『例の部屋』から始まるTS偽いあちゃんとゆかりさんの話 作:Sfon
「なっ……なんで起きて……」
あからさまに焦っているゆかりさんはさておき、今の私の状況をできるだけ冷静に把握してみる。
ベッドで寝ていたはずの私はいつの間にか布団が剥ぎ取られて、ルームウェアのパーカーは胸元までめくられている。これはもしかしなくても、夜這いされた?
別に嫌なわけじゃないけど、どうしてなんだろうって疑問が浮かぶ。こういうことをしたいなら、そう言ってくれればいいのに。そしたら明るい部屋で私のことをしっかり見れるわけだし。
別に裸を見られたいわけじゃない。でも、ゆかりさんにされるなら恥ずかしいけど嫌じゃないし。それに私は一応ゆかりさんに神様っぽい何かからプレゼントされたわけだし。
「どうしたの?」
なんでそんなに焦っているんだろう。ゆかりさんは私をプレゼントされたご主人様みたいなものなんだから、もっとどっしり構えていたらいいのに。
「どうしたのって……えっと、違うんです」
「違うって何が?」
単純に分からなくって聞いただけなのに、ゆかりさんはなんだか顔を青くしている。別に詰問しているわけじゃないんだけどなぁ。私がちょっと体の向きを動かしたらゆかりさんが弾かれたみたいにベッドから降りて、なんだかそれがちょっとおかしくて思わずクスッと笑ってしまった。
なんだか続きをしようって雰囲気じゃないから足首にかかっていたショーパンを穿きなおして、体を起こしてベッドの上にぺたんと座った。ゆかりさんは今まで見せたことが無いほどびくびくしている。
「ゆかりさん、したいならそう言ってくれればいいのに。いあはゆかりさんのものなんだし、好きにしてくれていいんだよ?」
ちゃんとこう言ってるのに、ゆかりさんは相変わらずベッドの下でおどおどしている。なんだかこのままだとずっとこの状況が続きそうだし、この機会を生かすべくちょっと勇気を出してみようかな。
「ゆかりさん、ここに来てくれる?」
ベッドの上、私の前をポンポンって軽く叩いたら、ゆかりさんは素直にそこにぺたんと座ってくれた。ちょっとだけゆかりさんの目線が高いから、若干上目遣いみたいになる。
「あのね、いあはゆかりさんに構ってもらえてうれしいんだよ? 手を握らせてもらえたのも、ぴったりくっついて座らせてもらえたのも、とっても嬉しかった。だから、ゆかりさんにそういうことをしようって言われたらもちろんしてもらいたいの。でもゆかりさんは言い出せなかった、たぶんそれだけなんだよね」
私はゆかりさんに構ってもらいたくって、ゆかりさんは私に興味があって、ただお互いにコミュニケーションが取れていなかっただけ。してもらいたいこととやりたいことはきちんとかみ合っているから、お互いに素直になればそれだけで解決する気がする。
だから、まずは私から素直にならなきゃ。ちょっとだけ怖いけれど、しっかりゆかりさんの目を見て、目をそらされないようにして、勇気を出して告げた。
「だからさ、ゆかりさん。いあのこと、思いっきり可愛がってくれない?」
ゆかりさんは目を見開いて、それからグイっと顔を近づけてきた。おっ、積極性が出てきたかな? 嬉しい。
「なっ……いいんですか、それで」
「いいに決まってるじゃん。いあはゆかりさんのことが大好きで、何されたって嫌じゃないよ? あ、もっと抵抗されたいって言うなら、チョーカー外してくれればたぶん恥ずかしくって結構良い感じになるかも」
「いや、そう言うことじゃなくてですね。これでも私、いあちゃんの寝込みを襲ったわけなんですけど」
「だから? 私はゆかりさんの所有物で、もう数えきれないくらい恩を受けていて、こんな私でもよかったらどんなことだってするよ」
