さんばかとゆく! ヘルエスタ放浪記~バトルスピリッツ~   作:多田 竜一

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 ついに決着!
 戌亥……というかさんばかのキャラが分からなくなってきた。
 みなさん楽しめていますか?

 モチベになるので感想・評価お待ちしてます!


 追記
 今回、『カリュブデス号』の効果に関するところで致命的なルールミスをしました。修正不可能と判断したためこのまま残しますが、皆さんは同じ処理をしないようにお気を付けください。


奪えないもの~未来へ仕掛けた切り札~

アンジュ「おーおー! 今日の戌亥は荒れてんねぇ!」

リゼ「仮に『グリードッグ』を処理できても、手札はほとんどなくて、

   ライフも1つ。とこちゃんのバーストは前のターンに回収した

   『カリュブデス号』だろうから攻撃も通りにくい……アンジュなら

   ここから逆転できる?」

アンジュ「いや流石にむり。もうちょっとゆっくりターンが伸びるなら

     ワンチャンあるかもだけど、あんだけ回されたらちょっとお手上げだわ」

リゼ「だよね……でも」

アンジュ「すごいよねダン。まだ諦めてない(・・・・・)

 

 

◇◇◇◇◇

 

 

 ダンの第6ターン。

「メインステップ! 『太陽皇ヘリオスフィア・ドラゴン』を召喚!」

 赤のシンボルが現れ砕ける。現れたのは、太陽のような金色の炎。それを中心に、腕が、足が、そして翼が姿を見せる。

 一見すればロボットに見違えるほどのメカメカしい武装をした『ヘリオスフィア・ドラゴン』が、咆哮と共にこの地へ降り立った。

「続いてマジック『バスタースピア(R)』!」

 ダンのその手に持ったカードから、紅の矢が放たれる。

 その矢は一直線に戌亥に向かい―――。

「っと! あぶな!?」

 その後ろ、三つ首竜の銅像が囲う『海底国の秘宝』を貫いた。

 爆発とともに破壊されるそれを流し見に、戌亥は爆風で煽られる髪や衣服を押さえながら、ダンを見る。

「ネクサス1つを破壊し、それが相手のネクサスならば2枚ドローする」

「ええんか? うちの子がまた食べてまうかもしれへんで」

 爆風に煽られ、手でその犬耳をかばう戌亥は、しかしその表情は挑発的。

「そうかもな。だが、カードがなければバトスピは出来ない。この手に持つ手札が、フィールドのカードが、そして―――このドローが俺の可能性の全てだ」

 そう、可能性。

 バトスピの盤面には、計り知れないカードの情報が複雑に入り組んでいる。そして、その複雑さが新たなコンボを生み、その情報を掴み取った時、プレイという形で相手に襲い掛かる。

 ダンは、少なかった手札を補充した。

 それはつまり、可能性が広がったということ。

 勝利のためには、勝利への可能性を掴まなければならない。その、掴む可能性が増やすために、このドローは重要だ。

 しかし。

「そうか。でも、そんな可能性も、掴めへんのやら無いと変わらんで」

 今、ダンの前に立ち塞がっているのは、可能性を喰らう(・・・・・・・)地獄の番犬。未来への可能性を嚙み砕き、我が物顔でその効果を使う獣。

「ああ。だから俺は、掴める可能性がある限り、諦めることはしない。アタックステップ!」

 そのアタックステップの開始により、『ヘリオスフィア・ドラゴン』の効果により使われたトラッシュのコアが全て『ヘリオスフィア・ドラゴン』に乗せられ、Lv3へと上昇する。

