さんばかとゆく! ヘルエスタ放浪記~バトルスピリッツ~ 作:多田 竜一
破壊されても何度も蘇る最強の盾『ジークフリード』と!
敵が倒れるまで何度でもアタックする最強の矛『アポロヴルム』!
果たして、勝利を掴むのはどっちのドラゴンか!?
「メインステップ! 『ジークフリード』をLv1にダウン! ソウルコアを使い『ドラグノ祈祷師』をLv2で召喚!」
アンジュの第11ターン。
赤のシンボルが現れ砕け、召喚されたのは、立派な角の生えた竜人。
赤い鱗の素肌にボロボロのローブを身にまとい、左手に数珠を持つ賢人かのような『ドラグノ祈祷師』は、手を合わせ、何かを祈っているようだった。
「『ドラグノ祈祷師』の召喚時効果! 召喚コストにソウルコアを使っていることにより、トラッシュから系統:『古竜』を持つスピリット1体をノーコストで召喚する!」
トラッシュに送られたソウルコアが光り、トラッシュからカードが浮き上がっていく。
「甦れ! 『焔竜魔皇マ・グー』!」
それを乱暴に掴み、盤面に投げる。
祈りを捧げる『ドラグの祈祷師』の背後で地面が割れ、マグマがあふれ出る。
漆黒の翼でもってそのマグマを払い、その大鎌を振るって『焔竜魔皇マ・グー』が吠えた。
「さらにマジック『フォースドロー(R)』を使用! 手札が4枚になるまでドローできる! 私の手札は0! つまり4枚ドロー!」
引いた4枚を見て、アンジュがニヤリと笑う。前のターンに削られたライフ5つ分、まだまだコアは潤沢にある。
使うと決めたカードは、引いた4枚のうち、3枚。
まず1枚。
「マジック『シンクロニシティ』! このターン、【覚醒】を持つ『ジークフリード』は、BP4000以上の相手スピリットに指定アタックできる!」
赤のオーラを纏い、『ジークフリード』が吠える。
そして2枚目。
「『武槍鳥スピニード・ハヤト』を召喚! 『ジークフリード』に
緑のシンボルが現れ砕け、召喚されたのは獰猛な鷹。
尾に刃を携え、頭部には首をも覆うほどの深緑の兜を付けている。
召喚されるのと同時に、『武槍鳥スピニード・ハヤト』は上空へと羽ばたき、それを追って『ジークフリード』も地面を蹴る。
空中で2体が姿を重ねた時、赤と緑の光が溢れ、バトルフィールドを覆った。
光が晴れ、そこにいたのは、深緑の龍皇。
その両手に簡素な槍を携えて、赤かった体表を緑に染めた『ジークフリード』が、力を鼓舞すべく空へ叫ぶ。
「指定アタックと『スピニード・ハヤト』……これは……!?」
そして最後の3枚目。
「マジック! 『メロディアスハープ(R)』! 『ヘリオスフィアドラゴン』を指定! このターン、ダンの
「ここで黄色のマジックか……!」
不思議な音波ががアンジュの持つカードから発せられ、それが『ヘリオスフィアドラゴン』を包み込む。それを受けて、『ヘリオスフィアドラゴン』は必至に腕を振り音波を払おうとするが、そんなことをしても音をかき消せるわけもなく、一瞬赤のオーラが現れたかと思うと、それは四散するように消えてしまった。
「『ライト・ブレイドラ』をLv2アップしてアタックステップ! 『マ・グー』の効果でトラッシュのコアを全て『マ・グー』へ! さらに『スピニード・ハヤト』の
コアが増えた結果、『マ・グー』はLv3にアップ。そのLv2,3の効果により、『ジークフリード』と『マ・グー』自身のBPとシンボルが加算される。
「覚悟しなよダン! 『龍皇ジークフリード』で
その槍を構え、『ジークフリード』が地面を蹴る。
「
それを受けて、『ヘリオスフィアドラゴン』もまた空へ駆ける。
「フラッシュタイミング! 『ジークフリード』の【覚醒】の効果により、『マ・グー』のコアを1つ残し全てを『ジークフリード』へ!」
空中で静止し、何かを呼ぶように叫ぶ『ジークフリード』の後ろで、『マ・グー』の体内から無数のコアが抜き取られるように具現化する。レベルが下がったことにより、『マ・グー』の効果で増えたBPとシンボルが消失した。
その数は、ソウルコアを含めて7個。『マ・グー』から離れたコアたちは、『ジークフリード』の元へ飛来して、その体内へ入り込んだ。
レベルが上がる。Lv3まで上昇した『ジークフリード』のBPは、『スピニード・ハヤト』の
◇◇◇◇◇
戌亥「あれ? 『マ・グー』のレベル下げてまうん?
