「」→日本語
『』→英語
私はウィリアム・ヤコブ・ウィスティリア。
イエズス会所属の司祭であり、現在は日本で布教活動をしている数多いる教会関係者の1人です。
少し前に訪れた炭治郎君には、ひどい言葉をかけてしまったけど、後悔はしていない。分かっている…彼自身は悪くないのだと…。だけど、初めて会ったあの時の幼げな表情と、今のキサツタイシとしての彼の顔のギャップで、きつく当たってしまった。
『我ながら大人気ないことを』
400年前のあの日記の著者、かつての同胞に書かれた【キサツタイ】の評価。
【悪いのは鬼の源であって、鬼となった人ではないのに、それを理解してもらえない。】
【産屋敷が抱え込む戦闘員は、国に仕えることができない溢れ者が多く、武術には精通しているが何かしらの飢えを持った者が多い】
【鬼の頭領を見つけた人を、ただ兄が鬼となったからとこれまでの功績を無視し、先が短いアザモノは関係のない弟を責め立てる、あれほどの人材を殺しにかかるとは日本人の思考を理解できない】
初期はまだ、理解が得られないが被害を思えば否定できない。とあるが、日記の中期からはアザ者とか呼ばれる、寿命を削る代償で途方もない力を得た人々への批判が目立ち始めている。
【アザ者は焦っている。そもそもおかしな話だと誰も気づかない時点でこの組織はお終いかもしれない。】
【私からすればオニと呼ばれる人外と真っ当に戦い、勝てる時点でアザ者を人間とは思えなかった。実は既に太陽を克服したオニとなっているのでは?と思っていた私としては、アザの代償が《寿命の前借り》程度だったことの方が驚きだ。アザ者のアザはまるでペストのようであり、模様の異なりの理由は判明しなかったが、何かしらの法則はあるはずだ。】
【戦闘員に比べ、医師や補助員の比率が低すぎる。】
この辺りは、炭治郎君の話では改善されているようだが、
【鬼が元々人であるならば、鬼の頭領もまた
【悪魔とは違う、日本の鬼はまだ救い方がある。人に戻せればそちらの方がコストがかからない。なのになぜ方法を模索しないのだ】
この辺りは、炭治郎君がしようとしている事と全く同じ。炭治郎君も柱とか言われる上級幹部からは、「馬鹿な事」と切り捨てられたそうだ。キサツタイの根本は400年前から変わっていないと見れる。
『はぁー、せめて人の心持ちが変わっていれば、協力もやぶさかでもないのに。』
組織の構造を変えたり、人事の大幅変更は実は思っているほど難しいことではない。それよりも難しい事は、人の心を変えることだ。
少なくとも、《鬼は強さや経歴に問わず殺せ》の考えが主流のうちは、情報提供した所で、良いように使われてローズマリーの死期を早めるだけだ。
あの子は自分の死を受け入れ、それに従おうとしている。
初めて会ったあの日が懐かしい。
▽▽▽
「その服は、カソックですね。」
布教が思うように進まず、日本を離れようか悩んでいた所に現れた奇妙で、不思議な雰囲気を持った人。
「私は人間ではありません。」
泥水で汚れた服に、手作りの髪飾りをつけた少女は自らを傷つけて証明した。
「なぜ、【Hallelujah】を英語読みの【ハレルヤ】ではなく、ラテン語読みの【アレルヤ】と読んだのですか?それに最初にあった君も【ゴシック様式】と【カトリック】を知っていましたね、どこで習ったのですか?」
「信じられないでしょうが、私はこの体に産まれる前の記憶があります。」
それからだ。あの子が知識として知っているこの世界を話し出したのは。
「日本版のデーモンもとい、鬼とは人工的に造られた存在です。」
藤が咲き乱れる中庭で言った言葉だった。
「つまり…元は人?」
「ええ、そうです。鬼となる方法は基本的に一つ、鬼舞辻無惨と言う鬼の始祖の血を体内に入れること。ご安心を、私の血を飲んだ所で鬼になる事はありません。」
