どんなに信頼している相手でも。
柱集会議で、上弦の陸情報を共有します。
「以上が、遊郭に蔓延っていた【上弦の陸兄弟】の血気術でした。」
「ありがとう天元」
「おめでとうございます宇髄さん」
「凄いわ!宇髄さん!」(強くてキュンキュンするわ)
「まあ…ほめてやらんでもない…」
「あの雲…なんだっけ?」
「南無…100年越しの上弦撃破…」
「俺は(宇髄みたいにできないから)関係ない。」
100年越しの上弦撃破の報告に鬼殺隊は盛り上がった。それと同時に柱の面子は予想よりも厄介な上弦の血気術と、最下位でありながら柱が片腕を失くす結果に、危機感を覚えた。
「最下位の上弦でこれかぁ」
「私たちは上弦を過小評価していたようですね。」
と言いつつ、胡蝶はぶつぶつと「藤の毒…限界値…」と毒の製薬を広げようと俺に質問をしにきたり
「太陽を克服した鬼という前例がある以上、他の上弦が克服していないと誰が言える?」
と、上弦撃破に沸く柱付きの隠に忠告をする伊黒、(流石に柱付きにまで誤魔化すとなると、気が休まらないという甘露寺の主張が受け入れられた)相変わらず変わらない冨岡と時透、そして一通りの質問を終えた後は各自解散となった。
▽▽▽
俺としてはこれからが本題だ。
「お館様、それと…屋敷にいる煉獄慎寿郎さん、お話があります。」
「ふふ、勿論だよ」
「さすがだな宇髄君」
俺は室内に案内された。
「では、単刀直入に聞きますが、上弦の能力はともかく、人間時代の過去まで知っているのは何故ですか?その情報元は信用できるのででしょうか。」
煉獄の旦那は鬼殺隊を離れてからの月日は長い。仮にその間に、遊郭にいる鬼を知って情報を集めていたとするならば、俺と鉢合わない訳がない。
「人間時代の過去もあたって…いたのか…?」
柱集会議では、上弦の能力を話し、それ以外の話はしていない。当たり前だ。数百年前の人間の過去など、今を生きる我々が知る訳ないからだ。
(煉獄の旦那のこの反応、自分で手に入れた情報ではないな)
元々そう予想していたが、そうなると謎が深まる。
途中で腐って鬼殺隊を辞めたとはいえ、煉獄の旦那は元炎柱。直感力や策戦能力は高い。そんな御仁が不確かな情報を俺に渡すとは。
「天元…君のような現実主義者には、理解できないだろうけど…信じられない奇跡だって、おきる時にはおきるのだよ。」
「宇髄天元殿、これから話すのは全て事実です。息子の名に誓って嘘はないと言い切ります。」
酒の匂いがしない…この熱い瞳、やっぱりアイツの父親なんだな。
煉獄…良かったな、もうお前が支えなくても生きていけるぞ。
「始まりは、息子が無限列車に乗る前から…、いつものように挨拶に来たアイツの背後から、女の声が聴こえたことが初対面の話…その亡霊はこう言った、『このままでは無限列車で上弦の参に殺される』と。」
「ちょっっと待ってくれねぇか、煉獄の旦那。」
初っ端から飛ばしやがった。これならまだ情報元は、鬼と言われた方が説得力がある。
無限列車前に予言?相手は亡霊?
