今のところ、主人公が手紙を送る際は神父さんからもらった切手を貼っていますが、切手が尽きたら、女学校の時の袴や着物を売って切手代と葉書代にするつもりです。
さてさて、ここはとある山の中にある寂れた井戸、その中にあるのは井戸水?いいや、中は鬼の住処である。
未練たらたらで教会に寄ってしまったのが運の尽き
珠世さん達に自分の存在がばれてしまった。
その上、住んでいる場所までばれてしまい、中には入ってこないが井戸の周辺でまぁ騒ぐ、騒ぐ。
とはいえ、それも茶々丸の前で一喝したら来なくなりました。本当によかった。
これで安心して、
「手紙を書き進めることができる。」
一方通行の手紙によるやりとりだが、私は表向きは異人だ。
少しイントネーションをおかしくした日本語で話しかければ、普通の日本人なら質問に真摯に答えてくれる。こういう所は未来から変わらないな…日本人の本性はそう簡単に変わるわけないと言うことか。
少し安心した。私からすれば鬼が居ようがいまいが【大正時代の大日本帝国】は十分に【異世界】だ。
「過去だろうが…未来だろうが…人は人だと言うことなのか。」
もしかしたら、あの中に私のご先祖様がいたのかも…ね?
「さて…と、何から書こうかな?」
んー…、とりあえず教えたことから書き出そうかな。
①産屋敷一族は鬼舞辻無惨の子孫(直系ではない)
②鬼舞辻無惨が死ねば、全ての鬼が死ぬ
③鬼同士ならテレパシーで全て鬼舞辻無惨に伝わってしまう
④竈門禰豆子は《呪い》を解いているから情報が漏れる心配はない
⑤ヒノカミ神楽は日の呼吸
大体、こんな感じかな。
「うーん…現時点では伝えられるのはこのくらいかな?」
最後の《ヒノカミ神楽は日の呼吸》であること。
これを伝えるか伝えないかでかなり迷った、もともとヒノカミ神楽が呼吸の一つであることを竈門炭治郎が知ったのは無限列車後、つまり煉獄杏寿郎の死後だ。だからどうせ『知る』のだから早まってもいいのでは?とも思った。だって知ったところで戦地で使えなかったら『知らない』も同然だからだ。
「生存報告の為にも、定期的に送り続けないと…でも、ほかに現時点で書き出せるものは…。手鬼の過去、累の過去…だめだ。鬼に情が湧いてしまったらそれこそ鬼殺どころではなくなる。」
実際に会ってみると病的に優しすぎる人…と思った。それにまだ私情と仕事の区別ができてない時期。上弦の参を前に大切な人を失い、無力な自分を知った経験が彼を《病的に優しすぎる人》から《普通の人》にした。遊郭で鬼とはいえ、女性相手に殺意を持てたのだって、一種のフラッシュバックがあったからだとも考察できた。
そして、これはあまりにも矛盾しているかもしれないけど…煉獄杏寿郎を殺したのが上弦の参、猗窩座もとい《ハクジさん》だったことが、炭治郎が鬼殺一直線になる要因だった。
これは完全な私見だけど、もしこれが上弦の弐、童磨だったら原作のように『鬼を完全に滅ぼそう』と思わなかったはずだ。
だって、【鬼】ってようは【見た目人間の人喰い熊】のような扱いでしょ。熊に家族を食い殺されたからって、『全国の熊を滅ぼそう』とは思わないでしょ。
なんだっけ…?*1確か前世で戦後〇〇年特番で戦艦大和に乗っていた少年兵の証言の中で…
『恐怖が殺意になり快感に変わった。これが戦争の怖さですよ』とか言うのがあったっけ。あれになんか似ている気がする…。私は戦場を知らないから、的外れかもしれないけど。
猗窩座はいい意味でも悪い意味でも、あまりにも《普通の人》だった。そして炭治郎は鬼を人として見れる人だった。だからこそ、心のどこかでわかっていたのかも知れない。
『煉獄杏寿郎を殺したのは人間だ』と。
炭治郎という人物は名誉欲などがほとんどない。