Lv2をキープしとったならシンボルも増えてBPも18000になる。
BP17000のダンの
リゼ「違うよとこちゃん……これは……」
◇◇◇◇◇
「破壊時効果が狙いか……!」
「すでにバトルは成立してる! 今気づいても手遅れなんじゃない!?」
空中で、2体の竜が火花を上げて斬りあう。
2本の槍で刺突する『ジークフリード』の攻撃を、『ヘリオスフィアドラゴン』が『サンバースト』を使って器用にかわしていく。
そして、僅かに出来た『ジークフリード』の隙に、蹴りを入れて距離を取った『ヘリオスフィアドラゴン』が、『サンバースト』を構えて矢を生成する。
その直後。
矢が『ジークフリード』を貫き爆発し、『ヘリオスフィアドラゴン』はその構えた『サンバースト』を下げて力を抜く。
しかし。
「『ジークフリード』の破壊時効果! ライフが5以下の時、ライフを2つ回復してフィールドに復活する!」
その爆風を、深緑の翼が薙ぎ払う。
その様相にダンの顔が引きつった。
「しかも、『スピニード・ハヤト』の
『スピニード・ハヤト』の
アンジュはステップ開始時に“赤”を指定している。つまり、赤のスピリットにブロックされる限りは、何度でも再アタックが可能ということ。
そして『ジークフリード』は、ライフが5以下である限り何度でも蘇り、破壊されないことにより『スピニード・ハヤト』や『シンクロニシティ』の効果は消えることはない。
すなわち。
「そう! つまり連続して自爆攻撃が可能ってことよ!」
確かにその心臓を射抜かれたはずの『ジークフリード』は、油断していた『ヘリオスフィアドラゴン』へ持っていた槍を投擲し、それを『ヘリオスフィアドラゴン』はギリギリのところで咄嗟に弾いた。
その一瞬で、『ジークフリード』が『ヘリオスフィアドラゴン』の懐に入る。すでに振りかぶっているもう1本の槍を振り下ろし―――その腕を、『ヘリオスフィアドラゴン』が掴む。
回避不能。その状況で『ヘリオスフィアドラゴン』のブレスを受けた『ジークフリード』は、再び爆風を上げて破壊され、『ヘリオスフィアドラゴン』が距離を取る。
だがやはり、『ジークフリード』はいまだ健在。
爆風を払い、雄叫びと共に姿を現した『ジークフリード』の瞳は、今もなお『ヘリオスフィアドラゴン』を捉えている。
「
今度は先ほどの意趣返しともいわんばかりに、炎のブレスを放った。
しかし、『ヘリオスフィアドラゴン』はその手に持つ『サンバースト』に力を込めると、『サンバースト』の十字に付いた刃が回転を始め、バリアとなってその炎を防いだ。
そのバリアを利用し、『ヘリオスフィアドラゴン』が正面から徐々に『ジークフリード』へ距離を詰めていく。
「フラッシュタイミング! マジック『ソウルリッパー』! 相手の
だが、突如として『サンバースト』にひびが入る。そのひびは瞬く間に全体へ広がり、『サンバースト』は破壊された。
バリアを失い、『ヘリオスフィアドラゴン』が炎のブレスに直撃する。
そこから逃れようともがくが時すでに遅く、全身が焼かれそのまま爆風を伴って破壊された。
「ここで破壊してくるか」
「まだ攻撃は始まったばかりだよ!
