その日は襲撃を受けた魔法少女たちのフォローに入るために解散。その翌日、中央区に魔法少女たちが集合した。
西からは七海やちよ、梓みふゆ、由比鶴乃、十咎ももこ、安名メルのみかづき荘。
東からは和泉十七夜。実力のある魔法少女が少ない事と、西に対する軋轢を考慮して彼女一人の参加。
そして、今回の事件を一足飛びで解決するための情報を齎した琴織つばめ。
この総勢七名による探索隊によって、今回の騒動の原因となった魔女の捜索が行われる。
先日に十咎ももこが襲撃を受けたという結界が怪しいということで、彼女が記憶している魔力パターンを頼りに捜索することとなった。
「どうも初めまして。琴織つばめです」
「初めまして、安名メルです! お近づきの印に占い、どうですか!?」
安名メルはつい最近になってチームみかづき荘に加入した大東出身の魔法少女だ。本日が初対面となるつばめとメルは互いに挨拶を交わす。占い好きが高じて魔法少女となったメルは、初対面のつばめを占おうとした。
「占いというと、『2000年に恐怖の大王が現れ、マルスが世界を平和統治する』みたいな?」
「うん、それは予言ですね」
「じゃあ亀の甲羅を焼いて罅見るやつ」
「
古代中国に発祥した由緒ある占いである。甲骨文字はこれがきっかけで発達した、漢字の原初形態である。
つばめの口からいきなりマニアックな占いが飛び出してきたが、メルは難なく答える。
「煮え滾る湯に手を突っ込むとか」
「
盟神探湯とは古代日本で行われた神明裁判である。メルは当然知っている。
「お菓子にメッセージカードが入ってるの」
「フォーチューンクッキーですねそれは」
アメリカで有名なおみくじの一つで、日本ではあまりメジャーではないが、古今東西の占いを調べたといっても過言ではないメルは勿論知っている。
「じゃあろうそくの火を7日間消さずにいれば12年寿命が延びるという」
「それは諸葛孔明ですよ! しかも失敗するやつ! 後それは占いじゃなくておまじないです! ……つばめさん、かなり詳しいのでは?」
三国志にある延命祈祷の方法だが、メルは何故か知っている。
ボケが重なり、メルのツッコミも加速していく。
「おや、分かってしまいましたか」
「そんなに歴史オタクめいた要素出されたら分かりますよ」
「いや私歴史オタクじゃないですよ。ファンタジーよりの歴史に詳しいだけなんで」
「ああ。そっち系ですか」
「そうなんですよ。で、何するの? タロット?」
「ボクのオリジナル占いですよ!」
「ちなみに私のコミュはまだ解放されてませんよ。対応アルカナは死神です」
「そっちでもありません! というかラスボスにでもなるつもりですか?」
「あーでも
「……貴様!見ているなっ!」
キャッキャと歯止めのないオタ会話によって導かれる脱線事故。
「盛り上がってるとこ悪いけど、着いたわよ」
暇を持て余した少女たちのぐだぐだな会話が止められ、一同の目の前には魔女の結界の入り口があった。
◇
私たちの目の前に広がったのは、鏡の世界。
床も壁も、いたるところが鏡で構成された、重ね合わせの迷宮。あらゆるものを写し、惑わし、反転させる異界。
それが、魔法少女のコピーを作り上げた魔女の結界だった。
「む……はぐれそうになるな」
「皆さん、お互いをしっかり確認して離れないように!」
十七夜さんの戸惑いと、みふゆさんの呼びかけが聞こえる。
確かにここは全方位に鏡があり、本人と鏡像を見間違いそうになる。うっかりしていれば、あっという間に逸れてしまうだろう。
――と、気を付けていたのだが。
