カイマクルの鬼   作:セッル@ポケモン熱発生中!

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炭治郎から見たウィスティリア神父の印象を描きました。
鬼殺隊をめちゃくちゃ侮辱するし、炭治郎にも冷淡になりますので、無理そうな人は読まないで下さい。

メニューから評価付与もできればよろしくお願いします。


見えない境界線

「たんじろー!炭治郎ぅぅー!よ、良かったー!」

「目ぇ覚めるの遅かったじゃねえか!俺様はもう任務に行っているぜ!」

 

「ありがとう2人とも、それとアオイさん。」

 

吉原の件から俺は意識を失って、気づいたら2ヶ月も経っていた。

そこから訓練をして、体力回復に力を入れた。

 

「なあ炭治郎、体力がなかなか戻らないからって、無理はするなよ。」

「あ、ああ分かっているよ。」

 

善逸は俺の焦りを体力が回復しないことだと誤解して、俺に話しかける回数が増えた。

 

 

 

 

「なあ、炭治郎?何か悩みでもあるのか?お前の音、かなり不規則だぞ。」

「そ、そうか…?」

 

蝶屋敷にいれば当然の話だが、俺は1人になれる時間がなくなる。

 

レディさん、いやローゼマリーさんだったっけ、彼女の事は2人には話していない。そもそも彼女は俺たちが滅するべき鬼ではない上、【太陽を克服した鬼】。誰かに話して情報が漏れたら、いくら2人が異人とはいえ、命の保証はない。

俺だって鬼殺隊に一応認められたとはいえ、禰豆子の存在を知った隊士の中には、俺たち兄弟に不満と憎しみの匂いを纏う人が多いんだ。

話せるわけがない。

俺はお館様のように声で人を操ることは出来ないのだから。

 

「だけど…このままだと駄目だよなぁ。」

 

刀がない以上任務はないかわり、これまでのように別行動する機会がない。だけど急に縁もゆかりもない【横浜】に行きたいと言えば、怪しまれる。珠世さんに頼むか?いや、確かローズマリーさんは珠世さんから嫌がらせをされたとか何とかで、珠世さんを嫌っていたと聞いたな。やっぱり俺が直接行かないと駄目か。

 

「元気そうで何よりです、竈門炭治郎。」

「しのぶさん!お久しぶりです、あの、相談があるのですが。」

「相談…ですか?わかりました、別室に案内します。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「それで竈門君、相談とは?」

 

この人は聡い、下手な嘘をついてもバレてしまう。ここは正直に言おう。

 

「はい、実は俺の知り合いが仕事で横浜にいるのです。遊郭潜入前に一度会っていて、帰り際に俺は「次は1ヶ月以内には会いに来ます」と言いました。なのに気づけば2ヶ月以上過ぎてしまい、先方は俺が鬼殺隊所属だと知りませんから、さぞかし心配させているでしょう。なので体力回復も兼ねて、横浜までの外泊許可を頂きたいのですが。」

 

間違ってはいない、彼は本当の意味で【鬼殺】を知らないし、これからも知ることはないだろう。

 

「なるほど…わかりました、痛み止めを出しましょう。」

 

「あ、ありがとうございます!」

 

良かった、これでようやくウィスティリアさんの所に行ける。

 

カア

「これを宇髄さんに」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

▽▽▽

休暇申請と外泊申請が通ったので、俺は2ヶ月ぶりに横浜にやってきた。そういえばウィスティリアさんと会うのはいつもは夜間だったな、どこにいるのだろうか?

 

「コンニチハ、ホンダさん」

 

えっ?この匂いは、

 

「異人の旦那か、本の売れ行きか?まあぼちぼちだな、とにかく客層が限定的過ぎる。このままだと売れなくなりそうだな。」

 

「ソウデスカ…コチラもジツはオイテ欲しいデス。」

 

「へー、絵本か。ちいと高めだが、富裕層に受ける形状だな。中身見てもいいか?」

 

「モチロンデス」

 

「ふーん…【灰かぶり姫】と【白雪姫】か。女児受けを狙ったようだがな、内容が残酷じゃないか?何だこの【腹違いの姉妹が失明する】とか【継母が主人公の結婚式で焼けた鉄靴で死ぬまで踊り続ける】とか、おたくらの国ではそれでいいのかも知れねぇが、この国でこんな女の下剋上は受けねぇぞ。」

 

そんな内容を本屋に置くつもりだったのか!?