「ライフで受ける!」
『ジークフリード』が、間髪入れずにダンへ2本の槍を投擲する。
ダンの前に展開された赤のバリアがその槍を受け止め、ダンのライフがその衝撃で2つ砕かれる。
残りライフ2つ。
対してアンジュのスピリットは、残り3体。
「『焔竜魔皇マ・グー』でアタック!」
その大鎌を構え、『マ・グー』が地面を蹴り前へ出る。
しかし。
「フラッシュタイミング。マジック『バインディングホルス』を使用」
「げ!? 緑のマジック!?」
「相手スピリット三体を疲労させる。『ドラグノ祈禱師』と『ライト・ブレイドラ』を指定」
魔方陣が―――否、瞳のような不思議な文様が、回復状態の『ドラグノ祈禱師』と『ライト・ブレイドラ』に足元に現れる。
その文様が光った時、強力な重力が2体のスピリットを襲う。膝を付かざるを得なく、この場から動くことも封じられ、アンジュの後続のアタッカーは全て疲労した。
「『マ・グー』のアタックはライフで受ける!」
振り下ろされた大鎌が、ダンの前に張られたバリアに当たる。
残りライフ1つ。ギリギリのところで耐えきった。
「もう! ここで緑のマジックとか来る普通!?」
「トラッシュから回収したコアで多種多様な色のマジックを使いカウンターを狙う。アンジュも似たようなことをしてるだろ?」
「そうだけどさ……そうじゃないじゃん! ターンエンド!」
◇◇◇◇◇
リゼ「ふう……なんだか見てるこっちが疲れてくるわ……」
戌亥「アンジュはんが基本的にフルアタックを狙っとるからねぇ。
ド派手なバトルになっとるよねぇ」
リゼ「アンジュのライフは、残り1つのところから『ジークフリード』の効果を2回使って
5つまで回復してる……受けも万全って感じかな」
戌亥「そうか? 『アポロヴルム』とかあったらアカンのやない? いくらライフがあっても
あの連続アタックは受けきれへんやろ?」
リゼ「そうかもだけど、アンジュの『ジークフリード』はまだまだ戦えるんじゃない?」
戌亥「??????」
リゼ「ライフの回復を5つで止めたのも、『ジークフリード』の
破壊時効果をダンくんのターンでも生かすためだと思うしね」
戌亥「そやろうけど……『ジークフリード』は疲労してるで?」
リゼ「まあ見てみなって」
◇◇◇◇◇
ダンの第12ターン。
(『ジークフリード・リバイバル』……他のリバイバルしたカードも含めて、俺が知ってるカードよりも見違えるほど強くなっている……。これが、この世界のバトルスピリッツ……)
実感する。本当に異世界に来たのだと。
そしてこの世界には、まだまだダンの知らないカードがたくさんある。
アルティメットや、創界神にミラージュ。テキストでその言葉だけは見たが、未だにこの目で見ていないカードは山ほどにある。
気の遠くなるような話だ。情報がものをいうバトルスピリッツというゲームで、この世界でのダンは圧倒的なディスアドバンテージを背負っている。
だが、それでも。
(負けるつもりは……毛頭ない……!)