そうしてオニの特徴と弱点、彼女がいかにしてオニのトップからの呪縛から逃れたのかを説明され、
「鬼の中でも特に強い鬼は特別な呼ばれ方をされます。上弦と呼ばれ、1から6までいます。そして…壱、弍、参、陸は人間が原因で鬼に成らざるを得なかった人達です。」
「人が原因?」
「壱は弟への嫉妬と自らの責任感の強さから鬼となり、弐は周囲の大人が彼を子どもではなく、神の子として扱い、参は、大切な師匠とその娘であり婚約者を人の妬みによって、毒殺されました。陸は最下層の遊女の子として生まれ落ち、お腹の中にいるうちから何度も堕胎させられ、それでも産まれてくれば、何度も母親に殺されかけ、それを兄弟で乗り切って生きていたのに、これからと言う時、妹は人の手により火炙りにされ、それを助ける為に2人揃って鬼となりました。」
オニと呼ばれる者の過去を聞き、それを纏めた物をあの子には内緒にして保存した。あの子が語るオニの話では、オニとなると心と記憶が曖昧にされてしまうというような内容が多かったからだ。
そして、私たちにとって運命の人、炭治郎君が来た日、あの子は、帰り際に教会で言った言葉。
『私は年末には死にます。だから私は…ヴィランになります!』
『ヴィラン?レディ、一体?』
急に私の耳元に近づいた彼女は言った。
『どこでカラスが見張っているか分からないから、小声でいいますよ。
私は不完全とはいえ【太陽を克服した鬼】です。
どれほどの人が私を殺したいと願えども、私の存在は鬼舞辻無惨を誘き寄せる餌として大きい。なるべく無傷で最後まで保ちたいと考えます。
蛇…キリスト教における蛇は、【原罪の蛇】だけでなく、【不死や治癒、罪からの癒しの象徴】…。
でも、あの一族は日本人。蛇、スネークを日本のイメージにすると…、【狡猾】、【ずる賢い】【しつこい】【執念深い】
『いずれは今日は会えなかった、彼の妹が本当の意味で太陽を克服します。そうなれば、
『レディ、何故わざわざ敵からヘイトを集めようと?』
レディはヴィランと言った、悪役だ。Evil、悪ではなく、あくまでも悪
レディは教会の真ん中に立ち、芝居がかったジェスチャーをしながら、
『ヒーローが主役の物語において絶対に外せない要素は、ヒーロー、ヒロイン、そしてヒーローを支える仲間たち。
だけど、現時点では肝心のヒーローである竈門炭治郎は、本当の意味で仲間に認められていない。
そこで問題を解決するのに登場するのが共通の敵です。
人は単純です。どんなに敵対していようが、共通の敵がいれば、一時的にでも仲間にすることができる。
この世界のヒロインであり、物語を円滑に進めるのに大切な存在は、炭治郎の妹。
鬼である以上、鬼殺隊は彼女にとっては敵地と同じ、ならば彼女と同じ《人を喰わない鬼》でありながら、《傲慢な性格の鬼》がいれば、周囲は「鬼だけど竈門妹は素直だよな、だけどあの鬼は嫌いだ」と妹はさらに特別視され、私はヘイトを集める事で、鬼殺隊士共通の敵となり、全体の士気は上がる。
だから私は、《ある意味、鬼の始祖より厄介な嫌われ者》になります。』
いや、傲慢とか無理だろ。と言おうとした時、レディは、
『だから、もう…私を気にする必要はないですよ。どうせ、近い未来には自分のことなんて、全てを忘れるのだから。』
急にしおらしく、何かを悟った顔で微笑んでいた。そして顔色を変え、
『どの道、鬼は日本人を襲いますから、異人のあなたを襲う危険性はありません。それよりも厄介なのは産屋敷です。』
産屋敷が時期は知らずとも、少なくとも100年以上は行なっている《最終選別》という名の《役立たずを殺すシステム》それを聞いてからは、私も警戒していたが、あの子は今回の話でさらに警戒を高めた。
