カイマクルの鬼   作:セッル@ポケモン熱発生中!

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主人公が養子に向かう前の話も含まれています。
なぜ、ウィリアム神父から鬼の音がするのか?


【鬼の音】

『よくぞ…無事で…!!』

 

歓喜に震える院長シスターに、

 

『ただいま戻りました!院長先生にウィリアム神父さま!』

 

日本人の護衛と共に、教会に戻ってきたローズマリーが挨拶とキスをした。

 

『おかえり…ローズマリー』

 

 

 

 

 

 

 

 

ローズマリーの本当の事情を知った人が、彼女を家族として迎え入れた。

それに関しては、孤児院院長の彼女が荒れたけど、養子縁組自体は上手くいき、ローズマリーは【大使の娘】になった。とはいえ、ローズマリーは教会に留まっているけど…。少しだけ変わった事といえば、

 

『また届きましたね』

『招待状…こんなに多いとは。』

 

そう、あの子は養女とはいえ、アメリカの全権大使の娘。社交界からの招待状が多く教会に届くようになった。

 

『うわぁ、また産屋敷関連の企業名です。』

 

あからさまに嫌な顔をした彼女に前々から思っていた事、

 

『それだけ、産屋敷が手広くやっていると言うことでしょう。とはいえ多いですね、ハリス大使に対策をしてもらえばいいのでは?』

 

あの子が教会に留まる表向きの理由は《病弱な娘の療養兼、体力づくりの為》だからだ。ハリス大使はローズマリーの父親、病弱な娘のために各企業に通達したところで、おかしな話ではない。

 

『いえ、私とハリス大使は表向きは親子でも、実態は利害関係ありきの関係です。このような些事に【一国の大使】を巻き込みたくありません。』

 

『とはいえ、一度ならず二度目、三度目と続くのは明らかに故意です。どの道、対策は必要ですよ。』

 

そう…最初こそ今よりも招待状が多かった時期もあった。

だが、本人が『教会に滞在する理由』を返信の中に書き込んだことにより、ほとんどの企業は引き下がった。

だが、未だに招待状を送るのは、産屋敷が筆頭株主をしている大手企業や、産屋敷が運営している小さな企業だ。稀に何も知らない個人事業主も含むが。

企業名や個人名を変えたりしているから、最初は気付かなかったが、日本政府がつけた護衛が、

 

「しつこいようでしたら、こちらから産屋敷に苦言をつけますが?」

 

と、言ったことにより判明した。

だが、ローズマリーは、産屋敷が暴走するのを防ぎたかったのか、

 

『いえ、必要はないです。』

 

と、断った。

 

 

もちろん、親子になったのだからベネット家で、ささやかな歓迎会はしてもらったようだが、あの子が人ではないと知っている彼女は、当初は反対していたな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

▽▽▽

『ハリス大使はローズが()()()()()()()と知って、養女に迎えたいと、言う事ですか?ウィリアム司祭。』

 

そう言ったのは、孤児院の院長シスターだった。

 

『はい、院長。しかしローズマリーは大使を信じていますし、何より彼女は自分で決断したのです。人間ではないと話してでも、自分の身が危険になると判断しても…。「人と共に生きたい」と。』

 

『とはいえ、相手は外交官、国益の為に動く立場です。ローズマリーを守るために動く人ではありません。』

 

この院長の名はマリア、名前通り慈悲深い性格の女性で、早々にローズマリーが人間ではないと感じていながらも、さりげなく人目につきにくい個室を用意し、警戒しながらもローズマリーを我が子のように愛している人だ。

 

『あの子もそれを承知の上で養子になりたがっているのです。ローズマリーは言っていました、

「どの道、私の命は短いです、異端な私を人として受け入れてくれた人たちのためになら、喜んで短い命を捧げます。それが…化け物に出来る唯一の恩返しなのだから。」と。』

 

本当は私も反対したかった。

でも、出来ない。シスターは知らないが、私はウブヤシキを知ってしまった。資産家な上に貴族、欠点は日本人である事だが、それ以外は表向きは完璧だ。その人達に渡すくらいなら、利用価値がある内は危害を加えないハリス大使の方がまだ安全だ。

 

『化け物…ねぇ…、わたしには…唯の子どもにしか見えないのに。』

 

