さんばかとゆく! ヘルエスタ放浪記~バトルスピリッツ~ 作:多田 竜一
「スタートステップ」
少年の、第5ターン。
「メインステップ。『ヘリオスフィア・ドラゴン』を再びLv2にアップ。そして『アルファレジオン』をLv1で再び召喚」
アルファレジオンの召喚時効果により、再び少年はデッキの上から3枚を公開する。
「『シャーマント・ヒヒ』を手札に加え、そのままLv1で召喚」
赤のシンボルが現れ砕ける。現れたのは、民族衣装を纏うサル。『シャーマント・ヒヒ』はその地に降り立つと、ウッキー! っとめいいっぱいの威嚇を放って見せた。
これで、スピリットは3体。ブロッカーのいないルークでは、残り2つのライフは守れない。
「アタックステップ。『ヘリオスフィア・ドラゴン』の効果により、トラッシュにあるコアを全てこのスピリットの上に置く」
コアが増え、『ヘリオスフィア・ドラゴン』のLvがLv3(BP12000)へと上昇する。
「『ヘリオスフィア・ドラゴン』でアタック」
少年がカードを横に倒し、命令を受けた『ヘリオスフィア・ドラゴン』が飛翔する。
「Lv2,3のアタック時効果により、このスピリットよりBPの低い相手スピリット1体を破壊する。『ヘリオスフィア・ドラゴン』のBPは12000。よって、BP8000の『アレックス』を破壊する」
はるか上空へと飛翔した『ヘリオスフィア・ドラゴン』は、その上空から一直線に地上に向かって降下する。バトルフィールドに当たろうというギリギリのラインで急旋回。再び上昇を始め、そしてその勢いに任せて『アレックス』へ突進し、そのまま破壊して見せた。
「そしてこれがメインのアタックだ」
上昇した『ヘリオスフィア・ドラゴン』は、ルークの目の前で止まると、その胸元のコアになる部分へ炎のエネルギーを貯め始めた。
まずは1つ。
ルークのライフを狙う、その炎は。
―――ニヤリ。
「フラッシュタイミング! マジック『シヴァカタストロフィー』を使用!」
届かなかった。
ルークの右手に握られてた1枚のカード。そこから発せらる紫のオーラによってその炎が吹き飛ばされる。それは『ヘリオスフィア・ドラゴン』をも吹き飛ばし、バトルフィールドの少年の方へまで後退させた。
「『シヴァカタストロフィー』の効果発揮により、貴様のスピリット全てのコアを、1つになるまでリザーブへ送る。せっかくトラッシュから戻したコアだが、全部消えな!」
そのオーラは、少年の場にいたスピリットも巻き込む。
しかし、『アルファレジオン』と『シャーマント・ヒヒ』の2体はもともとコアが1つしか置かれていないLv1のスピリット。被害がでたのは、Lv3(BP12000)からLv1(BP5000)へと下がった『ヘリオスフィア・ドラゴン』だけだ。
そして何より、
「でも『ヘリオスフィア・ドラゴン』は破壊されたわけじゃない……まだ攻撃は残ってる……!」
アンジュの言う通り。スピリットのレベルが下がったところで、攻撃が止まるわけじゃない。まだ、『ヘリオスフィア・ドラゴン』の攻撃はルークのライフを狙っている。
だが、
「テメェのフラッシュがねぇなら……続けてフラッシュタイミング!」
ルークがその手札から1枚カードを取り出す。それに呼応して、場の『ダークヴルム』が飛び上がった。
「―――っ!」
「このスピリットは、俺のソウルコアを1つリザーブに送ることで、コスト3以上の紫か赤のスピリットの上に重ねるようにして、コストを支払わずに場に出せる!」
その声に呼応して、暗雲がバトルフィールドを包む。その雲の中で、徐々に力を貯めるように、ゴロゴロと雷の音が鳴り続ける。
「暗黒を貫く
その暗雲を背に、『ダークヴルム』がフィールドを、少年とそのスピリットたちを見下ろした。
瞬間。
暗雲に溜まった紫の雷が、束となって『ダークヴルム』に振ってきた。一瞬で、その姿が光の中へと消える。
「『魔界皇龍ダークヴルム・レガリア』! 『魔界竜鬼ダークヴルム』に、【
その光が消えた時、そこにいたのは魔界竜鬼ではなかった。
荒々しくフィールドを飛び回る姿はそこにはなく、あるのは静かに佇む王の姿。
優雅に腕を組みながら、『ダークヴルム・レガリア』がフィールドに
「それがお前のキースピリットか」
「『ダークヴルム・レガリア』の煌臨時効果!」
組んでいた腕をほどき、『ダークヴルム・レガリア』は、その右手に持った杖を横に一振りした。直後、それをなぞるように紫色の衝撃波が生じ、次の瞬間には。