 

「ソウデスカ…なら、コチラはドウデスカ?」

 

「今度は絵本じゃなくて、絵画か。へー、こんな綺麗な建物があるんだな、それにその設計図?間取りか、これは建築家に受けるな、旦那こういう内容の本なら売れるぜ。次からはこの手の物を持ってこいよ。」

 

「ヨカッタ、ではオネガイします。」

 

「まずは試しで30部ずつ入荷するよ、印刷業の奴らに伝言を頼む」

 

「モチロンデス、ではまた」

 

カラン

 

あっ、今なら話しかけても良さそう。

 

「ウィスティリアさん!」

 

「タンジロー久しぶり!」

 

一瞬、考えてから陽気な声色で答えた。

 

「あの、教会の懺悔室、空いてますか?」

 

夜間に会う場合はウィスティリアさんの自室に忍び込んで話し合っていたが、昼間だと無理だ。事前に昼間に鬼殺隊関連の話をする際は、【教会の懺悔室】を使う事を決めていた。

 

「ワカリマシタ、確かめてキマース!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

▽▽▽

「それで…何の御用でしょうか、炭治郎君。」

 

懺悔室に入った途端、外と違い淡々と話すこの人に最初は驚いたものだが、今ではすっかり慣れてしまった。

外では【陽気で片言な外国人】の姿を装っているのは本人曰く、【こちらの姿の方が日本人は警戒しないから】だそうだし、俺も外では鬼殺隊士である事を隠しているんだ。人の事を言える立場ではない。

 

「俺は【上弦の陸】を相手に生き残りました。」

 

約束を反故にする相手ではないと分かっている、だが証拠はない。そこを突つかれたお終いだ。でも、

 

「吉原の大規模破壊ですね、知っていますよ、約束通り【ローズマリーの血】を提供します。はい、どうぞ。」

 

あっさりと信じてもらえた上、その場で血を提供されてしまった。

 

「あ、ありがとうございます!」

 

「それはそうと…1つだけ聞きたいことがあります。」

 

「何でしょうか?」

 

この人は懺悔室に入る前に、香水を振りかけていた。だから匂いから感情を読み取りづらくなっている。

 

「上弦の陸…を倒して、何を感じましたか?」

 

「え…?」

上弦の陸…を倒してどう思ったか?

 

「君は随分と……変わりましたね。」

 

強い香水の匂いで感情が読み取れない、でも…どういう事なんだ?

 

「詳細な話をすることは禁じられていますので、大まかに説明しますが、昔あった懺悔者は戦場帰りの軍人でした。軍人です、平時はともかく戦争では敵を殺すのが仕事です。ですが、仕事と割り切れない人が多いのですよ。当然ですよね、だって相手は()()()()()()()()()()()なのだから。」

 

「普通の人間…」

あれ…?そういえば俺はあの兄弟を殺した後、直ぐに昏睡状態に陥ったから考える余裕はなかったけど、あの兄弟の最後に何を思った?そうだ、《仲直りできたのか》を考えていたんだった。

 

ゾワッ

 

「つ…ッ」

 

なぜウィスティリアさんに聞かれる前まで、あの兄弟の存在を忘れていたんだ。あったかも知れない自分達の姿を忘れているなんて…。

 

「やはり…忘れていましたね。」

 

「なぜ…分かったのですか?」

 

ウィスティリアさんは俺のような特別な感覚を持つ人ではない。なのに、なぜ、

 

「最初は鎌をかけました。初めて会ったあの日の君は《オニを殺すこと》に抵抗感があったのに、今の君は結果だけを伝えて、その過程を省きました。罪悪感を持った人間は、こちらが質問せずとも勝手に詳細を話し出します。なのに…話さなかった。」

 

そういえば、初期の俺はあの教会でよく禰豆子の状態と鬼の現状を話していたな。確かに一度も鬼殺の件を、ウィスティリアさんから質問された事はなかった。

 

「今の君は…感覚が鈍っている。キサツタイではその感覚の方が楽でしょう。ですが、今の姿を知ったら…幼子の記憶しか持たないネズコさんは、あなたを「兄」と認識するのでしょうか?」

 

俺は、悪い方に変わっていたのか…?

