さんばかとゆく! ヘルエスタ放浪記~バトルスピリッツ~ 作:多田 竜一
それからしばらく、バトルは動かなかった。
第2ターン。ダンは『ゴッドシーカー アルファレジオン』を召喚。『太陽皇ヘリオスフィアドラゴン』を手札に加えてダーン終了。
第3ターン。アンジュは『征矢龍ビョウハ』を召喚しターンを終える。
第4ターン。ダンは『太陽皇ヘリオスフィアドラゴン』を召喚し、コスト確保確保のために『アルファレジオン』を消滅させる。
アタックステップに入り、『ヘリオスフィアドラゴン』の効果によりトラッシュのコアを全て回収。追加効果により『征矢龍ビョウハ』を破壊するが、アンジュは破壊後【バースト】『鋭守氷槍牙』を使用。その【バースト】効果で『ヘリオスフィアドラゴン』が手札に戻る。
勝負が動いたのは、第5ターン。
「メインステップ! 『ゴラドン』をLv1、『
赤と緑のシンボルが現れ砕ける。
『ゴラドン』と共にフィールドに現れたのは深緑の剣士。鎧と見違わんばかりの緑の甲殻に覆われた全身。4本ある腕は、1つが腰に当てられ、1つは剣を持ち地面に突き立て、そして残る2つを胸元で組んでいる。
「『ルリ・オーサ』の召喚時効果! 赤のスピリット2体にまで、ボイドからコアを1つずつ追加するよ!」
その効果の発揮を主張するように、バトルフィールドで『ルリ・オーサ』が緑に輝き、そして背中に生える2対の翅を解放した。
さらに、『ルリ・オーサ』にはその緑の光とは別に、赤い光もまた纏っている。
「Lv2の『ルリ・オーサ』は赤のスピリットとしても扱う。したがって、その効果で『ゴラドン』と『ルリ・オーサ』にコアを1つずつ追加!」
「コアブーストか……」
「さらに増えたコアで、『炎楯の守護者コロナ・ドラゴン』を召喚!」
赤のシンボルが現れ砕ける。現れたもは、二足歩行の赤い竜。その右手には紅き槍を握り、その左手には身を覆うほどの白銀の盾が構えられている。
召喚コスト確保のため、『ルリ・オーサ』がLv1に下がる。
「【バースト】をセットしてアタックステップ!」
手札をすべて吐き出し、アンジュがその手で盤面のカードに力を込める。
「『ルリ・オーサ』! 行ってこい!」
半透明の4枚の翅が空気を震わせ、2本の腕で剣を取った『ルリ・オーサ』が飛び出した。
「フラッシュタイミング! マジック『フレイムスパーク』を使用!」
ダンが1枚のカードをかざし、そこから、電撃を伴った炎があふれ出す。
「合計BP5000分の相手スピリットを破壊する。BP2000の『ゴラドン』と『コロナ・ドラゴン』を指定」
その炎が、一直線に進む『ルリ・オーサ』に迫ってくる。『ルリ・オーサ』は、その翅をはためかせすれ違うようにかわす。
炎ちすれ違いダンに向かう『ルリ・オーサ』を余所に、『フレイムスパーク』の炎が後ろにいた2体のスピリットを襲った。
直撃の寸前、『コロナ・ドラゴン』が『ゴラドン』を庇うよう前に出る。
そして、その白銀の盾で、その炎を受けた。
「この効果でスピリットを破壊したことにより、トラッシュよりスピリットカード1枚を手札に戻す」
炎が、完全に2体のスピリットを覆う。
しかし、『アルファレジオン』を回収するダンの視線の先、『フレイムスパーク』の炎が衝撃で消えた。
その盾で耐えきった『コロナ・ドラゴン』が、炎を払ったのだ。
「『コロナ・ドラゴン』のLv1からの効果で、コスト3以下の私のスピリットは破壊されても疲労状態でフィールドに戻ってこれる!」
「だが疲労状態だ。追撃はない」