「おーい! ししょー!」
「七海先輩、みふゆさん、十七夜さん、ももこさん。どこですかー!」
ものの見事に、はぐれました。
メル君と鶴乃さんと私。気が付いたときには、この三人だけで立っていた。
最初はやちよさん達とはぐれたことに戸惑っていた二人だが、使い魔が現れるとすぐに顔を引き締めて迎撃に入った。
鶴乃さんの炎を纏った一撃がイーゼルの姿の使い魔を焼き払い、メル君のカードから呼び出される竜巻や雷が望遠鏡のような使い魔を撃墜していく。私は槍を振るって、二人が討ち漏らした使い魔の攻撃をブロッキングしながら反撃で叩き斬っていく。
そうして使い魔をあらかた倒し終えた私たちは、やちよさん達と合流するべく結界の中を歩いていた。
「ああもう、どっちがどっちだか分かりにくいよ!」
「全くです。鏡が多くて景色が滅茶苦茶です」
「かなり目が疲れる」
正しい道が分かりにくいだけじゃなく、反射した図が網膜に飛び込んでくる。不整合な情報を脳が処理しきれず、たっているだけで頭痛に悩まされそうだ。メル君も鶴乃さんも参っていた。
「ここに放り込んで放置すればそれだけで拷問になりそうですねー」
「しれっと怖い事言わないでほしいです」
こんな所に長時間いたら気が狂いそうになる。ガラス張りの床で縮み上がるように、人間、自分のいる場所がしっかりしていないと途端に不安になるものだ。
「ねえ、つばめちゃん。魂を見れるならみんなの居場所わからない?」
「うーん。難しいですね。結界の中だとその辺の視認が難しいといいますか。魂が見えるとは言っても、透視の類ではないですからね」
この眼は確かに追跡には便利だが、別に障害物を貫通したりするわけではない。あくまで魂を視認するだけであり、そこから発生した魔力の痕跡を見ることで追跡が可能になる。だから、はぐれた相手を探すとなると、つい数分前まで相手がその場にいた、ぐらいでないと魔力の残滓を追えないのだ。
「そっかー。でも他には何かあったりしない? 私の動きを止めた技みたいにさ」
「言っておきますが、反魂魔術ってそこまで万能じゃないですからね? 主に魔女相手の攻撃力を高めるか相手の動きを縛るぐらいしかできませんよ。あとはカラスを従えて使い魔みたいにできますね」
「そこまでできれば十分万能じゃないですか」
「そうでもないですよ。できるのとやっていいのは違いますし。死んだ人間の魂なんて、そう易々と操っちゃいけないんです」
メル君は万能だと言うが、実際には中々制約の多い魔術だ。
反魂、と名の付く通り、私が使う魔術の大半は生者ではなく死者に関わるものである。だが、私は死者の霊魂に干渉する類の魔術が使えない。これも私の修練が足りないからだろう。死者の霊を憑依させたりできるらしいが、今はまだ幽霊を認識するだけである。
父からはいずれ自在に死者の魂を呼び出し、使役することも可能ではあるが、同時にむやみやたらと濫用してはならないものだと言われている。一歩使い方を誤れば、呼んではならないものを呼んでしまうからだそう。今のように戦闘の補助程度に利用するのがちょうどいい塩梅なのかもしれない。
「そうですね……。ボクもやたらめったら占いをするなって七海先輩に禁止されちゃいましたし」
「すごいんだよ! メルの占いって百パーセント当たるんだから」
「でも、善くない結果まで当たるから皆に禁止されちゃったです」
「え」
今、なんかめちゃくちゃ聞き捨てならない言葉が聞こえたような。
百パーセント当たる占いって、それ要は未来の観測、あるいは因果律の操作って言いませんか?