『シスターのその御心が、ローズマリーを救ったのでしょうね。』

 

『あら?私よりもあなたの方が救っているわよ?人間ではないと知っていながらも、あの子の為に国籍まで準備したじゃない。正直に言いますが、人ではないと確信した時は《なんて厄介な存在を受け入れさせたの!》と思ったし、あの子がヘマをして追放される展開を望んだわ。』

 

本人はそう言っているが、実際は、

 

『でも…【人ではない】と周囲に気づかせるつもりなら、途中から部屋を大部屋にしたり、食事に肉を取り込ませようとしますよね。でも、あなたはそんな事をしなかった。』

 

そう…、あの子が【人ではない】とバラそうと思えば、いつでもできる立場にいる。

このシスターは孤児院の院長だ。

孤児のローズマリーの身辺に関して言えば、彼女の裁量次第でどうとでもできる。

 

『最初は…他の子供たちに危害を加えられないようにするためでした。しかし、視界に入る内に思ったのです。

《この子…人を守るべき対象として見ている》とね。

オニに関しては、【人を食べる人に似たナニカ】と聞きました。

でも、あの子は人を【食糧】とは見ていなかった。

なら、話は別です。

教会はもとより、助けを求める者の味方です

例え相手が…人でなくともね。』

 

『そうですか…』

ローズマリーの秘密を知った人が、この人で良かった。

 

『それはそれとして…』

微笑んだ顔をしたまま、シスターは

 

『はい?』

 

『ローズマリーの命は長くないというのは、本当ですか?』

 

『はい、それは間違いようのない事実です。』

 

そう、ローズマリーは【前世の記憶】を元に「鬼は大正時代、この代で滅びる」と言っていた。本人は「あくまでも確率が最も高い結果であって、未来予知や予言とは異なる」とは言っていたが、【確率が高い】ならまず間違いはないだろう。

 

『なぜ…他ならぬ貴方がこの養子縁組に反対しなかったのか疑問でしたが…そういう理由だったのですね』

 

シスターマリアは、私がローズマリーの名付け親であり、最初に保護を求めたことを知っている関係者の一人。

 

『司祭は基本どの信者相手であろうと公平です。

そして贔屓は絶対にしない。

だからこそ私は驚きました。

【人ではない】と知りながらも、あの子に名前を与えて、国籍を所得させるために本部に虚偽の申請書を出すなんて…。ですが、そうですか…司祭と初めて会った日から、あの子の運命は決まっていたのですね。』

 

『あの子は長生きを望んでいません。

それは初めて会った日からそうでした。【オニ】と呼ばれ政府非公認の武装組織に命を狙われ続け、また人としての倫理が邪魔をして人間を喰べることができないので【オニのテリトリー】にも入れない。あの子が自ら望んでオニになった訳ではないのは、明白でした。

そして…奇妙なことにあの子を見て、何か懐かしく思えてしまったのです。理由は分かりません。

ですが、去りゆく後ろ姿を見て、《守らねば》と思いました。』

 

院長の言う通り、私はこれまで()()()()()()()()()()()があろうとも、平等に接していたし、務めてそうあろうとした。

司祭たる者、信者の立場で対応を変えたら不誠実だからだ。

だけど、あの子に関しては違った。

初めて会ったあの日、自傷傷が癒えていく様を見た私に、「ありがとう」と言った時、誰かはわからないけど…『おんがえしを…』と聴こえた気がした。

気付いたら、あの子を呼び止めていた。

その後、交流会話で【ウブヤシキ】の裏の顔を知り、あまりにも非人道的な試験内容に憤りを感じ、あの子に名前を与えたい自分の気持ちと、人道的な理由もあった事もあり、年齢以外は本当の事を本部に送り、あの子は【ローズマリー・ベネット】の名を正式に得ることができた。

 

身元を保証できれば十分だったのに、まさか…本人が人体実験も覚悟の上で自国大使にカミングアウトをするなんて…。

だが【オニの存在】が認知された以上、権力者は彼女を放ってはおかない。

ならば、【キサツタイ】から一時的にでも守ってくれて人道的に扱ってくれる権力者の庇護下に入るのが、一番幸せな道だ。

 

『養子縁組の件は、シスターにお任せします。』

 