「『コメットヴルム』! 行け!」

 その声を受けて、『コメットヴルム』は飛翔する。

「アタック時効果。デッキの上から3枚をオープン」

捲られたカードは『ゴッドシーカー アルファレジオン』『ミラージュ・ワイバーン』『ジュライドロー』の3枚。

「『アルファレジオン』を手札に加える。行け! 『コメットヴルム』!」

 弾かれた『アルファレジオン』を手に取るダンの言葉に、『コメットヴルム』が加速する。

「ソウルコアで受けるよ!」

 戌亥の目の前まで来た時に、戌亥の中からソウルコアが再び姿を現す。

 それが瞬時に独自のバリアを形成し、『コメットヴルム』の吐く炎のブレスから戌亥を守る。

 バリアが割れ、その破片がソウルコアへと戻る傍らで、『コメットヴルム』はダンの元へと戻っていった。

「バーストは特にあらへんよ。『ヘリオスフィア・ドラゴン(その子)』もアタックしてみる?」

「……ターンエンドだ」

「そうかぁ。ならターンは貰うよ。スタートステップ!」

 そうして向かえた、戌亥の第7ターン。

 メインステップに、戌亥は『巨人王子ラクシュマナ』をLv1で2体召喚する。このスピリットは手札交換を行うアクセルを持っているが、バーストを警戒してそれを使うことは無く、ダンの残ったライフ1つを奪いきるべくアタッカーとして召喚した。

 そして、ソウルコアを『グリードッグ』に置き。

「アタックステップ! 行くよ『グリードッグ』! 【封印】と【強奪】や!」

 盤面のカードを倒し、『グリードッグ』が走り出すのと同時、そのソウルコアが戌亥に取り込まれ、その咆哮がダンの手札を巻き上げる。

 公開されたカードは、『ゴッドシーカー アルファレジオン』『太陽神弓サンバースト』『クェーサーレイン』の3枚。

「ブロッカーは破壊できなさそうやね。でも、アタッカーは充分! 【強奪】の効果で『クェーサーレイン』を破棄してそのフラッシュ効果を発揮! BP10000以下の相手スピリット1体を破壊する! 対象はBP5000の『コメットヴルム』!」

 破片へと割れた『クェーサーレイン』を『グリードッグ』が喰らい、そしてその口から炎があふれ出す。

 その場から飛び上がり、『グリードッグ』がその口を開くと、そこから炎の星が矢のごとく無数に降りかかる。

 その矢に抵抗することも出来ず、『コメットヴルム』は貫かれ、破壊された。

「アタックステップ中に相手の手札が減ったんで、『グリードッグ』は回復。そしてこれがメインの……なっ!」

 フィールドを駆ける『グリードッグ』が、一瞬淡く光り、回復する、その向こう側。

 『コメットヴルム』の破壊による爆風にのせいで見にくくなっているダンのその盤面。

 ―――赤い稲妻が、走る。

スピリット破壊(・・・・・・・)により【バースト】発動!」

「なん……え?」

 その稲妻が、ダンの声に呼応して、伏せられた【バースト】を盤面から弾く。そうして翻ったバーストは、表面を上に向けて盤面に戻る。

 伏せられていたのは。

「マジック『双光気弾』のバースト効果により、カードを2枚ドローする」

「んなアホな……『双光気弾』やって?」

 

 

◇◇◇◇◇

 

 

リゼ「嘘!? 破壊時バーストなの!? しかも『双光気弾』!?」

アンジュ「1ターン目からセットしてたから、最初の【強奪】で

    『フレイムスパーク』を打たれた時にも使えたはず……あの時から

    ずっと温存してたってこと!?」

 

 

◇◇◇◇◇

 

 

「【強奪】の効果を初めて受けた時から、この瞬間を待っていた」

「っ……!」

 爆風が晴れ、そこに見えるダンは、真っ直ぐ戌亥を見つめていた。

「何で最初に使わなかったん? あの時使っとれば、ハンデスされた手札も回復して、私のネクサスも割れたやん?」

「あの時はコアも少なかったからな。ドローしたカードを確実に使えたわけじゃない。そうして使えずに溜まってしまった手札を、【強奪】で蹂躙されてしまったらドローした意味がなくなる」

 自身の判断。その根拠を、彼は淡々と語る。

「そして何より、【強奪】は俺のマジック以上に俺の戦術を露わにされる。フラッシュタイミングの1枚のマジックや、伏せられたバースト1枚で状況がひっくり返るバトルスピリッツにおいて、手札が公開される(・・・・・)のは致命的だ。逆転の一手が確実に潰される」

 淡々と語るダンの言葉を聞いて、戌亥の頬に冷や汗が垂れる。

「だが、『グリードッグ』にも奪えないマジック―――知ることのできない手札がある」

「そ、それは……」

「未来だ」

 その手が、ドローすべくデッキに添えられる。

「み、未来?」

「『グリードッグ』は現在(・・)しか喰らえない。この瞬間、このドローに対してだけは、『グリードッグ』は無力だ。だから俺は、自分のデッキに―――未来のドローに、切り札を託すことにしたんだ」

