原神〜二ツ目の騎士〜   作:倉崎あるちゅ

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 原神リリースされた当初から考えていた設定です。
 よろしくお願いします。


プロローグ

 

 荒れ果てた廃墟に暴風が吹き抜ける。

 廃墟──旧モンド城、またの名を風龍廃墟の上空に一体のドラゴンが羽ばたく。

 

「……風魔龍、か」

 

 風龍廃墟の入り口手前で両槍──西風両槍を携えた青年が呟く。

 

「またアビス教団の奴らの仕業だろうけど……どうしたもんかな」

 

 風龍廃墟にて闊歩する遺跡守衛、元素生物にヒルチャール達。それらを見下ろしながら顎に手を当てて考える。

 アビス教団は狡猾だ。何をするにしても厄介な罠を幾重にも張り巡らせてくる。

 ……兎にも角にもまずは、西風騎士団に報告をしなければないとな。

 くるりと現モンド城の方角へ体を向ける。すると、いつの間にかヒルチャール達が青年を標的にし、彼に近付いていた。

 ……うへー、やりたくない。

 心底嫌そうに顔を歪める。

 ヒルチャールの群れのその奥にいるのは、構造不明、製作者不明のゴーレム、遺跡守衛だ。

 ヒルチャールだけなら、握っている両槍で薙ぎ払えば切り抜けられる。しかし、遺跡守衛だけは別だ。物理攻撃はあまり意味をなさないし、遠距離攻撃もしてくるのが不愉快だ。

 一体のヒルチャールが号令をかけた。

 ヒルチャール語とも言われる、彼らが扱う言語で叫ぶ。棍棒に火をつけた赤毛のヒルチャール達が狂ったように突進してきた。

 

「ふっ!」

 

 両端に槍がついているという特徴を生かし、青年は流れるように赤毛のヒルチャール達を一蹴していく。

 しかし、続々とヒルチャールが押し寄せてくる。盾持ちに弩持ちが青年を襲う。

 気を引き締め、盾持ちのヒルチャール数体を横薙ぎで蹴散らし、密集する場所へ踏み込んだ。両槍を握る右手の篭手に着けている翠色のガラス球──神の目が輝く。

 

 その瞬間。

 

 青年の姿が掻き消えた。

 標的が消えたことにヒルチャール達が狼狽える。その直後、盾持ちのヒルチャール達が吹き飛ばされ、壁に激突し動かなくなる。

 密集していたヒルチャール達はバラバラになり、これによって統制は全く取れなくなった。

 

「──瞬風」

 

 びゅう、と風が吹く。

 両槍には風元素が付加され、翠色に染まった風が穂先に渦巻いている。

 バラバラになったヒルチャール達は何体か逃げ出しており、残った者たちは無謀に襲ってきた。

 再び青年が掻き消え、翠色の閃光が瞬く間にヒルチャールを切り裂く。翠色の軌跡が宙を舞う。

 それを見た弩持ちのヒルチャール達が怯えたように後退りし、背を向けて逃げていった。

 

「残りは、あいつか」

 

 青年はゆっくりと歩み寄る遺跡守衛を面倒くさそうに見る。

 ある程度の距離に来たゴーレムは背中の突起を動かし始めた。遠距離攻撃に入る前兆だ。

 遺跡守衛が機械音を出し、背中の突起を射出した。火を噴きながら飛んでくるそれを、テイワット大陸の者たちはミサイルと呼んでいる。

 青年は脚に力を入れて横へステップを踏む。ミサイルは彼へ向かって追尾していくが、引き付けて回避したため身体の横を通り抜けるのみだ。

 

「次はこっちの番だ、木偶の坊」

 

 再び、翠色の神の目が輝く。青年が前方へ跳躍した瞬間彼の後ろから突風が吹いた。

 

「蹴散らせ!」

 

 突風と共に顕現し(あらわれ)たのは風と鎧をまとう軍馬。

 軍馬に跨り、両槍を回すと風元素が集まり、巨大な槍へと姿を変えた。戦う準備はできたと軍馬が猛々しい嘶く。

 ドッ、と蹄を鳴らして軍馬が駆けた。遺跡守衛へ向けて風元素の槍を突きつける。

 

 

「──疾風軍馬」

 

 

 一直線に突き進み、その名の通り疾風となり遺跡守衛を貫く。

 その直後、遺跡守衛のコアから風元素が漏れ出始めた。ゴーレムがガタガタと震え、そして爆ぜた。

 それを確認した青年は軍馬を消して地に足をつける。

 

「はぁ……疲れた」

 

 たたでさえ任務で疲れているというのにこの連戦とは。目頭を抑えた青年は再びため息をつく。

 そんな気を抜いた時だった。

 ザッ、と草を踏む音が、風龍廃墟周辺の崖上から聞こえてきた。

 