『はい、ちゃんと見極めますよ』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

▽▽▽

そして、養子縁組は円満にまとまりローズマリーは教会に留まりながらも、教会の家族から、お客様になった。

少しのゴタゴタがあったが、それも元々ローズマリーは養子に行く事が前提だったのもあり、早々に周囲は慣れて、日常に戻った。

 

『ウィリアム司祭、次の日曜日の礼拝は交代します。ハリス大使が「最初の保護者と食事をとりたい」と言われましたので。』

 

別の司祭から唐突に言われた内容。

 

『大使が…私を呼んだ?』

それが言葉通りの意味ではない事を、私は知っている。

 

『分かりました、次の日曜日の礼拝をお願いします』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

▽▽▽

そして、日曜日の朝、

 

『あれ…?あの車は』

『大使館の車かしら?』

 

居住区に見慣れない車が止まっていた。

 

『お待ちしておりました、ウィリアム司祭で間違いないでしょうか?大使館の者です。お乗りください。』

『これは、随分と贅沢な迎えだな』

『全権大使御息女の最初の保護者なので、当然の対応かと。それよりも早くお乗りを』

『そうですね、では、お願いしますね。』

 

ブロロ

 

 

 

 

 

 

 

 

▽▽▽

『ようこそおいでくださいました、ウィリアム司祭。』

 

着いた先はハリス夫妻邸だった。そして、本来ならメイドの1人や2人いるはずなのに今日は奥方と大使が出迎えてくれた。

 

『本日は急に呼び出してしまって悪かった。だが、()()()()()を知っている者同士、話をしたかった。仕事を休める日が今日以外だとかなり先になってしまうからな。』

 

『ハリスがごめんなさいね、ウィリアム司祭。でも私たちもあの子に関しての情報は、どんなに些細なものでも欲しいのよ。』

 

大方予想していた展開だった。

それに、ローズマリーに出来た現状唯一の味方。

人らしいところを教えて少しでも、理解してもらわねば。

 

『あの子に関して知っている情報は全て話します。今からでもよろしいですか?大使、夫人』

 

ペンとノートを持って、

 

『はい、お願いします』

 

『では、まずローズマリーが食べれる物は』

 

私が知っているローズマリーの特性は全て教えた。

 

 

 

 

『まあ…油も動物から採ったものでもダメなの?』

『植物から採られた油なら大丈夫ですよ』

『野菜しか食べれないのか?ならフルーツはどうなんだ?』

『植物系統なら大丈夫かと、小麦も普通に食べていましたし』

『それは…栄養になるのか?』

『さあ…?本人は太陽光が一番の栄養ですからね。』

『食べれるけど栄養として摂取できているかは不明か。』

 

そんな質問と応答を繰り返している中、

 

ジリリ

 

『あら?珍しいわね、司祭様、ハリス少し失礼するわ』

 

『では、次に気になるのは…』

 

『えっ…それは…!……直ぐに向かいます!!ハリス!!ローズマリーが!!!』

 

『夫人?』

『ローズマリーがどうしたんだ?』

 

電話が終わってから夫人は慌てていた。なんだろう?嫌な予感がする?

まさか…!

 

『ローズマリーが…!ローズマリーが…!日本人に殺されかけたですって!!』

 

『はっ…?仮にも私の娘だぞ…?』

『ローズマリーが!?』

 

予感が当たった…!今のローズマリーは全権大使の娘だぞ、ウブヤシキは何を企んでいるのだ?

 

『ハリス!!私は今すぐ警察署に向かうわ!公用車は残っていたわよね!借りるわ!!』

 

バタン

 

こういう時の女性の行動力はすごい。あっという間に車を走らせた。

 

『ローズマリー…は他国大使の娘だぞ…この国は何をしているのだ……!!』

 

『たい…!』

笑っ…て…いる?そういえば、話す内容が内容とはいえ、昼から夜まで会話を成立させる事は難しい。

 

『ハリス大使』

お願いだから、ただの錯覚だと確信させてくれ

 

『なんでしょうか?私はこれから大日本帝国政府に抗議をしに』

 

この目は…、

 

『仕込みましたね』

 

『さて?何のことやら?』

 

最初からこういう意味合いであの子を養子にしたと分かっていたのに、ローズマリーが哀れでならない。

 

『いえ、私も教会に戻らせて頂きます。』

 