戦いではあれほど荒れた心だったのに、終われば直ぐに鬼の事を忘れる。今の俺は確かにウィスティリアさんの言う通り、鬼殺隊士としては有利だろう。だって止まらなくてすむのだから。

でも、でも、それは…その姿は【煉獄さんが認めた俺の姿】なのか?

 

「ふう…言い過ぎました。炭治郎君、君がどう変わろうとも私たちには関係のない話です。目的の物を手に入れたのでしょう、もう…お帰りを」

 

そこで昼間の話は終了した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

▽▽▽

はあ…どうしようか?

目的の物、【ローズマリーさんの血】を手に入れることができた。珠世さんに送れたから【人間化薬】の研究は進むはずだ。

でも、何だろうな、この消失感は?

ウィスティリアさんのどこか冷めた口調、前あった時はそうでもなかったのに。

 

 

「よう!お前も来ていたのか、竈門!」

「う、宇髄さん!」

 

なぜ柱の宇髄さんがこんな所に?

 

「宇髄さん、なぜここに?」

「おう!胡蝶から頼まれた物を取りにきたんだよ。」

 

そう言って手元にある箱には、ガラスで作られた板と、顕微鏡という医療道具を説明された。

 

「しけた顔してんなぁ!ちょうど会ったし、ここは祭りを司る神の俺様が奢ってやるよ!こい!」

「は、はい!」

 

そうして案内されたのは、観光者向けの通りにある【かふぇ】の看板が立てられた飲食店だった。

 

「♪×|+*×=*×$=?」

 

異人さんもいて、言葉は分からないけど楽しそうなのは分かった。

 

「この店は元々通訳者が開いた店だからな、外国語に堪能な店員も多い。まあ高い店ではないから、せいぜい楽しめ。」

「は、はい!」

 

そこで食べた【シチウ】(ビーフシチュー)という料理とパンが宇髄さんの言う通り美味しかった。

 

「ご馳走様でした。」

「ごちそうさん、んで?お前これから予定はあるか?」

「予定……」

 

ウィスティリアさんが気になる。

それにレディさん、いやローズマリーさんのことも。

でも、今のウィスティリアさんが俺の訪問を歓迎してくれるはずがない。となれば、

 

「はい、機能回復も兼ねて今日は人混みの中を歩きます。それに善逸や伊之助、蝶屋敷の子たちにもお土産を選ぶので宇髄さんと一緒に行動できません」

 

「ああ、今日のお前は休暇だと胡蝶から聞いている。安心しろ、俺の都合にお前を巻き込まねえよ。じゃあな!」

 

「さようなら!」

 

宇髄さんの姿が視界からいなくなった。

よし、俺も動くか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

▽▽▽

「着いた…」

ここで会う時はいつも夜だった。人が出歩かない時間帯だったから気付かなかったけど、この地区、

どこを見ても異人だらけだ。

 

『……!………』

『……!………………』

 

言葉が分からない。異人が多く住む地区だけに俺の容姿はかなり目立っていた。建物もより異国風で、窓も多くて蝶屋敷と構造が似ている。

でも……、

 

『迷子かしら?』

『随分と貧相な服装だこと。』

 

あの夫人方が何を言っているかは分からない。でも、匂いで分かったのは【未知】と【不快】。俺の会った異人はウィスティリアさんとレディさん、どちらも子供の俺と禰豆子には友好的だったけど、この地区の異人は違う。

俺を見る人のほとんどは、「何でこんな子どもが?」という顔をしていた。まるでここだと、俺が異人のようだ。ウィスティリアさんも外で演技をするのは、こう言うことだったのかな?