ちょっと詳しく話を聞いてみたところ、予知ではなく、実際に未来をそういう方向に誘導していると七海さんが推測したらしい。それは中々に凶悪というか、手が付けられない類の能力と言うか……。
しかも占いという形式をとる以上、自分でも結果を制御することができない。だから悪い結果が出てもそれを回避することが不可能である。
「それ、本当に占いっていうんですかね?」
「そうなんです……。占いはあくまで指針であって、悪い結果を回避するためのものですよね」
「ふーむ。メル君の占いを回避するには同様の因果干渉のスキル、あるいは魔法そのものの発動を無効化させる。いやしかし、魔法という媒体を発する以上そこで魔力が使用されているはずだから、そこの流れをぶった切れれば発動も無効化できる……?」
「つ、つばめさん?」
「ああすいません。もし貴方の魔法が作用した場合、どう対処するべきか考えてました」
「しれっとそう言うの普通に怖いです」
「冷静と魔法を分析されるのってなんかぞわぞわするね」
「あ、ごめん」
私は設定の考察とか伏線をこじつけて考えるのが好きなタイプのオタクだから、こうして認識に左右されがちな魔法についても色々と考えてしまう。まあ、自分の魔法への対抗手段を淡々と呟かれるのはそうそういい気分でもないだろう。素直に謝っておくことにした。
「――む、皆さんストップ」
魔力が脈動する気配を感知し、二人に呼び掛ける。
目の前の先、望遠鏡を模した使い魔が飛び交っている中、青い人影が立っているのが見えた。
「うわ、本当に出てきた……」
「あ、七海先輩!」
「待つのですメル君」
メル君の肩を掴んで止める。
使い魔たちの向こうに立っているのは確かにやちよさんだが、私の眼にはあの清流のような青い魂は見えていない。
「え? ……あ、そうですコピー!」
「その通り。ぶっちゃけますがアレはコピーですね。ガワはそっくりですが中身がすっからかんです」
「なるほど……」
「言われてみればちょっと違うかも!」
じっくりと観察するメル君と鶴乃さん。コピーやちよさんもこっちに気が付いたのか、私たちのほうに歩いてくる。
彼女は私たちと数歩の距離まで近づき、そして、
「あら~。みんなどこにいたの~? 探したわよ~?」
「……うわ」
――と、やちよさんが言いそうにもない口調で話しかけてきた。
「やちよがヘンだぁ~!?」
「ぷっ……普段の七海先輩とのギャップがすご……くくっ」
戸惑う鶴乃さんといつもクールな言葉なやちよさんとのギャップに耐え切れずに吹き出すメル君。二人とも忘れていないだろうか。あれは魔女が作成したコピーであることを。
「まったくあなたたちは困りものね……っ!」
「はっ!」
ゆるい喋り方からいきなり飛んできた槍の一撃を、同じく槍で防御する。
人間の形をとってもやはり使い魔。なまじ人の言葉を口にしてもこちらへの害意は変わらないと見た。
「おわっ!?」
「なんとッ!?」
「え~~? 防いじゃうの~?」
「そりゃ防ぎますよッ!」
「あッ……!」
槍をはじき返し、そのまま一撃で切り伏せる。
致命傷を受けたコピーはそのまま倒れ、魔力に分解されて消滅した。
「ひええ……危ないところでした。ありがとうございますつばめさん」
「うん。偽物って分かってても一瞬油断しちゃってたよ」
「いえいえ」
顔見知りの姿で迫ってきたら誰だって多少は気が緩むもの。私は偽物の予備知識があったからぶちのめすのに躊躇いがなかっただけだ。むしろ偽物だからっていきなり攻撃に移せたならドン引きもんである。
「おうおうおう! いい獲物がいるじゃねえか!」
「そこの貴様ら、血を見せろッ!」
「アタシが良い夢見せてあげるわよ~」
「げえっ、また出てきた!?」
「今度はももこさんに十七夜さんにみふゆさんですか……」
「なんか微妙にキャラずれてるの雑ですねぇ……」
次から次へと出てくるコピー達。二人ももう慣れたようで、今度は迷うことなくコピ―達へ攻撃していく。
当然反撃してくるコピー達だが、流石に本物と同等の戦闘能力を再現出来てはいないのか割とあっさり片が付いた。
そうして進んでいくと、やちよさん達の魔力の反応を感知。
どうやらこの近くにいるらしい。私たちは急いで反応が近いところへと向かう。
遠くに人影が見えてくる。青、藍、群青、朱色。皆さんの魂の光がしっかりと視認できる。
「……お、あれは本物ですよ」
「あ、やちよー! みんなー!」
「せんぱーい! 探しましたよー!」
「……む、本物か?」