さあ…【あの日誌】の解読をしなければ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

▽▽▽

ローズマリーは大使館で保護されていると聞いた。

ハリス大使がわざと仕込んだ事件だとしても、あの子の利用価値がある内は殺したりしない。だから、

 

『もし…これを読んでいる人が…いるとしたら』

 

随分と古い文字で書かれているが、文章はラテン語読みだったのもあり、何とか解読が出来た。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

もし、この日誌を読む人が数十年、下手すれば数百年後かもしれないが、この文章を書いている俺と、俺の人生を説明しよう。

俺は俺の生まれた時期は知らない。

俺についての出生はこの話では特段重要ではない。

ただ、農家の次男坊に生まれ、跡継ぎでもないことから早々に奉公に出された。だが、気づいたら刀を持ったお侍さんに追いかけ回され、とんでもなく臭い森の中に閉じ込められたことだった。

今、微かに残った記憶では、「人を」「食ったか」「斬ろう」この程度しか思い出せない。

そんな森の牢獄に閉じ込められて、数ヶ月、いや数年経ったかも分からないなか、何とか生き残っていた中、またお侍さんに追いかけられて、今では分かるが、とんでもなく臭い十字架に鉄で磔にされ、血が止まらないようにされた。

その作業が終わったお侍さんは、直ぐに何処かに去り、俺は茶髪に緑の目をした異人と2人っきりにされた。

その異人もまあ、臭い臭い。

不快な匂いを身につけて来るから、流石に覚えちまってよ、最初俺が言った言葉は何だっけな、そうそう思い出した、「血でも飲むのか?」だったな。んで、その言葉を聞いた異人も言葉は分からなかったが、否定していたな。そんで、結構驚いていたな。

俺が言葉を話せると分かったら、次からソイツは俺について聞いてきやがったな。

「何が欲しい」

「どこの生まれだ」

「なぜオニになったのか、分かるか?」

だったな、ここで俺が自分が【人の枠】から外れちまったからお侍さんに追いかけ回されていたんだと納得できたもんだ。

俺も日が経つ事に、何か縛られていたモノが外された感覚になってよ、だいぶその、センキョウシ?とかいう奴らの話も聞くことができた。

俺の血を際限なく流させているのも、シャケツ?とかいう治療の一環だってよ。

何ヶ月、下手したら何年かもわからねぇ時間が過ぎた。

センキョウシも毎日くるわけでもねぇから、暇な時は自分の過去を思い出そうとしていたっけ。

 

だが、覚えている暦は【享徳】だったこと、異国の暦で1453年だと言うこと。後は先に話した大雑把なところだけだった。

俺の名前は何で、どこの農家だったのか、友は、家族は、それらを思い出そうと考えても無駄だった。

 

そして、久しぶりかもしれないセンキョウシは何を思ったんだが、木の管を足に刺してドロっとした血を俺の体に入れ始めた。

 

臭い、痛い、まずい、俺が思い出せる範囲はそれだけだ。

だが、それが終わった後、センキョウシは俺が釘付けられている十字架を太陽の下に出した。

 

俺は死を覚悟した。

だが、予想に反して俺は、太陽の暖かさを思い出した。

センキョウシは太陽を浴びる俺を見て泣き出し、顔を黒い頭巾で隠した奴らは、信じられないものを見たかのような顔をしていた。

 

そうして俺は水に移る自分を見て理解した。

俺は人間に戻ったのだと。

足は治療で刺されたのを抜くことはできたが、歩くのに不自由になった。他人の血を入れた結果なのか、俺は明らかにあの異人と同じ目の色になり、髪の色が薄くなった。

思い出せないが、心ばかりか顔の彫りも深くなったかのように感じた。

それよりも重要なのは、俺は、元々話していた言葉が分からなくなった。

センキョウシと話していたから気づかなかったが、頭巾で顔を隠している奴らに話しかけたら、言葉が分からなくなった。

センキョウシの言葉は分かるのに、馴染み深い奴らの言葉を理解できないこと、理由は早々に察した。

【異人の血】を入れたことだ。

そして価値基準もその異人寄りになっちまった。

日の本の国の奴らが全員子どもに見えちまった。

このままでは、俺は結婚なんざできねぇ、それと外の世界では、俺を人に戻したセンキョウシとかいう奴らが帰国を命じられたとか何とか。

どの道俺は、この容姿もあり、このまま日の本では暮らせない。

センキョウシもそれを理解していた。

だから俺の《異国に渡りたい》という願いが叶った。

ついでに名前が思い出せない俺のために名付けまでしてくれた。

今お前が読んでいる日誌は、明で書いている。

あのセンキョウシの影響を受けたのか、俺は明よりもっと遠い場所に行きたいと思っている。とはいえ、俺はもはやこっちを拠点として、商売をしている。だから俺ではなく、俺の子供たちに旅をさせようと思う。

もしかしたら、俺の子孫がセンキョウシになったりしてな?