少し離れよう…。俺は異人たちから距離をとり屋根の上に移動した。

 

『こんにちは』

『あら?教会のローゼじゃない、お買い物?』

『はい、ここから1番近い花屋はどこでしょうか?百合を買いたいのです。』

『まあ!10歳とは思えないほど働き者ね、なら観光街の方がいいかもしれないわ、信者もよる道だから花屋が多いのよ。』

『そうなのですか、ありがとうございます、行ってみます。』

 

ローゼ?ローズマリーの略称か?それにしても凄く馴染んでいる。

というか、この姿の方が本来の姿なんだな、陽の光を浴び俺に不快な匂いをつけていた夫人の1人は、ローズマリーさんの前だと、とても楽しそうな匂いがする。人1人違うだけで、ここまで変わるものなのか。

意図していなかったけど、ローズマリーさんの姿を見れた。

本当にウィスティリアさんの言う通り、《日本よりも過ごしやすい場所》だったんだな。

おっといけない、ローズマリーさんを追いかけないと。

 

 

『ローズマリー、昨日のシスターさんにこれを渡してちょうだい』

『はい、お渡しします。』

 

『ローズマリー、お花を育てたいそうね、薔薇の花はどうかしら?』

『わあ!ありがとうございます。教会に植えさせてもらいます』

 

異人の集団に混ざっても違和感がない。日本だと目立つ髪色だけど、異人は善逸みたいな金髪、俺よりも濃い赤毛、明るい茶髪、他にも灰色みたいな髪色もいるし緑の髪もそこそこ目立つけど、ここだと個性の一言で収まる。

 

『こんにちは、百合の花をくださいな』

「ローズマリーか、すまんな日本語で頼む」

「コレはシツレーしました。百合の花をくださいな。」

「ああ、いつものか。何本だ?」

「2つです。」

「はいよ、お金もちょうどだな。ウィリアム神父によろしく伝えといてくれ!」

「はい!」

 

花屋に着く頃には昼間が終了していた。

 

『まずい、早く帰らないと』

 

人混みの中をすいすいと進んで、完全に日が落ちる前にレディさんは教会に帰っていた。

 

『÷¥・=+×€<1・=×!』

 

とても強い親愛の匂いがする。溢れ出る幸せの香りだ。まさか遊郭の潜入で宇髄さんに教えてもらった忍びの基礎が、こんな所で役に立つなんて。

 

ガリガリ

 

「禰豆子か、ごめんな今日は疲れただろ?」

「ムー?」

「今日は潜入だからな。」

「むー!」

 

ウィスティリアさんに聞きたいことがある。

俺は【上弦の陸】としか言っていなかったのに、彼は吉原に居たと知っていた。吉原の大規模破壊は新聞にも載っていたけど、それを何故【上弦の陸との戦闘による破壊】だと知っていたのか。お館様の計らいで吉原の破壊は【地盤沈下】だと捏造されていたのに。

それに宇髄さんの事前情報も今思えばおかしなものだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ガチャ

 

来た…!

 

『神よ…どうかこの小さな祈りを届けてください。』

 

ウィスティリアさんは俺と会う時と違って、今日は白い服を着ていた。

そして、十字架の前に白い百合を2本置いて跪いた。

そして…、

 

『天の父よ、この世からあなたのもとに召された妓夫太郎と梅さんを心に留めてください。キリストの復活によって、わたしたちには復活の希望と永遠の命が約束されました。わたしたちは、妓夫太郎と梅さんの死を悼みながらも、再会の喜びに慰められます。キリストよ、あなたの言葉に従っていない人とはいえ、いまはこの世を去ったすべての人を、あなたの国に受け入れてください。みもとに召された人々に永遠の安らぎを与え、地獄の刑期を終えた後は、あなたの光の中で憩わせてください。アーメン。』

 

言葉は分からないけど、何をやっているのかは分かった。

これは……葬式だ。

百合の花が2本…。死者は2人?なのにコソコソとやる必要がある人?

まさか…!

 

「妓夫太郎さんと梅さん…どうか来世では、真っ当な両親と幸せな人生を送って」

 

ガタン

 

「誰だ!」

 

「お、俺です!竈門炭治郎です!それよりも何で【上弦の陸】の名前を知って……い」

 

この人の真顔は初めて見た。

 

「忍び込んで盗み聞きとは、随分と【キサツタイ】に染まっていますね。私が誰のために祈ろうが君たちには関係ない話です。お引き取りを、それとも…泥棒として引き渡そうか?」

 

この人は本気だ。本気で警察に引き渡す気がある。

【怒り】【不愉快】【疑惑】祈りを捧げていた時の穏やかで澄み切った匂いが消えている。

でも…俺も引き下がる訳にはいかない!

