原神〜二ツ目の騎士〜   作:倉崎あるちゅ

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一話 モンドの復讐コンビ

 

 

 西風騎士団所属、《狂風騎士》グリム・アースガル。

 隊で動く騎士団にとって、異例中の異例の単独で動く独立騎士。

 騎士団の中で大団長、《北風騎士》ファルカに次ぐ実力者だと噂されている。

 

「かわい子ちゃんはグリムのことが気になるみたいね」

「そうみたいだな。アイツの実力は大団長にも引けを取らないからな」

 

 執務室では魔女の帽子に薔薇を飾った女性、リサと浅黒い肌に眼帯をした美丈夫、ガイアが会話する。

 ニヤリと笑う眼帯の男は腕を組み、執務室の扉近くの壁に背を預けた。

 

「グリムは西風騎士団の奥の手だ。アイツには怪我なんかされて退役されては困る」

「確かにそうだけど、わたくしとしては少し心配ね」

 

 ガイアの言葉に、リサは本棚から取り出した本を眺めながら言う。

 

「神の目、か」

 

 彼女の心配を察したジンが口を開く。

 

「ええ。()()()()()()()()()なんてテイワットを探しても彼くらいじゃないかしら」

 

 基本的に神の目は一人一つというのがテイワット大陸に住む者たちの認識だ。

 神の目所持者が死亡した場合は、元素力は失われ、ただのガラス玉(抜け殻)へと堕ちる。そういった事情で自分のものと抜け殻で二つ持つ者はいるかもしれないが、グリムの場合は元素力が宿る神の目が二つ。

 

「大丈夫だ。グリムも自分の立場を理解しているはずだ。迂闊なことはないさ」

 

 リサに対しジンは朗らかに笑う。

 

「ま、アイツのことだしな」

「そうね。彼ももう大人ですもの」

 

 昔はよくヒルチャールや元素生物に突撃しに行っていたが、今はもう大人で自制が効くだろう。

 

「それで、旅人についてだが……」

「あぁ、今モンドでグリムのことを聞いて回っているそうだ」

「昨日の元素爆発を見てしまったみたい」

「……そういうことか」

 

 あははとジンが苦笑し、ため息をついた。

 緊急だったとはいえモンド城で元素爆発を使用したのを許したのは、ここにいる西風騎士団代理団長であるジン・グンヒルドだ。

 ……すまない、グリム。

 ……休みを二日ほど延ばすから許してくれ。

 グリムの元素爆発は絶大な力を誇ると同時に龍災に匹敵する突風を巻き起こす。

 故に、人目のある場所では使ってはならない。それに加えて、グリムは目立つのがあまり好まないのが難しいところだった。

 

「そういえば、グリムのヤツはどこだ?」

 

 ガイアがふと思い出したように言った。

 

「……今日は休日だ。おそらく……二日酔いで倒れているんじゃないか?」

 

 予想できるものをジンが答えると、ガイアとリサの二人が呆れたように息をついた。

 

 

 

 

 ✧ ✧ ✧

 

 

 

 

「グリムについて? そうだなぁ。彼は優しいよ。ぶっきらぼうだけど仲間のために戦える強い人だね」

 

 旅人の蛍は、モンド城で先日出会った白髪の青年について話を聞いて回っていた。

 最初に聞いたのはアンバー。次はリサ、ガイアと続いた。鹿狩りの店員、サラやモンドショップの店員にも聞いた。

 そして、皆共通して口にするのは『強い』『優しい』といったものだった。

 

「凄いね、みんなグリムのことを慕ってる」

「そうだな! ジンといい勝負してるんじゃないか?」

「かもしれないね。普段はモンド城の外で活動してるから見かける人は少ないみたいだけど」

「オイラたちが出会ったのは偶然だったもんなー」

 

 うんうん、とパイモンが頷く。

 グリムの強さは出会った時に垣間見た元素爆発で理解している。

 ……けど、ニンジンとお肉のハニーソテーを食べる瞬間に暴風が起きた時は流石にイラッとした。

 ……あのあとジンたちにも謝られたしそんなに怒ってないけど。

 蛍とパイモンがニンジンとお肉のハニーソテーを食べる瞬間に暴風が発生し、せっかくの料理が台無しになったのはつい昨日の出来事である。

 

「そうだ! 今日はグリムを探してみようぜ!」

「そうだね。モンドを探索するにもピッタリだし」

 