「メインステップ! 『星渡竜コロニックドラゴン』をLv2で召喚!」
赤のシンボルが現れ砕け、炎が竜の姿を象った。四枚の翼で滞空する『コロニックドラゴン』は、その全身を炎で包み、その炎を自ら燃やし続けることで、その力強さを示していた。
「召喚時効果。トラッシュにある系統:『
トラッシュから浮き上がったカードを掴んだダンは、そのカードをそのまま盤面に投げる。
「『太陽神弓サンバースト』を再び召喚」
再び、『サンバースト』が太陽から降ってきた。
地面に突き刺さる『サンバースト』を横目に、ダンはさらに、勝負の1枚を掴む。
「世界を照らせ。光を背負いし紅の龍よ! 『太陽神星龍アポロヴルム』! Lv1で召喚!」
少年の背後、バトルフィールドでは何もないはずのそこから炎が沸き上がる。
その炎を背に、這い上がる龍が1体。
その翼の一振りで背後の炎を消し去り、『太陽神星龍アポロヴルム』は、けたたましい咆哮を伴ってバトルフィールドに君臨した。
「来たね『アポロヴルム』! 初めて見た時から戦ってみたかったんだよね!」
「ふ……なら俺も遠慮はしない。『太陽神弓サンバースト』を『太陽神星龍アポロヴルム』に
突き刺さった『サンバースト』を、『アポロヴルム』がその手に取る。
まるでそれが体の一部であるかのように、『アポロヴルム』は綺麗な動作で弓を構え、そして背後に翼のごとく無数にある刃の1つを、矢として『サンバースト』にセットした。
「アタックステップ! 射貫け!
矢を向けた標的は……『ジークフリード』。
「『アポロヴルム』のアタック時効果【界放】を発揮。トラッシュのコアを2つこのスピリットに戻すことで、
その矢を放たれた『ジークフリード』は、その手に持つ2本の槍でそれを受け止める。
しかし、それはただの矢ではなく、『アポロヴルム』の体の一部。それ程度で勢いが収まることはなく、そのまま槍ごと『ジークフリード』を貫通し、『ジークフリード』を破壊した。
だが、龍皇の魂は不滅。
その爆風を薙ぎ払い、『ジークフリード』がまたフィールドに吠える。
「……っ!」
「何度やっても同じさ! そのアタックはライフで受ける!」
爆風の余波が、アンジュを襲い、そのライフを砕く。
「
構えた『サンバースト』を下げて、今度は地面を蹴ってアンジュへと向かう。
「【界放】の効果。
「破壊効果は使わないか……でも、何度やっても同じだよダン! 『アポロヴルム』が何回アタックしても、うちの『ジークフリード』が全て受け止める!」
「それはどうかな」
「へ?」
「フラッシュタイミング! 『コロニックドラゴン』Lv2の効果を発揮! 2コスト支払うことで、BP6000以下のスピリット1体を破壊する! BP5000の『マ・グー』を破壊!」
地面すれすれを飛行する『アポロヴルム』の一方で、『コロニックドラゴン』がその姿を形のない炎に変える。その炎は瞬く間にフィールドを駆け、次の瞬間には『マ・グー』の元へとたどり着いていた。
それが、『マ・グー』に絡みつく。
必死に振り払おうと体をよじる『マ・グー』だったが、その炎を引き離す事は叶わず、その間に徐々に体を焼かれ、ついにはそのまま破壊されてしまった。
その爆風から、竜の姿に戻った『コロニックドラゴン』がダンの元へと戻っていく。
「それもライフだ!」
近づいた『アポロヴルム』が『サンバースト』を赤のバリアに叩きつけ、アンジュのライフを2つ砕く。
バリアに攻撃を弾かれた『アポロヴルム』だったが、その反動を利用して今度は宙へと距離を取り、その『サンバースト』に刃を添えて弓を構える。
「『太陽神弓サンバースト』の
そのまま、宙にピタリと止まった『アポロヴルム』が矢を放ち、再びバリアに衝撃を与えた。
「っ!」
これで、アンジュのライフは2つ。―――
「
さらなるアタック宣言により、【界放】の効果でさらなるコアを得て回復する。
その増幅した力を込めて、『アポロヴルム』がさらなる矢を放った。
しかし、アンジュも黙ってはいない。
「フラッシュタイミング! マジック『光翼之太刀』! 私のスピリット1体はこのターン、BPを+3000し、疲労状態でブロックできるようになる。
その矢を、『ジークフリード』が横から蹴って弾く。
それを見た『アポロヴルム』が間髪入れずに『ジークフリード』との距離を詰める。
「BPは18000。ダンの
「ならばフラッシュタイミング! マジック『双光気弾』を使用!」
「うげっ!?」
「相手の
斬り合い、防ぎ合っていた2体の
そして、何かを掴んだかのように腕を一気に引くと、それにつられて『スピニード・ハヤト』が分離した。
急激に主から引き離された『スピニード・ハヤト』が『アポロヴルム』の背後で爆発し、急激に力を失った『ジークフリード』が体勢を崩す。
その隙を逃さない『アポロヴルム』ではない。背後に携えた刃を1つその手に持ち、『ジークフリード』の心臓を貫いて破壊した。
「っ……! でも、まだ『ジークフリード』は死んでいない!」
爆風を払い、なおも『ジークフリード』はそこに健在。
これでアンジュのライフは4までに回復する。そして、『光翼之太刀』の効果も消えていない。アンジュのライフが5以下である限り、『ジークフリード』はアンジュを守り続ける壁となる。
だが、ダンは止まらない。
「まだ行くぞ!