【化け物殺し】とかなら寧ろ、伊之助辺りが稽古に熱心になるはずだ。なのに実際は炭治郎が誰よりも熱心になった。
「だからこそ…何でもかんでも情報を提供し過ぎると本人の成長を阻害してしまう。」
鬼滅の刃は、少年漫画の王道。
主人公の成長と友情が主なテーマだ。
癖のある現時点では敵キャラと真っ直ぐな主人公、お互いの譲れない領域を守り、競う事でお互いがお互いの意志を尊重する…展開になる。
ここは前世とは微妙に史実が違っても現実世界であることは間違いない。
未来の知識を先取りさせたところで問題ないのかもしれない。
でも…本来なら知っているはずがない知識を【知っている】ことは、不気味に思われてしまうだろう。それが炭治郎と柱たちの交流の妨げになる…までならともかく、、不気味すぎて殺される展開になってしまう可能性が高い。
この世で最も多くの人間を殺してきたのは、他ならぬ人間なのだから。
「とりあえず、【鬼の特徴】?を主観で書いてみようかな。鬼だからこそ分かったこともあったし。」
横浜
「お久しぶりです、ウィスティリアさん、いえ神父さんと呼ぶべきでしょうか?」
「どちらでも構いませんよ炭治郎くん、はい、今回の分です。」
「ありがとうございます!」
パラッ
【竈門炭治郎くんへ
しばらく日が空いてしまい申し訳ありませんでした。こちらは特段何もなく平和な日常を謳歌しております。今回書き記したのは、鬼の特徴です。鬼となって気づいた点をあげていきますので鬼殺の参考になればと思います。】
「よかった…無事だったんだ。」
教会が空になった時は、討伐されてしまったのかと思った。でも伝言でお互いの直接交流は途絶えたが、手紙によるやりとりは続いている。
【まず一つ、鬼の体は鬼舞辻無惨の一部といった感覚がしました。初対面の時に言いましたよね、『主軸を無くした家は壊れる』と、この主軸が鬼舞辻です。呪いを解いた時に体が軽くなりました。もしかしたら同じく呪いを解いている妹さんも、同じ感覚かもしれませんが、これは私の感覚ですので妹さんは違うかもしれません。やはり大事をとって無惨討伐前に妹さんを人間に戻すべきです。】
「体が軽くなった?禰豆子はどうなんだ?」
「ムー?」
【二つ、横浜にいることから私の名前がレディではないと気づいたと思います。ではなぜ名前で呼ばれていないのかと言うと、私は鬼となった時の衝撃で、自分の名前を忘れました。おそらくは妹さんも自分の名前を本当の意味では理解できていないはずです。】
「禰豆子…が禰豆子と分かっていない?」
【三つ、これが一番重要な部分です。鬼は人間時代の最後の日から精神的な成長はしません。君が対峙した鬼は見た目に比べて言動が幼いと感じた鬼もいたでしょう。間違ってはいません。
鬼の中には《人間時代を完全に覚えている鬼》と、
《人間時代の重要な記憶が歪んでしまった鬼》と、
《全く覚えていない鬼》の三種類に分かれます。
そして強い鬼というのは基本的には人間時代を多かれ少なかれ覚えている鬼です。君がこれから対峙する鬼とは、そういう鬼となるのです。鬼殺とは結局のところ人殺しです。そういう意味では鬼と対して変わらないのかも知れません。君は…人を殺す覚悟はありますか?】
「人を…殺す覚悟…!」
鬼ではなく、人を殺す覚悟…!いや…下弦の鬼と対峙したあの時に強く感じた。やり方こそ間違えていたけど、あの子も普通の子供だった。
これから強い鬼と対峙して、より多くの血を採取するということは……レディさんの言う通り、あの子のような鬼と遭遇する。
決意をしても心が追いつくわけではない。
「ムー?ムー!ムー!」
「ね、禰豆子?」
どうしたんだ?禰豆子が裾を引っ張るなんて?