 

「いいえ、下がりません!確かにウィスティリアさんの祈りを邪魔したのには謝罪します。でも名前を知っている以上、こちら側にも話してください。

あなたは何を隠しているのですか!」

 

一瞬、目を丸くした後、

 

「君は……Uncourteous…分かりました。こちらの負けです。話しますよ、不思議なストーリーを。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

▽▽▽

「知って…いた。」

 

椅子と机に腰をかけて俺はお茶を、ウィスティリアさんはコーヒーを片手に話してくれた内容は、信じられない話だった。

 

「ええ、煉獄キョージュロが、上弦の参に殺される事も、吉原に何百年と蔓延る鬼兄弟の事も…ね。」

 

「えっ…じゃ、じゃあ宇髄さんに上弦の陸の血気術を教えたのって」

 

「は?それは知りませんよ。もしかしたらローズマリーのような【予知能力】を持つ鬼が他にもいるのかも知れませんね。」

 

あっさりと言われてしまったが、お館様ほど頭が良くなくても分かる。ウィスティリアさんの持つ情報の価値を。

 

「あ、あの!ローズマリーさんの血気術は【予知能力】。それを知ってしまえば、いくらお館様でもローズマリーさんを鬼舞辻無惨を誘き寄せる餌にさせる心配は無くなるのでは!」

 

そうだ。ウィスティリアさんが纏めた未来の情報と、上弦の血気術をお館様に渡せば、いくらレディさんが【藤の毒と太陽を克服した鬼】とはいえ、捨て駒にされる心配は無くなると思うし、禰豆子のような荒々しい裁判にならないのでは。

正直にこの時の事を思えば、俺は色良い返事が貰えると確信していた。

だけど、

 

「何故、私がキサツタイに協力する事が前提なのですか?」

「えっ?」

 

続けて、

 

「なぜ私がヨシワラで、あれほどの被害を出した妓夫太郎と梅を弔うことができると思いますか?」

 

「それは…ウィスティリアさんが聖職者だからでは?」

祈るのが仕事だから。

 

「全くもって違いますよ、理由は…所詮、他人事だからですよ。」

 

「他人事…」

 

鬼をわざわざ国籍まで与えて受け入れた人が、鬼のことを他人事?

 

「ヨシワラでどれほどの被害を出そうが、何百人の人を騙そうが、殺そうが、それこそ食おうが、それって、日本人の問題ですよね。

私たち【異人】が被害を被る話ではありませんよね。

だから祈れる、許せる、この国では何と言うのでしたっけ?ああ、そうだ【対岸の火事】というものですよ。」

 

「対岸の火事…」

 

話の内容と異なり、にっこりと上品に微笑むウィスティリアさんが、これまでのウィスティリアさんと別人のようだ。

 

「…協力…しないの…ですか?」

 

「どこをどう見たら私が協力すると思うのですか?キサツタイは政府非公認の武装集団でしょう。そして私は民間人な上に異人、なぜ日本人の問題に異人の私を巻き込もうとするのですか?

それに私もローズマリーも、ここにいる異人全てに言えますけど、日本政府から見れば私たちは【お客様】ですよ、あなたは招待客に台所でお茶を出させるのですか?」

 

「あっ……」

 

改めて聞くと、確かに非常識な事だ。でも、

 

「ローズマリーさんが死んじゃうのに…?」

 

「ローズマリーを人質扱いか…呆れた。あなたは勘違いしていますね、私たち宣教師が本当にオニとキサツタイの実態を知らないとでも思っているのですか?