 善は急げだー! とパイモンがくるりと宙を舞った。

 

 

 

 

 ✧ ✧ ✧

 

 

 

 

 そのころ、グリムは。

 

「ぅぉぉ……」

 

 ゾンビのような低い呻き声を布団にくるまって上げていた。

 ……頭が割れるように痛い。

 ……マジで昨日飲みすぎた。

 昨夜、エウルアと共にエンジェルズシェアへ酒を飲みに行き、お互い仕事についての愚痴をこぼしてから、好き勝手に酒を飲むというなんともダメな大人になっていた。

 

「くそぉ」

 

 ……恐るべし、蒲公英酒。

 最初はエウルアオススメのヒンヤリと冷たいドリンクを飲みながら、彼女が持参してきた料理をツマミにして飲んでいた彼は、気づけばリンゴ酒を手に取り、次に葡萄酒、最後に蒲公英酒のフルボトルを開けていた。

 蒲公英酒に行く前にアンバーが店に来て止めたのだが、酔ったグリムとエウルアは止まらず、フルボトルを開けたのだ。

 

「まったくもー。だから言わんこっちゃない」

 

 グリムの自室に来たのは、昨夜彼の暴挙を止めようとして止められなかった偵察騎士アンバー。

 その()()には冷たい水が入ったグラスが握られている。

 

「おい、()()()()。……起きろ。水が来たぞ」

「う、うぅ……」

 

 隣のベッドで丸くなっている布団から、痛みで悶える声が聞こえてきた。

 グリムの家はエンジェルズシェアの隣に位置する。よって、こうして酔い潰れた職場仲間に部屋を提供したり、二次会を開いたりと、色々なものに使われている。

 普段は異性を泊まらせることはないのだが、昨夜は家に帰ることが困難な状態だったため、グリムの家に泊まったわけだ。

 

「アンバー、机の上に置いてある紙袋とってくれ……」

「えーと、これ?」

「それ」

 

 手渡されたのは、中に何袋も入っている紙袋。その中には小さな紙袋に包まれた粉末状のものが入っていた。

 

「なにそれ」

 

 アンバーが、赤いリボンをウサギのように揺らして首を傾げる。

 エウルアも気になったのか、死んだような顔を少し覗かせていた。

 

「こいつは、璃月(リーユエ)不卜廬(ふぼくろ)っつぅ薬局で買った薬だ。酒を飲みすぎた時に飲むと少し時間はかかるが治る」

「……なんですって」

 

 グリムが震える手で薬の封を切ろうとすると、エウルアが彼の手首をガシッと掴んだ。

 

「君……私と飲んだ翌日、やけに元気だとは思ってたけど……そういうことだったの?」

 

 ジロリ、と彼女の金色の眼がグリムの蒼い眼を覗き込む。背中に冷や汗が一筋滑り落ちるのを感じた。

 

「私はいつも頭痛に悩まされていたのに……。この恨み、覚えておくわ」

 

 酒のせいで声が低くなっているのに加えて、恨みがましく言うからか、とても恐ろしく思える。

 アンバーはあちゃー、と顔に手を当ててグリムを見やった。

 ……これ、マジで恨んでるかもしれない案件か。

 

「わ、悪かったって。ほら、お前の分もやるから」

「当然よ」

 

 ばっ、とグリムから掻っ攫って袋の封を切り、粉薬を口に流し入れた。

 その瞬間、エウルアの眼が見開かれた。

 

「んんっ!?」

 

 口を抑え、彼女の顔が真っ青に染まる。まるで氷元素に漬け込まれたのかのように青くなり、目元がひくひくと引き攣る。

 

「え、エウルア!? ちょっとグリム! どういうこと!?」

「あー」

「!!」

 

 グリムは机に置かれた水が入れられたグラスを手に取り、異様な反応を示す彼女にグラスを渡した。

 手つきがおぼつかないエウルアの手にしっかり持たせ、水を口の中へ流し込む。ごくり、ごくりと彼女の喉が上下する。

 水を飲み干したエウルアはぷはっ、とグラスから唇を離した。

 

「とんでない苦さだわ……!」

「不卜廬の薬はとてつもなく苦くて不味いで有名だからな」

「なんで最初に言ってくれなかったの?」

「言う前にお前が持ってったんだろーが」

 

 ジトッとした目を向けられ、エウルアは目を逸らした。

 彼女から視線を外し、グリムも薬を口に流し込んだ。舌に広がる苦みに顔をしかめるが、手に持った水を呷る。

 