「っ―――!」
「ぜ、全滅……!?」
少年にフィールドに、スピリットは残っていなかった。
「『ダークヴルム・レガリア』は煌臨したとき、コアを1つしか持たない相手スピリットを全て破壊する。今貴様のフィールドは、俺が使った『シヴァカタストロフィー』の効果で全てのスピリットの持つコアが1つとなっている。つまり―――全滅だ!」
そして『ダークヴルム・レガリア』には更に、この効果で破壊したスピリットの数だけドローする効果もついている。
今回、少年のフィールドにいたスピリットは3体。よって、ルークは3枚ドローした。
少年は3体のスピリット全てを失い、ルークは新たに3枚の手札を手に入れた。
圧倒的アドバンテージ。しかも、少年の場には次のターンの攻撃を防ぐスピリットもいない。残り少ないライフ2つが、無防備に晒されてしまっている。
拮抗していたはずのバトルが、一気にルークへ傾いた。
そして、スピリットを全て失った少年は、もうアタックを続けることは出来ない。アタックが出来なくなったカードバトラーが取れる選択肢は、たった1つ。
「……ターンエンド」
少年の勝機は消え、そして絶望のターンが始まる。
「スタートぉ……ステップぅ!」
ルークの、第6ターン。
「メインステップ! 神銃ブレイヴ―――『天冥銃アーミラリー・スフィア』を召喚!」
紫のシンボルが現れ砕かれる。現れたのは、中央に小さな点球技を備えた黄金の拳銃。姿を見せた『アーミラリー・スフィア』は、上空へ投げ出されており、そのまま回転しながら落下していく。
「『アーミラリー・スフィア』を『ダークヴルム・レガリア』に、
右手に持った杖を放り投げ、『ダークヴルム・レガリア』は落ちてきたその銃を掴む。
「打ちぬくぞ!
「っ―――」
ブレイヴの召喚により、『ダークヴルム・レガリア』は『アーミラリー・スフィア』のコスト、効果、色、そしてシンボルが加えられる。さらに、リザーブのコアが全て置かれ、『ダークヴルム・レガリア』はLv3(BP14000)。
「【バースト】をセットしてアタックステップ! 行くぞ!
「
その引き金が、引かれた。『アーミラリー・スフィア』の銃口に貯められたエネルギーが一直線に少年へ向かう。
一撃で、少年の残りライフを吹き飛ばす必殺の弾丸。ブロッカーのいない少年にこれを止める手段はない。
フィールドにはない。だが。
「フラッシュタイミング―――」
手札は別だ。
「―――マジック『マグネティックフレイム』を使用。シンボル2つ以上の相手スピリット1体を破壊する」
少年の目の前に、黒い球体が現れ、それを覆うように炎が燃え盛る。その炎は、少年に迫っていた弾丸を弾き、そのまま黒い球体と共に『ダークヴルム・レガリア』に襲い掛かる。
炎は『ダークヴルム・レガリア』を包み込むと、締め付けながらそれを炙り上げる。苦しむ最中、『ダークヴルム・レガリア』は最後の力を振り絞り、持っていた『アーミラリー・スフィア』を少年に向けて投げつけ、破壊された。
「よし! ルークのキースピリットを破壊した!」
「ハッ! やはり一筋縄じゃいかねぇなぁ! だが!」
ルークが1枚、手札からカードを取り出す。
それと同時に、ルークの伏せた【バースト】に、ビリっと電流が走る。
「自分の紫のスピリットが破壊されたとき! コイツは手札からノ―コストで召喚できる! Lv2で来い! 『幽騎士ナイトライダー』!」
炎が引いた頃、そこにあった『ダークヴルム・レガリア』の魂の残滓が再び集まるように、黒い靄がそこに溜まり始める。それが徐々に大きくなり、それを覆うほどの大きさになった時、一気に弾けた。
紫の甲冑に身を包む馬と騎士。『幽騎士ナイトライダー』Lv2(BP6000)が召喚される。
「っ―――」
「そんな……このタイミングで新たなアタッカー!?」
「それだけじゃねぇ! 俺が伏せたこの【バースト】は『幻影氷結晶』! テメェがたった今破壊した『レガリア』をすぐに回収できる!」
さらに、ルークの場にある『アーミラリー・スフィア』には【
そして。
「俺はまだ
そうなれば、再びダブルシンボルの攻撃が少年を襲うことになる。
通ってしまえば今度こそ敗北、しかし止める手立てがない。
「そんなっ―――!」
アンジュは、無意識に名前も知らない少年に手を伸ばしていた。
しかし、そんなことをしても意味はない。観客の彼女にはどうしようもなかった。
「これで終わりだぁ!」
ルークが、その【バースト】に手をかけた―――。
次回決着!