信じられない話だと、前置きはしていたが、まさかここまで奇想天外な内容とは思わねぇだろ。
「天元の気持ちもわかるよ…私だって、最初に慎寿郎から聞いた時は頭を抱えたからね。」
「そう言っておられても、最後まで話を聞き、宇髄君に情報を送ってくださり、感謝しております。」
「産屋敷家の勘が、悪いものと判断しなかったからだよ。それに君が荒唐無稽な嘘をつくとは思わないからね。」
「宇髄君、大丈夫か?後で話す事もできるが?」
煉獄の旦那とお館様の朗らかな雰囲気、嘘ではない。
「いえ、このままお聞かせください。」
「そうか…じゃあ続きを、俺は最初は当然信じなかった。だが、不吉な事を言う亡霊は取り除かねばならなかったから、亡霊を受け持った。
その時の亡霊は、俺が亡霊の言葉を信じないと知ったら、さっさと何処かに消えてしまった。
その時はよかった。
だが、その後、【杏寿郎が上弦の参に殺された】と聞いた。
俺はその時、後悔した。
亡霊は視えている俺に熱心に、杏寿郎が如何に華やかに大切な種火を残して死ぬのかを話していた。」
大切な種火、確か無限列車にいた隊士は、猪、黄色、そして竈門炭治郎。
「亡霊が再び現れたのは、竈門炭治郎君が俺に
条件は【上弦の血気術と人間時代の過去】を話す代わりに、俺は【話に真面目に付き合うこと】だ。
宇髄君宛の手紙の内容も、亡霊からの情報だ。そして、」
一息ついた煉獄の旦那は、
「内容が合致したと言うことは…他の上弦の血気術も、過去話も、事実である可能性が高まったと言うことだ。」
「天元…ゴホッこれはかなりの収穫だよ。ゴホッ、我々は人間だ。ガハッ、身体上、鬼には負けてしまう。だけど、ゴホッ、予め、未来の作戦を作れればゴホッ、君よりも容易く、鬼に勝てる。」
俺は忍びの一族だった。だから、この情報がどれほどの価値を持っているのかが分かる。かの、【始まりの呼吸の使い手】よりも価値がある存在だ。
「その…亡霊は何処に?」
亡霊の存在を認め、それに会わなければならない。
「亡霊はいなくなった。話し相手ができて成仏したのか、それとも別の場所で彷徨っているのかは分からない。だが、亡霊の身元は判明した。」
「身元が判明…?」
亡霊ならば、数百年前の人物では?
「例の亡霊は、女学生の着物を着ていた。ハイカラな簪を挿し、異国の言葉や耶蘇教にも詳しかった。だから、亡霊は今の時代を生きていた者だ。お館様にお願いし、東京の女学校でここ数年、生死不明の生徒がいないか調べてもらった。そして1人だけ名前が該当する人物がいた。」
ここ数年の人?なのに上弦の過去を知っている?
「そいつは何者なんだ?」
「「橘キョウコ」」
「香りに子と書いて、香子。最後の日に教えてもらった名前だ。
偽名の可能性も高かったが、帝都の女学生であり、裕福な家庭の娘を探してもらったら、行方不明者の中に、ここ数ヶ月に警察に届け出があったのがこの名前の娘だった。
帝都内にそこそこの土地を持つ、地主の一人娘、
上に兄が2人いる。
通っていた女学校は、浅草にある【藤の花女学校】
学校とは名ばかりの花嫁修行の場だが、調査の結果、この橘香子という人物、かなりの変わり者だったそうだ。
結婚をそれとなく拒否し、異国の物語を好んで読んでいたそうだ。
表向きは周りに合わせていたそうだが、両親はそれとなく気づいていたそうだ。だから最初の数日は、家出と思われていた。」
異国の言葉や宗教に詳しい女学生、確かに辻褄は合う。だが、【花嫁修行の場】で、そこまで詳しい本を置くか?
