前話から急に閲覧数とお気に入り数が増えて、
「なんで?」と思っている作者です。理由をご存知の方、教えてください。
教会経由大使館行きです。
さて、穏やかな日常を過ごしていた私は、そんな中でも考えていた。
どうすれば、教会の人たちを守れるのか?と。
正直に言おう、私は弱い。
それに、立場もはっきりいって微妙だ。
私はれっきとした【アメリカ人】だ。だけど、それで優位な立場に立っているのは、ここが日本だからだ。私はあくまでも、「迫害から逃れて、アメリカ国籍を得た元日本人」であり、今は「教会付きの孤児」であり、「養子縁組募集中」である事実は変わらない。
「日本人からの迫害」により国を追われた私の表向きの立場を考えれば、一般的な良心ある大人ならば、間違っても「日本人」と家族になれ。という訳がないが、あくまで私は受け身であり、拒否権はほぼない。いや…教会のシスターや司祭さま達なら、『無理をするな』『拒絶しても構わない』『幸せになりなさい』と私の背中を押してくれるだろうが、それは相手が【一般人】だったらだ。
産屋敷は最終決戦の始まりの自爆で、鬼舞辻無惨からの評価は【蛇のように狡猾】だ。そんな人が、利用価値が高い、太陽を克服した鬼を利用しないとは思えない。この世界で生きてみて思ったのは、
【産屋敷】の幅広さだ。
商売相手をみても、産屋敷と一切繋がっていない人を見つけるのは、少なくとも帝都内ではいなかった。大手などは必ずといっていいほど産屋敷は筆頭株主となっていた。
さて…、では仮にそんな【権力者】から養子縁組を持ち出されたら、あくまでも【お客様】でしかないイエズス会の宣教師は断れるか?否、金銭関係ではない以上、より断れないだろう。
特に【産屋敷】は口先がうまい。
嘘だと思われないような心地よい
『どんな手を使ってでも、それだけは排除しなくては。』
ザクッ
ザクッ
私?今は【教会関係者用のカイマクル】を作り直している。当初は【鬼から避難できる場所】を作ればいいと考えていたけど、よくよく考えてみると、鬼舞辻は裕福な家庭に擬態して紛れ込み、人として生活するような存在だ。わざわざ少数派であり、非常な事態になれば警察が騒ぐような《お客様》を襲いかかるか?
否、そんな事をしてまで紛い物の鬼を捕獲しようとは思わないだろう、例え、【太陽を克服した鬼】であってもリスクが高すぎる。
だから、ぶっちゃけると外国人である私の関係者を鬼が襲いかかる心配はない。
むしろ危険なのは鬼舞辻よりも産屋敷だ。
鬼は集団行動ができない。
鬼舞辻無惨が己に対する下剋上を恐れた結果、お互いの欠点を補合える仲間を持たせないようにした同族嫌悪の呪いだ。厄介な血鬼術を持つ鬼もいるが、そう言う鬼は基本的に戦闘能力は低い。上弦大集合なんてされたら、それこそ結果は分かりきっているが、そんな目立つ行動を異人街で起こす命令をするとは思えない。
だけど、産屋敷もとい、鬼殺隊は異なる。
廃刀令が出されてそこそこの年数が経った今でも、刀を振り回す…いや、振り回す
鬼殺隊は政府非公認と、原作では善逸が言っていたが、本当のところはどうなのかは不明。
『公然の秘密というものだよ。』と言われれば納得せざるを得ないような状況だ。いくら鬼が帝都から離れたところに居住しているとはいえ、基本的には東京府の範囲内にいる。
政府の人間が、軍人が、何も知らないというのは余りにも無理のある言い分だ。
本当は政府は知っていて、あえて放置しているとなれば、それは最早【政府公認の武装組織】と言っても過言ではない。
自爆の際に屋敷ごと吹き飛ばしていたが、その爆弾もどこから入手したかは不明。
もしも…その爆発物や鉱山資源を【政府】が秘密裏に提供していたとするならば…
「どこかの鬼殺隊士の身内に、私を強制的に入れ込みかねない。」
ただでさえこの時代は、法律上は人身売買を禁じているとはいえ、吉原なんて公然と営業しているんだ。産屋敷だけでは無理でも、政府が関われば【ローズマリー・ベネット】という名の【アメリカ人】を殺すことは出来る。
《右に行って…》
《もうすぐだよ…》
《上に進んで…》
《おいで、人の子よ》
ん?地中からどうやって声が聞こえるのか?って。それは私の血鬼術の中に【植物の言葉が分かる】というのがあって、今は桜のソメイヨシノさん達にお願いして、道案内をしてもらっているの。アメリカ大使館の中に桜が植えられていて、それがソメイヨシノだったから、大使館に行かずとも協力を仰ぐことが出来た。
『さすがに…鬼とはいえ疲れてきたな。』
でも、もうすぐなんだ。もうすぐで、大使館に着く。
ガツッ
ガツッ
ボゴッ
星が見えた!着いたんだ!