まあ、俺の人生録はここまでだ。

これを読んでいるお前たちが、オニのいない世界で幸せに過ごしているのを願うよ。

 

藤 正樹

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

『私の…ご先祖がオニ…だったのか。』

 

何という因果関係だ。道理でローズマリーに私が肩入れをするわけだ。

先祖は宣教師によって、オニから人に戻り子孫を残した。

そして、その子孫である私は宣教師となり、オニとなってしまったローズマリーに、あの時の宣教師のように名前を与え、居場所を与えている。

 

『道理で…懐かしく感じたわけだ』

 

初対面のローズマリーの表情に、妙な既視感を感じたが、それの正体はこれだったのか。

だが、これで一つだけ確信が持てた。

 

私は、

私は【オニの血が濃ゆく出ている】

隔世遺伝だろう。私は人の子として生まれ、ローズマリーのように太陽を嫌がった過去などない。

タンジローが言っていた【オニの音】の正体、それは、

 

『私の血が…』

半分ほどオニと同じような物だったのか。

 

疑問は解けた。ふああ…流石に遅くなってしまった。

寝よう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

《……!!》

 

ここは?

 

臭い、臭い、なんだこの匂いは?

 

《Vou trazê-lo de volta para uma criança humana, não importa o que aconteça!》

 

これは…ポルトガル語?

それに服装がかなり古めかしい。

十字架に磔にされている人は血が流れている?

あの宣教師は止めないのか?

 

《俺の血…でも…飲む…つもり…か…》

 

「俺の血を飲むつもりか」この言葉、もしや!

 

《Ao drenar o sangue, a ferocidade foi curada. Mas por que você não volta a ser uma pessoa?》

 

単語だけなら、聞き取れる。

血、抜く、人、やっぱりこの宣教師は、

 

《Se arrisque, vale a pena tentar. Se você nem sabe meu nome, por favor, tenha paciência comigo.》

 

《うぐ…!!!》

 

足に管を刺した!?まさか!

 

《うぐ…!!あっ…ガァ!!ヴヴヴー!!》

 

ガタン

ガジャン

 

量が多すぎる!少し止めてくれ!

 

スカッ

 

触れない!?いや、これは夢だ。干渉できるわけがない。

大丈夫だ、だってこの人が人に戻れたからこそ、私たちは産まれたのだから。

 

《ヴヴヴー、ヴヴヴ…ヴヴ…》

 

治った…?

 

《… Se você não fizer uma confirmação final, vá sob o sol.》

 

ズリズリ

ズー

ザッ

 

《あ…あ…た…た…か…い…》

 

こんな粗治療で人に戻ったのか、今の代まで継承されないわけだ。

 

 

 

 

ガタン

 

場面が変わった?

 

《神父さんよ、分かってるだろうが、俺は》

 

寺に見えるが、これは教会だ。

 

《日の本の国の言葉を忘れてしまったのは、私の血が原因です。とりあえず明まで行きませんか?私たちも退去命令が出てきています。途中までなら君の今の見た目なら紛れ込んでも違和感がないですよ。》

 

《ありがてぇ、もうこの国では暮らしていけねぇんだ。》

 

こんな足だしなと言って、先祖は穴が空いた状態の太腿を見せた。

 

《名前も新たに与えましょう、君と会った場所をとって、家名は藤、正しい樹とかいて、マサキと名乗りなさい。》

 

《ありがとうございます》

 

《貴方は私が唯一、オニから人に戻すことが出来た成功例。感謝を言われる筋合いはないですよ》

 

《だが、あのままだったら俺は殺されていた。救ってくれたのはあんただよ、神父さん》

 

《ふふ、ありがとう…、これで心置きなくポルトガルまで帰国できる。

どうか…君の道にも幸多かれ、アーメン》

 

 

 

 

 

シュン

また変わった?