何か他の事情も持っていそうだ。
「だがゴホッ、いつまでもゴホッ返ってこないゴホッ娘に、痺れを切らしたゴホッ、両親が、」
「浅草の女学校に問い詰めた結果、学校にも来ていない事が判明。直ぐに警察署に行方不明の届け出を出した。現在も見つかっていない上、死体もないとなると…鬼に喰われたとしか考えられない。」
シーーン
「煉獄の旦那、それは矛盾してないか?仮に鬼に喰われたとなると、鬼への復讐心で亡霊となったとしか思えない。なのに、『鬼はどうでもいい』と言うか?そして、数ヶ月前まで生きていた人間が、数百年前の人間の過去を細やかに知っている訳がない。」
最も、亡霊に人の道理が通じぬのかも知れないが。
「最もな意見だな。俺もその矛盾を突いたら、香子はこう言った。
『亡霊は過去の事なら時間軸の外れにいる』と。
だから、過去のことは知れるが、未来のことは分からないそうだ。そしてこうも言っていたな、香子を殺したのは鬼舞辻無惨だったそうだ。だからこそ、無惨と縁が強い上弦の過去を観る事ができた。
その代わり、無惨が気に留めない鬼の事は何も知れないそうだが。」
「と、言うことは、まさかその亡霊は、無惨の過去も知っているのか。」
「そうだ…。だが、無惨に関して言えば、過去の話は言えない事が多い。鬼殺隊の団結力を損なう内容も多いからな。」
気になる話はまだまだあるが、一先ずは例の亡霊の生前の過去を洗い出すか。
「そうですか…では、私はこれにて失礼致します。」
「聞きたい事、疑問に思うこと、俺は基本煉獄家に居るから会いにきなさい。」
「ゴホッ、天元、近い未来ゴホッ、【上弦の血気術を纏めた冊子】をゴホッ、柱に配る、表向きはゴホッ【産屋敷一族の勘】と宣伝ゴホッしてくれ。」
「はっ!仰せのままに。」
お館様は自分の代で全てを終わらせるつもりか。
▽▽▽
『吉原が大規模破壊…原因は不明…か…。』
あの子がまだ、アメリカ人になる前に…物語のように話していた内容。
数百年前…、理不尽に妹を奪われた兄による…人間への復讐劇が幕を閉じた。確か、炭治郎君は二ヶ月ほど目覚めなかったはずだ。
そしてもう少しで、二ヶ月が過ぎる。目が覚めてからは意地でも此処に来るだろう。約束を果たさねばならない。例え……あの子が『自分が鬼である』という事実を忘れかけていても。
『ローズマリー、瀉血をしようか?』
『はい、ウィリアム神父さん。』
宇髄天元
慎寿郎とお館様による説明で、信じたくない話だけど信じざるを得なかった。
柱を引退したので、これまで鬼殺にかけていた時間全てを【橘香子】の調査に充てることになる。嫁達も総動員して1から100までド派手に調査します。
あれ?引退してからの方が忍びの道に進んでいるよね?
煉獄の旦那(慎寿郎)
お館様は一族代々の勘の良さで、宇髄天元は忍び故の情報の重要さで、何とか信じてもらえました。
本人は例え【遂に狂った】【気狂い】と思われても、座敷牢に閉じ込められることも覚悟の上で話しました。
お館様
今回の件で【上弦の陸兄弟】の血気術と過去話が合致した事により、慎寿郎が纏めた冊子の信憑性が急上昇。
奇跡の出会いと【太陽と藤の毒を克服した鬼】という二大武器を手に入れて、血反吐吐きながらも心の中はお祭り騒ぎ。
人外と闘うなら、人間側もどこか人の心を捨てないといけないのかな?
ウィリアム・ウィスティリア司祭
カトリックイエズス会所属、日本布教担当の1人。
吉原の大規模破壊を新聞で知った。
着々と近づく、別れの音に寂しさと悔しさと憎しみで、心の中はごっちゃごちゃしている。
でも、約束は守ります。ネズコはまだ人の子に戻る事が出来るのだから。
ローズマリー・ベネット(主人公)
今回の話では出番はなかったですが、着々と過去を忘れています。
身体の変化も進み、今では鬼特有の牙は無くなり、草や土を食べ易い平坦な歯になっています。
竈門炭治郎
現在、意識不明。
橘香子
フルネームが遂に知れ渡った。前世を思い出す前の人格だけど、不思議とグリム童話やイソップ物語(原作)に妙な懐かしさがあったので、読んでいた。
大正コソコソ噂話
現時点で【太陽と藤の毒を克服した鬼】の情報を知っているのは、
産屋敷一族、柱、柱付きの隠だけです。
実は最初の段階では「隊士の中でも各柱の継子や、元柱の育手にも伝えるべきでは?」という煉獄杏寿郎の意見が出ましたが、
「情報規制が出来ないから無理」
「人の口に戸はつけられない」
などの反対意見があり、実現はしていません。
しかし折衷案で甘露寺が発した「で、でも…柱付きの隠には、どの道私の場合は隠し通せないわ。優秀な隠たちなら話を広めないと思うのだけど…ど、どうかしら?」という意見がでたので、柱付きの隠という、隠の中でもベテラン枠には柱自ら、口止め込みで話しています。
ちなみに真っ先に賛成したのは伊黒です。
甘露寺の発言でなければ「隠程度にもバレるだと…それでよく柱が務まるな」とぐちぐち言っていました。