「だといいわね……」
「……あ! つばめさんもいますよ」
「げ、もし本物ならちょっとまずいんじゃないか?」
あちらも私たちに気が付いた様子。
だが、私の顔を見てももこさんが慌てているような。
「やっと見つけたよー!」
「十七夜、どう?」
「……うむ、本物だな」
「あのう、もしかして疑ってました?」
「すみませんメルさん。さっき偽物に騙されかけたばかりで……」
「あの、ももこさん? 何かありましたか?」
「いや、その……」
「ははははは! 死神たる我を畏れよッ!」
哄笑が響き渡り、私はそちらの方に目を向ける。
「ふ、よもや本物が来るとはな。だが丁度いい、我は影。貴様より分かたれた暗黒の輩なり!」
――なんか、毎日鏡で見ている顔がいた。
「うわ、つばめさんのコピーですよあれ……」
「なんだかご機嫌だね」
「くそっ、つばめさんに見せないようにとっとと仕留めたかったのに……」
「ええ。でも見てるとなんだか心が締め付けられるのよね……」
「はい……。正面から相手するのには勇気がいります……」
「中々の覇気だ……琴織君、気をつけろ!」
何故か知らないがやちよさん達が勝手にダメージを受けている。その理由については考えないで上げよう。
問題は、この私のコピーである。明らかに中二病な言動をする私のコピー。どういう訳かは知らないが、安い挑発もあったものだ。
全力で叩き潰す。
「――ふ。どうやら自らの闇に恐れおののいてぇ!?」
「――チッ。仕留め損ねましたか」
勢いよく振り下ろした槍が地面を砕く。脳天からカチ割りにするはずの一撃だったのだが、間一髪のところで躱された。小癪な。
「ちょ、おま、一応自分の顔ぞ!? なぜそこまで躊躇いなく攻撃できるのだ!?」
「いやあ、自分の顔でそんな振る舞いされたら恥ずかしくて我慢できないじゃないですか。はっはっは」
何やら慌てふためいている私のコピー。ですが私は問答無用で槍を振るう。
いやあ、流石にね。卓ゲークラスタとしてはね、自分の顔でこんな雑な中二病ロールされるのを見たらね。もう容赦なくブッ殺すしかないよねって。
コピーが繰り出してくる槍を弾き飛ばす。がら空きになったその土手っ腹を槍で貫き、串刺しにする。
「ぐあっ……貴様まさか……!?」
「おや、何されるか分かりました? 流石はコピーですね」
顔を青ざめ、腹に突き刺さった刃を抜こうともがく私のコピー。
流石は私。模倣品とはいえ耐久力は他のものよりあるようだ。
「だけど、無駄だ」
コピーを突き刺したまま槍を頭上に持ち上げる。魔力を込めれば、刃の根元にある紫の宝玉が呼応して輝く。
――さあ、フィニッシュだ。
「その絶叫を捧げよう」
「や、やめ……」
「貪れ、『
突き刺さった槍が顎を開く。
魔性の肉を喰らう死神の顎。閉じられていた二つの牙。
合わさることで一つの穂と化していた刃が二つに分かれ、突き刺さっていたコピーを内側から食い千切った。
「■■■■■■■■ーーー!?」
言葉にならない絶叫が木霊する。断末魔の悲鳴を上げたコピーは上半身と下半身に分断され、ぐしゃりと魔力に解けて四散した。
「やれやれ、私を模倣するなら、これぐらいは徹底することです」
「え、えげつな……」
「うわあ……」
決め台詞を言って振り返れば、なんだか皆さんがドン引きしていた。
まあ実際、本物の魔法少女相手にこの技をやったら血と臓物が辺りに飛び散るだろう。今回は魔力で構成されたコピーだったのでそこまで凄惨な光景にはなっていないはずなのだが……。
「いや、つばめさんがそんな顔で自分のコピーをズタズタにしたら誰だって引きますよ」
「え? 嘘、私どんな顔してました?」
「なんというか、『ヒャッハー! 汚物は皆殺しだー!』って感じの顔してた」
「貴方、落ち着いた子だと思ってたけどそんな顔もするのね……」
「決断的な良い顔だったぞ」
「
思わず素で聞き返してしまった。
いや、確かに魔女に対しては嫌悪感三割、義務感三割、ブッ殺す四割ぐらいの感情で挑んでいるけど……、そんなにひどい顔をしていたのだろうか。
音子先輩はほぼほぼ仏頂面で叩き潰すし、美緒はおっかなびっくりだけど容赦しない感じで戦っていたけど、いざ自分がどういう顔で戦っているのかはほとんど指摘されなかったのでわからなかった。
……いや、そう言えば美緒に「つばめって対戦ゲームの時性格変わるよねー」と言われたことがあったか。確かに連続でキルを決めた時とかかなりイキっている自覚はあったけど、まさか魔女狩りにまでそんな表情してたの私?