 戌亥が無意識に1歩、後ずさる。

「……ゆうても、その手札に切り返しのカードがないのは今見たし、そのドローで何も引かんかったら意味ないんと(ちゃ)うの?」

「ああそうだ。だが、このタイミングで引かなければ結局『グリードッグ』の餌になるだけだ。俺はここにかけるしかない」

 語られる内容のあまりの恐ろしさに、ではない。

「あとは、このデッキの調子次第さ」

 これほどの状況把握を、思考を、判断を、あの一瞬(・・・・)で行っていたことに、開いた口が塞がらなかった。

「行くぞ戌亥」

「っ!」

 ピクリ、と戌亥の耳が動いた。

 ダンの目が閉じられ、添えた手が動き始める。

 静かにダンがカードを2枚引き、それを戌亥が、そしてアンジュとリゼが固唾を飲んで待っていた。

 引いたカードを目の前に目ってきて、ゆっくりとダンが目を開く。

 それは。

「―――フラッシュタイミング!」

 逆転の狼煙だ。

「マジック『絶甲氷盾』を仕様! そして『グリードッグ』のアタックは『ヘリオスフィア・ドラゴン』でブロック!」

「わーお。ホンマに引きよったよ、この子」

 猛進してくる『グリードッグ』の前に、『ヘリオスフィア・ドラゴン』が立ち塞がる。三つ首の獣はそれに構うこともなく、そのままその竜へ体当たりを決めた。両腕で左右の獣の首を掴み、地面をその両足でえぐりながらその勢いを殺していく。

 そして、止まる。

 猛進を食い止めることに成功した、その瞬間だった。『グリードッグ』は掴まれていない中央の首、その口を遠慮なく開くと、『ヘリオスフィア・ドラゴン』のその首へ迷わず噛みついた。

 悲鳴はない。それによって息絶えた『ヘリオスフィア・ドラゴン』は、静かにフィールドから姿を消した。

「このバトル終了時、『絶甲氷盾』の効果でアタックステップは終わる。追撃は無しだ」

「ターンエンド。いやぁまさか【破壊時】バーストとはなぁ。せやったら『ラクシュマナ』とかも遠慮せず使うんやった」

「そういった牽制もかねての見逃し(・・・)だったからな。特に青の手札交換の効果は、【手札増加後】のバーストで失うアドバンテージを許容できないだろう」

「なんやもう。追い詰めてるつもりやったのに、掌の上だったんは私のほうやったん?」

「そんなことは無いさ。このターンも、結局時間稼ぎでしかない。戌亥のキースピリットはいまだ健在。ライフも残り1。『グリードッグ』に防御マジックを抜かれることを考慮すれば、このターンがラストターンだ」

「そういう割には、全然追い詰められた顔してへんよ?」

「それはそうさ。追い込まれることと、そのまま負けることは違う。俺は勝つ気さ」

 戌亥のターンが終わる。

 ダンの手札は回復し、コアも潤沢にある。しかし、戌亥の場には回復状態でLv3の『グリードッグ』が健在で、バーストもあり、ダンの場にカードはない。

 彼の言う通り、このターンで勝負が決められないのであれば、ダンが勝つことは無いだろう。そうだというのに、バーストとして伏せられているであろう『カリュブデス号』がダンの攻撃力を削いでしまう。

