『』→英語
「」→日本語
「カイマクルなのに主人公が地上に居住地を整えてるじゃねぇか!」とツッコミたい人もいるかも知れませんが、話の内容上、身分がないとガチで主人公が詰みかねないのでご了承ください。
できれば感想もお願いします(^^)
「ここが……私の部屋」
ここ数ヶ月、アメリカ国籍と新しい名前を得たことを関係者に報告する為に宣教師や先に入国しているシスターさん達との交流や他県だと手紙のやり取りに追われていたから自分の立場を忘れていた。
これまでは大使館から浅草、横浜、カトリック教会の布教支援者との交流で一つ所に留れず、現地の旅館(少し高いけど強盗対策で泊まっていた)や支援者ならゲストルームに泊まらせてもらっていたから自分の部屋を必要としていなかった。
でもこれからは違う。
『なるべく君が過ごしやすいように、南向きの部屋を用意したよ、外の空き地は昔は畑だったそうだ。今は誰も使っていないから君が使っても大丈夫だよ、許可は取った。』
さらりと神父さんは言ったが、かなり大変な事をしていると自覚はあるのだろうか。そもそも司祭だろうが修道女だろうが教会という組織の一員であるのは変わらない。言うならば《大きな家族》だ。集団生活が基本で私有財産を持てない立場である。だから物や部屋は下着とかならともかく基本的には借り物で共有財産だ。(修道女服も借り物)いくら私が表向きは【迫害から逃げてきた10歳の子ども】であり、まだ【誓い】を立てる前の見習い期間とはいえ、1人部屋を与えられるなんて度を超えた贔屓だ。
『神父さん、いくら見習い期間だからと言ってもこれは…あまりにも贔屓が過ぎます。私の体質上確かに1人部屋は有難いです。ですが、ただの子ども相手にこれほどの配慮を行えば、傍目から見れば他の聖職者に誤解されてしまいます。』
そう…これまでは、神父さんと出会ったあの教会は、基本的には神父さん1人の在住だったから派手な行動をしない限り問題なかった。
でもこれからは違う。常に誰かが見ている。こんなあからさまな垢贔屓は…、
『何か誤解しているようですね、君に1人部屋が与えられたのは君が病弱だからですよ。』
『病弱?』
病弱だから1人部屋?むしろ病弱なら人が多い場所になりそうだけど。
「レディ…いえ、ローズマリー・ベネットさん」
「はい、なんでしょうか?ウィリアム・ウィスティリア司祭。」
雰囲気がガラリと変わった。これは…仕事の顔だ。
『ローズマリーさん、あなた…訪問先で食事を提供された時、その場で食べては吐き出していますよね。紅茶や野菜類などは耐えれましたが、肉類はまるで駄目でした。』
『ええ、』
集団生活を送るにあたって1番のネックは食事だった。
鬼は基本的には人肉しか食べれない。
他の物で代用しようにも吐き出してしまう。
私は植物寄りになったから、茶葉や野菜などの植物系の食材なら我慢が効いたが、肉類は駄目だった。
どうしても吐き戻してしまう。
でも訪問先では食事を提供されるのが常だった。
礼儀上断る訳にはいかないし、食べる姿を見せないと自分が人間ではないとバレる可能性が高い。
案の定、食べては吐いてを繰り返した。
『君が病弱であること、野菜類は問題なく食べているように見える事、この2点が前提条件にあったので君の《食事の吐き戻し問題》は不自然に見えなかった…。ここまではよろしいでしょうか?』
『はい。』
訪問先の人たちには悪いことをしてしまった。食べた物を速攻で吐き戻した私の姿で食事の場は凍りついた。
事前説明をしていたけど、まさか…動物性油も駄目だったとは…
『あまりにも食事に制限がかかるので、こちら側も【保護した子ども】とはいえ毎回食事を準備するとなると、手間と時間がかかりすぎる。正直、あなたに割ける時間は多くない。でも保護した手前、君を世話する義務が生じる。』
『つまり…畑をやる代わりに食事は自分で作れと言うことですか?』