「あ゛ー……不味い」

 

 べー、と子供のように舌を出してアンバーに持ってきてもらったピッチャーで追加の水を入れ、ぐびぐびと飲み干している。エウルアもまた同様に、こちらは上品に飲んでいるが、二日酔いで布団にくるまって死んだような顔をし、挙句に薬を飲んで顔面蒼白にしたせいで台無しである。

 しばらくすると、体調が良くなった二人の顔色は通常になっており、足取りも良くなっていた。

 

「普段は二日酔いになんてならないのに、君と飲むと本当にダメね」

「俺だって普段そんなに飲まねぇよ。まったく」

 

 今回は特に酷かったと二人は揃って言う。

 アンバーは絶対お酒を飲まないようにしようと心に固く誓った。

 そんな彼女はでも、と口を開く。

 

「そこまで酔えるってことは、二人は楽しく飲んでたってことだよね。ガイア先輩が言ってたよ。楽しく飲んでいると、酔いが回りやすくなるって」

 

 アンバーのその言葉に、グリムとエウルアがお互いを見やる。

 

「確かにそうね。グリムと飲んでいると、一人で飲んでいる時より楽しいわ」

「そら一人で飲むのと二人で飲むのは違うだろうよ。それ言ったら俺だってそうだ」

 

 話す相手だっていない一人酒は、趣はあるが少々寂しい。

 その点、エウルアとなら彼女手製の料理をツマミにして飲める。グリムが提供するのは、普段はモンドの見回りをしてばかりで外国に行けない彼女に、璃月や少しばかり遠い国についての土産話を聞かせることだ。

 

「あ、そうだそうだ。ジンさんからグリムに伝言頼まれてたんだった」

「ジンから?」

「うん。休みを二日延ばすって」

「へぇ。なんでだろうな」

 

 はて、とグリムは首を傾げる。

 

「蛍とパイモンが、グリムについて聞き回ってて……」

 

 あはは、とアンバーが後ろに手をやってわざとらしく笑った。

 ……ハニーソテーを台無しにしたせいか?

 ……今度会った時にお詫びの品でもやるとしよう。

 グリムは目立つのが好きではない。

 故に、話題が上がり、注目されるのは少々面倒だと思っている。

 

「俺への配慮のつもりだな……ったく、ジンのヤツは……」

 

 ため息をついて額に手を当てた。

 ……アビス教団への対応はどうするのだろうか。

 グリムは難しい顔をして、ベッドの横に設けられた棚の上に置かれた篭手を見つめた。

 翠色の光を反射させるガラス玉──神の目。忌々しいものであると同時に、グリムの力の証である。

 

「まぁいい。休めと代理団長が言うなら従っておく」

「うん、その方がいいよ!」

「そうね、休める時に休んでおく。騎士の鉄則よ」

 

 ニコニコとアンバーが笑い、エウルアが腰に手を当てて言う。

 

「それを言うなら、そこの罪人の末裔さんも休んでおけよ」

「は? なぜ私が休まないといけないのかしら」

 

 片眉を上げて、エウルアは白髪の青年を訝しむ。

 

「小隊の隊員、怪我で何日か安静にしないといけねぇだろうが」

「……そうだったわね」

「自分が怪我してないからって働く気かよ。休んどけ」

 

 どこか彼女を小馬鹿にしたようなグリムの発言に、エウルアはムッと顔をしかめて、篭手をつけて出かける準備をし始める彼に対して指摘する。

 

「そう言って、君は独断でアビス教団について調べようとするんでしょう?」

「ちげぇよ」

「じゃあファデュイについてかしら」

「……うっせ」

 

 図星だった。

 龍災について、氷の神の国、スネージナヤの外交使節である組織──愚人衆(ファデュイ)が圧力をかけてきていることは西風騎士団では周知の事実だ。

 ……神のいない国を支配したいのは見え見えだ。

 ……その他にも、もっとヤバそうな勘もある。

 

「えーと、あの……ふ、二人とも……」

 

 険悪な雰囲気をまとうグリムとエウルアに、アンバーが困ったように眉を八の字にしていた。こころなしか、赤いリボンも垂れているようにも見える。

 

「あー……」

 

 これ以上は面倒臭くなりそうだと思い始めたグリムは、嵌めていた篭手を脱いで、テーブルにドカッと置いた。

 それを見たエウルアも、不機嫌な雰囲気をしまった。

 