『なぜ、異人で人間の神父さんから《鬼の音》がするのかはわかりません。しかし、産屋敷は鬼舞辻無惨を殺す為なら何でもします。ただの異人なら、わざわざ敵を増やす真似をするのは避けますが、人間でありながら《鬼特有の音》をさせる人を放置するとは思えません。』
あの子はそう言って、外に出た。そして、
『ありがとう』
ビュオッ
『うわっ!』
一瞬、瞳を閉じた後には、彼女はいなくなっていた。
『オニ…の身体能力か。』
聞いてはいたけど、なんと凄まじい。
▽▽▽
そして、数週間の時が過ぎ、彼女が来ないことを心配する私は、1つの答えに導かれていた。
『ありがとう』
『ありがとう…1人で死ぬのは…いやなんだ…』
そうか…、初めて会った相手なのに、初対面の時から妙な既視感があったのは、あの子は初めて会った日から既に【危篤】だったのか。
司祭として、信者の最期に行う【臨終の祈り】。
この国に来る前に何件か行ってきたけど、年齢も性別もバラバラだったが共通していたのは、
瞳が澄んでいたこと、
そして…とてもキラキラとした目で、今を生きている私たちを慈しむことだった。
あぁなるほど…、私が他人のあの子に、恋情でもなく、かといって司祭という立場故の義務感からでもなく、いや…、初対面の時は義務感が強かったが、途中からはあの子が人に害をもたらす存在ではないと確信できていた。その時から義務感もなくなっていた。なのにあの子の来る日を待ち望んでいた本当の理由は、
『死にゆく人の心の美しさと、純粋な好意が心地よかったのか。』
あなたは「私によって救われた」と言ったけど、実際は私の方が救われていました。だから、
『私は…本当は鬼ではないのでしょうか?』
『あなたは少し特殊な人の子ですよ、でなければ、ここに居ることなど出来ないでしょう?』
私も嘘を貫きましょう。
あなたが望む、最期の日まで。
ウィリアム・ヤコブ・ウィスティリア
表向きは主人公を救った神父だが、実際に救われていたのは彼でした。
司祭として信者の最期に向き合う内に、【死にゆく人の美しさ】という日本人的感覚が芽生えてしまいました。もちろん彼はお国にいた時は、そんな感性はなかったです。だって【復活の日まで眠るだけ】ですからね。
だけど、芽生えてしまった感性は日本に馴染んだ証です。
ローズマリーと初めて会った日は、司祭としての義務感からの交流でしたが、だんだんと異国故の偏見や、布教が進まないことへの不安や苛立ちをローズマリーからの【純粋な好意】と【生きる気力がない故の静けさ】に居心地の良さを感じていました。
司祭なので、家族など持てません。しかし家族愛に近い親愛の情を持ってしまいました。
名付け親になったのも無意識に、ローズマリーを家族として見てしまった結果です。
ローズマリー・ベネット(主人公)
鬼となると記憶が曖昧になるのを、前世の記憶から知っていたので、覚えている内に【自分のこと】を語ってしまいました。
カトリック系の学校に通っていた記憶から、司祭に対しては【カウンセラー】と同じ感覚で話してしまいました。
今でこそ、ふわふわとした日常を送っていますが、元々は《鬼はどの道死ぬのは確定だから、それならばヴィランとして華を咲かせたい》と言った特攻精神が強かったです。一度死んだ事が記憶にあるせいで、【死を恐れないある意味最強の鬼】でした。
大正コソコソ噂話
400年前に書かれた日記は、宣教師による外部関係者から見た鬼殺隊の評価が主ですが、【オニに関する記述】も多く、【強い鬼ほど人の形を持ち、人の感性に近い】と書かれています。
そして何故、鬼殺隊の評価が低いのかと言うと日記の著者は、
「【アザ者】の体力回復を考えれば、何かしらを代償としている!」
「危険では?」と何度も警鐘を鳴らしていたのに、
「鬼も倒せん、部外者は黙ってろ!」と一喝され、アザ者の寿命の前借りが判明したら、アザ者たちから冷たい目で見られるようになったからです。