「誰だ、そこにいるのは」

 

 両槍を構え、音がした方向を睨む。

 

「ま、待ってくれ! オイラたちは怪しいもんじゃないぞぅ!」

「そ、そうだよ」

 

 すると、白い宙に浮いたヤツを連れた金色の髪を靡かせる見慣れない白い服装をした少女だ。

 白いヤツは仰々しい反応を示し、少女のほうは冷や汗をかいている。

 青年は目を細め、二人を観察した。

 

「アビスの仲間じゃないだろうが……何者か聞いてもいいか」

 

 槍は収めない。その穂先をいつでも少女の喉笛を貫けるように握っている。

 

「私は蛍。旅人。こっちの浮かんでるのは非常食」

「非常食じゃない! オイラはパイモンだ!」

 

 パイモンと名乗る浮かんでいるヤツ(非常食)は宙で地団駄を踏む。そんな気の抜けたやり取りを見た青年は急に頭が痛くなるのを感じた。

 ……警戒した俺がバカだった?

 

「そ、そっか。俺は西風(セピュロス)騎士団所属、独立騎士のグリムだ」

「よろしく」

「おう、よろしくなグリム!」

 

 

 

 

 ✧ ✧ ✧

 

 

 

 

「へぇ、アンバーに連れられてモンド城に来たのか」

「うん。私たちがあそこにいたのは戦闘音があったから」

「そうそう! にしても凄かったな! グリムの風元素の馬!」

 

 モンド城へ向かう最中、旅人の蛍とその相棒、パイモンと共にグリムは蛍たちが風龍廃墟周辺にいた経緯を聞いていた。

 

「俺の元素爆発だ。移動にも使える」

「おー! それは便利だな!」

 

 興味津々にパイモンが目を輝かせる。残念ながら、モンド城を囲む湖──シードル湖が見えてきているため、ここでは元素爆発を行うことはできない。

 ……突風が凄まじいからなアレ。町に被害出るし。

 ……それに、むやみに見せたくないしな。

 

「でも、蛍とパイモンはタイミング悪い時にモンドに来たな」

「それ、ガイアにも言われたよ」

「あぁ。風魔龍が暴れてるんだよな? モンドに来た時は大変だったぞ」

「……ガイアと同じことを言ってしまったのか……不覚だ」

 

 小声で悔しそうに呟く。

 西風騎士団騎兵隊隊長、ガイア。飄々とした性格の、一見昼行燈のような男である。

 その男のことが、グリムはすこし苦手だった。彼自身はとても気さくでいい人物だ。しかし、どこか愉悦を欲するところがあり、あまり好きになれなかった。

 

「さて、モンド城に着いたな。俺はこれからジンに任務の報告をしに行く。蛍とパイモンはどうする?」

「オイラたちは鹿狩りでニンジンとお肉のハニーソテーを食べに行くぜ! な、旅人!」

「うん。またね、グリム」

「あぁ。何かあればアンバー経由で知らせてくれ」

 

 じゃあな、と手を挙げてグリムは蛍とパイモンを置いて、西風騎士団本部へ向かっていった。

 

 

 

 

 ✧ ✧ ✧

 

 

 

 

「──以上が、俺が集めた情報だ。他になにかあるか、ジン」

 

 報告事項をまとめた種類を執務室に設けられた机に広げ、白髪の青年──グリムが言う。

 その報告書を見た金色の髪をポニーテールにした美麗の女騎士がふぅ、とため息をついた。

 

「すまない、助かるよグリム」

「なに、これが俺の仕事だ。だが、ここ最近のアビス教団の動きがおかしいのは明らかだ」

「ああ。風魔龍の件もあるのが厄介だが……」

「おそらく、風魔龍の件にアビスが関わっている。風龍廃墟に足を踏み入れたが、アビス教団が使っている文字をいくつか見つけた」

 

 スッ、と写真機で撮影した写真を何枚か机に出す。

 

「これは……! 確かにこれはアビスが関わっている証拠になり得る。ありがとうグリム」

「いいや。これくらいのことしか俺にはできないからな」

 

 自虐を含んだセリフに、ジンは否定しようとした。しかし、それは団長室に入ってきた人物に遮られた。

 

「失礼するわ」

「エウルア? どうしたんだ?」

 

 入ってきた人物は艶やかな水色の髪をショートにした鋭利な雰囲気を醸す、堅氷(けんぴょう)の家紋を背負う女騎士。しかし、その彼女は急いで来たのか息が荒い。

 

