さんばかとゆく! ヘルエスタ放浪記~バトルスピリッツ~ 作:多田 竜一
今回のバトルはこれがやりたかっただけだったのでこっからどうバトルを組み立てようかとても悩みますが……今回は出来る限り、分かりやすく思い切りのあるバトルに仕上げたいなと思ってます!
乾いた風が、バトルフィールドに静かに流れる。
向かい合うアンジュとダンは、すでにデッキとコアと、そして手札4枚を引いて、準備は整っている。
「アンジュ、起きたばかりで大丈夫かな。ここ数日まともに寝てなかったっぽいし」
「まあええんやない? 下手に寝るより起きてた方が頭が冴えることもあるやろうし」
「そういうもんかなぁ」
「それに、ダンはんのバトルを外から見てみたかったんよね。がんばれふたりともー!」
観客席のそんな喧騒も、今の2人には届かない。
「そんじゃ! 行くよダン!」
「ああ……来い!」
アンジュがダンにバトルを挑んだのは、アンジュが起きてからすぐの事だった。
◇◇◇◇◇
「そういえばアンジュ、その手に持ってるカードは結局なんなんだ?」
「え?」
言われて、アンジュは初めて自分がカードを握ってることを自覚した。
「気を失ってるアンジュを部屋から運ぼうとした時から、ずっと握ってたよ。離そうとしても強く握ってるから、相当大事だったんじゃない?」
「……そっか」
その手に握るカードは、夢の中で出会った、そのスピリット。
アンジュがバトスピを始めた時からずっと使っており、今回の研究でなんとしてもリバイバルさせようと孤軍奮闘していたカード。そのカードのイラストは見慣れたものであったが、効果は様変わりしており、そのイラストの右下に大きく『REVIVAL』と綴られている。
研究は、成功したのだ。
ここにあるのは、自らの手で手繰り寄せた努力の結晶であり、その証。
その実感が、じわじわと心を、身体全体を満たしていくのを、アンジュはじっくりと感じていた。
そして、意を決して立ち上がる。
まだ疲れの残る体に力を込めて、その視線の向ける先は―――ダン。
「バトルしよう! ダン!」
その表情は、自信と好奇心で、笑みが作られている。
急なアンジュの言葉に、ダンは少しだけ呆けてから返した。
「まあ、別に構わないが、体調は平気なのか? さっきまで気絶してたんだぞアンジュ」
「ふっふーん! これを見てもそんなことが言えるかな!」
バン! という擬音が聞こえそうな勢いで見せつけたのは、その手に握るカード。
アンジュの相棒であり、研究成果でもある、そのカードの名は―――。
「『龍皇ジークフリード』の……リバイバル……!」
それを見て、ダンの目付きが変わる。
「やっぱり、ダンの世界でも『ジークフリード』はあったんだ。でもリバイバルは見たことがない……そうでしょ?」
「ああ、全くその通りだ」
そう、ここには新しいカードがある。
それをいち早く実戦で使ってみたいアンジュと、それといち早く対峙してみたいダン。
そんなカードバトラーが向き合ってしまったならば。
「え? ちょっと2人とも!」
「「ゲートオープン! 解放!」」
このバトルは、止められない。
「あー、行っちゃった……」
リゼの、アンジュとダンに伸ばしたその腕が空を掴む。
代わりに、その手を優しく包むように、戌亥が握る。
「まあ、とりあえず観戦には行こ。何かあっても大丈夫なように見とかんとな」
リゼはそれに渋々といった感じの返事を返して、2人も後を追ってバトルフィールドに入った。
◇◇◇◇◇
先攻はアンジュからだった。
「スタートステップ!」
ドローステップを重ね、そしてメインステップ。
「まずはこの子から。『ゴラドン(R)』をLv1で召喚!」
赤のシンボルが現れ砕ける。
召喚されたのは、巨大な2つの角を携えた、4つ足の竜。翼は持たず、その後ろ脚で強く地面を掴み、前足を上げて立ち上がる。
「そしてマジック! 『ダブルドロー(R)』! ソウルコアをコストに使ってデッキからカードを2枚ドローする!」
「『ゴラドン』に『ダブルドロー』か……なんだか、昔のバトスピを思い出すな」
アンジュの使った2枚のカード。これらは、バトスピの誕生と共に存在する、最も古いカードたちだった。
今となっては多種多様に存在する0コストスピリットや2枚ドローマジックだが、その基盤となった原初のカードたち。
しかし、その力は、すでに
「だが、
「そう! 『ダブルドロー』のさらなる効果!」
アンジュのトラッシュで、ソウルコアが輝きを放った。
それに呼応して、アンジュの手札の1枚が―――燃える。
「ソウルコアを使用してこのマジックを使ったなら、更にこのスピリットをノーコストで召喚する!」
アンジュが、その燃えるカードを手に取り―――直後、地面が割れる。
「原初の炎よ! 紅き闘志をその身に宿し、今ここに甦れ! 『龍皇 ジークフリード・リバイバル』! Lv1で召喚!」
維持コスト確保のため『ゴラドン』は消滅し、その横で、割れた地面から荒ぶる炎が吹き荒れる。―――否、炎だけではない。
深紅の巨体が、その炎から生まれるように、ゆっくりと姿を現す。
その翼が、炎を払った時、『龍皇ジークフリード』は自らの再誕を吠えた。
「これが……! 生まれ変わった『ジークフリード』……!?」
「アンジュはん……! 最初から気合入っとるねぇ……!」
その咆哮が、観客席を含めバトルフィールドの全てを揺らす。
ここが、彼の龍の独壇場であるかのように、『ジークフリード』は、そこにいる唯一のスピリットとして、バトルフィールドを陣取っていた。
第1ターンから、Xレアの召喚。
バトルの主導権は、完全にアンジュが握っていた。
―――はずだった。
「っ!?」
バトルフィールドに、炎の雨が降り注ぐ。
いや、バトルフィールドにではない―――『ジークフリード』に目掛けて、複数の炎が飛ばされている。
『ジークフリード』は咄嗟に回避を試みるが、呆気なく複数の炎に貫かれ、破壊された。
「うっそぉ!?」
アンジュの視線の先。『ジークフリード』の爆発の向こう側で、ダンが1枚のカードを構えていた。
「マジック『クェーサーレイン』。相手が効果でスピリットを召喚した時、BP10000以下のスピリット1体を破壊する」
―――焦るなよ。バトルはまだ始まったばかりだ。
そう語るダンを、アンジュはただ見ていることしかできなかった。
Lv1で召喚された『ジークフリード』はBP4000のスピリットだった。つまり、『クェーサーレイン』のその効果によって、『ジークフリード』の速攻召喚が対処されてしまったということだった。
「……バーストをセットしてターンエンド」
結果だけを見れば、バースト伏せたのみという、平凡なターンと言えるだろう。
劇的な変化の末に更地となった盤面を見て、アンジュは。
(……いや、先攻1ターン目から妨害されることってある?)
困惑と、動揺と、それと少しふてくされていた。
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