『ええ、その通りです。こちらも流石に子ども1人で全てを賄わせる訳ではありません。野菜を育てる際には大人も参加します。それに君は表向きは10歳の少女です、他の修道女のように外出制限があるわけではないし、現時点では君が本気で修道女になるとは誰も思っていません。だから男である私が君の部屋に訪れても誰も苦言を言わないのですよ。
君に1人部屋と畑が与えられた本音はそれです。
今の君はただ…朝のお祈りさえしていれば、後は畑を耕すなり、教会の手伝いをするなり、修道女に料理を教わったり好きに過ごしていいのですよ。子どもを頼るほど我々はプライドを捨てていませんからね。』
最後はほぼプライベートの顔になった神父さんは話が終わった後には教会の掃除をしに帰って行った。
「何をしてもいいとは言われても、畑を耕す…私の前世は農家じゃないからなぁ。こんな見た目のせいで顔も知らぬ親に捨てられた私に、結構な無茶を仰る…。とりあえず、もう一個作るか、カイマクルを。」
「…… What?」
私の独り言を聞いた神父さんが怪訝な顔をしていたのを、その時の私は気づかなかった。
▽▽▽
「と…言うことがあったのですよ。炭治郎くん、」
煉獄さんの死後、ヒノカミ神楽の特訓をしながら横浜に近かったからウィスティリアさんの所に寄ったら、怒涛の勢いで新情報がもたらされた。えっと…つまりは、
「レディさん改めてローズマリー・ベネットさんは、元々は大日本帝国の生まれだけど、見た目で迫害されていたから、戸籍もなく、事実上の無国籍で、それをウィスティリアさんの国が保護したのですよね?」
「はい、彼女は知識こそ豊富ですが心の成長は遅い人ですからね、実質10歳児と会話しているようでしたよ。私も彼女の本当の年齢は分かりません、本人も分かっていないですよ。」
あの見た目と、異国の言葉が流暢なレディさんが元々は日本人だったとは思わなかった。てっきりウィスティリアさんと同じ国の人だとばかりに。
「それとローズマリーさんの独り言と何か関係が?」
「ローズマリーは、私と最初の教会で交流していた時は《山菜の話》をしていたのですよ。」
「えっ…?山菜の話、なのに畑仕事をした事がない?」
「おかしいでしょう?山菜やタンポポなどの一般的に食べられる植物の話をしていた人が、畑仕事が出来ない、やり方が分からないなんてあるのでしょうか。」
確かに、それだと話の辻褄が合わない。でも、レディさんがわざわざ嘘をつく理由がない。
でも、禰豆子も鬼となってから記憶の退行が見られる、ましてやレディさんは最初会った時から英語が出来ていた。
「元々日本人だという記憶が間違いなのでは?」
「それはないですね、もし彼女がこちら側の人だったのならば、着物を1人で着れるわけがありません。」
どうやらウィスティリアさんの国の人には、俺たちの日常着は使いづらい物らしい。わざわざ洋服があるのに、着づらい着物を好んで着る人がいたら目立つとのこと。だとすれば、
「記憶が…薄れてきている…?」
「やはりそうですか…。ネズコさんの実年齢と中身の幼さを知っているので覚悟はできていましたが…やはり、本人は知らずとも、記憶がなくなる様を見るのは……辛い…ものです。」
俺は禰豆子の本来の姿を知っている。
でも、ウィスティリアさんは違う。
大切な人から記憶が薄れていく様を見続けて、それを指摘する事も出来ないのは、辛いよなぁ…。せめて、
「これから沢山の思い出で埋めて下さい。溢れても、また埋めれば、ローズマリーさんは生きることができるでしょう。」
俺はローズマリーさんに鬼殺の情報を与えられてばかりだ。本当は俺も何とかしたい、でも出来ない、俺は《鬼殺隊》彼女が《鬼》である限りは、
「最後に…これを」
厚みがあるインク入れを差し出された。これは一体、
「万年筆のインク入れ?」
「中身はローズマリーの血です。」
「えっ?」
なぜこれまで断ってきていたと言う【血の提供】を急に?