ここは、この文字は…明か。

 

《旦那様、お客様です》

《ああ、入れてくれ》

 

無事に到着して、成功を収めたのか。よかった。

 

《新大陸…ですか?》

《ええ、まだまだ未開の土地が残っている土地です。豪商である藤殿に資金援助を頂けるならば…と思いましたが、その顔は無理そうですね、失礼を》

《待ってください》

《何でしょうか?》

《資金援助は遠すぎてできませんが、人を送り込みたいです。》

《ほう…誰をですか?》

《息子の1人をその、新大陸とやらへ。》

《危険な場所も残っています、ご子息への修行ならば別の場所にすれば良いのでは?》

《違います、修行ではない…、そこに血を残させるために行かせるのです。》

《はぁ…?まあ人はいくらいても足りないくらいですし、構いませんが、ではそのように致します。》

 

 

 

 

《この血は貴重だ、鬼が滅びていない以上、絶やすわけにはいかぬ》

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ガバッ

 

『はあ…!はあ…!はぁ…!』

何だあの夢は?

【あの日誌】を読んだ影響か…。

だけど、妙にリアルな夢だった。

 

『血を絶やさぬために各地に行かせた子供たちの生き残り…か。』

 

子供時代に思い出したら、()()()()を喜ぶかもしれなかったが、この歳になって、先祖の後を追うかのように宣教師となり、オニの子供を拾って、贔屓している自分には、()()()は重すぎる。

 

『400年越しの恩返し…か。』




ウィリアム・ヤコブ・ウィスティリア
イエズス会所属の宣教師
主人公の最初の保護者
ハリス大使の演技に気づいた人
実は【血を使った解除方法】で人に戻った
元鬼の子孫
隔世遺伝で鬼の血が濃ゆい。
この度、先祖の記憶を見てしまった。

sisterマリア
孤児院の院長シスター
早々にローズマリーが人間ではないと感じた。
確信が持てた日から、慈しみながらも警戒もしていた。
でも、ローズマリーが人間を【庇護対象】と見ていると分かってからは普通の子供として扱っていた。

『養子縁組先の父親が少し…かなり胡散臭いけど…人間ではないと知って受け入れてくれる家庭となると…妥協するしかないわね。』

ハリス・ベネット
主人公の義父
オニである事から、表向きは心配していても「首が残っているなら良し」と言った感じで、全く心配していない。
政治的に役に立つオトリだから、大切にしている。

リリー・ベネット
主人公の義母
こちらは普通に心配している。

戦国時代の宣教師
オニが悪いならば、人に戻せばいいじゃない。と言った倫理観
悪い人ではないが、支配者階級特有の傲慢さがある。
【瀉血】を使って、藤の毒を混ぜ込んだ自分の血を管から入れ込むといった荒療法を使った。
ウィスティリア司祭の先祖は助かったが、実は知らないだけでかなりの数の鬼が亡くなっている。
医学の発展に犠牲は付き物だよね。

藤 正樹
ウィリアム司祭のご先祖様
粗治療の結果、異人の血が濃くなり、日本語を忘れたため明に渡った。
ついた先で日本人相手の商売を開始。
無事に成功を収め、豪商となった。
その頃には明に拠点を置いたため、自身は動けなくなってしまったが、息子を外国に放流することで、【鬼の血に耐性を持つ血】を絶やさぬように配慮をしていた。娘は商売を円滑に進めるために【商売のイロハ】を教えていた。















戦国コソコソ噂話
イエズス会と鬼殺隊が協力していた時期は、かなり短かったので鬼殺隊側では伝承が途切れてしまっているよ。

実は養子縁組が正式に決まる前に、ハリス大使は「ローズマリーの身元をより盤石にするために、イエズス会に送った申請書を公表してもいいか?貴殿の名前も公表されるかもしれないがよろしいか?」と聞かれています。何となく意図はよめましたが、例えプロパガンダに使われるとしても【ローズマリー・ベネット】が認められるなら構わないと思い、許可を出しました。
自分が許可を出さなくても、教会の腐敗が騒がれる世間の中で宣教師による美談は、どの道本部が発信しだすと思ったので。
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