「……うっわあ。恥ずかしい」
◇
合流した私たちは調査を切り上げ、ひとまず結界の外に出ることにした。
というのも、これまでにコピーや使い魔との連戦が続いていながら、大元である魔女の居場所までたどり着くことができなかったからだ。
外に出れば、日が昇っているうちに入ってきたにも関わらず、すっかり辺りは暗くなっていた。
「外です! 真っ暗ですがなんだか清々しいですね!」
「はぁ~、なんだか空気も美味しく感じるね~!」
純粋に帰還を喜ぶメル君と鶴乃さん。
ですが、単純に喜んでもいられないわけで。
「しかし、この
「規模としては中級……いや、このまま放置すれば上級になりますかね」
ももこさんの不安は最もだ。
結界の外からではわからなかった穢れの規模。深く、深く。今なお遠ざかる穢れの塊。徐々に小さくなっていくそれは、しかし魔女の弱体を意味してはいない。
間違いない。この結界は今も尚、その規模を拡大し続けている。これでは最深部の魔女の元までたどり着くには、どれだけの時間がかかる事やら。
「というかこれチャレンジ系のダンジョンですね? どこまで進めるかってやつ」
「ああ……なるほどね」
「あるいは破邪の洞窟。ミナ○トールとかは習得できませんが」
「妙に懐かしい例えですね……」
わかればそれでいいのだ。
つまりこの鏡の迷宮は事実上の無限回廊。合わせ鏡である以上、最深部にたどり着けるかすら怪しいだろう。
「ひとまず。この結界は時間をかけて調査しましょう」
「ああそうだな。今回の騒動を巻き起こそうとした犯人が分かっただけでも充分だ。他の魔法少女の説明も、多少手間取るが難しくはあるまい」
「ええ。でもグリーフシードの不足はどうにもならない」
「はい。中央区に手を伸ばそうと考える子は減らないでしょうね」
「であれば、何か条件をつけるのはどうだ?」
まとめ役たちによってこの魔女の扱い、ひいては東西での魔法少女の方針をどうするかの話し合いが行われているのを黙って見ている。正直、ここは外様の私が首を突っ込める問題でもないだろう。
――背後で、車の停まる音が聞こえた。
「やあ、つばめ」
私を呼ぶ声に振り向く。そこには見慣れた、白い乗用車。運転席から見える顔も、私は見慣れている。
「……父さん」
「中々遅かったじゃないか」
車から降りてきた父は私たちに向けて歩いて来た。
「迎えに来てくれたんですか?」
「いや、見かけたから声をかけただけだ」
「そうですか」
「それでつばめは……ふむ。これはこれは。また難儀なものがあるではないか」
父は鏡の結界の入り口をまじまじと観察する。
「やっぱり父さんから見てもそう思いますか?」
「ああ。詳しい事は入ってみないと分からんが、かなり複雑な位相をしている。空間の構成が通常の魔女結界とは全く異なるな。中身はどうなっていた?」
「ええと、いたるところに鏡のある世界で……」
とりあえず中にあったことをかいつまんで話す。
「――鏡面、あるいは万華鏡か? いかんな。推察するには材料が足りん」
父は顔を顰め、何ごとかを考えている。
この人が魔法絡みで何かを考えているときは、聞いたところでだいたいは碌な答えが返ってこない。
その推察に前提とする知識量が違い過ぎて、私の顔が宇宙をバックにした猫になることは間違いない。
「えと、あの……つばめさんのお父さん、ですか?」
「ああ。君たちはつばめの友達、もしくは仲間の魔法少女かな? 中々難儀な子だが、仲良くしてやってくれ」
父の登場にメル君たちが完全に戸惑っている。
いきなり現れた一般人が魔法関係のワードをぺちゃくちゃ喋りだせばこうもなろう。
「――えーと、父は私たちの事情をある程度知ってる側ということで、よろしくお願いします」
「あっはい」
「ふう……、一応話は纏まったわね……。あら、どちら様?」
やちよさん達が話を纏めたようで、私たちの方に向き直る。
そこで、父の存在に気が付いたらしい。
「私の父です」
「琴織渡。建築デザイナー兼不動産コンサルタントだ。娘が世話になっているね。君たちがこの街を代表する魔法少女とお見受けするが如何に?」