バサッ
「ありがとう…ソメイヨシノさん」
《お礼はいらないわ、鬼殺隊に関しては
長い時を生きた桜木の言葉。
何が不満なのかは分からないけど、桜という植物は1000年以上に渡り日本人と深い関わりがある。人の醜さも美しさも観てきた存在故の言葉の重みがあった。
『割と建物も近い…な。』
当然か…桜は観賞用の木だ。人が見やすい位置に配置するのが当たり前。
『さて…どうやって説得しようか。』
大使館ですることは主に、
[鬼の存在を認知してもらうこと]
[鬼殺隊の存在、産屋敷の本当の姿を信じてもらうこと]だ。
でも、みんなが寝静まったこの時間帯、高官職の人が起きているとは思えない。だけど、昼間は私も教会の手伝いで大使館に1人で来ると、周りが探し始める。
ザッ
人の音?こんな時間帯に?
大丈夫、見つかっても、発砲されても。私は…【鬼】なのだから。
『驚きましたよ、ローズマリー・ベネットさん。』
この声!まさか、
『ハリス全権大使様!』
まさか、1番会いたかった人に会えるなんて!
『お久しぶりですね、しかし…君の髪色から普通の子どもではないとは知っていましたが…まさか、それが【人の子ではない】とはね。』
『どこから見ていたのですか?』
全権大使に選ばれるだけの人ではある。私が人間ではないと確信していながらも、発泡しなかった。
『君がサクラに話しかけていたところから…ですね。まさか、地下から大使館に忍び込むとは…、アナタの保護者はご存知で?』
ほぼ全て見られていたのか。だけどこの人は私と
『いいえ…、出来損ないの私の為に奔走してくれたウィリアム神父も、教会の司祭様もシスターさんたちも、何も知りません。私が自らの保身の為に忍び込んだ。ただ…それだけです。』
私の言葉に少し考え込んだ大使は、ふむと言い、
『なら、詳しい話を聞かなくてはなりませんね。出来れば正規法で来てくれた方が良いのですが、今の君の様子を見るに非常事態のようですし、特例で今回の件は見逃しましょう。どうぞ中へ』
意外な内容だった。一国の大使、ましてや全権大使が不法侵入者に独断で特例措置を与えるなんて、でも、私としては好都合だ。罠かも知れないけど、入るしかない。
『それでは…お言葉に甘えて』
▽▽▽
『まずは君の
言葉自体は優しくても、圧が命令だった。
『もちろんです、とはいえ、この姿が本当の姿としか言えませんね。基本的に擬人化しているのは、私の場合は爪とこの瞳だけです。
元々、人の形に近い姿を保つ事ができていました。それはひとえに…私を【人の子】として扱い、受け入れてくれた人の存在あってこそです。……でなければ……とっくの昔に、人の形も、人の倫理も、忘れていたでしょう…』
不思議なことに、何一つ嘘をつかなかった。
私が、人であるように、人の気持ちを忘れずに、この時間まで生き残れたのは、私を【鬼】であると知っていながら、それを受け入れ、その上
私を守ってくれた最初の人、ウィリアム・ヤコブ・ウィスティリア司祭と、私を鬼とは知らないとはいえ、異端である私を受け入れてくれた他の司祭様とシスター様たち。この人たちがいなければ、とうの昔に、人の倫理観なんて捨てていた。
だって…日本人は私を守ることはないと知っていたから。
『君は…いや、質問を変えよう。君は今、
『はい、私のようなものを日本人は【オニ】と呼びます。
人を襲い、人間の血と人肉が唯一の食糧であり、老いることがない存在。この国の人から見れば、吸血鬼よりの悪魔と言った存在です。
そして、吸血鬼寄りと言ったのは、それは、鬼は太陽を浴びると灰になって骨すら残らないからです。』
『だが、君は太陽を浴びている。』
『それは私の特異体質が原因です。先程、私は桜と話していましたよね、あれは、そう見えていたのではなく、事実、私は分かるのですよ、植物の言葉というものが。