「っ! グリム、帰ってきていたのね」

「まぁな。お前こそどうした? 珍しく息を荒立ててるなんて」

「そうだったわ。ジン代理団長、報告よ。望風山地にアビスの魔術師が数体出現、攻撃を仕掛けてきたわ。遊撃小隊はこれを迎撃。けど、不意討ちを受けて私以外の隊員は戦闘不能に陥ってしまった」

 

 その報告を受けたジンは目を見開いた。グリムもまた考えるように腕を組む。

 遊撃小隊は遊撃隊長であるエウルアが直々に指導をし訓練したものだ。それが不意討ちとはいえ戦闘不能になったとなると頭を抱える事案だ。

 

「この失態は私の責任よ」

「いいや、誰の責任でもない。すぐに迎撃隊を組もう」

 

 唇を噛む彼女に、ジンは落ち着いた様子で状況を打破するための指示を出す。

 ……龍災で混乱している状況での強襲、か。

 ……今の状態で出向けるのはそれほどいないはず。

 グリムはしばらく目を閉じ、決断を下す。

 

「迎撃隊を組む必要はねぇ。俺が行く」

「グリム? しかし、君はついさっき帰ってきたばかりで……」

「そんなこと関係ねぇだろ? アビス相手なら神の目を持ったヤツが必要だ。今のモンドに神の目を持ったヤツは少ない。なら、暇してる俺が行くのが一番だ」

 

 椅子の座面に置いていた篭手を手に取り、グリムは執務室の扉を開ける。

 

「隊員たちはバーバラに頼んで傷を癒してもらえ。ジン、バーバラに連絡を。エウルアは俺と来い。アビスのところまで案内してもらう」

 

 口早にそう告げて彼は執務室から出て行ってしまった。

 

「って、ちょ、ちょっと待ちなさいグリム!」

 

 呆然と立ち尽くしていたエウルアが我を取り戻し、慌ててグリムの背を追う。

 

「まったく、私よりもよっぽど代理団長に相応しいんじゃないかとつくづく思うよ」

 

 そんな彼らを見送ったジンは頭を抱え、そう呟いた。

 

 

 

 ドッ、ドッ、と蹄が地を鳴らす。風元素の軍馬が星落としの谷を駆けていく。

 軍馬に跨るのは風元素の神の目の所持者であるグリムと、その彼の腹に手を回す遊撃小隊隊長のエウルアだ。

 

「エウルア、最後にアビスの魔術師と交戦した場所は?」

「そうね、望風海角寄りの丘よ。ヒルチャールを連れて監視塔から弩で撃ってきた」

「ったく……これだからアビス教団は!」

 

 狡猾この上ない。

 それがグリムを苛立たさせる。

 

「見えた!」

 

 望風山地に入り、一番高い丘の上に監視塔が立っている。そこに居座る弩持ちのヒルチャールたちと木盾持ちのヒルチャール暴徒に炎斧持ちのヒルチャール暴徒。

 そして、氷と炎、水のバリアを張って浮いている小柄の魔物。

 

「このまま一気に貫く。エウルア、準備は?」

「行けるわ」

「よっしゃ、行くぞ!」

 

 ニヤリと笑って風元素によって巨大化した槍を構える。一点に集まった風は螺旋に渦巻き、監視塔を狙って疾駆する。

 軍馬そのものが一本の槍のように、それはアビスの魔術師たちへ突き刺さった。

 

 

 望風山地の丘の上にて、グリムは寝転がっていた。

 監視塔が存在していたはずだが、それはもうバラバラに崩壊し、木材が転がっているのみだ。

 

「まったく、君は無茶ばかりするわね」

「うるせ」

「君が怪我でもして退団しちゃったら、復讐する相手がいなくなっちゃうじゃない」

「……こいつ」

 

 しれっとそんなことを言うエウルアに、グリムは少々カチンと来た。

 ……心配されたと思いきやそれかよ。

 ……いや、言葉にしてないだけで心配してるのはわかってるけども。

 アビスの魔術師たちは撃退した。

 この一件について洗いざらい話してもらうつもりだったが、魔物たちは口を割らず、終いには自決してしまった。

 

「ホントに疲れた」

「お疲れ様」

「なー、エウルア」

「なにかしら」

「夜、酒飲みに行こうぜ」

「どこに行くの? キャッツテール? エンジェルズシェア?」

「んー、エンジェルズシェアで」

「わかったわ。予定を空けておくわね」

 

 先程まで吹き荒れていた風は去り、今は穏やかな風が望風山地に吹く。

 他愛もない彼らの会話は騎士団の団員たちが来るまで続いた。

 

 




 エウルア誕生日おめでとう。
 というわけでエウルアの誕生日だったので投稿しました。原神は読み込む量が多いので更新頻度は多くないと思いますが、よろしくお願いします。


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