つばめちゃんがどこが尊いと思っているかの説明のための番外編。普通に今後の展開バレがあるので要注意。
時系列は原作一部~二部のどこかであったかもしれません。
キャラ崩壊の許せる人だけ見てね。
——どうしてこうなったのだろうか。
そうやって琴織つばめは何度目かの自問自答を行う。
現在、彼女は身動きが取れない状況にあった。
否、正確には振り子運動だけならできる。
具体的に言えば、彼女の体を拘束する縄が天井から吊り下げているからであり、それは彼女を囲んで見つめる少女らの手によって行われたものである。
「どうしてあなたがこうなったのかわかりますね。つばめさん?」
囲む少女の一人、つばめの所属するチームのリーダー、常盤ななかが問いかける。
椿色の髪の少女の目は光を反射する眼鏡によって見えないが、それが逆に強烈な視線を感じさせる。他につばめを囲んでいるのは同じくチームメンバーの志伸あきら、夏目かこ、純美雨。そして同盟関係かつ友人関係を築いている静海このは、遊佐葉月である。ちなみに三栗あやめはこの場にはおらず、深月フェリシアと遊びに行っている。彼女たちの根回しによって遠ざけられた形だ。
とてもではないが、13歳の無邪気な少女をこの場に居合わせるわけにはいかなかった。それほどの業を背負った状況なのである。
「皆目見当もございません」
つばめは当然のように白を切った。
何故自分は吊るされている?
どうしてこのように尋問を受けている?
その理由についてつばめは心当たりがあるが、彼女は無実を主張する。
「なるほど、ではこれは何でしょうか」
ななかがそういってつばめに見せつけたのは一冊の本。一見なんの変哲もない冊子であるそれは参京院の学園祭にて文芸部から発行され、配布された文学冊子である。
それを見た瞬間ぎくりとつばめはわかりやすい反応を見せ、ペラペラと聞かれてもいないことを喋り出した。
「うちが書いた文芸誌ですね。特に公序良俗に違反するようなものが掲載された覚えもないですし、ごくごく健全な作品集であると主張しますが何か問題でも?」
「つばめさん、貴方は今回の文芸誌に二つほど筆を取られたようですね。一つは超能力を持った方々が戦う現代のお話、少し荒い箇所もございますが私も心を踊らせるほどの出来だったと賞賛いたしますわ」
「それはどうも。収録の盛り上がりが伝わったようでなによりですねー」
褒められているのだが、素直に喜べない。むしろ汗をダラダラとかいて目は泳いでいる始末だ。何故か? それについてはもう一つの作品について語るのを待ってほしい。
「そうだね。僕も良いと思ったしみんなにも好評だったよ」
「収録に参加したのは私たちなんだけどね」
ななか以外に、収録に参加した少女たちからも感想の声が上がる。惜しむらくは、これが感想会ではなく尋問であるということだろう。
「さて、問題はもう一つのほうですわ」
ななかは文芸誌のページを開いた。
「『華麗な君と乙女なボク』……居合と空手。異なる武道を学ぶ女子生徒が時にすれ違い、分かり合って友情を育み試練を乗り越える物語。そこはかとなく背徳性がありながらも清涼さを感じさせる文章には書き手の熱意が見受けられました」
「……あの、冷静に評価されるとこそばゆいというか気恥ずかしいといいますか、あまり言及は控えてくれると嬉しいかなと」
「それは失礼しました。それで本題なのですが……」
「————誰をモデルにしたのですか、つばめさん?」
一段と低い声で詰め寄られる。
つばめは視線を逸らそうとするが、頭を掴まれ強制的に目を合わされる。普段ならば敵を射抜く鋭い眼光が今回はつばめを威圧する。
「何故目を背けるのですか?」
「えっいやその」
「そういえばこの主人公のお二人、私とあきらさんのようじゃないですか。居合の女子が華道を嗜んでいることや格闘技を習っている女子が地域の方々の悩みを解決しているという箇所はよく似ておりますし、二人が知り合った経緯は片方が行き倒れていたところを介抱したというのも同じですね」
「えっとですね」
「つばめさん」
「はい」
「これは私達を見て書きましたね?」
「えっと、それは、あの」
「どうなのですか?」
沈黙。
周囲に視線を向け、順繰りに目を合わせていく。
苦笑い。目を背ける。呆れ顔。憐れみ。そっと目を逸らす。
少女たちは誰も彼女に言葉をかけなかった。ひどい話だが、これも当然の結末かとつばめは内心受け入れた。
「黙っていてはわからないでしょう?」