「おやおや、お兄様が心配のようですね。」
「ウィスティリアさん…」
そうだ。俺は決意したんだ、せっかく2人が用意してくれた別の道、今よりも楽で禰豆子と安定した平穏な生活の道を閉ざして、鬼殺の道を進むと。
なら、
ボッ
パチパチ
「ありがとうございました、ウィスティリアさん。」
「迷いが消えたようですね、ですが……本当に嫌になったら、迷ったら……いつでも来なさい。教会も私も、君を拒む理由はないのだから。」
「はい…!」
そうだ、俺は1人じゃない。鬼殺隊には善逸と伊之助、外にはウィスティリアさんとレディさんがいる。
「ところで差し支えなければ教えてほしいのですが、次の任務は?教会の仕事も忙しくなりそうですし。」
「無限列車だそうです。」
「そうですか。」
えっ?今、一瞬迷いの匂いがした?だがその匂いを覆い隠すように
「そうだ…!これを持って帰りなさい。」
そう言ってウィスティリアさんが禰豆子の手に渡したのは、
「金平糖?」
「これが好きなのでしょう?人の子に戻ったら食べなさい。私もいつまでこの国に入れるのか分からないからね。」
そうか!ウィスティリアさんは何度も会っているせいで忘れかけたけど、異人だった。
「ありがとうございます、さあ禰豆子、帰ろっか。」
そうして、外に出たらウィスティリアさんは、
「グッバイ!タンジロー!」
片言の日本語を話す人になった。
「さようなら!」
「無限列車…あの子は茨の道を進む決意を固めたんだ。私が止めてはならない。」
パラッ
*2【 Tanjiro Kamado was protected by his superior officer in front of him on the Mugen Train, and he died.】
「そして、それが終わった後、炭治郎くんにあの子の血を渡す…か。」
主人公
《ヒノカミ神楽は日の呼吸》という情報を教えるか、黙るかでかなり迷った。だが、累の山で日の呼吸を使っているのと、知ったところで完全習得には時間がかかる呼吸であるという2点から教えても問題なしと判断した。ただし技名とか痣者とかの情報は教えていない。
一方通行のやりとりとはいえ、2人分の手紙を書く時だけは楽しい時間。
(こんな時間が続けばいいのに)とは思っているが、そうはいかないと一番自覚している。本音で言えば、15の子供が戦場に立つ現状が嫌なので鬼殺隊はやめてほしい。史実に沿えばどの道、戦場に立つのだから。
ウィリアム・ウィスティリア神父
主人公の友人
カトリック・イエズス会所属の司祭
現在は横浜を中心に【司祭】として教会で本格的に働いている。
炭治郎との手紙とは違い、こちらの手紙はバリバリ未来情報の宝庫になっている。前世の記憶とか、物語の世界とか言われても正直信じていなかったが、手紙を読んだ後に本人から次の任務は無限列車と聞いて、本当に未来を知っているんだと感じた。
とはいえ、載っている未来情報は主に鬼殺関係なので、この情報が漏れ出た時点で主人公が悪い大人に付け狙われる心配はない。(産屋敷は除く)
竈門炭治郎
レディさんからの手紙を受け取りに、定期的に横浜に行っている。
移動手段は徒歩!
神父さんが教会の仕事を終えた後に、自宅に寄っている。
体裁は小間使いの少年です。
信頼できる人と判断したので禰豆子にも会わせています。手紙を読み終わった後はお互いの近況や、レディさんの話題で盛り上がり、よくお土産をもらっています。禰豆子が金平糖が好きと話した事もありました。
大正コソコソ噂話
神父さんに【前世の記憶】を話すきっかけは、主人公のうっかりミスが原因です。
炭治郎が教会に襲来する前の平和な交流時期に、机の上に置いてあった【Hallelujah】を英語読みの【ハレルヤ】ではなく、ラテン語読みの【アレルヤ】と読んでしまい、外で日光浴をしていた時に、
『アーレルヤ♪アレルアレルヤー♪アーレルヤ♪アレルーヤ♪』と思いっきりラテン語の【テーゼのアレルヤ】を謳っていたのを聞かれました。
そこを追求された結果、もう誤魔化すのは不可能と判断して、神父さんは信頼できると思ったので話しました。
ちなみに神父さんは信じたくない話でしたが、
「それで知識の偏りがあったのか」と納得してしまったそうです。