【界放】の効果で回復し、アンジュのところへ飛翔する『アポロヴルム』だったが、それを『ジークフリード』が横からタックルを決めて阻止する。
不格好に絡み合い、宙を数回転した後に、2体の竜が地面に激突する。
砂塵が舞い、轟音が鳴り爆発する。だが、それでもなお『ジークフリード』は折れることなく食らいつき、轟音が響くその中心で、2体の竜が炎のブレスを吐き合ってせめぎ合う。
だが、2体の竜の力の差は、明確だった。
純粋な威力で負けた『ジークフリード』が炎に焼かれ破壊される。
だが、その炎を払い、『ジークフリード』はまた甦る。
アンジュのライフは、残り
「なっ!? ライフが!?」
「この瞬間を待ってたんだ。
炎を払い、雄叫びを上げる『ジークフリード』の懐に、すでに『アポロヴルム』はいた。
そうこの瞬間。
「『アポロヴルム』のアタック時効果。『ジークフリード』を破壊する」
そして、縦に一閃。
その瞳で『アポロヴルム』を捉えるも、反応は間に合わず、『サンバースト』によって真っ二つに切り裂かれた『ジークフリード』はついに爆発し、真に破壊された。
「『ジークフリード』!!」
「フラッシュタイミング。『コロニックドラゴン』の効果により、『ドラグノ祈禱師』を破壊する」
その爆発の一方で、『コロニックドラゴン』がまた炎へと変わり、今度は『ドラグの祈祷師』を焼き殺す。
そして、爆発を背に、『アポロヴルム』は2つの刃を弓に添え構える。
「っ! ら、ライフで―――」
アンジュの言葉を遮るように赤いバリアが展開され、すでに放たれた刃がそのバリアに当たり、衝撃でアンジュのライフを破壊する。
うわっと声を上げ後退するアンジュだったが、かろうじて踏みとどまり姿勢を正す。
だが、そこで正面を見た時。
「あっ―――」
すでにアタック宣言をした『アポロヴルム』がそのアタック時効果で『ライト・ブレイドラ』を破壊し、【界放】の効果で回復して、アンジュの目の前に立っていた。
盤面は0。手札も0。バーストもなし。ライフは4つあるが、ダブルシンボルの『アポロヴルム』の攻撃を、2度受けることすらも出来ない。そしてダンのトラッシュにはまだ【界放】2回分のコアが残っている。
―――詰みだ。
「もぉぉぉおおお! ライフで受ける!」
このアタックと、次のアタックでもって、アンジュのライフは全て砕かれた。
◇◇◇◇◇
「『アポロヴルム』と『サンバースト』と『コロニックドラゴン』噛み合い過ぎじゃない!? そんなことある!?」
バトルフィールドから出て、第一声がそれだった。
「バトスピには無数にカードがある。そういうこともあるさ」
「いやいや! 『サンバースト』は『アポロヴルム』が渡したデッキの中に最初からあったカードなんでしょ!? 絶対狙って作ってんじゃん! スピリットが自分に都合のいいカードを作っていいわけぇ!?」
「いや、狙って作ったにしても『コロニックドラゴン』に合わせて効果を作るのは流石にニッチすぎでしょ」
うぎゃー! っと不満が次々と出てくるアンジュを、リゼが押さえて止める。
最近は自室にこもりっきりのアンジュの元気な姿を見れていなかったが、この調子なら問題ないだろうと、ダンは思う。
「お疲れダンはん。お茶いる?」