「ただし条件があります。」
「はい、何でしょうか」
「1つ、これを渡す代わりに珠世、愈史郎はローズマリーに近づくな
2つ、人間化薬の試験薬を無闇に鬼に使い太陽に耐性がある鬼を増やしてはならない。
3つ、人間化薬は最低4つは造ること
4つ、人間化薬を投与するのは竈門ネズコを最初とすること、
最後は…ローズマリー・ベネットを戦地に巻き込む事は許さない
以上です。これを守れるならば今すぐにでも渡しますが、守れる保証がないならば、君が《上弦と対峙して生き残れたなら》条件なしで提供します。どうしますか?」
上弦と対峙して生き残る…事実上の提供拒否だ。本当は今すぐにでももらいたい、でも、全ての条件を満たすことはできない。特に条件の最後、【ローズマリーさんが鬼殺隊と関わらずに全てを終わらせる】のは不可能だ。お館様が【太陽を克服した鬼】という最強の撒き餌を使わないなんて有り得ない。でもここで嘘をついたらいけない。匂いが、決意の匂いが強い…!
「俺が…俺が上弦と対峙して生き残れたなら、その血を貰ってもいいのですよね?」
「はい、無限列車の話と君の決意を聞いた今、私は君を1人の《戦闘員》とみなします。民間人ではない以上、こちらが譲歩する理由はありません、それなりの報酬を求めます。」
「わかりました…!俺は…必ず上弦と対峙して生き残ってみせます!」
1人の鬼殺隊士として認められたんだ。ならウィスティリアさんとローズマリーさん、この2人の期待に応えなくては!
「そうですか…、日が暮れてきましたね、そろそろお戻りを。」
「はい!失礼します!」
バタン
▽▽▽
「駄目だったか…このままでは本当に、上弦の首をとってしまう。
すまない…ローズマリー、養子縁組よりも先に鬼の殲滅が始まりそうだ。」
【Jogen no Riku, the fallen princess Gyutaro brothers were defeated in a red-light district by Tengen Onbashira, Tanjiro Kamado, Inosuke Suihei and Zenitsu Azuma. As a result 】
主人公【ローズマリー・ベネット】
教会付きの孤児という立場上、教会敷地内に部屋を与えられました。
教会に在住していますが洗礼名はありません。
修道女ではないので、外出制限や私有財産の所持禁止は適応されていません。また身体上の欠陥が主に食事関係なので「野菜類は基本、自分で育ててね」と言われたので、畑を活用するつもりです。
「そういえば、なんで私、お金を持っているんだろう?貰った覚えはないのに」
ウィリアム・ウィスティリア司祭
イエズス会の宣教師で主人公の友人
主人公の独り言を聞いてしまった。
交流初期は「親は地主」と聞いていたので畑仕事を知らない発言の衝撃は大きく、ちょうどやって来た炭治郎に、主人公の経歴を誤魔化しながら説明した。
ネズコの様子から鬼となって長い年月を生きると、記憶の欠落が起こると知っていたので覚悟はしていたが、いざソレを見ると心の柔らかい所をグサグサと刺されているようだった。
「両親に愛されていた、だから巻き込みたくない」と言っていた子が、
「顔も知らぬ親に捨てられた」と記憶が変化しているのを聞いて、複雑な思いを飲み込んでいる。
竈門炭治郎
神父さんからの怒涛の新情報に目眩がした。
しかし内容が深刻だったので出来るだけのアドバイスはした。
炭治郎は神父さんが情報操作済みなので、主人公は【迫害から逃れた元日本人だった人】と思っています。
主人公の記憶が薄れて、本当の姿を知る人がいない現状を哀れだと思っていますが、鬼殺隊士の自分が鬼である主人公に会うのはダメだと境界線はきっちりとつけているので、会うことはありませんでした。
「せめて、身内がいればなぁ…」
大正コソコソ噂話
実は主人公の記憶が薄くなった原因は、名前です。
主人公は前世の記憶の中で唯一思い出せないのは、【自分の名前】と【死因】です。
だから名付けを拒否していました。
しかし神父さんが国籍所得のために、偽名ではなく、本名を与えてしまいました。
鬼殺隊対策で国籍を与えるのは正解でしたが、本名を与えた為に、彼女は【ローズマリー・ベネット】として人々に認識されました。【ローズマリー】あるいは、【ローゼ】と呼ばれる事により、主人公は存在を固定されたのです。
今の彼女は、この世の人であってこの世の人ではありません。