「動かなきゃいいんだろ」

「ええ。最初からそうしてればいいのに。現状、ファデュイは圧力をかけてくるだけで、なにもしていないわ。嗅ぎ回るのは得策じゃない」

 

 エウルアの意見は正しかった。

 思わずグリムは口をへの字にし、不満を顔に出す。

 

「……はぁ。わかったわ」

「? なにがだ」

「ファデュイについて調べてもいいわ。けど、モンド城だけに絞るのよ。それと、私も一緒に参加するわ」

「はー?? なんでお前も一緒なんだよ」

 

 ファデュイに関しては遊撃小隊の管轄ではない。

 この管轄は、西風騎士団の中で独立騎士であるグリムの管轄だ。そこに部外者を入れるのは道理が違う。

 

「君だけだと戦闘になるからに決まってるじゃない」

「いや、それお前に言われたくないわ」

「なんでよ!」

 

 グリムの返答にエウルアが頬をふくらませた。

 

「いいか? 基本的にお前は俺と同類。復讐をしたくて動いている。だよな?」

「そうね。その通りよ。私は騎士団に復讐をしたくて騎士団に入ったもの」

「俺は俺でアビス教団とファデュイに復讐を果たす。そのために騎士団に入った」

 

 手段がアレなエウルアはおいておき、二人とも復讐をするために動いている。

 

「そんな俺らが一緒に調査なんてしてみろ。悪巧みがわかった瞬間、徹底的に潰すのが目に見えてる」

「……」

「あー、目に浮かぶねー」

 

 グリムのセリフに、アンバーが脳内で暴れ回るグリムとエウルアの姿を描いた。

 暴風に乗って光臨の剣が飛んでくる様を想像し、ぶるりと身を震わせる。

 

「普段なら一人だから、あんまり戦闘はしない。が、二人なら……というか、お前と一緒の時はダメだ。歯止めが利かん」

 

 現に、先日の望風山地の監視塔破壊の件がその証拠だ。明らかに歯止めが利いていなかった。

 エウルアほど腕の立つ騎士はそうはいない。

 独自に編み出した、ダンスと西風剣術の融合という誰も想像しなかった剣術で敵を薙ぎ倒し、彼女のマントに着けている氷元素の神の目から得られる氷元素の大剣で貫く。

 そして止めの光臨の剣という、範囲物理攻撃の元素爆発。

 グリムの元素は風。スピードを出して撹乱でもすれば、エウルアの攻撃を容易く敵に当てるように誘導できるだろう。

 他にも取れる選択肢はあるが、あげてもキリがない。

 

「アイツがいれば、話は違ったんだがな……」

 

 不意に、そんな言葉が彼の口から溢れ出た。

 

「グリム……」

 

 彼の名を呼んだのはエウルアかアンバーか。どちらかはわからない。

 アイツ──グリムの弟はこの手の搦手に強かった。

 戦闘一辺倒の兄を支えるため、政治的な知恵を出すのは弟の役目だった。

 ……だからこそ、アイツはファデュイの陰謀に絡め取られ、アビス教団に殺された。

 

「ま、仕方ねぇか」

 

 死んでしまった者は蘇らない。

 これは、グリムの璃月の知人から言われたものであった。

 

「暇してる遊撃小隊隊長殿にも協力してもらいますかね」

 

 心底面倒臭くさそうにして、彼はエウルアを見る。

 

「ええ。もちろん協力するわ」

 

 彼女は当然のように胸を張り、ベッドに腰掛けるグリムを見下ろす。

 

「じゃあ、外のことはわたしに任せて!」

「おう、頼んだぞアンバー」

「任せるわね」

 

 偵察騎士としての役目を果たすぞー! と意気込むアンバーに、グリムとエウルアは苦笑いを浮かべた。

 

 こうして、期間限定でモンドの復讐コンビは共にファデュイの調査を開始するのだった。

 

 




 戦闘描写ないとスラスラ書けるのバグかなんかか?
 戦闘描写が好きな私にとって凄い苦い顔をする事案なんだが。

 原神のストーリー知らないと、何言ってんだこいつらみたいな感じになってるけど許して欲しい。
 あと、あらすじ読んでないとなんで復讐するんだこの主人公ってなるので注意。


 感想、評価お待ちしております。原神についての質問もお待ちしております。

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なのでよろしくお願いします。
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