 絶望的な状況。並のカードバトラーなら、絶望して、勝機を探すことすらできないかもしれない。

 しかし、彼にはすでに見えていた。

 勝利への道筋―――そのためのカードはすでにある。

「メインステップ! 『ゴッドシーカー アルファレジオン』を召喚!」

 ダンの第8ターン。

 赤のシンボルが現れ砕ける。現れるのは、緑の鱗に紅い装甲を纏ったスピリット。

 出現と共に、淡い光をまとって咆哮する。

「『アルファレジオン』の召喚時効果。デッキの上から3枚オープンし、その中の系統:『界渡』/『化身』を持つ赤のスピリットカードを手札に加える」

 その咆哮で、デッキの上から3枚が捲られる。

 捲られたのは『ホワイトホール・ドラゴン』『ジュライドロー』と、そして。

「……来てくれたか」

 ダンはそれを手に持って、そのまま。

「世界を照らせ。光を背負いし紅の龍よ! 『太陽神星龍アポロヴルム』! 『ゴッドシーカー アルファレジオン』に【煌臨】!!」

 ダンの背後、バトルフィールドでは何もないはずのそこから炎が沸き上がる。

 その炎が、ダンの真横を通って『アルファレジオン』に向かう。

 炎を受けた『アルファレジオン』は抵抗することもなく―――それどころか、身を丸めて受け入れる。

 包み込む炎の中、『アルファレジオン』はその姿を変えていく。

 その瞳が輝いた時、その翼の一振りで自身を包む炎を消し去り、『太陽神星龍アポロヴルム』は、けたたましい咆哮を伴ってバトルフィールドに君臨した。

「『アポロヴルム』をLv3にアップ! バーストをセットしてアタックステップ! 切りかかれ! 『アポロヴルム』!」

 フィールドへ着地したのと同時にLvが上がり、溢れる力を咆哮と共に発散して、そして地面を蹴って飛び立つ。

「Lv2以上のアタック時効果。『グリードッグ』を破壊する」

 飛び立った『アポロヴルム』が、真っ直ぐ『グリードッグ』に突撃する。『グリードッグ』はそれを飛び退いてかわし『アポロヴルム』から距離を取る。

 自分から離れるその姿に、『アポロヴルム』がその背後に浮かぶ刃を無数に投げる。『グリードッグ』は、三つ首の視界をフルに活用し、それらを完璧に避ける。

 だが、その最後の刃を避けた直後。真上からその首を掴まれる。

 必死に暴れる『グリードッグ』だが、その抵抗もむなしく、『アポロヴルム』がその口から放った炎に焼かれ、そのまま破壊されていった。

「さらに【界放】の効果。トラッシュのソウルコア以外のコア2つをこのスピリットに置くことで、このスピリットは回復する」

 『グリードッグ』が破壊された爆風の中から、ジェット機のごとく『アポロヴルム』が飛び出す。はるか上空で静止し、その瞳が見据えるのは、戌亥のライフ。

「は!? いや、ちょ! なにその効果! コストがコストしとらんやん!」

「そしてこれがメインのアタックだ!」

 そこから、急降下。

 迷うことなく、一直線に戌亥へ。

「ああもうフラッシュタイミング! マジック『スプラッシュザッパー』! コスト7以下のスピリット3体を破壊する! 『アポロヴルム』は貰うで!」

 戌亥が、そのカードを持って横に一閃。そのカードから放たれた水しぶきの斬撃が、『アポロヴルム』を両断する。

 爆発し、破壊される『アポロヴルム』だったが、しかし。

「……へ?」

 その爆風を、咆哮が払う。

 両断されたはずの『アポロヴルム』が、傷一つない姿でそこにあった。

「バーストマジック『ライジングフレイム』だ。バースト発動時に破壊された系統:『星竜』を持つスピリットを1コストで再召喚する」

「ちょ、破壊したやん。そんなんアリ?」

「さらにコストを払ってフラッシュ効果。BP合計8000分の相手スピリットを破壊する」

 復活した『アポロヴルム』の背後。そこから2つの炎の渦が巻き起こる。それは素早くフィールドへと向かい、そして戌亥の場の『ラクシュマナ』2体を焼き殺した。

 これで、戌亥の場からブロッカーは消えた。

「『アポロヴルム』! もう1度アタック!」

 しばらく空中に滞在した『アポロヴルム』が、急降下を再開する。

「【界放】の効果。『アポロヴルム』を回復させる」

「ライフで受けるよ!」

 戌亥の前に、ソウルコアで出来たものとは違う、通常の赤のバリアが展開され、そこに、『アポロヴルム』が爪を立てる。

 衝撃が、戌亥のライフを砕く。

「っ……! ライフ減少でバースト! 『カリュブデス号』のバースト効果で、『アポロヴルム』のシンボルは無くなるよ!」

 突如、再びフィールドに波が押し寄せる。