「……はいそうですお二人で妄想して書きましたよ畜生め!」
先程までと一転して大声で自らの所業を認めるつばめ。もはや精神は諦めの境地に達していた。
「そもそも問題はないでしょう! ちゃんと名前はわからないように変更してありますし、巻末にもちゃんと『この作品はフィクションです。実在の人物や団体などとは関係ありません』と書いてあるじゃないですか!」
「それで何でも解決すると思ったら大間違いです!」
当然である。
友人同士でカップリングを妄想し、あまつさえ実際に書き上げて学園にばら撒くというのはいくらなんでも礼儀やら肖像権やらを軽視しているのではないだろうか。
元々胡乱な言動が目立ったが今回は輪にかけて酷い副官の醜態を前にななかは軽くため息をついた。
「全く、最近私やあきらさんをよく観察しているから何事かと思っていたら、こういうことだったとは……」
「いい取材でした」
「開き直っているんじゃありません! 全く、華心流の名前まで『想花流』などと変更して……、名前もそもそも知っていないとわからないぐらいと無駄に徹底しているのが逆に腹立ちますね」
「ななかちゃん。最近口悪くなってきましたよね」
「誰のせいでしょうねおほほほほほ」
笑いながらアイアンクローをつばめに決めるななか。以前のななかを知る者なら考えられない暴挙だが、それもこれも目の前の少女のフランクな接し方と彼女がななかに与えたあれやこれやの悪影響である。
「ぐええ」
「それで……何か言い分はありますか?」
「……だってぇ、お二人のやり取りがあんまりにも素晴らしくてぇ。お互いの事を補い合う関係を微笑ましい目で見ていたらなんだか思いがこみ上げてきちゃってえ。これは文章に書き起こさなくちゃって衝動が抑えられなくてえ。でも二人に悪いから出来る限りプライバシーに配慮しようとしたんですよぉ……。そしてその原稿を部室に放置してたら勝手に読まれて掲載の話まで持っていかれててあの好評っぷりを前にしたら否定できなかったんですよ……」
「つばめさん……!」
嗚咽混じりに語るつばめにわかります。と言わんばかりにかこがぐっと拳を握る。美雨はそれを冷ややかな目で見ていた。理由はともあれ、直接の原因はつばめの過失である。結局冊子にまとめるのをOKした時点でこうなるには十分すぎる業があった。
しかし流石にこの絵面はまずいと思ったのか、あきらが止めに入る。
「ちょっとやめようよななか。いくら僕たちをネタにされたからってこうやって拷問みたいな真似をするのはよくないと思う。確かにつばめさんの文章はちょっと誤解を生みかねない表現だけどさ……」
「ああ、そういえばあきらさんは後輩の女子に告白されたのでしたっけ。なら誤解ではなかったですね」
「ななかはなんでそのこと知ってるの!?」
「意外と皆知っていますよ」
「え、うそ!?」
人生の転換となった出来事であり、割と恥だと思っている出来事をいつの間にかすっぱ抜かれていたあきらであった。
つばめは逃れられぬ運命を受け入れるように歯を食いしばる。
「くっ……もはやこれまで。我が人生の汚点がこれ以上広がる前に、どうか介錯めされよ!」
「なんで処刑する流れになっているんですか。明日香さんみたいなことを言わないでください」
「ですが、これだけは言わせてください。今回の一件、全て私が独断でやったことです。かこちゃんもこのはさんも、断じて関係がありませんので! そのあたり分かっていただけますよう!!」
「しれっと言いやがったネ」
「つばめさん……!」
「つばめ……!」
「騙されてるヨ」
一人で罪をおっ被ろうとするつばめに共犯者二人が涙を流す。
「ねえ、これアタシどこからツッコめばいいの?」
「好きにやらせるがいいネ」
重ね重ねのボケに最早ツッコミが機能しておらず、怒涛の展開に葉月は置いて行かれていた。
「落ち着きなさいつばめさん」
ななかは繋がれているロープを切って騒ぐつばめを解放する。つばめは地面に尻から激突した。
「ぎゃんっ!」
「私は別に、何も回収しなさいと言っているわけではありません。ただ、小説のモデルとするのにどうして私たちに一言断りを入れなかったのかと聞きかっただけです」
「いたた……はい?」
「私は一度この作品を読み、つばめさんは良いものを書いたと素直に感心しました。そしてもう一度読み返してそのモデルに気が付きました。つばめさん。私が主人公二人のモデルが私とあきらさんだと気が付いて、最初に思ったことは何だと思います?」