「ああ、ありがとう。貰うよ」
「おおきに~」
一口すすったそのお茶は、戌亥が茶葉から選んだという彼女なりのこだわりの逸品らしい。飲んだ瞬間から香るその風味は、飲むたびに心が落ち着くので疲れた時によく効く。
「バトルに勝ったし、ダンはん今日は何食べたい?」
「……? 今日は肉じゃがじゃなかったのか?」
「せっかく勝ったんやし、ちょっとしたご褒美があってもええやん?」
「ええ!? 嘘!? そういうの先に言ってよ戌亥!」
不満を吐ききったのだろうアンジュが、2人に近づく。
アンジュの講義にケロっと受け流す戌亥を見ながら、ふと、ダンが呟いた。
「カレー……かな……」
本当に、自然に口からこぼれた言葉だった。
彼の大好物でもあるし、彼女らのやり取りを見て昔の仲間を思い出したのかもしれないし、はたまた、
そんなことを思ったダンの心境を知る由もなく。
「ええ。ダンくんが当番になったらどうせカレー作るんでしょ? じゃあもっと違うのにしない?」
「良いじゃんカレー! 私も食べたい! 肉じゃがと大して材料変わらないし良いよね戌亥!」
「なんでアンジュはんが喜んでんねん……ああもうしゃーないなぁ」
三者三様の反応を見せる彼女たちだが、不思議とそれが様になっている。
お互いがお互いに価値観が違うことを理解していて、そしてそれを受け入れ、とても深い絆で結ばれていることが、見ているだけで良く分かる。
それを見て、ダンは再認識する。
(やっぱり、仲間は良いな)
少なくともこの世界にいる間は、彼女たちのことは自分が守るんだと、そう決意を固めたのは、彼の内にしまわれた。
―――で、結局私は何で『ジークフリード』に呼ばれたの!?
今回の最強情報
アンジュの使う『龍皇ジークフリード・リバイバル』は、ライフが5以下である限り何度でも蘇る不死身のスピリット。
いつまでも相棒と共にバトルしていたいというアンジュの思いに、『ジークフリード』が応えたのだ。
これは、研究の末手に入れた人工のリバイバルではない。
何度失敗しても諦めずに、何度も何度もリバイバルへの研究を止めなかった、アンジュの心がもたらした真のリバイバルである。
次回予告
そこは、そこそこに栄えてる町。その町は今、日に日に獣人の少女が誘拐されていた。
そこに住む少年2人は、さらわれた幼馴染を救うため、奮闘する。
その時に出会った、とある女性が、一人の少年を魅了した。
これは、恋する少年の、ひたむきな想いの、そんなお話。
次回「さんばかとゆく! ヘルエスタ放浪記~バトルスピリッツ~」
第5話「街を襲う大犯罪 獣人誘拐事件勃発」
戌亥「ごめんごめん。ちょっと可愛いワンちゃんがおって」
◇◇◇◇◇
お待たせしました! 第5話終了です!
いやはや、物語の進まない日常回での気楽なバトルなつもりだったのですが、思いのほか気合が入ってしまい、結果執筆も遅れてしまいました……。
それでも、ここまで読んでいただいて、本当にありがとうございます!
次回は、ちょっとテイストを変えてみたいなと思っています。
テイストを変えるのは次回だけですが、ちょっと変わった味をお届けできるよう頑張ります。
励みになるので感想・評価・お気に入り登録を是非!
では! また次回で!