なんだか、ゆかりさんは私に『やっぱり無しで』って言ってほしいみたい。でもそんなこと言うわけ無いよ。私がゆかりさんにそういうことをされたいって思っているのは本心からで、それを言葉にできるかどうかだけが問題だったんだから。
「いいんですね? 私、これでも始めたら止まりませんよ」
さっきまでの臆病そうなゆかりさんの表情は消え去り、何か覚悟を決めたようなちょっと硬い表情になっている。どうやらゆかりさんもその気になってくれたみたいで、良かった。
「いいよ。あ、でも、一つだけお願いがあるんだ」
「なんですか?」
「嘘でもいいから、いっぱい『好き』って言ってほしいな」
「……心の底から本当に大好きですよ、いあちゃん」
ゆかりさんから初めて聞いた、『好き』って言葉。それだけで天にも昇るような幸福感が体中を満たす。ちょっと涙ぐんじゃうくらいに嬉しくて、『私も好き』っていっぱい返した。
ゆかりさんに両腕を差し出したら、それだけで私がぎゅってしてほしいんだって伝わったみたい。お互いルームウェアだから分厚い下着をつけていなくて、体の柔らかさと温かさがいっぱい感じ取れる。
満足するまで抱き合ったらちょっとだけ腕を緩めて、互いの目を鼻がぶつかりそうなくらい近くで見つめあう。ゆかりさんが私の首の後ろに手を添えて、ゆっくり目を閉じて、ちょっと顔を傾けて、そして熱が重なった。
唇をついばまれて、耳を撫でられて、太ももを擦りあって、頭の中はゆかりさんで一杯になる。それだけでいっぱいいっぱいなのに、さらにそこからもう一段階上があった。
首の後ろでパチリと音がした瞬間、唇から感じるゆかりさんの感覚がより鮮明になって、ゆかりさんの匂いが鼻から脳に直接突き抜けて、一気にトリップしてしまう。背筋にゾクゾクしたものが走って、体を震わせる。
頭をそっと後ろから支えられていて、唇を離すことは許されていない。ゆかりさんのことをぎゅっと抱きしめて、鼻息を荒くしながら快楽をむさぼる。ゆかりさんの息が首元に当たって、それだけで達してしまいそうだ。
やがてゆかりさんが顔をゆっくりと離したとき、私の頭は完全にゆだりきっていて、40度の高熱が出たときよりもずっと体が熱く感じられた。
唇が離れてもお互いの視線は固く結びついていて、ゆかりさんが頭や首、耳を撫でてくれるたびに息を漏らしてしまう。
「いあちゃん、かわいいです。ほんとにかわいいです。愛してます」
耳元で囁かれながらそっとベッドに押し倒されて、ゆかりさんに覆いかぶさられて、また唇が重なる。両手はゆかりさんに指を絡めて握られて、もう自由にできなくなった。互いの顔の境目が分からなくなるくらいにむさぼりあって、もう頭はトロトロ。与えられるものを受け止めるだけで精いっぱい。
そうしてどれだけ経っただろう。やがて私の耳元にゆかりさんの顔が落ちた。手は繋がれたままで、彼女の体は私の上で布団みたいに投げ出されている。ここからどうなるんだろうって期待しながら待ってたら、耳元にゆかりさんの息がかかって肩を震わせた。
散々唇を攻められた後は耳かって思ったらいつまでたってもそれ以上進まなくて、ゆかりさんの名前を呼んでも全然起きなくて、ゆすってみても反応がない。
あれ、もしかしてゆかりさん、こんなところで寝ちゃった?
そんな、こんな時に寝るなんて、それこそ睡眠薬でも飲んで強制的に寝させられない限りありえない……ん?
そういえば、目を覚ました時ゆかりさんは『なんで起きて』とか言ってたから、私に睡眠薬盛るつもりだったのかな。で、私が起きたってことはたぶん私は睡眠薬を飲んでなくて、でも睡眠薬はきっとあの時貰ったお茶に入っていて。
つまり、ゆかりさんは私に睡眠薬入りのお茶を飲ませたつもりで、自分で飲んでたってこと……?
嘘でしょ、こんなところでお預けされるなんて……。
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