「……怒りじゃないんですか?」
「――喜び、です。こうして作品に残そうとしてくれるほど、つばめさんは私たちのことを思ってくれている。そのことが私は喜ばしかった。私たち魔法少女はいつ果てるかもわからぬ存在。そうでなくとも、人と人の関わりはどれだけ輝かしくともいずれ記憶から薄れていくもの。つばめさんはそれを小説という形で繋ぎとめようとしたかった。そうではないですか?」
「いや、そいつただ性欲に任せて書いただけヨ……」
「美雨さん、空気を読んで!」
「どのような形であれ、つばめさんが私たちの事をこうして記録に残そうとしてくれたことは真実です。なら、あなたがこれを書いた動機についてはそれで充分です。幸い、私たちの関係を邪推してくる生徒もいませんし、事実を偽装する必要もないようですので」
ななかは文芸誌を手元に持っていき、そして――
「では最後に一つ――いい作品でしたよつばめさん。続編、期待してますね」
穏やかな笑みを一つ、つばめに向けたのであった。
つばめはきょとんとした後、挑戦的な笑みで返した。
「……ええ。次も唸らせるクオリティを提供しますとも」
「ああ、でも最後の決戦の場面。二人が共に立ち向かった地上げ屋の台湾系マフィアの拳法家を実は華道に偽装して伝授していた暗殺剣で倒すという流れは流石にどうかと思います」
「容赦ない指摘が心に刺さるッ!?」
「……オイ」
ななかのさりげない指摘に中華娘からの視線が強くなった。さらっと自分たちを取り囲んでいた事情を混ぜているのが憎たらしい。
「いやあ、私ってばこうなんというか書いていると外連味が欲しくなるんですよね」
「照れが入って奇抜な描写で誤魔化したのでしょうが、ここまで来たら純粋な武道と友情で勝負するべきだったかと」
「でもちゃんと伏線入れましたよ? ほらここ、江戸時代より続き、戦後は裏で勢力を伸ばしたっていう説明とか。居合術の禅の心を鍛える修行から枝分かれしたとか」
「妙な捏造を加えるのはやめてください。華心流は昭和にはすでに華の道以外を捨てています」
「……え?」
「失礼。お忘れを」
無視できない歴史の裏が暴かれようとした気がする。不用意に歴史の闇に触れるのは得策ではないと読者の皆様には忠告しておこう。
「ところで美雨さん。あなたのお店のディナーコース、予約できますか?」
「無問題ヨ。代金はつばめ持ちカ?」
「ええ。今回の打ち上げは彼女のおごりということで手を打ちましょう」
「ななかエグいことするねえ。それじゃあつばめ、ゴチになりま~す」
「そういえば美雨さんのお店行ったことなかったわね。あやめも連れていくんでしょう?」
「ええ。勿論ですよ」
「うびゃああああああ!?」
笑顔で恐ろしいことを宣告したななかと快く了承した美雨につばめの悲鳴が届く。
つばめがバイトで溜めた小遣いが消えた瞬間である。
~余談~
「あ、そうそう。葉月さん」
「なに?」
「次の作品、葉月さんモデルのキャラ出していいですか?」
「なんでこの流れで許可されると思ったのかな!?」
「お淑やかな裏に策を巡らす華道女子と対等に渡り合うふわふわ女子……いけると思いません?」
「あんたアタシのことそういう風に思ってたの?」
「駄目に決まってるわ。あなたに任せたらどんな改変をされるかわかったものじゃないわ」
「このは!」
「だから私が責任もって監修するから覚悟しなさい!」
「このは!?」
「さっすがこのはさん話がわかるぅ!」
「安心して葉月。葉月の可愛いところは私が間違い一つなく書かせるから」
「何一つ安心できる要素がないよ!?」
〇琴織つばめ
ギャグ時空だと途端に問題発言が多くなるぞ。
ちなみに収録云々はダブルクロス3rdをリプレイのためにみんなで遊んだって話。
〇常盤ななか
推し。
つばめちゃんへのツッコミにはかなり毒舌だぞ。
(一人称パートについて)どっちが見たい?
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つばめちゃん視点
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原作キャラ視点
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いいや両方だ
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先にEP1を書くんだよ