私が鬼とされてしまった日、私は人喰いが原因の病を知っていました。だからこそ、私は人を喰う=死であると認識しました。
だから私は、普通の鬼ならば真っ先に身内を喰らうのに対し、植物の花を食べて、自分の体の構造を作り替えたのです。
人を喰わずとも生きることが出来る様に…と。
代償は、【肉を喰えなくなること】と【植物に身体が近づくこと】です。
そして、私は山に籠り、山菜を漁って、太陽光を浴びて栄養をつけていた中で出会ったのが、ウィリアム・ヤコブ・ウィスティリア司祭です。』
今思うと、もし同年代で、私に前世の記憶がなければ、彼に恋をしていただろう。前世の記憶が蘇らなかったら普通の鬼となって、今頃、こんな風に他国の大使と話すことなんてなかったんだろうな。
『政府は…この国の政府は何をしているのだ?』
こんな存在が闊歩しているのに、何も対策をしなかったのか?と言わんばかりの声色だった。
『残念ながら、公的には何もしていません。代わりに私兵ですが、貴族の産屋敷と呼ばれる一族が、鬼殺隊なるものを作り、鬼を狩っています。』
『貴族の私兵に任せるだと!!この国の人間は正気なのか!!』
信じられない!と言った顔をした大使に、「本当にそれな」と同意したくなったけど、ここは我慢我慢。
『ええ、正気とは思えません。』
漫画だった時は、特に疑問もなかった。だって政府の人間やら、軍人やらが入っていたら、なんか、漫画としての娯楽性に欠けるというか…妙にリアルになって、鬼の存在が浮いてしまうもの。
でも、この世界は間違いなくリアルだ。そんな世界で、鬼の存在を野放しにし、国民の被害を見て見ぬふりする政府関係者や、特権階級者は、ある意味、鬼よりも残酷としか思えない。
本当は裏で鬼舞辻と繋がっていると言われたら、私は信じる。
『だからこそ、私は人間時代の記憶が曖昧になっているとはいえ、この国を捨てる決断をしたのです。この国は好きですが、この国に住まう人々はどうでもいいのです。先に私を捨てたのは、この国の人々です。だから私も大日本帝国も、その国の臣民も捨てました。
あなた方にとっては、不本意でしょうが…、私のホームは【アメリカ合衆国】です。』
私を受け入れてくれた人々の為になら、この命をかけて守ると誓える。
でも、この国は違う、私を捨てた人々の勝手に巻き込まれるなんて御免だ。
『ウブヤシキと呼ばれる貴族と、キサツタイについて教えて下さい。そして、オニ…についても。』
『はい、まず、そもそも鬼が生まれた理由と産屋敷の関係は……』
巻き込まれるであろう無関係の隊士や隠には、心の中では謝るけど、どの道、戦争に巻き込まれるんだ。戦時下のゴタゴタでどうにか生き残るだろう。産屋敷?まあ、生き残ると思うよ?執念深いし。
『はあ…馬鹿な理由ですね、その呪いとやらも、どうせ近親婚が原因でしょうに。』
話の内容では当然のことながら、産屋敷家の呪いも話したが、科学の時代の人として【呪い】なんて信じず、《代々、神社の家系から嫁をもらう》の件でそう言った。
私もそう思う、産屋敷家は資産家な上に公家の家柄。
名家には名家の嫁が来るから、当然、血も濃くなる。
スペイン・ハプスブルク家も、従兄弟婚、叔父・姪婚を繰り返した結果、最終的には血の濃さは兄妹婚の子ども並みに濃くなってしまったんだ。絶対に産屋敷家の夫婦も何代か前の先祖が同じ人にたどり着くだろう。
『国の外交に関わる重要な話をしてくれてありがとう、レディ・ローズマリー。全権大使として礼を言います。
そして、最後に聞きたい。
君は…何を望む?』
悪い事を企んだ顔だなぁ、まあ、大日本帝国がどうなろうが私の知った事ではないけど。でも……私の望むこと?