 戌亥のバースト効果によって現れたその荒波は、『アポロヴルム』を押し返し、その力を奪っていく。

 その力を奪い切り、波が消えたそのフィールドにそれは現れた。

 再び現れた『神海賊船カリュブデス号』はフィールドに現れた時、その力を誇示するように咆哮を上げ、その触手でその地を踏みしめる。

「何度アタックできても、シンボルがなければダメージはあらへん。ダンはんのバーストも無くなったし、次のターンで」

「いいや。次のターンは渡さない。『アポロヴルム』!」

「なっ!?」

 シンボルという力を吸われ、よろける『アポロヴルム』だったが、ダンの言葉に再び飛翔する。

「アタック時効果。『カリュブデス号』を破壊する」

 飛翔した『アポロヴルム』が『カリュブデス号』に突撃し、その両手に一つの刃を握る。

 そして、すれ違い様で一閃。『カリュブデス号』はそのまま破壊される。

 ターンを渡さないというこのアタックに、『アポロヴルム』はその【界放】の効果は使わなかった。しかし、ダンは攻撃を緩めるつもりは微塵もない

 ダンは残り手札2枚を全て手に取り。

「フラッシュタイミング! マジック『バーニングサン』を仕様! 不足コスト確保のため、『アポロヴルム』をLv2にダウン!」

 そして、最後の1枚が炎に包まれる。

「手札のブレイヴ1枚を、名称:『アポロ』を含むスピリット1体にノーコストで直接合体(ダイレクトブレイヴ)させて回復させる」

 炎に包まれたそのカードは、ダンの手から自発的に離れ、盤面の『アポロヴルム』の上に重なる。

「『太陽神弓サンバースト』を『アポロヴルム』に合体(ブレイヴ)。そして回復」*1

 破壊し、爆風を避けた『アポロヴルム』は、今度はフィールド中央、その上空へ向かい、その場に止まる。

 俯きその左手を開いて上にかざす。

 直後、そこへ星が降ってきた(・・・・・・・)

 その光を掴むとともに、バトルフィールドが光に包まれる。その場にいる全員の視界を奪い、その光が晴れた時、『アポロヴルム』のその左手に、弓が握られていた。

「ブレイヴ……てことはシンボルが!?」

「ああ。奪われたシンボルは、これで帳消しだ」*2

 その弓が、戌亥に向けられる。

 かなり距離はあった。しかし、ここにいる誰もが、この攻撃を外すとは思えなかった。

合体(ブレイヴ)スピリットは回復した。このアタックが終わっても、次にまたアタックできる。そして、『アポロヴルム』の【界放】の効果に使うためのコアは、トラッシュにソウルコアを抜きにでも8個ある。つまりこのアタックと次のアタックの後に、さらに4回、『アポロヴルム』はアタック可能だ」

 右手をはらい、『アポロヴルム』はそこに背後の刃をいくつか集めた。

 その数は、6本。

 すなわち、6撃。

 残りライフ4つの戌亥のライフを砕くのに、充分過ぎていた。

「お前のフラッシュタイミングだ。何かあるか?」

 6本あるその刃から1本だけを手に取り、『アポロヴルム』はそれを弓へとはめる。

 それは、このアタックだけのことを指して言っていない。

 この連続アタック。その最中に、カウンターはあるのかという、つまり、負けを認めないか(・・・・・・・・)という語りかけ。

 戌亥はその言葉に、自身の手札を見た。

 手札にあるのは、使うことを渋っていた『三叉神海獣トリアイナ』と『ストロングドロー』、そして出すタイミングのなかった2枚目『海底国の秘宝』だった。

 防御札は、さっきの『スプラッシュザッパー』で使い切ったのだ。もう、この攻撃を防ぐ手段は、戌亥にない。

 それを理解し、戌亥はそっと、手札を盤面においた。

「なーんもあらへん! 私の負けや!」

 そうして、大きく手を広げて放った戌亥の言葉の先にいる『アポロヴルム』は、すでに弓を引いていた。

 そしてその周りには、先ほど集められた残り5本の刃が、刃先を戌亥に向けている。

「そうか……ならこれで終わりだ。穿て! 合体(ブレイヴ)スピリット!」

 その声に応え、『アポロヴルム』が引いていた弓を、放つ。

 その突いていくように、周りの5本の刃も同時に戌亥へ放たれた。

「全部受けるよ!」

 戌亥の前には、ソウルコアのバリアが展開され、さらにそれを囲うように、三重の赤いのバリアが形成される。

 そこに、放たれた矢―――否、6本の刃突が刺さる。

 その衝撃は、1つ、また1つとバリアを破り、あっという間に刃がソウルコアのバリアにたどり着く。

 しかし、それも同じく破壊された。

「っ―――!」

 その衝撃で吹っ飛び、バトルフィールドから戌亥が消える。

 こうして、このバトルフィールドは、その役割を終えた。

 