「ええ。そうだけど……?」
「ああ、気にしないでくれ。少々魔導についての知識を齧っているだけだ。君たちの事情に深入りするつもりはないから安心し給え」
トントンと頭を指で叩いて見せる父。
やちよさん達はというと、明らかにうさん臭いものを見る目だ。
「まあいいわ。それで、この魔女についてなんだけど。倒した者に中央区のテリトリーについて交渉できる権利を与えるってことで話が纏まったわ」
「なるほど、それはいい考えです」
やちよさんの結論に同意を示す。
確かにそれなら後腐れはない。魔法少女の襲撃犯であり、およそ中級と目せる魔女を倒せたと言うのなら、それは実力、実績ともにテリトリーの主張をするにふさわしい人物と言えるだろう。
「あとはこの結界をどう管理するかですが……」
「そこは紺染神父にでも相談しましょう。教会の人たちはこういう知識は叩けば出てくるし、この規模の魔女を放置する選択肢も無い筈よ」
「うむ。正直我々には持て余すからな。彼らには事後処理以外にも役に立ってもらうとしよう」
ひっどい言われようである。まあ音子さんレベルのお人よしでもなければ、彼らは魔法少女のためには動かないので当然っちゃあ当然だが。
「さて、私も帰りましょうか」
「少し待ってくれないか」
「はい?」
父の車に乗り込もうとしたら、十七夜さんに引き留められた。
「君は今回の一番の功労者だ。君がもし偽物を看破していなければ、事態はよりややこしいことになっていただろう。そのことについて、神浜のまとめ役として何か礼をしたい」
「礼と言われましても……」
「そうね。流石になんでもとは言えないけど、ある程度の要望なら聞いてあげられるわ」
「と言われましても……」
十七夜さんの言葉に首を傾げる。
正直、この時点である程度は要望が叶っていると言ってもいい。
やちよさんにコピーのことを知らせたのも、恩を売れるという打算が半分あったからだ。
そこから東のまとめ役である十七夜さんとも知り合えたし、今後神浜で活動することに不自由はないだろうと考えていた。
そこからさらに何か要望がと言われても、ぶっちゃけ思いつかない。
「ふむ。ならばこういうのはどうだろうか。実はこの神浜で新しい事業を始めてね――」
――と、悩む私の代わりに父が提案する。
「――というのだが、どうかね?」
「……なるほど。それなら他の魔法少女からも不満は出まい」
「ええ。画期的な案だと思います」
「むしろこの神浜ぐらいでしょうね。その提案が成立するのは」
父の提案に、割と乗り気なやちよさん達。
どうやらこの神浜、かなりの問題な土地だったご様子。
それにしてもこの親父、
まさか
〇琴織つばめ
陰の者だが陽ムーブが得意。コピーの雑な中二病RPにキレた。
調子に乗るとかなりボケ倒す。
話の通じる友達が欲しい。
〇骨喰
ほねばみ。あるいはこつじき。
『骨を喰み噛み砕く』という哲学が刻まれたつばめの槍。普段はただの槍だが、展開して十字槍になるギミックつき。
父の監修の下つばめが改造を繰り返しており、他にも多数の機能が存在するが、代償としてこの武器は一度に一つしか作りだせない。
〇安名メル
一人称がボクの占いガール。
つばめちゃんとは秒で意気投合した。
可愛いね。
〇鏡の魔女
便利装置。
〇上級、中級、下級
この作品では人の目線から魔女の階級付けがされている。
どれだけ強い(あるいは被害が大きい)かがなんとなくわかるので、魔法少女の間でも広まっている。
(一人称パートについて)どっちが見たい?
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つばめちゃん視点
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原作キャラ視点
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いいや両方だ
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先にEP1を書くんだよ