この国は長らくキリスト教が禁じられていたので、こちら側も情報は古いですがオニとキサツタイに関する記述はありますよ。

何百年経ってもオニの頭領を見つけられない無能組織と。

真偽はともかく、宣教師は【日本には本物のデーモンがいるらしい】程度には情報が回っているし、【オニは藤の香りが嫌い】という弱点も知られている。ほとんどの人はお呪い感覚で香水をつけているけど、それとなくは知られているのですよ。

ローズマリーが人間ではないと感づく人もいたのに、何も言わないのは、彼女は【藤の香り】を好むからですよ。

 

 

さて、ではもう一度聞きます。

 

どこからともなく法律で禁じられたカタナを片手に【オニ】と言って【人の言葉を話す限りなく人に近い生き物】を相手に問答無用で首を落としにかかる子どもが、自らが所属する組織に異人を勧誘しました。さて、異国から来たお客様は相手をするでしょうか?」

 

「………」

 

分かりきった答えだ。客観的に見てみれば鬼殺隊は【人殺しを楽しむ集団】にしか見えない。

 

「この会話もどうせ漏れるから言うけど『私とローズマリーを巻き込む気なら、大使館を通せ、出来なければ自分達で何とかしろ。日本人の問題に巻き込むな』」

 

 

 

コーヒーを飲む優雅な姿は、手を伸ばせば直ぐに掴める距離なのに、遠くに感じる。

 

ズズ

 

渡された緑茶はすっかり冷えていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「面白れぇ繋がりだな。」

 

屋根裏部屋から聞いていた人には誰も気づかなかった。

 




竈門炭治郎
ウィスティリアさんの事を何も知らなかったと自覚した。
【異人】の本当の意味を突きつけられた。
鬼殺隊を客観的に見れば、【異常者の集まり】にしか見えないし、政府非公認の武装集団の時点で、ヤクザ扱いされるのも仕方なしと判断した。あの時は未来知識の衝撃が強すぎて引き下がった。
そして、自分がウィスティリアさんの地雷を踏んだのに気づいていない。


ウィリアム・ウィスティリア神父
カトリック イエズス会所属の司祭
竈門炭治郎がローズマリーの命を無意識とは言え、人質扱いしたのに心底呆れた。
本物のキサツタイシになったのだと、この会談で理解した。これからも会うけど、手心を加えることはなくなる。

『今までは子どもだから妹を人に戻したい兄だから、優しくしたけど、大人なら…必要ないよね。あの子を人質にした事…許さないからね。』

鬼殺隊が政府非公認である事から、自分達には手出しできない鬼殺隊を煽った。予め、ローズマリーからは『生きる気力がない』事を知らされていたので、ローズマリー関連を持ち込まれても心は動かなかった。

ネズコは何も知らずに哀れには思うけど、優先順位は、ローズマリー、教会関係者、信者さん、その他、自分です。
優先順位で自分が1番下になるのは、さすが聖職者。


ローズマリー・ベネット(主人公)
教会の子どもとして、手伝いに奔走している。
働き者で、珍しい髪色と体質から通称【異人街】に住む人々からの評判は良い。よくシスターやウィリアム司祭と仲良く歩いている姿が目撃されている。

宇髄天元
胡蝶からの伝言で、横浜にて竈門炭治郎を見張っていた。
胡蝶の道具もついでに持ち帰るので、炭治郎の嘘センサーに引っ掛からなかった。
異人との繋がりと、もう1人の異人が鬼特有の牙と瞳はなかったけど、気配が思いっきり【鬼】で、炭治郎はそれに反応しなかったので、お館様が柱集会議で嘘をついていたと察した。嘘の理由が分かるから不信感を抱くことはなかった。















大正コソコソ噂話
神父さんが鬼殺隊や鬼の実態を知れたのは、過去の戦国時代、【布教の邪魔になる日本版デーモンを祓いたい宣教師】と鬼殺隊が一時的に手を組んだ時の日記が残っていたからです。
宣教師組からは《作り話派》と《真実を混ぜ込んだ話派》で分かれていますが、藤の香りが苦手と書いてあるので、お呪い感覚で香水をつけている人が多いとか。

ちなみに、日記の著者の宣教師はあくまでも、【鬼の源】を祓いたいのであって、【オニ】だからと、【オニになったヒト】を殺す鬼殺隊とは、鬼の認識に差が出てしまい、鬼殺隊とは犬猿の仲になったとか。彼は【鬼の源】もとい、【鬼の細胞】だけを取り除く研究をしていたが、禁教令の発布により帰国を余儀なくされました。
実は1人だけ、人を喰べていない鬼を人に戻すことに成功しています。
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