「でも『ルリ・オーサ』のアタックは終わってないよ! ダン!」
アンジュがそれを言葉にしたときにはすでに、『ルリ・オーサ』は弾の目の前に来ていた。
2本の腕で扱われるその剣は、すでに上に振りかぶられている。
「ライフで受ける!」
緑のバリアが展開され、そこに剣が振り下ろされる。
衝撃が、バリアを通してダンのライフを砕く。
「うっし! まずは1点! ターンエンド!」
◇◇◇◇◇
戌亥「おお、手札もブロッカーも0なんは思い切りええねぇ」
リゼ「第1ターンの時もそうだったけど、今日のアンジュは攻めっ気強いね」
戌亥「ゆうても『ジークフリード』は破壊されてもうてるからなぁ。
このまま押し切れるとは思えへんけど」
◇◇◇◇◇
「メインステップ。『ミラージュ・ワイバーン』をLv2、『太陽皇ヘリオスフィアドラゴン』を再びLv1で召喚」
赤のシンボルが2つ現れ砕ける。
先に現れたのは翡翠の翼を持った翼竜のような竜『ミラージュ・ワイバーン』。それに続いて、『ヘリオスフィアドラゴン』もまた現れる。
「アタックステップ。『ヘリオスフィアドラゴン』の効果発揮、トラッシュのコア5個をこのスピリットに置き、BP10000以下のスピリットを破壊する」
Lv3BP12000に上昇したその力を余すことなく込めて、その手に集めた炎を『ヘリオスフィアドラゴン』が即座に放つ。その先にいた『ルリ・オーサ』は、抵抗する間もなく炎の中へと消えた。
「『ミラージュ・ワイバーン』! 行け!」
その炎を追うように、『ミラージュ・ワイバーン』が飛翔する。
「『ミラージュ・ワイバーン』Lv2のアタック時効果により、デッキから1枚ドロー」
「ライフで受けるよ!」
空中でさらに加速し、『ミラージュ・ワイバーン』の突進がアンジュの前に展開されたバリアと衝突し、それがライフを砕く。
そしてそれが、【バースト】を開く。
「っ! ……ライフ減少で【バースト】発動!マジック『ダイナバースト』の【バースト】効果で、BP10000以下の相手スピリット1体を破壊する! BP3000の『ミラージュ・ワイバーン』を破壊!」
アンジュが手に取ったカードから、炎が走る。地面から湧き上がるように現れた炎は、ダンの場に戻らんとする『ミラージュ・ワイバーン』を下から焼却する。
「さらにコストを払って追加効果を発揮。カードを2枚ドローする」
「ターンエンドだ」
「ありゃ……アタックしないの?」
「攻撃するだけが赤属性のデッキじゃないさ。それは、同じ赤デッキ使いのアンジュが1番分かってるだろ?」
「あはは……別に“赤使い”っていうほど得意でも強くもないけどね……」
対話しながら、アンジュはドローしたカードを確認する。
悪くない。
第1ターンで『ジークフリード』を破壊された時の精神的ショックは中々のものだったが、バトル自体は何とか立て直せている。
現状、盤面の質も手札の量も負けてはいるが、『ルリ・オーサ』で稼いだコアと赤属性のドロー力や除去能力があれば、充分巻き返しが可能な範囲だ。
「そんなことはないさ。攻める時と攻めない時の緩急がしっかりついている。リソースや防御を吐き出しているようで、しっかりケアも出来ている。中々厄介だよ」
「……そ、そうかな?」
普段、あまり聞きなれない“自分をほめる言葉に”、アンジュの視線が泳ぐ?
思っていたのとは違う反応が来たのか、ダンはそれに首をかしげており、そんな様子を見て、リゼと戌亥は目を合わせて笑いあっていた。
(あ~ダメダメ! 今はバトル中!)
