ。

 

 

「……神浜市内にいると争いに巻き込まれそうだし、今まで通りに市外への遠征を続けようかな」

「くみの話聞いてたっ?」

「今まででもずっとひとりでやってきたし、何かあったらそれまで。……アネカお姉さんは逃げなかった。だから私も逃げたくない」

「そうか。強いのだな入名殿は」

 

 

 確かにあれだけグリーフシードを持っていたなら一人でも大丈夫だとは思うけど……死ぬのが怖くないの?

 

 

「それに市外の魔女だって放っておけば誰かが犠牲になっちゃうんだよ?」

「はっ……その通りです。自分だけ救われるわけにはいきませんっ!」

 

 

 クシュちゃんに続いてゆきかちゃんも同じようなことを言った。

 その潔さは素晴らしいとは思うんだけど……そういう人たちが私たちの敵として立ちはだかる可能性が高いのが困りものなんだよね。

 でも友好的な魔法少女は積極的に引き入れるかそうじゃなくても味方につけたほうがいいっていうのが上の判断だから……うん、教えちゃったことだしもうちょっと粘ってみてもいいかも。クシュちゃんの決意は固そうだけど、ゆきかちゃんは若干迷ってそうだし。

 

 

「確かに現在はドッペルが発動するのは神浜市内だけ。だが我々の活動がうまくいけば自動浄化システムは全世界に広げることができる。決して自分たちだけが今救われるためではない……みふゆ殿は少なくともそう言っていたな」

「みふゆさん……えっ、みふゆさんっ!?」

「ほう。やはり知っているか」

「知ってるも何も、梓センパイは水名女学院の大先輩ですよっ!」 

「学校同じなんだ……」

 

 

 あの人最初に会った時は既に卒業済みだったから知らなかったんだよね。

 だから白羽根の月夜さんとやけに仲良かったんだ。そういえば双子だっていう月咲さんは工匠学舎の制服だったけど、なんで双子なのに西と東で別れてるのか……なんだかとても嫌な背景がありそうだからそっとしておいたほうがよさそう。

 

 

「というか魔法少女だったんですかあの人!?」

「今年で七年目らしいぞ」

「そんなに長く生きてたんですか、あの水名で!?」

「あのって……」

 

 

 でもあんなガチガチに意識高い家で魔法少女を続けられる方がおかしいとはくみも思った。

 他の幹部がわかりやすくぶっ飛んだ人(アリナとか双樹とか葛葉とか)だから薄れてるけど、あの人も大概化け物だよね……。

 何はともかく。先輩後輩の関係なら心を掴むのには十分! このまま勢いに任せて勧誘しちゃおう!

 

 

「興味があるならみふゆさん経由で紹介できるけど……?」

「みふゆ殿はもちろん、組織を統率する沙羅ウズメ殿は信頼できる御仁だ」

「ウズメさん、ですか……?」

「そうそう! とっても強いし、面倒見もいいんだよっ! ゆきかちゃんは剣士だったよね? ウズメさんは剣持ちの魔法少女には指導してくれるから戦い方のコツとか学べると思うよ」

「今のご時世では中々見られん逸物だよ。仮の主とはいえ、中々仕えがいがある」

 

 

 マギウスの翼、そのトップに君臨する沙羅ウズメさん。

 あの人は私たち羽根の憧れといっても過言じゃない。

 

 凛とした佇まい。マギウス相手に一歩も物おじしない胆力。羽根に無茶振りを要求しようとするマギウス(おもに灯花とアリナ)を りつけるウズメさんの姿はこの組織では名物みたいなもの。

 超人的な能力と思考があって、会話するとプレッシャーを感じてしまうマギウスだけど、それでもああやってしゅんとしている時は同じ女の子なんだなって感じられるのは、やっぱりあの人がしっかりと接しているからだと思う。

 

 それに私たちを軽んじず気配りもちゃんとしているのもまた魅力のひとつ。羽根として戦い方や口調の統一はするけど、それでも私たち個人のことはちゃんと見てくれる。

 

 そして何よりもウズメさんの魅力は、魔女を剣の一振りで斬り捨てていく圧倒的な実力。

 

 みふゆさんがマギウスの翼の「心」なら、ウズメさんはマギウスの翼の「武」。

 マギウスの翼において最強として君臨するウズメさんは非の打ちどころがなく"かっこいい"。

 だから私も含めた皆がウズメさんのことを尊敬している。

 あの人たちの下で動けば、弱い私たちでも立派な魔法少女でいられるような気がする。そんな気持ちの下で、私たちは羽根として頑張っている。

 

 それに目指しているものと方向性は違うけど、あの人の振る舞いはメイドさんとして完璧。

 組織の一員としても敬う気持ちも、個人的な目標として憧れる気持ち。その両方で私はウズメさんを尊敬しているんだ。

 だから打算抜きでも多くの魔法少女があの人の姿を見て魔法少女の解放に賛同してくれたらなっていう気持ちが、勧誘という形でゆきかちゃんに向かっているのかもしれない。

 

 

「ええと、でも……」

「ちなみに三食ご飯付きでおやつもあり。さらに関係者にはスパを始めとしたリラクゼーション施設も無料で開放されていて……」

「お願いします」

「決断早!」

 

 

 でも魅力的な環境だよね……。

 正直解放とか関係なくても魔法少女の寄り合いとしてここまでの好待遇があるとそれだけで入ってよかったと思っちゃうんだよね。

 

 とりあえずゆきかちゃんは現実のほうで用事があるのでそれを済ませてから……ということで盛大に脱線した話は終わり。

 区切りがついたところで、ぽややんとした顔で眺めていたクシュちゃんが声をかけてきた。

 

 

「話は纏まった?」

「あ……うん。ごめんね待たせちゃって」

「いいよ。ただ私はこれからもひとりでやらせてもらうね。代わりにあなたたちの事も内緒にしておいてあげるから」

「まあ、こちらとしても君ほどの実力者が市外で活動してくれているというなら後顧の憂いがなくなるというものだ。その働きに報いられるよう、我々も一層活動に精を入れなくてはな」

「うん。それなりに期待はしておくね」

 

 

 魔法少女の運命を知って解放に縋りついた魔法少女もいれば、知ってもなお周りの人たちのために独りで戦う魔法少女もいる。そして今もそんな事情を知らずに魔法少女の運命に苦しんでいる子もいる。

 

 

 そうしたすべての魔法少女を救うためにマギウスの翼はいるんだって、くみは改めて決意したんだ。

*1
実際はそんなことは全くなくインガオホーであった




○琴織つばめ
 心が強ェ奴なのか……?
 魔女と魔法少女が同一かどうかについては彼女の解釈というか、人間が吸血鬼やゾンビに変貌した場合どう扱うかの話である

○牧野郁美
 思いっきり真っ赤なお方に脳を焼かれている女。
 本作のマギウスの翼はだいたいこういう連中の集まりだ。
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