『私は…どの道、長生きできません。』
そう…私は人には戻れない。だから鬼殺隊が鬼舞辻無惨を討伐すれば、私も死ぬ。でも、
『長くない命…私を受け入れて…愛してくれた教会の人たちと共に…こんな出来損ないの人モドキではありますが、教会の人たちと一緒に暮らし…人として死にたい。』
そんな自分勝手で、傲慢な私の望みを彼は、
『そうですか…』
クシャと笑って聞いてくれた。
▽▽▽
『いざという時の為に、君が掘った地下通路はこちらが秘密裏に繋げます。君は教会に戻りなさい。』
『はい、ありがとうございます。』
『国民を守るのは当然の責務です。オニなんて、とんでもない存在を野放しにし、我が国の国民を危険に晒すわけにはいかない。ここから先は、国の領域です。君は最早、我が国の国民、守られる立場です。
最も…地下通路や、君の能力は使わせてもらうがね。』
『私はアメリカ人です。アメリカの国益になるなら言われずとも喜んで使われます。』
『それは嬉しい言葉ですね、君の身分についても考えがあります。また後で』
『信じてくれてありがとうございます、この国の国民になれて良かった』
心の底から思った言葉を吐き出して、私は大使館を去った。
『なんで…君のような良い人を日本人は捨てたのでしょうね。』
そんな大使の言葉なんて、知らずに。
▽▽▽
数日後…
神父さんと次の祭祀の準備をしていた時に、
『ローズマリー!朗報よ!あなたを養子に迎えたいという手紙が届いたわ!』
『えっ!?』
『どこなのですか?シスター』
養子縁組?そしてシスターが朗報と言ったから日本人ではない。
なら、一体誰が、こんな見た目の私を?
『ハリス・ベネット夫妻、大使館の全権大使様よ!迫害から逃れて今を生きるあなたのその高潔で不屈な精神を気に入ったそうよ!手紙には『ローズマリーが教会で暮らすのを望むなら、帰国までは今の教会に預ける』ですって!これ以上にない縁組よ!』
『ハリス大使さま…』
考えって、まさかコレ?えっ…いくら私の存在を野放しに出来ないからって、偽装養女にするの?私としては構わないけど…。
よく奥さんを説得できたなぁ。
『ローズマリー?もちろん、あなたが望むなら…よ、縁組としては理想的だし、人格も良い方ですけど、あなたが嫌だと言うならことわ』
『お受けします。ハリス大使…いえ、お父様と会わせて下さい。』
『え、ええ、勿論よ。直ぐに連絡するわ。』
パタパタ
『ローズマリー、何をしたのですか?』
すかさず、神父さんが質問した。
『鬼について、私の本質を話しました。この国が安全とは言い切れませんから…』
『人体実験をされてしまう可能性も高いのですよ。』
『私はアメリカ人です。神父さんの苦労を水の泡にしてしまう行為だと理解していました、しかし…私は見て欲しかった。この国は隠し事が多すぎる。』
『私たちの為にした事だと、理解はしています。しかし、私たちもまた宣教師です。ただの民間人ではありません。死も覚悟の上で、この国に来ているのです。君は…君の幸せのためだけに生きなさい。』
こんな風に、真っ直ぐと説教をされたのはいつぶりだろうか。
でも、とっても暖かい…。この人たちのためなら、寿命が短くてもいいかな?
▽▽▽
『私が妻に教えた、君が【人の子】ではなくなった元人間だと言うことを。』
『あなたのことが怖くないと言えば嘘になります。しかし私も外交官の妻、人と共に生き、そして死にたいと願うあなたを…ベネット家の娘として迎え入れる事にしました。』
凛とした声と、真のこもった言葉と表情。なんて心が美しい人なのだろうか。
『短い間ですが、あなた方のような高潔な夫婦の娘になれる事を光栄に思います。よろしくお願いします。……お父様、お母様。』
むず痒い言葉だったけど、心がウィリアム神父と話す時と同じくらいに満たされた。
『『ようこそ、我が家へ』』
こうして私は、教会に住みながらも外交官の娘になった。
▽▽▽
一方その頃…、
「香子が…鬼に喰われた?」
「はい…鬼殺隊士の1人が言うには、これだけが残っていたそうで…」
「香子…!私が作った香子の髪飾り!」
「それと…実は私の息子が不思議な事を言っていまして」
「あまね殿、どのような事でしょうか?」
妻、もとい、香子の母は、薔薇の髪飾りを握りしめて泣き出して話にならなくなった。代わりに同伴していた夫が質問した。
「産屋敷家時期当主、産屋敷輝利哉です。実はその髪飾りと全く同じ柄の薔薇の飾りを、横浜の異人がつけていました。聞けば手作りとか…なら、全く同じ柄を持つ異人がいると言うことは、奥方様は同じ柄を2つ作り、異人に渡したのかと思ったのですが…どうにも、違うようですね。」