手札を置いて、両手でパシン! とほほを叩く。
心なしか、思考がクリアになるのを自覚した。
そんなアンジュの、第7ターン。
「メインステップ! マジック『コールオブロスト(R)』を使用!」
アンジュが握る1枚のカードが、光を放ち炎に包まれていく
「さらなるリバイバルカードか……!」
「トラッシュにあるスピリットカード1枚を手札に戻す。対象はもちろん!」
その炎が完全にカードを覆うと、それと同時にカードの放つ輝きが増す。太陽のごとく金色の輝きが収まった時、そこにあったのは『コールオブロスト』のカードではなく。
「原初の炎よ! 紅き闘志をその身に宿し、今ここに甦れ! 『龍皇 ジークフリード・リバイバル』! Lv1で召喚!」
アンジュが、その燃えるカードをその手に掴み―――直後、地面が割れる。
割れた地面から荒ぶる炎と共に、深紅の巨体がその炎から生まれるように、ゆっくりと姿を現す。
その翼で炎を払っい、『龍皇ジークフリード』が、バトルフィールドに足を付けた。
「おまたせ……待った?」
俯かせ、顔を上げない『ジークフリード』に、そっと語り掛ける。
紅の瞳、その片目が一瞬だけアンジュと目線を合わせた。
その一瞬の直後、『ジークフリード』の翼が風を起こす。
俯かせた顔を上げ、その風に乗せて自らの降臨を叫ぶ。
ダンや、観客席のリゼや戌亥が、そのあまりの暴風と爆音に身を構え、バトルフィールドを咆哮の渦に包み込まんとするその返事に、アンジュの口角が無意識に上がる。
「じゃあ行くよ! 初陣だ『ジークフリード』! 『ゴラドン』にソウルコアを置いて、【バースト】をセット!」
「……来い!」
「アタックステップ!」
アンジュが盤面のカードを倒し、『ジークフリード』がその翼で羽ばたく。
向かう先は言うまでもなく、ダンへと迷わず突き進む。
だが。
「『ヘリオスフィアドラゴン』でブロック!」
その行方を、『ヘリオスフィアドラゴン』の炎のブレスが遮る。
その炎を避けて、『ジークフリード』は距離を取るべく真上へ上がり、それを『ヘリオスフィアドラゴン』も追いかける。
下から迫りくる『ヘリオスフィアドラゴン』に、『ジークフリード』もまた炎を吐き出すが、それをかわされ、負けじと『ヘリオスフィアドラゴン』もまた炎を放つ。『ジークフリード』もまたそれを避け、2体のドラゴンが、炎と共に宙に螺旋を描く。
「フラッシュタイミング! 『龍皇ジークフリード』の【覚醒】の効果! 『ゴラドン』に置いたソウルコアを『ジークフリード』へ!」
はるか上空で戦う2体に、地上の『ゴラドン』が吠えた。体から光が―――ソウルコアが現れ、『ジークフリード』のところへ昇っていく。
その光を、『ジークフリード』が喰らう。
ソウルコアの輝きが『ジークフリード』の内より溢れ出し、その光を発散するように吠えた時、『ジークフリード』はLv3へと上昇した。
「なに……?」
「『ジークフリード』は、ソウルコアを持っている時、最大レベルになる効果を持ってるのよ!」
「だが、BPは10000。BPは12000の『ヘリオスフィアドラゴン』の方が上だ!」
あふれ出る力に任せて突進してきた『ジークフリード』の頭を掴み、『ヘリオスフィアドラゴン』が急降下を始める。掴んでいる腕を引きはがそうとする『ジークフリード』の抵抗は意味をなさず、『ヘリオスフィアドラゴン』は、その頭部をバトルフィールドへと叩きつけた。
爆発する。破壊された『ジークフリード』を見届けつつ、『ヘリオスフィアドラゴン』がダンの元へ戻って膝を付く。
だが。
「―――『ジークフリード』!」
「っ!」
その爆風が、内側から吹き飛ぶ。その中心に、『ジークフリード』は未だに健在だった。
「これは……」
「『ジークフリード』Lv3の破壊時効果! ライフが5以下の時、ライフ2つを回復しつつフィールドに残ることが出来る!」
そう叫ぶアンジュの体が、ほんのり赤く光る。『ジークフリード』のその効果で、ライフが6まで回復したのだ。
「これが、生まれ変わった『ジークフリード』の力か……!」
「そしてこれでブロッカーは消えた! 『コロナ・ドラゴン』でアタック!」
その場に盾を突き立てて、『コロナ・ドラゴン』は両の手に槍を持って地面を蹴る。
「フラッシュタイミング! 【アクセル】『煌星第一使徒アスガルディア』を使用!」
『ヘリオスフィアドラゴン』のLvが3から1へ急激に下がる。膝を付いていた『ヘリオスフィアドラゴン』が力を失い両手を付いてへたり込むその横を、炎が走る。
炎が象る『アスガルディア』が、その刃を構えている。
「BP12000以下の相手スピリットを破壊する。攻撃は通さない」
最初の一振りで、『コロナ・ドラゴン』が引き裂かれる。その破壊を見届けることなく、『アスガルディア』はその炎で出来た手を地面へ叩きつける。『アスガルディア』は姿を崩し、そこから炎が沸いた炎が血を駆ける。二手に分かれた炎は、『ゴラドン』と『ジークフリード』を焼き尽くした。
「それは第三皇子の……!?」
「『アスガルディア』で破壊したスピリットの効果は発揮しない。『コロナ・ドラゴン』の仲間を守る効果は無効だ」
「全滅かぁ……ターンエンド!」
このバトルは、まだまだ終わらない。
破壊時効果を使わせない破壊って駄目だと思いません?(汗