 

◇◇◇◇◇

 

 

「いたた……いやぁ負けた負けたぁ」

 尻餅をついた体勢で頭をさする戌亥は、しかしあまり痛そうには見えなかった。

「大丈夫か?」

 そんな戌亥に、ダンが手を差し出す。

「ん? ああ、おおきにな」

 その手を取って、戌亥が起き上がる。そして、起き上がった後もしばらく手をつないで、その瞳でダンを見つめる。

「……? どうした?」

「……いや、悪い子やなさそうやなって」

 そういって、手を離す。

 全く納得していなさそうなダンのことは気にもせず、服に付いた土埃を払い始める。

 そんな2人に割って入るように、アンジュとリゼがバトルフィールドから帰ってくる。

「よっと、2人ともお疲れ様~」

「すごかったね! まさかあそこからワンキルするなんて!」

 そのままダンとリゼとアンジュで会話が盛り上がっているところを見て、戌亥は1歩引くように。

「んじゃ、荷物取ってくるわ。ちょい待っててな?」

 3人の返事を聞いて、そのままその場から離れる。

 この湖から、少し歩いたところに、戌亥の家がある。

 木造建築で、典型的な山小屋と言ったその家に向かって歩きながら、戌亥は自分の胸元を押さえていた。

(なんやったんやろ……あれ……)

 痛みは残っていない。だが、その衝撃は強く記憶に残っている。

 最後の攻撃。『アポロヴルム』の合体(ブレイヴ)アタックを受けた時の衝撃は、明らかに異常だった。通常、バトルフィールドで起こる衝撃の何倍の痛みを伴ったその衝撃の原因はおそらく。

「『アポロヴルム』かぁ。悪い子やなさそうやけど……」

 ダンの事情は、この間届いたリゼからの手紙で大体は把握している。

 異世界からの迷い人に、不思議な力をもつカード。

 正直に思うなら厄ネタだ。リゼとアンジュが何故肩入れするのか、正直バトルするまでは全く理解できなかったが。

 だが、バトルを通して、彼の人となりを知った今なら、その気持ちが分かる。

 あの少年に、この厄ネタを押し付けてしまうのは、あまりに忍びない。

 助けられることがあるかどうかは分からないが、アンジュを助けてもらった恩もある。

「ま、折角の旅やし、楽しまないと損やね」

 それに、リゼとアンジュと出会って1年、初めての旅行だ。

 さすがにもう、行かない選択肢はない。

 少し足取りが軽くなった戌亥に気付いたのは、バンとケンだけだった。

*1
『カリュブデス号』の効果で『アポロヴルム』のコストが0になってるので、ここでは本来『サンバースト』は『アポロヴルム』に合体出来ません。また、この状況で合体できるシンボル付ブレイヴが見つからなかったので、修整が不可能でした。間違った処理で進めてしまい、申し訳ありません。

*2
帳消しになりません。『カリュブデス号』のシンボルを0に固定化する能力は、合体やシンボルを増減する効果を受けても変わることはありません。




今回の最強情報

 ダンの使う『コメットヴルム』は、アタックの度に手札を補充することができ、次のターンのアタッカーを毎ターン確保することが出来る。
 さらにLv2になれば、【煌臨】される時に自身のコストを上げることが出来る。
 アタック時効果で手札に加えた【煌臨】スピリットをそのまま【煌臨】することが出来るので、デッキのエンジンとなりうる、便利なスピリットだ。


次回予告
 旅を初めて数日、部屋にこもりっきりだったアンジュが久しぶりに部屋から出てきた。
 錬金術に没頭していた彼女は、その成果をためすためにダンへバトルを挑む。
「錬金術って、具体的に何が出来るんだ?」
「まあいろいろあるけど、今回はカードを強化した(・・・・・・・・)んだよね!」

次回「さんばかとゆく! ヘルエスタ放浪記~バトルスピリッツ~」
第4話「古からの復活! 燃え上れ! ジークフリード・リバイバル!」

アンジュ「さあ行くよ! アタックステップ!」
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