「どういうことですか!我が家に異人との交流はありません。」
「この髪飾りは女学校に入学する娘のために作った物です!一つしかありません!」
「しかし、柄は確かに同じだったのです。珍しい柄だったのでよく覚えています。」
「息子が申し訳ありません。しかし、親の贔屓目で見ても、我が息子は賢いです。柄を間違えるとは思えません。」
「ふーむ…、その異人の特徴は?」
「緑の髪に緑の瞳を持つ少女でした。」
「それなら、すぐに見つかりそうだな。おい、横浜に行くぞ」
「はい、あなた」
「それでは私たちはここで失礼します。息子の保護をしてくれてありがとうございました、お礼は後日。」
「お気をつけてお帰りください」
「ありがとうございました」
「あまね様、輝利哉様、お疲れ様でした。しかし、これで本当にいいのですかね?」
「良いのですよ、親の存在は
「鬼殺隊と関わりがない分、警戒もされません。いざとなれば保護すれば良いだけです。」
途中から車に乗り込んだ親子はそう言った。
ローズマリー・ベネット
教会の人々を守る為に大使館の大使に自分の存在をカミングアウトした。自分が人体実験される可能性もちゃんと考えているし、存在を脅威と捉えられて殺されることも承知の上。
それよりも、人の子として扱ってくれた教会の人々に恩返しをしたかった。
本来、鬼狩りは政府管轄ですることだと思っているし、貴族の私兵に任せるとか何時代を生きているんだ?と呆れてもいる。
彼女の祖国は日本国であって、大日本帝国ではないのと、彼女は国と国民に切り捨てられた側なので、大日本帝国も臣民もどうでもいいと考えている。
今回、諸々の情報を提供したことにより、大使の養女として迎えられた。幸い、大使の家名も【ベネット】だったので、名付けが変更される事はなかった。
ハリス・ベネット
米国大使館 全権大使
徹夜の仕事終わりに散歩していたら、見覚えのある後ろ姿が。
「どうやって入り込んだんだ?」と警戒しつつも話しかけ、雰囲気と猫の目を見て「人間ではない」と判断した。
そして武器を隠し持ったまま裏口から大使館室に入り、事情を聞いた。
顔はポーカーフェイスだったけど、実は手汗がやばかった。
その上、鬼の存在を知った。
ちなみにローズマリーの話を嘘だとは思わなかった。
実際に果物ナイフでグサッと手首を切ったら、直ぐに治癒した実例を見せつけられたから。
日本政府の無責任さに呆れたし、そんな化け物を千年以上も討伐できない上に、国と連携する努力のカケラもないキサツタイとやらにも無能と思った。(東京周辺に鬼の頭領いるよと言われたから)
ローズマリーが掘った教会から大使館へ繋がる地下通路は、秘密裏にトロッコやらを設置して道として防空用に使用する予定。
ローズマリーを危険生物と判断しているが、「人として生きたい」「人として死にたい」と願う顔は、普通の少女に見えてしまい、感情と国益に悩み、折衷案として養女として迎え入れる事にした。
いざとなれば、自らの手で殺せるように。
ハリス夫人
ハリス・ベネットの妻
外交官の妻であり、まだまだ未知の国である【大日本帝国】に派遣される夫についてくる豪胆な性格の方。
心は強いが見た目だけなら、良家の夫人。
徹夜から帰ってきた夫が、深刻な顔で「養子を迎えたい」と言い出したので、一度仮眠を取らせてから聞いた。
未知の国が、地獄のような国であったと知り、だけどデーモンになってしまった元人の子が、心はデーモンにならず、「人と共にありたい」と願い、その為に自らの命が消える覚悟で、危険な領域に進んだその精神を賞賛した。最後には「まだ少し怖いけど、直ぐに手紙を送りましょう、取られる前に」と言い、家族として迎えた。
産屋敷家
良家の奥方と息子を装って、複製し、ある程度汚した《薔薇の髪飾り》を遺品として渡した。
(複製者・ゲス眼鏡)
この2人の登場は一応ここで終わり。
橘家
主人公の実家
一人娘なので、そこそこ甘やかして育てた。女学校に入れたのだっていい縁談を見つけるための経歴作りの為。
そんな可愛い娘が死んだし、同じ髪飾りを異人が持ってるぅ?
殺したのその異人なんじゃないか?
横浜への汽車切符を片手に、【緑の髪の少女】を問い詰める気である。
大正コソコソ噂話
教会でこのまま暮らすとはいえ、主人公は大使の娘です。
外交官特権が適応されます。
ウィリアム神父はハリス大使が、彼女を娘として迎え入れた本当の理由に感づいています。
『あの子がオニとなったら、誰も止められないよ。ハリス大使はあの子のオニの力を過小評価している』
『でも、良かった。これで例の調査を進めることが出来る』